宮部みゆき「震える岩霊験お初捕物控」 | いり豆歴史談義

100万ポイント山分け！1日5回検索で1ポイントもらえる

1618586

ホーム | 日記 | プロフィール

2008年04月13日

宮部みゆき　「震える岩　霊験お初捕物控」

(8)

テーマ：最近、読んだ本を教えて！(24648)

カテゴリ：江戸時代

他にも、吉川英治文学賞、司馬遼太郎賞、山本周五郎賞、日本ＳＦ大賞等々、
多くの文学賞を総なめにしたともいえる、実力派の作家です。

その作品は、超能力を扱ったミステリーやＳＦが特徴的でありますが、
他にも、江戸に住む人々の人情を描いた時代小説から、
現代社会の問題点を扱った作品に至るまで、
幅広いジャンルの小説を世に生み出しています。

宮部みゆきについては、昨年、このブログでも取り上げたことがありますが、
私にとっても宮部みゆきは、「蒲生邸事件」を読んで以来、とても気になる作家であります。

そうした、宮部作品を久しぶりに読みました。
タイトルは「震える岩　霊験お初捕物控」。
江戸・馬喰町の岡引き六蔵の妹、お初という町娘が主人公の捕物帳です。

お初という町娘が、少女の頃に、自らが霊能力を持つことを自覚し始め、
人に見えないものが見え、人が聞こえないものが聞こえるという
霊験を利用し、難事件を解決していく物語。
宮部みゆきお得意の、超能力ものの時代劇版とも言える内容です。

冒頭、ろうそくの流れ買いをしている吉次という男が変死し、
その後に、突然生き返ったという「死人憑き」の事件から
物語が始まります。

この事件に興味を持った江戸南町奉行・根岸鎮衛（ねぎしやすもり）は、
お初と、与力の嫡男・古沢右京之介に密かに探りを入れさせることを命じ、
お初が事件に関わっていくことになります。
その後、相次いで起こる殺人事件。

さらに、この事件とは別に、赤穂事件の際、浅野内匠頭が切腹した田村藩邸で、
内匠頭切腹の跡に置かれていた大石が鳴動し始めたという不思議な現象が起こり、
「死人憑き」事件は、やがて全く関係なく見える１００年前の赤穂事件へとつながっていきます。

世間知らずのぼんぼんである古沢右京之介とお初との
軽妙なやりとりも、ほのぼのとしていて可笑みがありますし、
意外な方向へと展開していく過程にわくわくしながらも、
お初の霊能力により、物語は事件の真相に迫っていきます・・・・。

ちなみに、この小説に登場する、南町奉行・根岸鎮衛は実在の人物。
江戸時代中期に、佐渡奉行や勘定奉行・南町奉行等を歴任した旗本で、官職名は肥前守。
庶民の暮らし向きにも目を配るなど、庶民感覚に優れていたと云われ、
「耳袋」という、町の世間話を書き留めた随筆集を書き残したことでも有名です。

この「耳袋」という本は、鎮衛が３０年以上にわたって、書き溜めたものと云われ、
同僚や古老から聞き取った珍談・奇談、ちょっと面白い話を拾い集められたものでありました。

この小説の、田村藩邸の大石が動き出したという話も、
この「耳袋」から題材をえたもので、
また、殺人事件と赤穂浪士との接点についても、
宮部さんが、赤穂にある浅野家の菩提寺である花岳寺に伝わる
「義士出立の図」からヒントを得て筋立てしたものでありました。

この作品。抜群のストーリーテーラーである、宮部みゆきの意欲作であるといえますが、
ただ、怪奇事件が続発するので、お化け屋敷などが苦手の人には、少し怖いかも。

お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう

最終更新日 2008年04月19日 08時05分17秒
コメント(8) | コメントを書く

[江戸時代] カテゴリの最新記事

■コメント

あ～読もうと

nhatnhan625 さん

思っていたのに、忘れてた～

今回は大岡昇平の『長い旅』を買うことに気をとられました。
次回９月の帰国まで、覚えていられるか。。。。
(2008年04月13日 12時54分03秒)

返事を書く

だったら・・

夢見るハリーさん

読めないかもです(苦笑）

怪奇事件を文章にすると、、想像力が働いて
実際の映像より、、格段の怖さがあります。

だから、、
そういう小説は、、パスします（爆）

家族で楽しい時間を過ごしてきました。

新しい筆文字を考案中ですので、、
その制作に支障が出るから、、
行かないと決めていたのに、、ついつい、、
誘われるままに過ごしてしまいました(笑）

っま、
この楽しい時間こそが、、
創造力を養うことに繋がるのかも知れませんね。

新しい職場で覚えることが沢山あるし、、
ココ暫くは、、
日記更新どころではないと思いながら、
気分転換に書いてみました。

今から、ワンの散歩に行って参ります。
ではでは・・

(2008年04月13日 17時45分22秒)

返事を書く

Re:宮部みゆき　「震える岩　霊験お初捕物控」(04/13)

華文字さん

「義士出立の図」からヒントを得た宮部作品、「震える岩　霊験お初捕物控」。

早速読んでみます。

時代物、この手の小説は大好きです。
宮部文学も読み応えありますね。
(2008年04月13日 18時03分54秒)

返事を書く

Re:あ～読もうと(04/13)

ｇｕｎｄａｙｕｕさん

nhatnhan625さん
こんばんわ～

「蒲生邸事件」は逸品です。
ぜひ、お読み下さい。

今回の作品は、好き嫌いもありますし、
作品としては、やはり、「蒲生邸事件」の方が数段が優れています。
(2008年04月13日 19時40分18秒)

返事を書く

ちょっと

ｇｕｎｄａｙｕｕさん

夢見るハリーさん
＞
怖かったです。
怖いのが得意な人なら、面白いかも。

＞新しい筆文字を考案中ですので、、
＞その制作に支障が出るから、、
＞行かないと決めていたのに、、ついつい、、
＞誘われるままに過ごしてしまいました(笑）
＞

また、新しい事に挑戦されているのですね。
充実したお忙い毎日を送られているようで、
なにより・・・。
お仕事も頑張って下さい。
(2008年04月13日 20時41分55秒)

返事を書く

「義士出立の図」は

ｇｕｎｄａｙｕｕさん

華文字さん
＞
小説の最後に登場します。

赤穂事件の新解釈という、書評もあるようですが、
こちらは、それほど期待したほどではありません。

＞
＞時代物、この手の小説は大好きです。
＞宮部文学も読み応えありますね。
-----
宮部さんらしい面白さと、冴えは確かに
この作品からも味わえますけどね。
(2008年04月13日 20時54分18秒)

返事を書く

Re:宮部みゆき　「震える岩　霊験お初捕物控」(04/13)

Ｇ３（じーさん）さん

気にはなっているのだけど、読んでいない。宮部さんもその一人です。

それ以上に気になったのが、「耳袋」。これは是非、読んでみたいですねえ。古典でもいいですが、現代語訳もあるのでしょうか。 (2008年04月14日 23時25分03秒)

返事を書く

Re[1]:宮部みゆき　「震える岩　霊験お初捕物控」(04/13)

ｇｕｎｄａｙｕｕさん

Ｇ３（じーさん）さん
＞気にはなっているのだけど、読んでいない。宮部さんもその一人です。

宮部みゆき、Ｇ３さんにもきっと面白いと思います。
やはり、一般的に評価が高い作品を読むのが良いでしょうね。
私は２冊しか読んでないので、偉そうには言えませんが（笑）。
でも、｢蒲生邸事件｣は面白かったです。

＞
＞それ以上に気になったのが、「耳袋」。これは是非、読んでみたいですねえ。古典でもいいですが、現代語訳もあるのでしょうか。

私は｢耳袋｣自体を読んでないですが、
本格的なところでは、平凡社の東洋文庫。

手軽で価格の安いものなら、｢耳袋の怪｣
角川ソフィア文庫などがあるようです。
セブンアンドアイの書評では、
｢鳩を逃がして「残念なり」と物を言う猫、妖怪も逃げ出した稲生武太夫の豪傑ぶり、生前の恩を謝する幽霊、二十年を経て厠より帰ってきた夫―
今も昔も、怖い話は噂になりやすい。巷の奇談を書き留めた『耳袋』には、怪異譚が数多く収録されている。『耳袋』の中から怪異譚を抽出し、わかりやすく現代語訳で収録した奇談・珍談満載の世間話集。｣
とあって良さそうに思います。
根岸鎮衛／著　志村有弘／訳
(2008年04月15日 21時41分53秒)

返事を書く