ぎょう乃介雑記

ぎょう乃介雑記

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2006年08月12日
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カテゴリ: 古典日記

キキョウ科の多年草。各地の山野の日当たりのよい草地に生え、観賞用に栽培もされます。
別名に、ありのひふき、あさがお、おかととき、きちこう。

「桔梗」は秋の七草の一つとされています。

「万葉集」の山上憶良の「七種の花」の歌には、

    憶良詠秋野花 二首

巻8 1537「秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七種の花 [其一]」

   1538「萩の花尾花葛花なでしこの花をみなへしまた藤袴朝顔の花 [其二]」

とあり、最後の一つが「朝顔の花」になっています。

それは、平安時代の漢和字書『新撰字鏡』に「桔梗、阿佐加保」とあり、「万葉集」の「朝顔」は「桔梗」であるとする説が有力視されているからです。
現在の「朝顔」は元々は薬用の植物で、奈良時代頃に中国からもたらされたらしいのですが、江戸時代になって鑑賞用として庶民に人気を博し、以後 盛んに栽培されるようになったものです。

しんせんじきょう【新撰字鏡】
平安前期の漢和辞書。12巻。昌住著。昌泰年間(898~901)の成立か。
完本と抄録本とがあり、漢字約21,300を偏・旁などによって分類・排列し、字音・意義・和訓を記したもの。現存する日本最古の漢和辞書として資料価値が高い。


平安時代になると、「桔梗」は「朝顔」とは別の花になります。
そして、「桔梗」は、当時の漢字の発音から「きちかう」と呼ばれました。

「古今集和歌集」の紀友則の物名歌に、

「秋ちかう野はなりにけり白露のおける草葉も色かはりゆく」

訳「秋が間近となった(桔梗の咲いている)野になったなあ、白露が花はおろか草葉にも置くようになり、(花も葉も)色合いが秋の装いに変っていく」


「枕草子」64段



訳「草の花はなでしこ、唐なでしこはいうまでもなく、大和なでしこもとてもいいよ。
女郎花、桔梗、朝顔、刈萱、菊、壷すみれ。・・・」


「桔梗」は「朝顔」よりどことなく気品があるように感じて、七草の中ではちょっと浮いているような気がします。もしかして、山上憶良は、この外国から来た薬用の「朝顔」を歌っていたのかもしれません。
「新撰字鏡」に引っ張られすぎているかもしれませんね。


「万葉集」の歌、



訳「朝顔は朝露がおりて咲くと言うけれど、夕方の赤々とした優しい光の中で咲いている姿は、よりいっそう照り映えていますよ」

この歌の「朝顔」も「桔梗」なのでしょうか。
「夕影にこそ咲きまさ」る・・・確かに今の「朝顔」の花だとちょっと難しい。
でも、もしかしてこれは何かの比喩歌かもしれないと考えるとどうでしょう。

朝にしか咲かない花を、夕方のほうがいいというのは、男が女に言い寄って、
「お金持ちの、身分の高い男のほうがいいなんて世間は言うけど、本当は、おいらのほうが素敵なんだよ、それを知っている人なんかいないけど・・・」
なんていう「くどき歌」に解釈・・・自由すぎますか?






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最終更新日  2006年08月12日 10時03分44秒
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