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2011年08月12日
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今から遡ること数年前、埼玉県秩父市の工業団地の一角に城に似た
建物が建築された。

ベンチャーウィスキー秩父蒸溜所

それが日本唯一のウィスキー専業メーカ、ベンチャーウィスキー社の
秩父蒸溜所だ。

ベンチャーウィスキー秩父蒸溜所

ふだん一般には開放されておらず見学はできないのだが、肥土社長
のご好意で特別に見学させていただいた。ウィスキー蒸溜所の見学
はアイラ島のボウモア以来だから2年ぶり。蒸溜所の印象はブルッ
クラディとキルコーマンを足したような素朴な感じ。ちょっと言葉
にするのが難しいのだけれども、なんだか直感的にそう感じた。


小躍りしたくなる。この香りがウィスキー蒸溜所訪問のファンファー
レだ。

肥土社長の簡単なレクチャーのあと、さっそく蒸溜棟に入ってモル
トを轢くミリングの機械から見学がスタートする。アイラ島では、
100年前のミリングマシーンが現役の蒸溜所が多くて、2階の
天井にモーターを設置してベルトドライヴで動くものが多いが、
ここはもちろん最新型だ。

ステン製のマッシュタンを過ぎると8器のウォッシュバックが並ぶ。

ベンチャーウィスキー秩父蒸溜所

この大きさだから実現できたというウォッシュバックは日本のミ
ズナラ製で、サントリーの山崎蒸溜所と同じ(はず。すみません、
私はまだ行ったことがなくて、笑)。あとで見せてもらったウェア

ナラがお好きのようだ。

製造工程順にミリング、麦汁、発酵とくれば、いよいよ蒸溜で、
みなさまよくご存知のあのポットスチルが登場する。

ベンチャーウィスキー秩父蒸溜所
▲ベンチャーウィスキー秩父蒸溜所のポットスチル

ポットスチルは小ぶりで容量は2000L。キルコーマンより少し

ランドにはポットスチルは2000L以上でなければならないと
いう規制があるそうで、2000Lを割り込んでしまうとポット
スチルと呼んでもらえないのだとか。「それじゃちょっと悔しい
じゃないですか」とは肥土社長の言葉(笑)。

キルコーマン蒸溜所のポットスチル
▲こちらはキルコーマン蒸溜所のポットスチル

ほぼよく似ている両方を比べていただくとよく分かるのだけれど、
容量はほぼ同じで、秩父はストレートな形、キルコーマンは胴体
に膨らみがあるバルジ形。

一般的にストレートな方が重いウィスキーができ、バルジ形は軽
快なウィスキーができると言われているので、秩父のモルトは重
いフルボディになることが予想できる。余市と同じだ。

この他スチルのサイズやラインネックと呼ばれる上部の形状から
もこの傾向が読み取れるので、蒸溜所の設計段階から特徴のはっ
きりしたウィスキーを作りたかったのだろうと思われる。

ポットスチルを写真撮影した後、ウェアハウスを見せていただい
た。バーボン樽、ホッグズヘッドなどと並んで、今週これまでに
ご紹介したシェリー樽、ブランデー樽などもあった。

興味深かったのは、北米レッドオークの樽があったことで、レッ
ドオークは導管が太くて漏れるため樽にされることは少ないのだ
そうだけれども、手に入ったので試してみたと何事にも積極的な
肥土社長は簡単に話される。けれども、実際にウィスキーを入れ
てみたら漏れたので慌てて詰め替えたそう。今は鏡板だけレッド
のホワイト樽があるそうだ。

ウェアハウスにはすでに1000本以上の樽が熟成の時を重ねて
いて、お披露目されるのをゆっくりと待っている。きっと豊かな
香りとボディのウィスキーが出来るだろう。

蒸溜所見学のあと、試飲をさせていただきながら色々とお話を伺っ
た。多くの方がご存知のとおり、羽生蒸溜所の件では大変ご苦労
なさったのにも拘らず、肥土社長は「好きなことをさせてもらっ
ているから感謝しなくちゃいけない」と物腰低くとても謙虚だ。

「これからリチャーするから、よかったらご覧になりますか?」と
仰るので、こんなラッキーなことはないと喜んでお願いする。リ
チャーとは一度使った樽を再使用する前に内側を焼くことで、私
は余市に続いて2回目の体験。あちらは団体で遠巻きに見るだけ
だったけれども、こちらは私一人だけだ。天国にいる気分になる。

ベンチャーウィスキー秩父蒸溜所
▲バーボン樽のリチャー作業。作業しているのは肥土社長ご本人。

余市蒸溜所でのリチャー作業
▲こちらは余市蒸溜所でのリチャー

リチャーで大切なのは「ポンポン」と焼ける音がすることで、コー
ヒー焙煎で2度目のハゼを聞くのと似ているなと思った。きっと
中まで火が通ることではじめて音が出るのではないかと思う。

チャーが終わったあとの樽のなかは、アルコールとウィスキーの
甘さと焼け焦げた香ばしさが混ざった独特の香りがする。これは
ちょっと他では体験できない。天国にいる気分とはこれのことだ。

肥土社長は、何もかも秩父に拘ってウィスキーを作ろうとされて
いる。それは生まれ故郷への郷土愛とルーツへの敬意とご自身の
情熱だろう。

そして、ここの秩父蒸溜所にはそれらすべてを実現できる環境が
揃っている。明確な四季、朝晩の寒暖の差、冷涼な空気と水、麦
と設備と樽。

モルトウィスキーを作りたいという夢は多くの人の胸にあって、
私の中にもあるけれども、それを実現するのはまったく違う話だ。

でも、夢物語を現実にするご努力を積み重ねて来られたことも事
実で、それはウォッシュバックやポットスチルだけでなく、二条
大麦の生産や樽にまで手を広げていることからも明らかだ。

アイラ島のキルコーマンや台湾のカヴァラン等が評価されている
のとまったく同じように、日本のベンチャーウィスキーも、もう
まもなくその名声が世界に轟くようになる。

3年熟成の即席マイブレンドは、リッチでフルボディでラガヴー
リンとマッカランを足したように美味しい。これが8年や12年
になったら世界中の人々が秩父の名を語るようになるだろう。

肥土社長は正直で謙虚な方だけれども、21世紀の竹鶴政孝と言っ
ても過言ではない偉大な人物だ。

特別に見学を許して下さった肥土社長のその広いお心に感謝する。

ベンチャーウィスキー秩父蒸溜所


感謝!







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Last updated  2013年05月27日 11時07分37秒
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