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arneのラブリーな表紙をめくって、暫らく遠い世界へ行ってしまいました。
私の魔法使いの一行目、
「祖母を私はずいぶん長い間、魔法使いだと信じていた。」
あぁ・・・
私は今でもそう思っています。
私の美しい母はいわゆる深窓の令嬢で祖父母に異常なほど大切に育てられ
母は永遠のお嬢で現実の世界を受け入れられないまま母になりました。
エプロンの似合う友人の母が羨ましかった私の子供時代、
祖母は身体の弱かった私を溺愛したのでした。
いつもは気丈な祖母でしたが
寒い冬の日は喘息がひどく、苦しむ祖母の姿を私が寂しげに見つめると
「今、魔女を出してしまうから大丈夫ですよ」
と言ってふぅ~っと息をはくと
箒に乗った15cm程の魔女が祖母の口から出てくるのです。
そして指に止まった魔女を祖母が勢いよく吹き飛ばすと
今まで苦しそうにしていた祖母の頬が薔薇色になり
私の好きだった童謡を口ずさみ始めるのです。
「この道はいつか来た道ぃ~ああそうだよぉ~」
あれは夢だったのか・・・・。
祖父母の家の庭の沈丁花の匂い、祖母の血管の浮いた手の甲
夢ではないと思うのです。
私は祖母にきちんと感謝を述べた事があったでしょうか。
あんなに好きだった事を伝えた事があったでしょうか。