陽だまりブログ　　

９回目の流産後　（1）

私の気持ちは、諦めの方向へと向かっていた。
今までは、諦めそうになる気持ちを、次は大丈夫と自分を宥めつつここまで来た。
それは、私にとって大変な努力であった。
こうまでして進んできた道を、今度は諦めたいと思っても、
あっさり諦められないのである。
子供が居るという生活を夢の様に無理やりにでも膨らませる事で、
私は自分の頑張る意味に変えていた。
そうする為には、後ろ向きになる自分を理論的に納得させるしかなく、
無理やり思い込み、それが正しいのだと自身を洗脳してきたのだ。
今更それを反対の方向に向けるなんて、不可能だ・・・
心は、毎日、毎時間の様に揺れた。諦めたい・・・でも、もしかして次は・・・

その頃、本屋に「赤ちゃんは、お母さんを選んで生まれて来た。」
と言う内容の本が並び、売れていると聞いた。
本屋でその本を手に取った、パラパラとページを捲り
目に付いた箇所を読んでみた。
「空の上から、この人がいいとお母さんを僕は選んだよ。」
と、子供の口から出た言葉との事だった。
自分を親に選んでくれたとは、無事に生まれた人には、この上ない喜びであろう。
文面もその事を強調して書かれていた。
しかし、私のような人間はどうなるのか？
選んできてくれた子を産んでやる事すら出来ず、死なせてしまって・・・
選んだなんて・・・残酷すぎる・・・
有り得ない！！と心の中で否定した。
私は、母の名を呼び、助けを求め手を伸ばす我が子を
谷底に突き落としたというのか・・・
読まなければ良かったと後悔した。心の闇が深くなった。

夫にも、もう諦めようと話をした。
夫は、その時は私の話しに同意し、子供のいない生活を考えようと言った。
しかし、避妊をする様子は無く、何を考えているのだろうと思っていた。
別段、私もそれを強く否定する事も無かった。
心のどこかで、諦め切れない気持ちがあったのだと思う。
戻ってきてくれるのなら・・・淡い期待が無かった訳ではない。
自分の方から、わざわざその機会を作り出す程の気力は無かった。

ある日、夫が、会社のビーチパーチーに行き、
会社の人が、子供を連れて来ていて、その子の面倒を見る為に、
その人はバーベキューを食べる暇も無く、
世話に追われて大変そうだったとの話をした。

私が、
「小さいのがいたら大変だよ。あなたは、そういう思いをしないで済んで
　良かったね。」と言ったら、

夫は、
　「俺だってあれくらいは、普通にやるさ。大変じゃないよあれくらい。」

と弾む様に話した時に、諦めていないんだと感じた。
夫にその事を話すと、「いたらいいなと思っただけだ。」と言った。
欲しいのか、欲しくないのか、どっちなのかと問い質すと、
「本当は欲しい、だが、体の事を考えるとこれ以上の無理はさせられない。」
と言った。
卑怯だと、私は夫を責めた。
口でそう言いながら、避妊はしないわ、いざとなるとこう言う事を言い出す。
欲しい気持ちがあるのなら、欲しいとはっきり言って、
私に土下座するなりして、頼めばいい！！
避妊をせず、あわよくば妊娠すれば私が頑張るだろうと、
浅はかな考えに激怒した。
私と、子供の命をこんなにも軽く考えているのかと思ったら、
泣く事も怒る事も通り越していた。
子供うんぬんより、この人と一緒に居る事が嫌になり、
別れたいと真剣に思った。

この様な精神状態だったからか、その頃なかなか妊娠する事が無く、
大学病院へは、通院していたのだが、それさえも嫌になってきたある日、
夫が、もう一度だけ頑張ってくれないかと言って来た。
私は、もう嫌だと夫の言葉をさえぎり、
「あなたの子供が欲しいの気持ちは、
　グリコのおもちゃを欲しがる子供と何も変わらない！」
「よその家に居るから、うちにもって、犬猫を欲しがっている様なものだ。」
と言った。

私は、１度離婚を経験している。
前夫の間に２人の子供が居る。普通に何の問題も無く生まれた子達だ。
私の不育症の発覚が遅れたのも、私が次は大丈夫だと思ってこれたのも、
この現実があっての事だった。
（機会があれば、この子達の出産の事や、離婚の事も書きたいと思う。）

夫は、
「あの子達の様な子供が欲しい。君が育てればあの子達の様に育つ、
　自分はそんな子が欲しい。」
そんな事を言われ、私は言葉に詰まった。
私の中にも、ここまで頑張ってきたのに・・・と諦めきれない気持ちがあり、
夫の気持ちが聞けた事で、もう一度頑張ってみようと思った。

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