あんよは上手 ♪

あんよは上手 ♪

04チャレンジ富士五湖77キロ


2004.4.17(土)8:00スタート

ふじ
前日から仲間3人と宿泊した山中湖の民宿アポロを朝出発した瞬間、すでに早朝からスタートしている100キロ、117キロのランナー達に遭遇した。
程よい興奮を覚える。

7時少し前に北麓公園に到着。天気もよくのんびりムードの中、受付を済ます。
ここで、アート鈴木君に会う。「楽しくいきましょう」と励ましあいながら、車に戻ってゼッケンをつける。

ゼッケンは4枚ある。途中39キロ時点エイドで着替えができる。
この着替えの分のゼッケンが余分についている。大会側が先回りしてこのエイドに皆の着替えをおいてくれるわけだ。ウルトラ初トライの私にとって、着替えエイドも新鮮な気分。
しかし、着替えのことをあまり意識していなかったので、準備がおろそかだった。後でこれがツケになるのだが…。

北麓公園のトイレは全く混むことなく、トイレットペーパーもあり安心して用を足せます。ここまで嫌な緊張感もなく昨晩もぐっすり睡眠をとりました。

シューズにRCチップが付いているか、乳首に傷テープを貼ったか要チェックです。
今年のある大会でチップをうっかり付けずにそのままスタートに行くところでしたので何度も確認します。
乳首にテープを貼り忘れると地獄が待っています。過去、両胸が血だらけでゴールした友人がいました。

スタート前にディクトンのブースに寄り、ディクトンを手にとってみた。
効果はさておきどうもこの「おえっ」とする匂いが苦手だ。
店員の人に言ったら、「手を洗えばいいんですよ。洗っても効果は持続しますから」ということだった。
でもこの匂い何とか改善してほしいなあ、まだ買ったことないけど…。

スタート付近は、ビギナーズ77キロとはいえウルトラの猛者らしい人や私みたいに初めてらしい人達が和やかな雰囲気につつまれている。

予報の気温は20度は越すとのことで、周りは半袖、長袖いろいろ。
私は全天候型フランクショーターハーフジップの長袖です。
雨を弾く上に汗をかいてもとてもさらっとしています。
着替えはアディダスの半袖。下はワコールcw-X。
靴下はフランクショーター5本指。
シューズはアシックスのGEL-1080。ここまで荒川市民マラソン仕様です。
フランクショーターの小さめのウエストポーチには、インスタントカメラ、森永キャラメル、黒飴、スッパイマン。

アップは走りなしの約10分のストレッチのみ。

そして、号砲と共にスタート!

まずは、なだらかな昇り坂。すでにゼイゼイしているランナーもいる。
「あと何キロだ?」って冗談をかます。

R139に出るまでの山間道は片側車道一杯に広がって走る。車のドライバーもランナーを避けるのに大変そう。
少し前方にいるアート鈴木君は反対車線にはみ出しそうだが、本人は頓着していないようだ。

R139に出ると先にスタートしていた100、117キロのランナー達と合流する。
この先発隊はすでに40キロを走り済みなのだ。

初めての7キロエイドではおにぎりがでた。
特にエイドの食料はチェックしていなかったので、この先もおにぎりを期待していたのだがここだけのメニューだった。
ここで例の夜久弘氏を発見!その著書などは読んだり、ラン系雑誌で拝見していたので感激したが、とりあえず「こんにちは」と声をかけお先に出発。

気がついたらこの付近で、利君という仲間一人を見失う。
俺達4人は一緒にゴールしようと軽く口約束していたのに、申し訳ないことに見失ってしまった。

Mikeと哲と私の3人は「どうしたんだろ、俺達が先に行ってしまったと思ってぶっ飛ばして行ったんじゃないか。」
「さっきのエイドでまだ飯くってんじゃないか」「いや、俺達と離れるのはここしかないと思って、かっ飛ばしていったんじゃないか」など会話しながらしばらく走って行きます。
利君の走歴は今回の4人の中では一番浅く1年ほどしか経っていないが一番進歩が早い。だが心配です。

河口湖大橋からの眺めは爽快で後ろには富士山を背にして走れます。
この辺走行中は「景色はいいし、眺めもいいし、気分は最高だし、こんなにゆっくりなペースで一日中走っていられたらいうことないね」と楽しく会話しながら歩みを進めます。

ここで持参のキャラメルをひとつ頬張り気分一新です。
kawagutiko

そうこうしているうちに12キロエイドに到着。レーズンを二袋補給しすぐ出発。
ぐるりと河口湖を回ります。

とにかく、桜も見ごろで陽気もいいし、この一帯でこんな日はもう二度と今年はお目にかかれないんじゃないかと思うと、脳にアドレナリンがたくさん湧いてきて思わず頭に鳥肌が立ちました。

しかし、この頃から左膝裏に痛みを意識するようになりました。
この2週間はトレーニングできず、会社でも座りっぱなしが多かったせいか、両膝裏にずっと違和感があったのですが、気にしないようにしてきましたが、ここにきて早くも15キロ時点で痛みだしてきます。

21キロエイドは西浜中学校。ここで初トイレ。
オレンジを1個分、バナナを2本分は食っただろうか。オレンジが特においしかったなあ。
後で知ったのだがここには後から来るランナーのために応援メッセージボードがあったそうです。
画用紙サイズの何か書かれたものが貼ってあるなと思ってましたが、「まだ21キロ時点なのにこの膝の痛みにはかなわねぇなあ」と思っていたせいか気がまわらなかったようです。
仮設のビニールプールに火照った足を突っ込んで戦士の休息をしているランナーが目につきます。ここには10分近く長居したようです。
gakkou

ここからすぐ山です。膝をかばっていたせいか、右足付け根部分に痛みを感じ始めます。
心の中で、「ランナーの痛みは休んで直すのではなく、走って直すのが俺の持論だ!」と強がります。
でも最初に痛みだしたのが15キロ時点だったので、その後62キロも走れるのか?それこそ未知の世界だよとやや弱気になります。

アート鈴木君達はカメラ片手に元気そうです(後日、アート鈴木君のレポートを拝見して本当の事を知りますが…)。

下って西湖。野鳥の森公園27キロエイドに到着。
すかさず給水し、オレンジを続けて5、6片補給。そして、待ちにまっていたうどんを食します。
ただの素うどんではあるが、今の俺には充分。
「しかし、ネギが欲しいねえ。」と側でしゃがんで食べていたアート鈴木君に話しかける。
隣に座っていたアート鈴木君の奥さんから「いつもお世話になっています。」と声をかけていただき初めてご挨拶を交わしました。

うどんを食べ終わり「どっこいしょっと?!」立ち上がろうとしたが膝が痛んで情けないほどに立ち上がれません。
出発前にまたオレンジを3つほどつまんで頬張ります。またまたバナナも補給。
ここにも例の利君はいませんでした。
「ほんとにどうしたんだろう」「まさか、リタイアしたんじゃないだろな」と会話しながら出発です。

上九一色村に入り、青木ヶ原樹海を通過。
長~い橋を下り、その先に信号が見えそこを右折するようです。
歩行者の信号は赤みたいなので、「少し休める。そこでストレッチしたい、早く。」と思いました。
この頃になると、いつ歩こうか、次のエイドまではとりあえず行こうとか、そればかりを考えてます。

やっと信号で止まり、かかとをのばします。
そして屈伸を1回した瞬間、歩行者信号が青に、「もう青かい!」これは一緒に辛そうに走っている、相方哲の言葉です。

哲も私も痛みに耐えながら走っていましたが、その側を終始離れることなく叱咤激励し続けてくれているのが、これまた相方の私達の中ではベテランのMikeです。
そのMikeは、利君はどうしたろうとかずっと先に見えるのは利君じゃないか?とか始終言ってます。よほど気になるらしい。

信号を渡ったらすぐ32キロエイドがあり、そこで、もう膝どころではなく両足付け根も痛んでいたので水をたくさんいただき下半身にぶっかけます。

エイドの女学生らしい方に「がんばってくださ~い」とパワーをいただき、足を引きづりながらも踏ん張ります。

この辺からトラックがとても多いです。
歩道も特にないので気をつけないとね。
でも後ろからはねられたら終わりですけど。
「だから、目立つように皆ランナーは団結して固まりながら延々と繋がって走るのだー!」とムカデランナーを想像しながらもやはり足の痛みに現実に引き戻されます。

ここから精進湖です。
しばらく行くと「コーラあります」の看板。この先のエイドにはコーラが出るんか!と思いきや看板からあまりにもすぐ先に私設エイド。
小学低学年らしい男の子とお母さんがテーブルに一杯のコップにジュースを注いで励ましてくれる。
ひとつのコップだけに少しだけコーラがあった。
コーラはこれで終了だそうだ。「少しでもありがたや!」ついでにCCレモン?も飲ませてもらった。「いやあ、炭酸はうまいわ!」小僧殿からパワーを補充できた。気持ちを入れ替え再度スタート。

R139手前の36キロエイドに到着。またまた水をざぶざぶ。
結構な気温だと思うが、暑さはさほど感じなかったのは幸いかな。

横断歩道を渡るため、誘導員の指事に従う。交通量は割と多く見通しも良くない中、誘導員の方はさぞかし責任を感じながらランナーを導いているかと思うと敬礼です。

いざ本栖湖へ!途中、不思議なところへ誘導されると思ったら、地下道くぐって道路横断するのです。ここの階段の段差はしんどかった。短い階段だったが。

そしてついに39キロエイドに到着。
さっそく、給水、みつまめ、オレンジ、レーズン、梅干し、パンなどここでも一通り食べます。
「完走と共に完食も目指しているのか、俺は?」食べては、下半身に水をぶっかけ、ぶっかけては食べるの繰り返し。
このエイドで着替えです。
預けておいたシャツを取りに行き、半袖に着替えました。
「あ~気持ちいい。」「びしょ濡れの靴下も替えたかったなあ…。」「シューズも…。」「エアーサロンパスも入れておけば…。」「できたらドラエモンのどこでもドアも…。
いや、これは如何。そんなことしたら不正になっちまう!」とこの頃になるとそんなアホな妄想にマジで反省したりしてます。

置いてあった冷却剤も皆、空のようで噴射しません。
出発前に仰向けになり両足を上げて乳酸抜きをします。「このまま眠りて~」てな感じです。

ここにも10分は居たでしょうか。「やっぱり行くのか…。」と思いながらゆっくりスタートしますが、足は思うように進みません。
また、「次のエイドまではとりあえず行こう」と気持ちを何とか切り替えます。

もう、ちょっとした段差でも激痛がはしります。
それにしても工事が多いなと感じたし、歩道も整備されてないところがいっぱい。
「でもこれがウルトラなんだ!」とウルトラビギナーはいっちょまえにポジティブに行動します。

本栖湖が左に見えてきました。ずっと昇り坂です。
利君を見失った我ら3人組は無言で1列になって走行します。

何と、利君が普通に向こうからやってきました。
たった一人で、しかも元気そうです。互いにエールを送り我ら3人組はまた無言で走り続けます。
「がんばれよ~利君!」Mikeはなんとなく寂しそう。

気温もだいぶ高そうです。他のランナー達もよれよれそうです。
みな、独自のスタイルで駆けています。ゆっくりと…。

前方に割と小太りな方を発見。シャツの背なには『これでもランナー』と書いてあるのを読んだ瞬間、目に涙が溜まりました。
長~い昇り坂をみなよれよれながらも足を前に運んでいく姿に共鳴したのでしょうか。

やっと本栖湖折り返し。給水もできると期待してきたら、なんとゼッケンにシール1枚貼って折り返すだけでした。
ものすごく気持ちが萎えた瞬間でした。しかし、その折り返しで折り返えさず、さらに先を行くのは117キロのランナー達です。
気持ちが萎えた瞬間でもあったが、ほっともした、反面「がんばれよ!」と心の中で117キロランナー達に敬意を表します。

さらに我ら3人組は無言で坂を下ります。
私が殿(しんがり)を何となく勤めています。というより先に行けないので後ろから「先に行ってくれ。」と何度も心でつぶやきます。
しかし、先頭のMikeは私達ビギナーズ鈍足二人の足音を聞きながらスピードを調整しているようです。
3人はつかず離れず、まるで団子3兄弟のようです。が、冗談想っているのもほんの束の間。

途中でアート鈴木君達に遭遇。カメラを向けられたのでポーズをとります。
「鈴木君はしんどくないのかな。すごいな。いつもにこにこで。
アートの店にいる時もにこにこしていて、つい話し込んじゃうんだよな。」と思いました。
私なんかすでにポーチからカメラを取り出すのさえ辛くて、ほとんど撮影してません。後で思うと撮っておけばよかった~と反省します。

もう足を引きずりながら走って何キロ経つんだろう。
とにかく、どこかにある42.195キロの看板を探して気持ちのスイッチ入れ直そうと思ってましたが見当たらなかったようです。

ずっと気になっていたのだが、シューズは水浸しで地面に着地する度に「ぐしょ、ぐしょっ」と音がする。
それはいいのだが、濡れているせいもあって、豆もできているらしいし、爪先も変だ。
しかも、シューズの中の踵部分に買った時から貼ってあった、サイズが記載されているシールが剥がれかけているらしく、後ろ足を蹴り出す瞬間に靴下に微妙にくっ付いては剥がれるのがとても気になる。
「今度から買ったらすぐ剥がそう!」

先ほど寄った着替えのエイドでまた水で冷やし、給水、食料を補給して「しょうがねぇなあ、もう」と走り出します。
エイドではゆっくり休みたいが、休んだ後、新たな激痛が待っているのです。

その後、例の地下道です。
片足引きづりながらこの短い地下道を下って、上ります。
「このまま本当にあと32キロ走るのかい?」「ハーフにプラス何キロ?」「それにしても足が痛い。笑えるほどの痛さだ。
皆もこの痛みと戦ってんだ。」と思ったらまたまた、ゾゾーッと頭に鳥肌が立ち「おっしゃあー!!!」と声を出していました。
また、アドレナリンが分泌されたのでしょうか。

地下道を抜けたところで係りのおばちゃんに「がんばれ~!」と応援され思わず「がんばってるよー!!」と応えたらおばちゃん「そうかい、がんばってるかい。」といって笑ってました。
ここで、また新しく気持ちのスイッチを入れることができました。

それにしても、stone-takedaさんをずっと探しているのだが発見できません。
ホームページでお知り合いになり是非お会いしましょうと書き込みあったのですが。

hutari
長くてゆるやかな3つの橋、赤池大橋、青木ヶ原大橋、瀬々波橋を越えます。これがずっと先遠くまで見えるのだが、先ほど確か『エイドまで1キロ』と看板が出ていたのにエイドらしきものが見えない。
この1キロは長かった。これほど長いと感じた1キロは初めてでした。

この橋の途中で哲が鈍くなり、私はそのまま哲を追い越しました。
鈍足哲を尻目に先のエイドまで気持ちは一目散でした。
50キロエイドに先に着いてストレッチしていましたが、後からきた哲が私より早く先に出発です。
「このまま、哲、行け!お互い鈍足同士相手を気づかう甘さが命取りになるのだ!」とそんな余裕もないくせに渋々少し離れて後を追います。

53キロエイドは行きと同じくうどんやオレンジ、バナナなど一通りを食べる。相変わらず食欲は旺盛である。
哲とMikeはうどんはパスしたようだ。ストレッチしてお決まりの下半身に水をかけて発進。

西湖に戻り、左に大きくなだらかにカーブ。
日も暮れそうになり西湖がオレンジ色に染まる。
ずっと先にかすかに黄色のバンダナ二人組が見える。水際に脱せんしたようだが、また写真でも撮っているのかな。
できるだけ痛さのことや、何も考えないように一定のペースで西湖を回る。
時折、反対側から何度か元気に「がんばってー!」と応援が走る。そしてまた後ろから「がんばってー!」と追い越して行くあのお方達は誰?単調な景色の中、とても刺激になります。

60キロエイドで、アート鈴木君夫妻に再開。
元気そうに?他のランナー達と会話をしているようです。
私は下半身一杯に毎度の水をかけ、お先に出発する。
この先、このペアを一緒に見ることはなかった。

この後の下り坂では右足のすねに激痛。片足スキップのようにして、先行くMikeと哲を追いかけるが、なかなか追いつかない。今日一番の痛みです。

河口湖に到着。車道は交通量が結構多いので、ランナーは皆1列になって連なって行く。

前を歩いているランナーも我ら3人組が通過すると、歩いているランナー達は磁石のように吸い寄せられ、新たな団子兄弟ができあがっているようだ。
海の底を連なって移動する伊勢海老にも似てる。

河口湖が遠ざかる頃、ついに気力がこと切れそうだった。

「もう歩きたい。」いつ歩くかそればかり考えていた。時間内に完走出来るのかも疑問である。
もう、足の痛みも限界、痛みだしてからすでに7時間以上は経過している。
そういえばキロ表示毎にタイムを一度も計測してなかった。

痛いところをかばおうとすると違うところが痛みだす。
ずっと摺り足をしていたせいか、ぐしょぐしょのつま先も爪が死んで腫れているような感覚。
上半身は毎日腹筋をしたおかげか辛うじて大丈夫だが、股関節、両膝、右足すねなどは痛みが増すばかり。
額にはじっとり脂汗が流れているようだ。

突然、リタイアしたくなる気持ちが襲う。

やる気が完全に切れそうになる。

意識は遠のきそうになる。

「何がウルトラランナーになりたいだ。何がトレイルランナーを目指すだ。俺は口だけだ。」

そう思ったら、生意気にも自分はいつかスパルタスロンを完走してウルトランという冊子に載ってみたいという憧れを思い出した。
そして、そのレースのゴールにいるレオニダス像の足元に刻まれているという、妙に挑発する言葉『欲しくば取りに来い』を心の中でつぶやいた。
それからずっとこの言葉を意識が切れないように繰り返しつぶやいて走った。「欲しくば取りに来い。欲しくば取りに来い。
欲しくば取りに来い…。」
「何がスパルタスロンだ。それどころか俺はまだこんなところにいるよ…。」
これで不思議にペースが上がった。

哲はペースを落としたようだ。
Mikeは相変わらず励まし続けている。励まし続けるのもさぞかし大変だろうに。

私は少しばかりペースが上がって何人か追い抜いた。先にランナーの姿が見えなくて不安だったがこのペースで走り続けた。

69キロエイドで「もう少しです。がんばってください。」と励まされ、「あと何キロですか?」と確認する。
しばらく行くと女性カメラマンに「あと5キロですよ。がんばって」とまた励まされます。
しかし、少し行くと距離表示はあと…7キロ。「ん?」

ついに山間に戻る。最後の昇り坂に差しかかる。
歩いているランナーが目立つ。ついに気を許し、私も歩く。歩いている時だけ痛みから解放される。
この感覚、何時間前からずっと待っていた。しかし、距離表示も疑問だし、残り時間もあとわずか。2分歩いたら2分走るで時計を見ながら進む。
係りの方に「ここまで来たらあと少しだからがんばれ!」と気合いをもらうがなかなか進まない。

うつむきながら歩いていたら、アート鈴木君の奥さんが「◎×○▲…!」と何かを言い残しぶち抜いていきました。
「は、早~!この辺りであのスピードで走っているのは彼女だけだよ…。」

その後も会う人ごとに「後何キロですか?」と確認するが、距離表示と微妙に違う。距離表示の方が長いのだ。
またもやレオニダス様の登場です。『欲しくば取りに来い』の連呼です。

もう真っ暗です。
時間が気になるのでとにかくかっ飛ばします(かっ飛ばしていたのは気持ちだけだったのかもしれないが)。
この頃は痛みを忘れているようでした。
遮二無二状態。

ゴールの北麓公園競技場側の体育館が見えてきた。
しかし、あとどのくらいあるのかゴールテープが見えるまでは油断はできない。
やっと競技場の入り口に差しかかり、付近にいた人に「ゴールまでどのくらいですか?」と聞いたら「あと400メートルくらいかな」という声を聞き、初めて安堵した。

競技場内に入るとクイーンの『ウィ・ウィル・ロック・ユー』が流れている。「間もなくゴールです!」というアナウンスが聞こえる。声援もあちこちから聞こえる。

すごくこの瞬間気持ちがいい。またまた目から涙が溢れそうになる。
「やった、間に合った。ついにきた。
みんな、ありがとう。(何故か周りに感謝したくなる)」

そして10時間51分でゴール(よくこんなに走ったよ、しかし)。

すぐ完走メダルと完走スポーツタオルを首にかけてもらいました。
そして、私をぶち抜いて行った駿足、アート鈴木君の奥さんが出迎えてくれた。思いがけないお出迎えに気分は最高潮でした。

medarutaoru
その後、制限時間も迫ってきており、次から次とゴールするランナー達を応援。

Mikeと哲は一体ゴールできるのかと思いながら見ていました。
しかし、もう残り4分ほどという時に二人揃ってゴールしたのです。

出迎えた時、口を開くとまたまた涙が溢れ出そうなのでとても困りました。Mikeと哲も泣いていたようです。
暑さにあまり得意でないアート鈴木君はどうやらリタイアしたようです。
ところで、利君は、たったひとり10時間6分でゴールしたそうです。
彼はついに得意な道を発見したようです。

いやあ、初めてのウルトラマラソンは今まで経験したことのない素晴らしい体験でした。
どんなに素晴らしいかは今、分かりやすく簡潔に答えることはできませんが、少しづつその答え?を探していきたいと思います。
go-ru


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