| ●
●
●
● ● ● |
正午を少し回った頃、看護師さんが手術室に案内してくれた。 まだ、この時点ではどこも痛くもないので、手術室には歩いて入室した。 手術台に上がる前に下着を脱ぎ、病衣だけとなって、台に上がった。 右手に自動血圧計を巻かれ、左手から点滴をすることになった。 なかなか血管が見つからなかったのか、時間が掛かった末に失敗されてしまった。 夕べから水分も採ってないから、血管も見えなくなっていたのかも。 今度は右と左を変えて、左手に血圧計、右手に点滴を挿してくれた。 この頃、先生が来て、準備を始めた。 わ、いよいよなんだ・・・。 私は二度ほど深呼吸をした。 動くと危ないので・・・と、まず足を固定された。 それから、手も縛りますね・・・と、両手を広げた状態で縛られてしまった。 がんじがらめだと思うだけで、息がつまりそうになったけれど、それから間もなく麻酔が始まった。 静脈麻酔だったので、点滴の側管から、注入された。 ウォッカでも飲んだかのように喉がカーッと熱くなり、意識が朦朧とし始めた。 昔、検査で、同じ体験をした事があるので、不安はなくキタキタ・・と思った。 私は多分、先生に色々話しかけていたと思うのだけど、全く覚えていない。 すぐに、意識を失っていった。 寝ていたはずの私は痛みで目が覚めた。 正確には目が覚めてはいないかも知れないが、 寝言のように「イタイ・・・イタイ・・・」と言った事を覚えている。 看護師さんが、『頑張ってください』と言い、先生が「もうすぐ終わりますよ」と言ったような気がする。 その後先生にポンッと肩を叩かれ、『ハイ、終わりましたよ♪』と起こされた。 ボーっとした意識の中、カチャカチャと器具を片付ける音、看護師さんの小さな話し声、何かを洗う水の音が響いていた。 看護師さんの片づけが終わるまでの間、私は手術台の上で寝ていたと思う。 時計を見ると初めの意識があった頃から30分くらい経っていた。 その後、ストレッチャーに乗せられて、自室のベッドへ戻った。 麻酔が覚めるまで寝ていてくださいと言われたのと、内服薬2種類の説明をされ手渡され、わかりましたと返事をした気もするが、正直、麻酔でボーっとしているので全く理解はしていなかった。 すごくお酒を飲んで泥酔状態という感じだ。壁も天井もぐるんぐるん回っている。 そんな状態なので、すぐに寝た気がするけれど、5分~10分おきに目が覚めるような状態で、一向に楽にならない。 それでも、少しずつ意識は戻っていった。ただ、めまいの様にぐるぐるまわる気持ち悪さは続いていた。 どのくらいの時間がたったのかわからないが、同室の妊婦さんが無事出産して戻ってきたようだった。 家族が喜んでいる話し声が聞こえる。ご主人とお子さんが二人くらいいるみたいで、すごくはしゃいでいた。あとは、ご両親がいたようだ。 生まれてきた赤ちゃんをみんなで祝っている声が延々と続いていた。 そんな様子を聞きながら『わぁ~♪ 産まれたんだ・・・良かったねー』初めは素直におめでとうと言う気持ちだったけれど ずっとずっとそれが続いていて、幼稚園か小学生の子供が騒いでいたので、後は正直きつくなってきた・・・。寝かせて・・・。 夕方の4時くらいになっていたと思う。 それから少しウトウトしていたと思う。頭はずい分しっかりしてきたようだ。さっき渡された内服薬の薬袋を手にとって見た。 子宮収縮の薬と抗生剤が1日3回、5日分の処方だった。 さっきの家族は、ご主人だけとなっていたので静かだ。 私は主人と息子の事を考えていた。 今頃、お昼寝してるかな・・・。どうしてるんだろう? しばらくして、看護師さんが訪れてくれた。 「どうですか~? 吐き気とかありませんか?」 『吐き気は全くないです、大丈夫そうです』と答えた。 「では、トイレまで行けますか? 行けるようなら、その後診察をしましょうね」 起き上がってみた。 うわっ・・・寝てると平気そうだけど、起きるとフラフラだ・・・。 でも、早く帰りたかったので、『大丈夫です』と、ゆっくりゆっくりトイレに行ってみた。 どうにか用を足し、戻って来れた。 ふぅ~~。さすがにきつい。 大丈夫だと言ったので、看護師さんが術後の診察へと案内してくれた。 先生が診察。「大丈夫でしょう」と言われた。 手術の時に中に止血のタンポンを詰めていたようで、そのために出血がなかったようだ。 これから出血してくるらしい。 次の診察までお風呂には浸からない事、出血は7~10日ほど続くでしょうとの事、そして約一週間後に受診するように指示された。 処置室に移るときに、荷物を持って行かされたので、そこで私服に着替え 帰宅していいと、処置室から送り出された。 まだ、フラフラする身体で、階段をおリ1階フロアーで主人に電話をしようと思ったら、ものすごい吐き気に襲われた。 あ、ダメだ。どうしよう・・・。あ、1階のトイレに行こう!! その時、主人の声がした。朝、看護師さんから大体の時間を聞いていたので 早めに来てくれていた様だが、病室に入れなかったので、息子を遊ばせながら院内にいたらしい。 ホッとしたのと同時に、再び吐き気が・・・。 慌ててトイレへ駆け込んだけど、結局、嘔吐まではいかずに治まったので、このまま早く帰ろうと思った。 立っているのがやっとの状態だった。 外来で、お会計があったので、主人に支払ってもらおうと向かうと 病院の玄関付近に、サークルのママ友が・・・。 後ろを向いて、息子君に靴を履かせている。隠れるように通り過ぎた。 今日は誰とも話したくない。まして、今、会話できる状態じゃないし、妊婦さんに今の私の気持ちを察して欲しくなかった。 会計が終わり、そのまま自宅へ帰った。 |
●
● ● ● ● ● |