子育て仲間*はらっぱ

超低体重児を出産して

●コラム● ~わたしの出産&育児体験記~

「超低体重児を出産して」
text by sumi

 現代の医学では全く原因不明。その要因さえ分からないのですが、私の赤ちゃんはおなかの中で育たず、37週と3日もおなかの中にいたのに、出産時の体重は967gでした。

 生まれる前は、お医者さんから「生まれてもすぐに亡くなる可能性がある」「障害を持っている可能性が高い」などいろいろ言われて不安でしたが、おかげさまで1歳3ヶ月になる今、とっても元気に育っています。大きさはやっと3ヶ月くらいの赤ちゃんに追いつきました。小さいから余計にかわいくて、超親ばかになっています。

 小さく生まれてきてくれたからこそ、私はいろんなことを学びました。我が子が身をもって私にたくさんのことを気づかせてくれたのだと心から感謝しています。

 赤ちゃんは生まれてすぐに保育器に入り、誰からも抱っこされる事なく、体中に管が付き、うるさい機会音の中でも、頑張りました。1日に1時間しか面会が許されず、我が子に会えない、抱けない。そして我が子の気持ちを考えると、この保育器時代が私の人生の中で一番辛かったです。

 3ヵ月半で退院して、やっと、親子一緒に安心して暮らせると思ったのもつかの間、なんと今度は元気すぎて、体の大きさよりも力が上回ってしまい、呼吸困難な状態になってしまいました。まだ器官が狭いのに呼吸の吸う力が強いため、管が圧力で閉まってしまうのです。初めは苦しみもがきながらも何とか生活していましたが、息が詰まる度に顔は紫を通りすぎて土気色になり、体中チアノーゼを起こし、そして何よりも、もう、泣き声にも叫び声にもならない「キーキー」という叫びとともに頭を激しく振ってすごい形相で苦しむようになりました。そしてまた入院になりました。

 今回は酸素の機械をレンタルして退院できましたが、それからの約1ヶ月は壮絶な日々でした。酸素が全く入らず苦しいのと、死んでしまうかもしれない恐怖のためにパニックになるのは、1日に15回以上。ミルクのときや寝ているときに、長ければ20~30分も。ほとんど四六時中という状態でした。母子ともに睡眠はとれません。しかし、「必ず乗り越えられるよ!」と自分にも我が子にも言い聞かせて、そして本当に乗り越えてくれたのです!(今、同じ生活をしろといわれたら2日ともたないでしょう。きっと母性本能と必死の時にだけ出せる火事場の馬鹿力のようなもののおかげでしょう。)


 私は今回の出産で、あたりまえにできるであろう、いろいろなこと・・・例えば、もちろん出産は自然分娩で、生まれたらいっぱいスキンシップをして言葉をかけてあげようなど思っていました。でも実際は緊急の手術で帝王切開。生まれてからは保育器に入ってしまい、大泣きしても抱くことも出来ず、1日1時間しか会えない。「~するはずだったのに・・・」とつい思ってしまいました。でも、そうじゃなかった事を悔やんでも仕方がない。今の状況の中で精一杯やるしかないのだと思い知らされました。

 また、いつか我が子におっぱいをあげる日を夢見て、毎日3時間おきに、痛みと孤独に耐えながら乳首の周りが青痣になるまで搾乳もしましたが、長い入院生活で哺乳瓶に慣れてしまったために見事に振られてしまったり・・・。あたりまえに出来ることが出来ないのです。

 それでも、我が子と一緒にいられることが何よりも幸せだと感じます。他の事なんてどうでもいい、元気で一緒にいられることが最高の幸せだと感じるのです。きっと、普通の大きさで生まれていたら、そんなことには気づかなかったでしょう。そして、育児を「大変なこと」と思って、ストレスになっていたかもしれません。

 それから、病院にはたくさんのいろいろな子ども達がいました。ベットから全く動けない子や障害を持った子・・・それでも皆、懸命に生きていました。日常の中でつい忘れてしまいますが、これを機会にぜひ、あたりまえに手が動くこと、あたりまえに歩けること、あたりまえに食べられたり、しゃべれること、そして何より、命のあることに感謝してほしいのです。

 我が子はとっても小さいのだけれども、「小さいけど」ではなく、「ぼくは小さいんだ」と、小さい事を自分の個性として考えられる子に育ってほしいと願っています。障害を持つ子どものお母さん、また、成長が遅いとか、「うちの子は~が出来ない」と悩んでいるお母さん、我が子をそのまんま、すばらしい個性だと思って感謝しましょう!そうすればきっと、子育ても、毎日も、ぐっと楽しくなると思います。 


☆超低体重児とは・・・?☆-----------------------
未熟児といわれる赤ちゃんのうち、37週未満で生まれてきた赤ちゃんを早期産児、体重が2500g未満で生まれた赤ちゃんを低出生体重児、1500g未満の赤ちゃんを極低出生体重児、1000g未満の赤ちゃんを超低出生体重児と言うそうです。そして、1500g未満で生まれてくる割合は全体の1%以下だそうです。

(「はらっぱだより4号」に掲載 2004)




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