七夕(1991)




シュワッチ.JPG

《内緒だけどこんな事がありました》

七夕の笹かざりにつける短冊を幼稚園からいただいたとき、
兄貴の願い事はすぐにわかりました。
案の定
「僕は大きくなったらウルトラマンゾフィーになりたい」とのこと。
母親としてはもっと雰囲気のある短冊を飾りたかったのですが、彼の望みどおりに書くと、
「やった~!これでゾフィーになれる。」と大喜びでした。

そんなこともあってか、今夏は本人の希望でよく七夕の話を読みました。
それから夏休みに入っても、笹飾りは子供部屋に飾ったまま。
「川に流そうよ、そうしないと願い事が天の川に届かない。」と言われ、
そういうことが消化できる年齢になったのだと感心したりしながらも
○○区では流す川がみつからず、ちょっと困っていました。

8月も終わりごろ、七夕とは別に
「ねぇ、大きくなってもお父さんとお母さんとやじろべえ(弟)と皆でここの家にずっと住むの?」
と不意に兄貴。
「ずっとはムリかな。
それに大きくなったらゾフィーになってウルトラの星にいくんじゃなかったっけ。」と私。
すると、何てことないよってな顔つきで
「うん、そうだよ。そうしたらお母さんのこと忘れちゃうかもよ。」
と笑うので、いつか旅立つ日がくるんだなどと先の事を考えてシンミリしてしまいました。

その夜、お布団のうえでいつまでもゴロゴロしているので、様子を見に行くと
静かに泣いていたらしく枕がびしょぬれになっているではありませんか。
もちろん「わっマズイ!」と思ったのは私。
話を聞くと
「僕はやっぱり一人でウルトラの星に行くのはムリ。お母さんと離れ離れになるのはヤなのよ。」
と何度もしゃくりあげてなき始めました。
私の一言がまねいた涙でしたが、胸がキューンとしました。

あの夜以来、お父さんはときどき兄貴をからかって
「いつゾフィーになるのかな?」
なんて聞きますが、そんなとき兄貴は大きな声で答えます。
「だいじょうぶ。アレは川に流してないからね。」

というわけで、今年の笹は記念に子供部屋を飾ることになりました。
私はというと、奪ってしまった兄貴の夢を何とか取り戻そうと
「タロウならチチやハハと一緒だから、来年はタロウにしたら?」
なんてアセたらたらです。

(♯)


切手 切手 切手


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