やだもん(1993)




やだもん.JPG

《こんなこいるかな?》

「お父さんよりお母さんのほうがコワイよ!」と兄弟そろって言う。
「え?」と私。
「たぶんね、ちょっとだけだけどね」と兄貴、6歳。
「ちょっとじゃないよ、ゼ~ッタイお母さんだよ」と得意げにやじろべえ。
「ぼくは少しだと思うけど、‥わかんないや」と気配りのすすめ兄貴。

『ヒカクヤヤメテヨネ~』なんておもいながら『タシカニコワイ』私

「そんなにおこってばっかりいるかなぁ、優しいときもあるでしょ?」
「そりゃあ、優しいときもあるけど‥」こんな時、結論を急がない兄貴。
「ないよ!」とますます口をとんがらせてがんばっていたやじろべえが
「でもおかあさんかわいい」と絶妙のタイミングでニンマリ笑った。

私の話もちょっと聞いてほしい。
お母さんは、20代、特に大学を卒業して就職した頃から、
多くではないけれどイサマしいことができた。
ひとりで遠い外国にだっていけたし、
高速道路を確かな技術も持たないままけっこうなスピードで運転したり‥
なのにお母さんになった途端にどうだろう?
飛行機も、クルマも、船も。
異常気象も、サメのいる海さえもおそろしくなってしまった。
今はひとり旅よりも皆でスキーやキャンプに行きたいし、
運転だってゆっくリズムで右左、もう一度念のため右左。
海水浴は背の高さまで。
台風の日は絶対オタク。
初めて兄弟ふたりをバスに乗せた途端、たまらなくなって
バス停に先回りしてしまったり、
二人が公園へ行ったすぐ後で、もう大丈夫かな?なんて心配してしまう。

お父さんが旧友の結婚式で鹿児島へ行くことになった連休も、
集中豪雨やシラス台地がこわかった(笑)

お父さんのおヨメさんになって、君たちのお母さんになってから
こわ~いお母さんはどうしようもないこわがりやの《ブルル》になってしまったんだゾ!
わっかるかな~。

ケラケラ笑い声が聞こえてくる。
「ちがうよ、お母さんは《ブルル》じゃないよ、わすれんぼうの《ポッケ》だよ!
お父さんはがんばりやの《ガンガン》、お兄ちゃんは《モグモグ》、
で、ボクがいやだいやだの《ヤダモン》なんだよね~」

‥ケララのやじろべえめ(《ゲララ》じゃないけどね)!

(♯)

切手 切手 切手


© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: