-UNKNOWN-



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ヒュッ。
鼻の先数センチ前に風切り音が響く。
四方から、鋭い爪や牙を体に食い込ませようと狙ってくる。
その全てを紙一重でかわし、その瞬間右手に握っている長方形の鉄塊を打ちおろす。
グシャッ、と肉がひしゃげ骨砕する音が腕に伝わる。

「グルルル・・・・・・・・・」

獣達は、牙を剥き出しにターゲットを観察している。
人影を中心に円を描くように獣が群がる。

《このままだと効率が悪いな、この輪から抜けた方が良い》

影は頷く。
グッ、と足に力を入れて前方に一足飛びした。
一瞬で輪を抜けて、群ている獣の数を数える。

《33、34、35…無駄に多いな…》

しかも動きが早い。一匹潰している間に周囲を取り囲まれる。
グシャッ。
グシャッ。
グシャッ。
何匹か潰しているうちに単調な攻めが無くなってきた。
獣は個々の能力に固執していて、群れいても大抵協力などしないで襲ってくる。
ジリジリと整った歩幅で間合いを積めてくる。
バッッッ!!!。
囲んでいた獣が一斉に襲いかかる。
前方から襲ってきた三匹は、手に持つ鉄塊で地べたに叩きつける。
叩きつけた後、すぐさま振り返り残りの三体に向かって同じ事を繰り返す。

「痛っ…!!」

三匹を打ち降ろして潰した後、後方から一匹背中に多い被さるように首筋に牙を突き立てた。
ガジガジと首筋を削るように牙を動かしている。
ッチ、と舌打ちをし、空いている左手で獣の首根っこを掴み無理矢理毟り取る。
そして、今やられた事と同じ事を。
獣の喉元に歯を立てる。
グシュッ。
皮膚、厚い皮を喰い破り肉に歯を突き立てる。
ジュクッ、ジュクッと喰い破った場所から血を啜り獣の熱い血液が胃に流れ込む。
数十秒間血を啜った後、かぶりついている部分の肉を喰いちぎり噛み砕き血液と一緒に胃に入れる。

「不味い………」

ペッ、と口に残った血液を吐き出す。

《何が不味いだ、文句を言わず何時もそうやって食べていれば良いんだ》
「・・・」

無言で鉄塊を大地に突き立てる。

《お前…またそうやって》

既に話は聞いていない。
指をゴキゴキとならし変形させる。
鋭く尖った爪が全ての指に生えた。
ゆっくりと腰を沈め、両手を大地に付け四つん這いに構える。

「グルルル………」

獣は襲ってこない。
先ほど噛みついた時、その人間の体に深く突き刺さる筈の牙が殆ど通じない情景を見たからだ。
獣達は萎縮していた。
そして、浅くでも傷つけたはずの肌は既に綺麗になっている。
獣、人影を含む、全てが膠着していた。
膠着状態を破ったのは人影。
ダン!!
大地を強く蹴って、固まり萎縮している獣の群れへ突っ込む。
掌が獣に触れる度に体は四分割され無残に飛び散る。

「ギャウッ!!ギャァ!!」

断末魔が高原を包む。
ヒュッ、ヒュッ。
ツッ・・・と皮膚に赤い線が五本入り次第に体がズレル。
ゴトリ、と体は分解され獣は次々に解体されていく。

「グアァァァ!!!!!」

獣も雄叫びを上げながら人影に爪を突き立てる。
しかし、その攻撃は当たらない。
人影に飛びつくも、避けられ側部から攻撃。
四分割され死に絶える。
右手で一匹。
左手で一匹。
一回の攻撃で二匹殺し数をこなす。
口には、喰い千切った獣の足を銜えている。
先ほどまで40匹近く居た獣は残り数匹までになっていた。
最後の一匹。
その獣は固まっていた。
数秒後、確実に迫る逃れられぬ死を直面して。
高原は既に獣達で出来た血で赤く染められている。
影は四つん這いから、立ち上がりパシャッ、パシャッと人影が血の湖を歩きながら獣に近づく。
獣は動けない。
瞬きも忘れて、人影を見つめる。
獣達で出来た血の湖の中で後方に突き刺さってる鉄塊が叫ぶ。

《さっさと済ませろ》

ガリガリと銜えていた足を骨ごと飲み込み胃に入れる。
‘軽い食事'を終えた影は獣に歩み寄った。
ジリジリと獣は後退りする。
その微々たる後退を無視するように、人影は獣の首を掴み持ち上げる。
小型とは言え、80キロ余りある体を片手で持ち上げもう片方の腕で腹部を貫く。

「・・・・・・・・・・!!!!!!」

声にならない声を上げて獣は絶命した。


高原は、静寂を取り戻し場に残ったのは獣の屍骸と血の湖。
風だけが、草を撫で微かに音を奏でている。
鼻にツクような血の臭いが辺りを覆い風がそれを運ぶ。
パシャッ、パシャッ。
足を踏み出し、地に着地する度に血が跳ね音が響き一瞬の内に静寂の中に消える。
地面に突き刺さったままの鉄塊の元へ。

《お疲れ。コートが血だらけだな、戦い方が下手だ》

そう言われて自分の服を見ると、コートは血糊でベットリと汚れていた。

《大体、素手で戦うからそんなに汚れるんだ。時間が掛かっても私を使って
一体一体仕留めれば良かったものを・・・》

鉄塊の小言など無視しているかのように、影はゴシゴシとコートに付着した血糊を擦っていた。

《おい、聞いてるのか?》

影は黙っていた。
明らかに血糊を取る作業に集中していて聞いていない。
こうなっては、何を言っても無駄だと悟った鉄塊も黙ってしまう。
数分。
沈黙していた鉄塊が唐突に、

《アーク》

と、名前を呼んだ。
アークと呼ばれた人影は、声に反応した。
地面が微かに振動しているのが解る。

《忙しないな・・・》

アークは地面に突き刺さった鉄塊を抜き取り背負った。

《血のせいで足場が悪い、ココじゃ戦い難いだろう。もう数キロ先で迎え撃とう》

コクン、と頷き走る。

《この辺りで良いだろう》

10分程走って、頃合を見計らい停止する。

《今回のは結構な数だぞ・・・獣の増援の後方に機士達も着ている。このままだと、鉢合わせだな・・・。
面倒くさい限りだ、何時になったらこのイタチごっこも終わるのかね》
「・・・」
《最短ルートだからと言って、高原を突っ切る事は無かったな。最短だが、機族や獣族の集落と重なりすぎた。
面倒臭いから。と言って、全部突っ込んで行ったのも間違いだった。大体、集落を潰すのに》
「セロ」

アークが一方的な会話を中断させた。

《何だ?》

セロと呼ばれる鉄塊は会話を止め、答える。

「黙って」
《む・・・》
「来る。集中しないとこの間みたいに変な形になるよ」
《・・・》 

そう言われて、喋り続けていた鉄塊も黙った。
鉄塊を握る。
目を深く瞑り、集中。
体の前で垂直に構え唱える。











 「MOOD-EDGE」













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