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朝、目覚めると彼は、ヒーターにしがみ付くように寒さをしのぎ、
凍える細胞のその一つ一つを確かめながら、心を暖めていた。
”俺じゃなきゃダメって言えるの かい?”
彼女の欲望も満たせずに、惰性でレースを続ける俺には、
男として決定的なものが欠けているのかもしれない、とその時思った。
ポケットの携帯電話がバイブレーションを始め、
開いてみると彼女だった。
”また会いたい”という君は、俺をどう思っているんだ?
世界が再び俺たちから始まっても、君は楽しく生きてゆけるかい?
ガレージの中でライトを点けると、押し込められていた影が、
いっせいに光の放射となり、視界がクリアーになる。
”見た景色の数だけ、君に優しくしたい”
とは思うけれど…。
当たり前のことだが、俺にとって大事なのはいつも、
目に映る全てでしかない。
車のキーをねじこんで、走り出した先は、
まだ薄く明け始めたばかりの空の下、消えゆきそうな坂道だった。
目の前にフェラーリのRedが見える。
この道は、お前さんが思うほど簡単じゃないぜ。
降りるなら、今のうち。
この道で俺は、生きる意味を追い越したい。
The same pictures 10 2008/03/02 コメント(78)
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