
第二章 鷹野の富竹は祟りに合う
カナカナカナカナカナ...
ひぐらしがなく頃に私はようやく家に帰ってきた。
あの罰ゲームの後、妙にテンションの高い沙都子は圭一の所でご飯を食べると言って、
圭一について行ってしまった為、今日は私一人での食事と言うことになる。
と言っても、私には大抵の場合、羽生が付きまとっているため全くの一人と言うわけではないのだが...
「はぁ...今日は何にしようかしらね...」
「ぁぅぁぅ、今日は沙都子がいないので晩御飯はシュークリームのフルコースなんてどうですか?」
...因みに羽生は大の甘い物好きな上、私の口を通さないと自分では食事ができないというややこしくめんどくさい存在なのだ。
「...嫌よ。今日は激辛チゲ鍋にしようかしら。」
「あうあうあうあうあうあうあうあうあうあう!!!」
あ、あと、辛い物は大の苦手。
「嘘よ。うっとうしいから耳元であうあう言わないで頂戴。」
そんな話をしながら境内へ続く階段を上っていたら、上で誰かが話していた。
「...誰かしら?こんな時間に...」
空を見ればもうすでに暗くなり始めてた。
ここには集会場があるからその関係かとも思ったが、今日は集会があることは聞かされていない。
が階段を上がっているうちに、聞こえてくる声が鷹野と富竹であることに気付いた。
また祭具殿に忍び込もうとでもしているのだろうか?
「みぃみぃ、富竹と鷹野はここで何をしているのですか?」
「え!?あ、何だ梨花ちゃんか。いやちょっとね...」
富竹がなにやら話し辛そうに鷹野の方をちらちらと見ている。
すると鷹野が私の身長に合わせて腰をかがめ、
「くすくす...大人の会話に口をはさむものじゃなくてよ?子猫ちゃん。」
...子猫...百年もの時を生きるこの魔女に向かって子猫...
ふふふ...おもしろい...少し遊んであげようかしら...
そんなことを考えてると鷹野が何かの液体が入った注射器を落とした。
私はそれを拾って鷹野に渡そうとしたが富竹が私を見てくすくすと笑っているのに気付く。
「みぃ、富竹は何がおかしいのですか?」
「え?あ、いや、ごめんごめん。鷹野さんの子猫って言うのがあまりにも梨花ちゃんのイメージにぴったりだったもので...」
...なぜかわからないけど無性に腹が立つ。
ぷすっ。
気付くと、私は手に持っていた注射器を富竹に突き立てていた。
「ああああああああああああっ!!!???」
「あ...」
「あらあら...くすくす...」
「ぁぅぁぅぁぅぁぅ!!!」
こうして今年もオヤシロ様の祟りは起きたのであった。
続く・・・
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