hikaliの部屋

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April 10, 2006
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 最近、全世界的に原子力発電万歳な風潮が流行り始め、元グリンピース所属の教授まで原子力発電賛成に回ったらしい。これまでの原子力発電バッシングが嘘のようで、どちらかというと自然派なナショナル・ジオグラフィック誌にも、
「これまでに、原子力発電は極めて安全である事を証明した」
 的な言葉が慎重に書かれ、時代が変わったことを実感した。
 ジオグラフィック誌は、そのすぐ隣のページで、チェルノブイリ特集を敢行することを忘れない。それほど慎重な雑誌でさえ無視できなくなってきたのが、原子力発電へと向かう世界の潮流である。
 誤解のないようにわたしのスタンスを述べると、わたしは、小学生の頃から原子力発電賛成派であり、原子力発電が推進される方向に世界が向きつつあるのを、ようやっと世界が正気に戻ったと、ほっとしている感じである。

 原子力発電推進の背景は、言うまでもなく原油高と中東の不安定化である。
 また、元グリンピース教授らが口実としているのは、二酸化炭素の排出が、中国・インドの人口増により今後爆発することに対する危機感である。
 今、原油高を背景に、全世界的な石油争奪戦が始まっており、これまで年がら年中、石油争奪戦をしてきた世界と違うのは、BRIcsを代表とする大人口を抱える国々が、この戦争に加わり始めたことである。
 端的にインドの官僚の言葉が、この深刻さを表している。

 インドは人口8億。中国は12億。ブラジル約2億。インドネシア2億。
 これまで先進国10億とか言っていたのが、三倍になる計算だ。
 昔は国の利益がエネルギー争奪戦であった。しかし、今は生存競争になりつつある。
 誰もが石油や天然ガスを獲得に行って、他国が血眼になり、自分も血眼になっているのに気づいて、おっとこれはやばくないか、戦争になるんじゃないか、石油に頼るのはやばそうだ、うーん、どうしよう。と迷ったあげく、原子力万歳になりはじめているのだ。
 中国も、インドも原子力発電万歳。
 原子力も現行の効率の悪い発電方法のまま使うと、すぐに枯渇することが判明しているので、全世界中の賢人たちが諸手を上げて、再処理万歳、高速増殖炉万歳、になりつつある。
 これだと100倍ぐらい持つらしい。
 廃棄物も爆発的に減るらしい。
 むかし、もんじゅで事故が起こったとき、だめだむりだ、と散々に誰もが文句を言っていたのは記憶に新しいが、今は、いけるやった、これしかないになりつつあり、全世界的に研究が再開しそうになっている。

 しかし、こういった世界潮流を唖然と見ているのは、石油メジャーではなかろうか。
 日本人が石油企業と言ってもピンとこないのは仕方ないが、アメリカ・イギリス・ロシアとこの三国だけ挙げても、並み居る企業トップの売り上げと利益を上げているのは、石油会社なのである。

 そういった大エネルギー会社から見て、高速増殖炉だけはどうにも噛めない。
 なんと言っても、エネルギーリサイクルでエネルギー作ってしまおうというのが、この核再処理サイクルなので、
「エネルギーの消費量が増えても」「エネルギー原料は消費されない」
 のである。
 世界中のウラン会社を買っても儲からない。

 再処理で儲かるのは、核施設会社と電力会社なのだ。
 燃やせば、燃やすほど、
「タンカーいっぱい持ってこい!」
 ではなくなるのだ。
 どうするのだろう、たとえば、エクソン・モービル。
 四兆ぐらいある利益が、なくなるかもしれない。
 しかし、現在、この石油メジャーがどうなるかの話題は、一度も聞いたことがない。

 さらに複雑なのは、この核サイクルは基本的に、
「ウランを燃やせばプルトニウムが出来て、これがよく燃えるから、増殖する」
 という流れが中心という部分だ。
 プルトニウムは核兵器の原材料。
 この再処理工場=核兵器工場にもなる、という部分がアメリカをぴりぴりさせる。
 だったら、核サイクルNGかと言うと、こっちも大紛争になりそうでちょっと無理。
 ついこの間なんかは、インドが、
「もう、やばいっす。貧乏だから、石油買えません。8億人路頭に迷います。もう原子力発電しかありません。アメリカさん、助けて」
 と言われ、これまで核技術に不穏当な動きをしていたインドに、最新原発技術を奮発してしまった。もともと純国産原発技術でやってたインドもこれで一息、アメリカにしてみれば、
「だって、しかたねえだろ。八億総決起で、原発よこせ! って来たらどうすんだ!」
 と逆切れするしかない。
(この辺が分かっている人があまりに少なくてびびるのだが)
 中国は中国で、国民的才能である商魂を使って、
「中国、万博までに40基原発造るネ。お金儲けしたい人よっといで!」
(ちなみに、日本の原発の総数が55基、全電力の30%を補っているから、いかに大規模な計画か分かる)

 とやっておきながら、お得意の方法で、
「おっと、けど条件があるネ。中国人、原発技術ほしいネ。だから、それを教えてくれながら建ててくれる会社に仕事振るネ」
 といかにも商売人らしい方法で各国に中国原発40基仕事を競りにかけた。
 ちなみに、中国のやり方にはさんざん慣れた日本の東芝が落札したようで、やり方的には商売ルールに則ったやり方なので、米国も文句が言えず、
「まあ、軽水炉だしな」
 とつぶやいたかどうかは知らないが、沈黙を保っている。

 しかし、その一方で、アメリカはイランが原発作ると言ってだだをこねるのを、
「許しません。あんたたちテロでしょ!」
 と言って空爆も辞さない構えで、イラン人としては、
「おれたち、1億を路頭に迷わせる気か!」
 とは言わず、アメリカは敵だと騒いでいるから、もうちょっとインド・中国を見習って賢く振る舞ってはどうかと助言したくなる。ちなみに、日本の原発には数十人規模のIREAの査察団が「常に」常駐しており核拡散を「常に」監視しているらしいのだが、わたしはそれを聞いて、
「少しはぴりっとして、東海村みたいなみっともない事故は撲滅してほしい」
 と思ってしまうのだから、桁はずれて日本は平和なのだ。
 インドも、中国も、別に常駐ぐらいかまへんと思っているのだろう。
 その他の国も、かまへんで行けばいいのに、なぜか警戒する。
 石油利権の国際紛争から、核技術利権の紛争へ。
 そうそう、日本が太平洋戦争に飛び込んだのも、アメリカの石油封鎖が発端だった。
 エネルギーはいつも火種になる。
 それが痛いほど分かっている国々が原発万歳! IREAいらっしゃい! とやっているのを見ると、世界はひょっとしたらすこしは賢くなっているのかもと無邪気に思えてくる。
 中国も、インドも、かわいげがあるではないか。
 まあ、もっとも、一番現実的になって、一番のかわいげを振りまいているのは、日本なのかもしれないが。





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Last updated  April 10, 2006 09:55:12 PM
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