hikaliの部屋

hikaliの部屋

February 4, 2007
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類



 毎日40ページ近く、細かな文字がぎっしりと詰め込まれている。
 これは確か日経新聞の言であったか、その新聞1ページに原稿用紙16枚分ぐらいの文章量が流し込めるとのこと。
 おおよそこれは、わたしの書く長めのエントリー一本分になる。
 そんなの40本も毎日読まされちゃあ大変だな、というのがそれを知っての感想だが、冷静に振り返ってみれば、我々日本人は、ぶっとい文庫本ぐらいの情報量を、朝刊・夕刊、朝日・日経という感じで、大量摂取しているのである。
 これだけ活字漬けにされて、賢くならない訳がなさそうに思うのだが、読み方によって圧倒的な差が出るようなのだ。
 インテリ層と一般層の新聞による情報摂取の効能と紙面なんて問題は、新聞社が喜んで取り組みそうなので、わたしの考察は省くが、思いのほか新聞というのは情報に溢れている。

 今日(2月4日)の朝日新聞朝刊があったら、テレビ面を見てほしい。
 ここでわたしは頭を悩ませてしまった。

 そうなのか、これが世の中の流れなのか。
 ちょっと衝撃だったと言って良い。
 まじまじとそれを見つめ、その意図を読みとろうとあれこれと頭を動かす。
 あなたは、このテレビ欄になにを感じ取ることが出来るだろうか?
 さて、わたしの場合を説明することにしよう。

 わたしは元々、Webでの広告デザインちっくな仕事であったから、広告はよく見る。
 今日のテレビ欄の広告は、WOWOWのキャンペーンで、今なら980円で見放題というものであった。
 デザインは、黒バック・ゴールドという、ゴージャス感を出す典型的なレイアウト・配色・フォントで、その教科書とも言うべき安定的な効果が見込める作りになっている。
 ただ、一点。
 キャッチがゴールド系ではなく、レモン色である、という点を除いて。
(れ、レモン色? い、いいのか? 折角の重量感が、一気に軽くなるぞ?)

 脳味噌の中で、いろいろと色変換をしてみて、これはこれで狙った通りなのかもという考えに落ち着く。なにを狙ったかを正確に書くと、あまりにも長くなりすぎるので割愛するが、まあ簡単に言って「おも軽い」なのかな? という感じなのだ。これを実現するために尽くされている莫大な配慮の軌跡を丹念に追い、デザイナーの思考を読む。
 しばらく考えていると、左下の広告も気になる。
 「ムザビ通信で学ぶ」
 とキャッチがある。
 武蔵野美術短大の通信講座の広告で、一目でパンフレット屋が作っていることが分かるレイアウトである。

 なんかこのキャッチを聞くと、桜通信を想起させ、何ともどうでもいいが、パソコン通信のようでもあり、無駄にエロい感じがするのである。
 うーん、エロいなあ、このキャッチ考えた人・・・。
 うーん、エロいんだけど、微妙に上品さに隠れてエロさが見えないようになっているんだよねえ・・・。
 こういうのなんて言ったらいいんだろう?
 エロ上品?
 そうそう、この重さと軽さの微妙なマッチングが最近のノリなのかなぁ、とテレビ欄を見ながらわたしは考えていたのである。

 労働法制に関する論説委員の解説があり、これが結構読ませる。
 労働ビックバンがどうこうという内容の「補助線」というタイトルのコラムであり、一目読んで生臭いはらわたのような構成に、一瞬眉を潜めた。
 紙面が生きているようにうごめく瞬間は、もっとも新聞を読む甲斐がある瞬間だとわたしは思う。しかし、わたしには明らかなうごめきを見て取れるのに、それを読めない人もいる。
 迫真に怖いホラー小説はなかなかその真実の姿が隠されているもので、わたしがこの本は怖いよと言ってわたしても、え、なにが、怖かったの? ときょとんとした顔で返される事がしばしばある。
 労働法制は現時点でのネット言論界での華であり、大量の言葉が尽くされているので、かなり濃密に経営者側・労働者側の言い分や、そのお互いに調整をしようとする意見を読んでいる。
 最近、政府のブレーンのインタビューが出て、またかざむきが変わった。

 この記事は、その流れを的確にとらえた敏腕新聞記者が、そのすべてを受け止めた上で放った一撃で、経営者側にうんともすんとも言わせないほど強烈なアッパーカットで、わたしの推測が正しければ、ブラインドから放たれた右腕は的確に顎を捉え、宙を飛び、リングに倒れ、今ちょうどわたしはカウントを7まで聞いている。
 まあ、ぶっちゃけ、致命的な一撃なのである。
 それが、普通の人にはさっぱり分からないほど、落ち着いた論調で書かれている。
 わたしはそれを見ながら思うのだ。
 たとえどんなに立派な法制を作っても、強欲な経営者に、労働者は酷使されるのだと。ねじ曲げられ、つまみ食いをされ、法を潜り抜け、潜り抜けるどころか違法であり、それでそれが違法にならないように政治に圧力をかけるのだと。
 社会的な善は考えてないのだと。
 そう読めるように書いてあるのである。

 ネットの仕事をやるような人間であり、特に情報伝達系の仕事であったから、わたしはおそらく全人口の上位5%ぐらいに入りそうなほどのネット漬け人間である。
 しかし、ネットを歩けば歩くほど、新聞紙面の上質さに驚く。
 インターネットがあるから新聞はいらないという向きがあるが、わたしの場合は逆だ。
 ネットで論説を追えば追うほど、新聞が必要になってくる。
 そして、おそらく一年前には読みとれなかったであろう、生々しい世界の動きが、その小さな活字から浮き上がってくるのを感じるのである。
 そして、驚くべき事に、おそらく、新聞記者はそれを意図していない。
 論説委員ほどになればそれぐらいは知得していると思うのだが、普通の新聞記事に客観性以外の質は要求されていない。
 びびるのである。
 新聞紙面は、人が作っているのではないと。
 新聞社というシステムが作っていて、それが今も機能しているのだと。
 そして、新聞記者は記名記事でない限り、顔のない歯車なのだと。
 WOWOWの広告は意図した結果ではないと。
 全自動で紙面に載ると。

 オリコンの訴訟がらみで、元朝日新聞社の記者が書いた暴露記事を読んだ。
 まあ、ぶっちゃけ、保守的で硬直化した、救いようのない組織という書き方なのだが、わたしは最近、冷酷な思考になってきた。
 この紙面がアウトプットとして出てくるなら、どうでも良い、と。
 中の人がどんなに不幸でも、よいと。
 もちろん、法を犯してもらっては困るし、新聞社の記者の待遇がひどくてみんなワーキング・プアであるというのは困るのだが、現状のままで致命的な問題が発生しているという訳ではないし、待遇はたまに揶揄されるほど好待遇である。
 むしろ驚くのはこれほどまでに強烈なインターネットの揺さぶりがあっても、新聞社の質量による慣性力は強靱で、ネットがチェック機能を果たし始めるようになると、そのフィードバックを得て、さらに強固になりつつあるようにわたしは感じるのだ。
 米国の新聞社が次々と身売りをしているのを見ると、日本の販売制度がいかに新聞社に強固な地位を与え、ゴージャスな記事を書くことを可能にしているかをまざまざと見せつけられる気がしてしまう。
 全国紙にしか出来ない役割というのは確かにある。
 たとえば、世界には賢人が多いが、そういう人々言葉を伝えるのは、新聞の役割である。日本の全国紙が強烈なのは、それがたとえ、クリントン元大統領のような超大物でも、日常的に独占インタビュー出来てしまうこと。
 高級たれと言うわけではない。
 新聞料金は、使うべきところに使ってほしいと、一読者として思うだけだ。

 昔、高尾から品川まで通っていた頃、わたしはよく日経をキオスクで買った。
 片道2時間ぐらいかかるので、その時間を潰すために、片っ端から全部記事を読んだ。
 そうやって固定的な時間を、新聞を読むことにすると、案外、新聞リテラシーというのはついてくるのである。
 読み方は自由だけど、毎日1時間は新聞を読む時間に使う。
 わたしの場合は半ば強制であったが、これを習慣に取り込むと、次第に幅が広がってくる。
 たとえば、テレビ欄で1時間をつぶすのはかなりの想像力を必要とするだろう。
 そうするとスポーツ欄も見出すが、それでも日経などは2面分しかないので、さすがに15分は持っても、それ以上はもたない。
 となると、今度は1面。
 続いて、2面、3面。
 毎日読むとどこにどの記事があるかが分かるようになるし、続き物を読む楽しみも出てくる。
 そうやって読み始めると、結構新聞っておもしろいことを書いている事に気づくのだ。
 ただ、どんなものにも質のばらつきがあるように、とびきりにいい記事と、どうしようもなくだめな記事がある。それを嗅ぎ分ける力を付ければいいだけであって、だめな記事はだめだなとつぶやけばいいだけだし、良い記事は熱心に読めばよい。
 ただ、それだけなのだ。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  February 4, 2007 06:54:50 PM
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Calendar

Archives

November , 2025
October , 2025
September , 2025
August , 2025
July , 2025

Comments

まなかなまなかな@ Re: 三井アウトレットパーク入間へ行ってきた。(01/18) 蘊蓄野郎だな!うざい。
松本智津夫@ 松本智津夫さん 検索ランキング 1位 イシク湖  猛毒…

Keyword Search

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: