風の吹くまま 気の向くまま

風の吹くまま 気の向くまま

吉村達也

『白虎村の惨劇』

『朱雀村の惨劇』

『ドクターM殺人事件』

『「横濱の風」殺人事件』

 冒頭、自分も知っている長野市の徳間神社(諏訪神社)が出てきて、どう関わるのかと思ったらそれきりでしたが(いや多少は関わるけど)、きっとこれは出版社へのサービスかなとよけいなことを思った次第。

 この本はずいぶん前に買ったのだけれど、積ん読の仲間に入っていて、なかなか読めなかったのです。どうしてかというと、相手が「少年」だったからです。
 でも今日やっと読めて、ちょっと心のつかえが取れました。

 「ぼくの犯罪を暴けるものなら暴いてみろってんだ!」
 実の母を殺したと言う少年が、朝比奈耕作に挑戦状をたたきつける。そして朝比奈は、少年の心の闇を見つめるのだった・・・。

 心の闇って言い方ももうやだなあと思うけれど言葉が思い浮かばないので書くんですが、「怒り」とか「悲しみ」とか「軽蔑」とか、いろいろな感情がごっちゃになっている状態・・・。
 絵の具の色をみんな混ぜると黒になるといいますけど、いろいろな感情が混ざり合ってしまっている状態が「闇」なのかな、とふと今思いました。

 ネタばれになるので話については書きませんが、携帯電話のことで少年と朝比奈の会話をちょっと。

「ところで、学校ではどうなの。校則では携帯電話の使用は」
「学校もおやじと同じ理屈。親との緊急連絡などのために持っているのは認めるけれど、校内ではいっさい使っちゃいけないって」
「良和君は、その校則をどう思う?」
「無視に決まってんじゃん」
  中略
「本当はそういうことも禁止なんだよね」
「だけど、そんな規則なんて守んねえよ、誰も」
「それはどうして?」
「なんでふだんケータイを持たない人間に、ケータイの使い方を正しく指示できるわけ?」
「それは誰のこと」
「たとえばウチの中尾」
「担任の先生か」
「そうだよ」

 この後学校教育に携わる者への痛烈な批判が少年の口から飛び出してきて、なるほどそうだなあと納得したのですが、言いたいのはそれではなく、
 これと似たような言い方をニュースのコメンテーターがしていたのを思い出しました。

 薬物のことです。中学生が校内で売っていたという事件で。
 少年少女たちは、自分ははまることはない、大丈夫と思って薬物に手を出す。大人がいろいろ薬物のことを言うけれど、やっている自分は平気だ、大丈夫だと思いがちである。薬物についてよく知りもしない大人が何を言っている、と注意や指導を受け取らない。
 でも、薬物中毒の経験のある人が話すと、少年少女たちは本気で、自分のこととして受けとめ聞いている。

 経験に裏打ちされた話や指導ほど、真実味があり心に訴えかけるものはない、ということ。とくに多感な中学・高校生はそうだろうと思いました。

 でも経験してないからと言って、指導をしないわけにはいかず(だいたい犯罪に関わることは経験しない方がいいわけで)、日々理解のための努力を重ねていかないといけないわけです。

 なんだか感想がずっと脱線の方向ですが、
 今回朝比奈の婚約者の葉子も久々に登場していたし、氷室想介のこともちょっと言及されていて、お楽しみ要素もありました。
 少年については、まわりの大人の姿が醜悪に感じ、殺された母親についても、苦しみはわかったけど私は同情できなかったです。
 学校関係者の会話にすごく腹が立った~。(2004.2.19)


『青龍村の惨劇』 吉村達也

 重厚な作品が続いたあとに吉村達也というのは、妙にかる~く思えたりして・・・でもけっこう好きな方かも・・・。

 「新・惨劇の村」シリーズだそうです。5部作だそうです。しかも朝比奈耕作も最後だそうです。
 読まなきゃ?

 いきなり誰かのお葬式シーンですよ・・・しかも、重要人物らしい・・・あの人かも?と思わせるんですが、ほんとかしら?いったいどうなってるの?
 これ、5部作の最後までひっぱるのかな。

 いまさら「惨劇の村」のときのあの4行詩の新解釈を出さないでくださ~い。しかも、今回は解説する立場の人がいないから、唐突で、とってつけたようになっているし・・・。
 朝比奈耕作をめっちゃ痛めつけようとしているようですよ、作者は・・・。

 殺人事件の謎解きは、知らないうちに調べが進んでいて朝比奈耕作が全部説明してくれて、な~んだ、で終わります。
 人物の心理があまりしっかり伝わってこなかったな。作者がいろいろ誘導して心の中のドロドロへひっぱろうとしている気持ちはわかったけれど。

 う~ん、続きを読もうか迷っているけど、最後がどうなるか知りたいので、やはり読んでしまうんでしょうね(^^;)(2005.1.4)


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