風の吹くまま 気の向くまま

風の吹くまま 気の向くまま

海外作品

『闇に薔薇』ジェームズ・パターソン

『ブラック・ダリアの真実』スティーヴ・ホデル

『神の足跡』グレッグ・アイルズ

『赤い月と黒の山』ジョイ・チャント

『百番目の男』J・カーリイ

『クライム・マシン』ジャック・リッチー

『ダ・ヴィンチ・コード』 ダン・ブラウン

 クライマックスまでたった一日の出来事なのに、何日も経過しているような錯覚に陥るくらいめまぐるしく動いていく。登場人物のあやしさも二転三転。まさにジェットコースターのようなドラマでした。

 そして暗号また暗号、幾重にも意味が込められた暗号のすごさに感嘆しました。それだけでなく図像や象徴の蘊蓄もおもしろい。
 キリスト教のこういう話も、西洋の歴史の暗部って感じで、高校生のとき好きでよく読んでいたなあ。中世やルネサンス期の話とか。
 あの人物とあの人物の血筋の説明がさらっと流されていて、論証が全然なかったので、ちょっと待て~とは思いましたが、久々に知的好奇心が満足した本でした。


『魔術師』 ジェフリー・ディーヴァー

 『このミステリーがすごい!』2005年版第2位、「週刊文春ミステリーベスト10」第3位の作品です。

 夕べは紅白歌合戦をBGMに、この本をしっかり読んでいました。(マツケンサンバを見たかったのよ)
 リンカーン・ライムシリーズということですが、私は初めて読みましたが、まさに読み応えたっぷり。
 読後は、「あ~読んだ~」という達成感がありました。

 犯人はイリュージョニスト(魔術師)。変装、早変わり、不可能状態からの脱出、ミスディレクション等々あらゆる技に長けていて、ひたすらだまされてしまいます。
 特にミスディレクション(誤導)のやり方が大きくて、何が本当のねらいかわからなくなってきます。 
 この「誤導」を見極め、相手の手を読んで手を打っていくライムとの頭脳戦がとてもおもしろく読めました。

 犯人がつかまったところの展開は、すっきり爽快!でした。(2005.1.1)


『赤い霧』 ポール・アルテ ハヤカワミステリ

 『2005本格ミステリベスト10・第1位』だそうです。『このミス』は11位に入っていました。

 とても読みやすい翻訳でよかったですが、う~ん、何とも言いようのない、というのが感想になってしまうような、ふしぎな作品でした。
 正体不明の人物が現れるところから始まって、何だかずっと不安感がつきまとうというか、落ち着かない雰囲気というか。

 でもって第一の事件が解決したと思ったら、続いてあらぬ方向へと話が展開していき・・・あの有名な連続殺人鬼やら、もっと有名な探偵コンビやらがちらりと登場したりして。犯人の正体は意外でもなかったし・・・。

 自分の中では、性格的に合わない話かも・・・と思いました。
 と書いておいて何ですが、興味のある方はどうぞ。(2005.1.9)


『蛇の形』ミネット・ウォルターズ

 ある雨の晩、ミセス・ラニラは道ばたで隣人が死にかけているのに出会う。警察の結論は交通事故死。だが彼女には、隣人の死に際の表情が「なぜ私が殺されなければならないのか」と訴えていたように思えてならなかった。
 それから二十年後、ミセス・ラニラは殺人の証拠をつかむため、執念の捜査を開始する。

 ミセス・ラニラがなぜ二十年たっていてもこの事件を忘れず、真実をつきとめようとするのか、というのも、この話の重要な中身になっています。
 真相を究明していく中で、だんだん明らかになっていく、死んだ隣人を取り巻く状況、動物虐待、ドメスティック・バイオレンス、警官の差別意識、そしてミセス・ラニラの受けた傷・・・。

 異質と感じた人間に対して、周囲の人間が「よってたかって」といってもいいくらいの差別と偏見に満ちた言動をする・・・本当に悲惨な。
 「異人種に対する憎悪と障害者への蔑視」と表現されていましたが・・・

 こういう話を読んで感じるのは、自分の心の中にもそういう気持ちがどこかにあるのではないかということ。
 そして、ふだん取っている言動が、実際そうなのだと感じさせられること。

 この感覚は、東野圭吾さんの『悪意』を読んだときにもありました。

 題名の『蛇』は、人の心の中に潜む邪悪の化身として表現されたのかなと思いました。

 負の感情を露わにさせてくれる物語でありますが、会話の中から立ち現れてくる真相、やりこめるといっては何ですが、ラニラの追究の様子は圧巻。一種の爽快感を覚えました。
 そして二転三転する真犯人。読み応えたっぷりでした。

 ところどころに差し挟まれる手紙やEメール、記録なども効果的でした。
 アガサ・クリスティの『ポケットにライ麦を』の最後に手紙が出てきて泣かされたのを思い出しましたが、この話でも、最後に出てきた手紙に泣かされてしまいました。(2005.3.9)


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