風の吹くまま 気の向くまま

風の吹くまま 気の向くまま

香山リカ

『いまどきの「常識」』

『就職がこわい』

 就職や就職活動ができずに、フリーターや無業になってしまう若者、いったん就職してもすぐに離職してしまう若者たちの根底にある心理を考察している本です。

 就職できない若者たちの根底には、「どうせ私なんか」と根拠もなく自己評価を下げ、「私はその他大勢だから」と就職して社会に参加する人生に背を向けていながら、一方で「私にしかできないことがきっとあるはず」と、いつ来るともしれない“名指しでの辞令“を待ち続けている矛盾した心理がある。
 また、そういう彼らには、「これは私のところだけに来たのだ」と感じられるような、個別の働きかけや個別と思わせる働きかけしか意味がない。
 若者は何もかもやりたくないわけではなくて、「本当にやりたいこと」「自分にしかできないこと」なら大いにやる気はある。ただ、それを自分で見つけることもできないし、それよりも問題なのは、「本当にやりたいこと」など大部分の人は見つけることができないのだ。
 (抜粋)

 この本に書かれていたいくつかの言葉で、考えたことを書きます。

 「自分らしい仕事」とか言うけれど、自分らしさっていうのは、どんな仕事についていても発見・発揮できるんじゃないのかなあ。私は自分の仕事を「私らしい仕事」なんて思わずにやっているけれど・・・。(「やりたい仕事」とは言えますが。)

 「誰でもできる仕事だからやめる」・・・この世の中は、誰でもできる仕事だらけです。
 実際、私の仕事だって、私がいなくても代わりになる人は大勢います。産育休に入っても、ちゃんと代替の先生が来る。私がやめたら採用が一人増えて、その人はうれしい。(やめないけど)

 「自分にしかできない仕事」を誰かが持ってくるのを待つのではなくて、仕事をしていく中で、アナタが「自分にしかできない仕事」にしていくのがふつうでしょう。
 自分で形づくっていくんだよ。

 「エヴァンゲリオン」のことに著者は言及してましたが、ファンタジーが流行するわけだと思いました。(私も好きですが。)
 ふつうの主人公が、ある日突然異世界に行き、そこでは超人となって活躍する。またはある日突然、真の力とか超能力に目覚めるとか。
 そこまでいかなくても、何か「特別な存在」でありたいんだろうね。自己評価は低い(謙虚とはちがうらしい)けれど、本当の自分はこんなんじゃないと思いたい。

 それから親は、いつまでも子どもを手元に置かないようにしましょうよ。あとで戻って来るにしても、一度は家から追い出しましょうよ。
 子どもが親の収入を当てにできるうちはいいけれど、親の方はいつまでも元気で働いているわけではないし、病気になるかもしれないし、何より原則的には子どもよりも早く死にます。
 なんだかそんな原則も忘れていないかな?

 話は飛びますが、
 昨日のニュース番組で、最近業績を伸ばしている会社は、終身雇用制を堅持している会社が多いということを伝えていました。
 その代表格がトヨタ。
 同じ業界の日産が、ゴーンさんのもと、徹底的なリストラで伸びたのと対照的で、おもしろいなあと思いました。
 今後その対照的な会社がどうなっていくか、大変興味があります。(2004.5.13)


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