民主党の年金案



民主党は、年金改悪法案をそのままの形で強引に成立させることを目論んでい
た自民・公明に対して、年金一元化を含む社会保障制度全体の見直しに向けた
協議会設置などの修正をぎりぎりの折衝で認めさせ、この修正案が11日、衆
議院を通過しました。参議院の審議では、再度政府案の問題点を徹底的に追及
します。

また、民主党の菅直人代表は10日、年金未加入問題をめぐる混乱の責任をと
って辞意を表明し、党内では後任の選出について調整を進めています。ところ
が、法案が衆議院で可決されたのを見届けたかのように公明党が未納議員を発
表。あろうことか野党議員の未納を強く非難していた神崎代表、冬柴幹事長ら
幹部が軒並み未納であったことが分かりました。国民負担を拡大する与党案を
先頭で推進してきたものとして、責任を明確にすべきです。


公平・透明・安心の持続可能な年金制度へ

民主党政策調査会長 枝野幸男

<暮らしと雇用を揺るがす政府法案>

年金改革の政府案は「14年間続けて毎年1兆円ずつ年金保険料(=国民負担)を引
き上げる」という内容です。景気に全く配慮することなく、14年も続けて保険料を
引き上げることは、明らかに暴挙です。最も重要なのは、「年金保険料を上げる」こ
とは、「人を雇えば負担が増える」ことですので、雇用が不安定化しかねないことで
す。

自民党政権は5年ごとの年金制度見直しの度に「負担増・給付減」を繰り返してきま
した。そのため多くの国民が年金制度に不信感をもっており、現在では国民年金加入
者の4割が保険料を支払っていません。政府案は、さらに「負担増・給付減」を繰り
返すというものです。政府は、このほかに所得税、消費税の引き上げも予定していま
す。

民主党も総選挙で掲げた年金抜本改革をベースにした対案を国会に提出し、真っ向か
ら政府与党と論争を繰り広げています。

<一元化・2階建ての民主党案>

民主党案の骨格の第1は、年金制度を一つの制度にする「一元化」です。現在は職業
ごと、雇用形態ごとに年金制度が分かれているため、不公平感があり、また不透明で
す。一元化によって「全ての人が等しく負担し、等しく給付を受ける」制度とします。
当然、議員年金もこの制度に一元化します。

第2は、負担と給付の関係が明確な所得比例年金制度の創設です。全ての人が所得に
比例して保険料を納め、納めた保険料に応じて年金を受給します。将来自分がどれく
らいの年金を受給できるかが明確になり、年金に対する信頼が高まります。保険料率
は、雇用を守るために、現在の厚生年金保険料の水準を維持します。

第3は、「最低保障年金」の創設です。税を財源とすることによって、大半の高齢者
の最低限の生活を保障する一方で高額所得者に対する給付をカットして、全体として
の財政負担を抑制します。

<「年金目的消費税」で制度を支える>

第4は、「年金目的消費税」の創設です。年金制度の安定化は、全ての国民の利益で
すので、広く国民全体で支えると同時に、保険料の維持によって雇用を守ります。年
金目的消費税として「預かった消費税は、全て年金という形で国民にお返しする」こ
とを明確にしています。

そのほか、グリーンピアなどのハコモノ建設や官僚の宿舎建設など、年金保険料の無
駄遣いは、一切禁止することも盛り込んでいます。

今必要なのは、見せかけの給付水準を掲げる「数字の辻褄合わせ」ではなく、年金制
度を国民が信頼できる制度に抜本的に改めることです。民主党は、公平・透明・安心
の年金制度の創設に向けて、国民的な議論を行いたいと考えており、今回の民主案こ
そがその土台となり得る案だと自負しています。


公平・公正・透明で 安心・持続可能な年金を
──民主党年金抜本改革案のポイント

世代間の受給額格差で高まる年金への不公平感。正社員とパート、勤労者と自
営業者、民間と公務員など、バラバラの制度で強まる不公平感。働く女性と専
業主婦の間で相互に高まる不公平感。世代間、世代内で不公平が生じる年金制
度そのものに対する不信感。将来、本当に受け取れるのか? 日に日に高まる
不安感。納めた保険料の不適正使用に関する不透明感。

こうした、年金への不公平・不信・不安・不透明を払拭してこその抜本改革で
す。しかしながら、自民・公明案は、こうした根本的問題をまたしても先送り
したうえで、「とりあえず」保険料を値上げ、給付を削減するという、まさに
「やらず、ぼったくり」の「改悪」案です。民主党は、こんなゴマカシ・先送
りは許さない! と、問題を根本的に解決する抜本改革を提案し、国会で対決
します。

1.公平でわかりやすく すべての年金を同じ制度に一元化

国民年金、厚生年金、共済年金、それに議員などの互助年金。バラバラな制度
が不公平感の温床です。民主党は、これらをすべて一元化して、公平でわかり
やすく、転職などにも対応しやすい制度に改革します。

2.公平と安心を両立させる 2階建ての年金制度

<支払った分に比例して受け取る=所得比例年金>
すべての人が所得に比例して保険料を納め、納めた保険料に比例して年金受取
額が決まる公平な制度に。働き方などによる不公平感をなくします。その保険
料率は、現在の13.58%を維持します。

<最低限の生活の基礎を下支え=最低保障年金>
高齢者等の安定した生活を保障するため、これまでの基礎年金に代えて、全額
を税で負担する最低保障年金を設けます。財源は、年金目的消費税の創設など、
全額国庫でまかないます。高額所得者への支払いをカットして、財政負担を抑
えます。また、この全額税方式の最低保障年金制度によって年金の空洞化は解
消します。

3.消費税の使い道は明確に

<約束した年金をきちんとお支払いする財源として>
今まで保険料を払ってきた世代に自民党政権が約束してきた年金を支払ってい
くために、自民・公明案では、急速に保険料が値上げされます。約14兆円の
保険料負担増は、それを負担する現役世代に、余りメリットはないのです。し
かし、国民への約束を破れば政府、そして政治への信頼が失われ、その後のど
んな制度も成り立ちません。

そこで自民党政府の「負の遺産」を、保険料を納める現役世代だけに、しわ寄
せするのでなく、政府と霞ヶ関官僚の責任を厳しく追及することを前提に、3%
程度の年金目的消費税を創設し、これまで保険料を支払ってきた部分に対応す
る年金支給の不足分に充てます。これによって高度成長を実現してきた世代の
生活を、国民全体で支えることとします。

<高齢者の生活を守る最低保障年金の財源として>
今まで保険料を支払ってきた世代に対する年金給付が徐々に減少するにつれて、
今度は新制度による最低保障年金の財源が必要になります。年金目的消費税は、
これまでの「負の遺産」を解決しながら、段階的に、最低保障年金を支える財
源に振り替えます。

4.働く女性も専業主婦も どちらも納得の新方式

夫婦は独立した人格であると同時に、世帯単位で家計を支えているとの実態が
あります。その両面を生かすために、夫婦の収入を合算し、その1/2ずつを
各人の収入とみなす新方式(二分二乗方式)を採用します。これなら、働く女
性の不公平感も解消され、専業主婦も自分自身の年金がきちんと確立します。

5.世代間のアンバランスを圧縮 積立金は早期に縮減

少子高齢化による世代間のアンバランスは、団塊ジュニア世代が給付を受ける
ピークを越えた2050年ころまで。これ以降は、保険料を納める現役世代人
口と、年金を受け取る高齢者人口の比率が安定し、毎年の保険料収入でその年
の支払年金額をまかなう方式で、世代間の格差なく継続的な年金制度を維持で
きます。

不透明な運用で損失を出し、利権・天下りの温床になっているとも言われる年
金積立金は、2050年ころまでの世代間格差緩和のために取り崩し、最小限
のレベルまで縮小します。

民主党年金抜本改革推進法案
  全文
http://www.dpj.or.jp/seisaku/kan0312/kourou/BOX_KRO0008.html
  要綱
http://www.dpj.or.jp/seisaku/kan0312/kourou/BOX_KRO0007.html
  資料(PDF)
http://www.dpj.or.jp/seisaku/kan0312/kourou/BOX_KRO0006.html



民主党は8日、独自の年金抜本改革推進法案を衆議院に提出。同時に、1日の
衆院本会議の年金法案審議における小泉首相の答弁拒否の非を与党に認めさせ、
首相の再答弁および民主党法案の衆院本会議における単独審議をかちとりまし
た。いよいよ年金制度抜本改革に向けた本格審議が始まります。政府・与党案
と民主党案、どちらが将来にわたって安心で公平な制度をつくれるか、徹底議論していきます。





© Rakuten Group, Inc.
X

Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: