宇宙は本の箱

     宇宙は本の箱

泣き疲れて眠るまで



昔々、一度だけそんなふうに泣いた夜があった。
あの人は私がそんなふうに泣くとは思いもよらず、、、あの人だけじゃない、私がそんなふうに泣くなんてことを一体誰が信じただろう、私があの人の前で脆く崩れ落ちても、その体をあの人が支え抱きしめてくれても、私がそこに立ってはいられなかったのだとは思えず、あの人はそれを望んだ筈だのに、お前、ダメになれよといつもそう言ったのに、それなのに信じられなかったのだ。

あなたよりわしの方がいっぱい泣いた。
あなたよりわしの方が・・・
わしの方がいつも一生懸命好きやった。
わしがなんで一生忘れるわけないか、知りたいか?

知りたくない、知りたくない、知りたくない!


あの頃はグラスの向こうのやさしさに乾杯した。
そんな優しさは過去の美徳だと 私はそう言った。

私が目を見つめ続けると 人は思わず目を逸らせた。
だから私がほんの少しの時間 俯いてしまうことをあの人は知らなかった。
私はそこまで強くはなかった。





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