非常に適当な本と映画のページ

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2006.11.22
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カテゴリ: 邦画

 話題となったオールCG映画。これまでも「トイストーリー」などオールCGの映画はあったが、あくまでもリアルさを追究したのは本作品が初めてだろう。
 大ヒットしたゲームシリーズを下敷きにしているそうだが、ストーリーはオリジナルである。


粗筋

時は2065年。隕石と共に飛来してきた「ファントム」と呼ばれる地球外生命体により、人類は絶滅の危機に瀕していた。政府軍が総攻撃を提案する中、女性科学者アキがその方策に異議を唱え、立ち上がる。
「ファントム」とは何か。その目的は何か。それを解明することが、人類を救うことになるのではないか……。


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感想

説明できるのはここまで。ストーリーはかなり複雑で、説明するとなると設定の背景にまで踏み込まなければならない。文章で説明しろと言われても無理である。どんなストーリーか知りたければ、他人の説明を聞くより観に行った方が早い。
 本作は全米公開された。オープニングで日本円にして20億円以上稼ぎ、もしかすると今年最大のヒットの一つになるのでは……、と関係者らは期待したようだが、第一週では結局四位。その後順位を上げることなくランク外に落ちてしまった(最終的には米国で35億円。日本以外の海外では38億円)。
 制作に3年、総額150億円かかったそうだが、その半分も回収できない大失敗作となってしまった。ゲーム製作会社スクエアの映画進出、そして日本映画による全米制覇という野望はもろくも崩れ去った(「BROTHER」に続く失敗)。
 前評判がかなりひどかったので、下らない映画なんだろうなと思っていた。観に行くべきか迷ったが、SFという興味のあるジャンルだし、フルCG映画とはどんなものかという好奇心もあり、1200円で観られる会員カードが使えるので、結局観に行くことになった。
 感想は……。
 予想よりも酷くなかったな、である。前評判のお陰で全く期待せずに観られたからかも知れない。酷評もこういう面で利益をもたらす。
 無論、問題点がない訳ではない。地球上のあらゆる生物、そして地球そのものにも「精神」が宿っている、というのは宗教臭い。多神教のヒンズー教地域や信仰心の薄い地域ならともかく、キリスト教徒(単神教)の多いアメリカや欧州では受け入れられそうもない。アメリカや欧州で興行的に失敗した最大の理由と思われる。
 また、日本では本作品のように主人公が「武力に頼ることなく対立を終わらせる方法を探し求める」という考えを持つのは珍しくない。国民全員が平和ボケしているから。
 しかし、アメリカでは、大抵の主人公はの考えは「武力に頼るのは良くない。頼りたくない。だから耐える。だが、相手が一線を超えてしまったらこちらも武力を使う。しかも徹底的に」である。アメリカ人の鑑賞者は主人公のアキより、悪役にされていたヘイン将軍に共感したのではないか。彼は軌道上レーザー砲によって「ファントム」を根絶することを主張していたのだ。
 簡単に言えば、アメリカ人にとって主人公のアキは消極的で地味と映る。
 これでは観ている方が盛り上がらない。
 また、八つの「精神体」を探すことが問題の解決に繋がる、というプロットは、ゲームならともかく、映画では首を傾げてしまう。
 登場人物は、上でも述べたが、主人公のアキより他の方が個性があるように思えた。過去の映画から借りてきたものばかりだから、当然か。特にジェーンという女性兵士。女性なのに男性と間違われるところ、そして仲間の兵士と一緒に死ぬところは、「エイリアン2」のバスケズじゃないか。
 CGによる映像はかなりの出来だったが、やはり実写でないんだな、と分かってしまう。動きも多少ギクシャクしている感がある。ただ、無重力の宇宙ステーションで浮遊しながら宙を動き回るシーンなどの場合、動作はこれまで観た実写より説得力があった。
 ようするに使い分けが重要だということだろう。
 本作品は、大ヒットゲームシリーズ「ファイナルファンタジー」を手がけた坂口博信の初監督作品。本人にとって、映画は「プレーヤーが自由に操作できないビジュアルエフェクト」だったのかも知れない。甘く見過ぎたようだ。
 ゲームでは、プレーヤーが「ファイナルファンタジー」の世界がどのようなものか知識がある為、一々説明する必要は無い。残念ながら、映画の鑑賞者全てが「ファイナルファンタジー」のゲームプレーヤとは限らない。
 2時間の間で全てが鑑賞者の納得がいくまで説明できる訳ないので、作品内の「世界」を単純明快にする必要がある。
 坂口監督はそのことを理解できなかったようだ。というか、ゲームがあれだけ売れたのだから、俺が創造した「世界」を知らない者はいない、と考えてしまったらしい。
 日本はどうか知らないが、アメリカではゲームなんて子供がやるもので、大人がやるものではない、と見なされている。また、映画鑑賞を趣味とする年齢層になると、ゲームには見向きもしない。
 ゲーム界で圧倒的な知名度を持つからといって、一般社会でも高い知名度を持っているとは限らないのだ。
 坂口博信は素晴らしい映像を作り出す技術を持っている。ただ、映画のストーリーは駄目。映画脚本はその手の専門家に任せた方が無難だ。
 ま、今回を教訓に二度と映画に手を出さないだろうが……。
 パンフレットを買おうとしたが、900円もした。500円のパンフレットもどちらかというと高く感じるのに、倍近くの900円は高過ぎる。買う気も失せた。
 なぜ邦画のパンフレットは馬鹿高いのか。前回観た赤影もそうだった。最近は入場料が安くなっているので、こういったもので回収しようというのか。馬鹿な方策である。よほど面白い映画ならともかく、そこそこのだと売れないだろうが。
「未来」を舞台にした大ヒット超大作「AI」と「猿の惑星」や、「現実とは異なる別の世界」を舞台にした「千と千尋の神隠し」が期待外れだった、という事情からか、米国で評判の良くなかった本作品は逆に面白く感じた。が、他人に勧められる作品かと問われると悩んでしまう。
 声優らはかなり立派である。


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Last updated  2006.11.22 14:24:03
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