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2015.04.03
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カテゴリ: 邦画

かぐや姫の物語
映画「 かぐや姫の物語
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 水彩画や墨絵をアニメにした様な、独特のタッチが特徴。


粗筋

平安時代。
 山里に竹を取って暮らす老夫婦がいた。
 ある日、老人は光り輝くタケノコを発見。中には赤子がいた。老人は、赤子を家に持ち帰り、妻と共に育てる。赤子は半年で少女へと成長。近所の子供達と、自然の中で遊びながら、天真爛漫に育った。
 その後老夫婦と共に都へ移り住み、かぐや姫と名付けられ、「高貴の姫君」としての教育を受ける。
 美しく育ったかぐや姫の下に、5人の求婚者が現れる。
 結婚を望まないかぐや姫は、求婚者それぞれに対し珍しい宝物を持って来てほしい、と要求。宝物を持って来た者と結婚する、と。
 求婚者らは数年かけてかぐや姫が欲しいと願った宝物を探して、持参するが、偽物ばかりで、誰一人宝物を持って来る事に成功しなかった。また、求婚者の一人が、宝物を得ようとする際に事故で死亡。
 これを知ったかぐや姫は、自分を責める。
 かぐや姫の事は帝の耳にも入る。帝は彼女に言い寄ろうとするが、彼女は彼すら拒んだ。
 かぐや姫は、育ての老夫婦に、自分は月から下ろされた者で、近々迎えが月からやって来る、と伝える。
 老夫婦は兵を雇って阻止を試みるが、月からやって来た天人らには全く通じず、かぐや姫は月へと連れ帰される。


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感想

 日本人の誰でも知っている竹取物語。
 原作にはあるもののあまり一般的に知られていないエピソード、そしてオリジナルのエピソードやキャラを加えて、長々と映画化。
 細かい部分には新たな解釈があるものの、全体な流れや結末に関しては新たな展開はない。

 かぐや姫が望みもしない男共との求婚を迫られ、死を望むが、いざ死期が近付くとやっぱり生きていたいと考えを改め、抵抗する。が、一旦死ぬ事を決めてしまった以上、覆す事は許されず、そのままあの世へと旅発つ……。
 月からやって来た天人が、菩薩の姿をしていて、かぐや姫は「月へ帰った」というより「あの世へと旅発った」、つまり単純に「死んだ」というのは、これまであまり意識していなかった、新しい解釈と言える。これは、本作の功績と言えなくもない。

 一方、現在の価値観を、平安時代に当てはめ、優劣を決めようとする見せ方は疑問に思う。

 本作では、田舎での生活はのんびりしており、平和である一方、都会の暮らしは窮屈で、欲に塗れている、として描かれている。
 現在と平安時代では、法律も技術も価値観も風習も違っていた訳だから、田舎で暮らすのが幸せで、都会での暮らしはひたすら不幸だ、と強調されても違和感が。
 電気も機械もない平安時代にもなると、田舎での暮らしはのんびりとしたものとは到底思えない。大自然を人力のみで相手にせねばならず、苦労の連続でしかなかっただろう。
 平安時代の都会での暮らしは、現代人の視点からすれば規律に塗れて窮屈に映るが、当時の者にとってはそれが普通の生活なのである。そうした規律がなければ、秩序を保てなかっただろう。

 現代人だって、「都会暮らししているあなたは不幸だから、田舎に越して幸せになりなさい」と突然持ちかけても、拒否するのが大半と思われる。
 もし田舎暮らしが本当に幸せなら、何もこんなアニメに言われなくても、大挙して都会から田舎に流れている筈。
 田舎も、ただただのんびりと生活出来る訳ではなく、不便や苦労が多い、という事実を知っているからこそ、都会に留まっているのである。

 かぐや姫が男に言い寄られ、相手との相性を確かめられぬまま結婚相手を決めなければならないのは可哀想だ、という描き方も、現代の視点でしかない。
 ネットは勿論、写真技術ですらない当時では、直に顔を合わせる事無く結婚を決めるのは当たり前で、悲観する出来事ではなかったと思われる。寧ろ、手紙のやり取りだけで相手の本性を見抜く能力(現在の者から超能力みたいなもの)を、当時の者が備えていたとしても、不思議ではない。
 当時の者からすれば、一々顔を合わせたり、画像や映像を観たりしないと相手の本性を見抜けない現代人こそどこまで鈍感で、感性や想像力に乏しいんだ、という事になるだろう。

 本作は、海外の映画祭に出展されたが、賞を獲得するまでには至らなかったようである。
 海外の者が、現在の日本人ですら正確に把握していない平安時代の人々の暮らしや、習慣や、思考を、理解出来るとは到底思えない。
 独特のタッチの絵も、ディズニーの3Dアニメーションが世界を席巻している現状では、手抜きというか、未完成のラッシュを観ている気分だっただろう。

 何度か観ている内に、その奥深さが分かる作品。
 ただ、そう思えるようになるまで何度も観たいか、というと疑問に思う。


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Last updated  2015.06.21 07:54:12
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