いなかの猫の天邪鬼部屋

第31話

OnAir~シーズン3・第31話~


#9月末、カン局長事務室

(ギョンミン、机の前に立っている。)

カン局長 : 御苦労様。短編ブームを起こすに値する反響だ。(見る) .... また書いてみるつもりはないか?

ギョンミン : 褒め言葉ですか?

カン局長 : そうだ。

ギョンミン : ありがとうございます。

カン局長 : こいつ...つまらない奴だな....

ギョンミン : ......

カン局長 : もしかして....

ギョンミン : ...はい。

カン局長 : ユン作家がどこにいるのか知っているか?

ギョンミン : ...いいえ。

カン局長 : そうか.....分かるわけがないか...。文が入って来るのを見れば、どこかにはいるのだろうだが...

ギョンミン : ユン作家がどうしたんですか?いなくなったんですか?

カン局長 : (見る) そんなところだ。知らないならいい。

ギョンミン : ...はい。ではもう行ってもいいですか?

カン局長 : (手を振る) 行け。


#PD室

(ギョンミン、入って来て席に座り、考える。ジウン、入って来る。)

ギョンミン : (ジウンを見て) ちょっと俺と出よう。

ジウン : (見る)...ああ。


#廊下の端の窓辺

(コーヒーを取って持って来るギョンミン。ジウンに渡す。)

ギョンミン : 準備はうまく行っているか?

ジウン : ああ.....ただ...

ギョンミン : ..?

ジウン : 作家が顔を見せないんだ....

ギョンミン : 顔を見ないとならないか?

ジウン : と言うより.... 何か起こったら議論もしないとならないのに....原稿だけメールで送って...

ギョンミン : そうなのか?

ジウン : どういう事なのか分からないけど、いらいらして不安だ。ちゃんと放送に乗せられるのか?(ため息).....

ギョンミン : 初ミニシリーズだから.... 大変だろう?

ジウン : 俺の幸運はここまでかな....

ギョンミン : (見る).......

(ギョンミンの電話が鳴る。番号を確認する。)

ギョンミン : 失礼。(何歩か離れる) はい、イ・ギョンミンです。

ジウン : 話してろ。もう行くから。(手を振って離れて行く)

(ギョンミン、頷く)

サンウ : プブ-。 諜報映画でも撮られているんですか?えらく注意深いですね。

ギョンミン : (笑う目) 何にしてもスリル満点ですよ。この満足感で罪を犯すんですか?何かを隠すというのはとても刺激的ですけど。

サンウ : (苦笑) 色々な人を巻き込んでいるんですね、俺が...。罪を犯すのが刺激的だなんて....

ギョンミン : (笑う) 責任を取って下さい。

サンウ : 出来ないのは分かるでしょう?俺は釈子なんですから。

ギョンミン : うっかりしました。電話では見えなくて...

サンウ : (虚しい笑い) こんな状況でも冗談を交わせるのだから、まったく..

ギョンミン : .....仕事は?ちゃんとなさっているんですか?

サンウ : 今のところは特に問題ないです。あの部屋への出入りを気を付けていれば。

ギョンミン : 代わりにキム室長がよくいらっしゃっているようですが...

サンウ : はい.....。ところで、仕事の後、時間ありますか?

ギョンミン : はい...


#居酒屋、奥まった席

(ギョンミンとサンウ、対座している)

ギョンミン : .....だけど、ここまで何もないのを見れば...恐れ過ぎなんじゃないですか?

サンウ : (にんまりと笑う) そういう事ならいいですね...。セアが、当分は取り締まりをしている状態だろうと言うから...

ギョンミン : どうするんですか?

サンウ : 部屋が知られたら怖いから、隠しておくんです。

ギョンミン : はい?? (呆れた笑い) ユン作家は見掛けより強い女性なんでしょう?

サンウ : (笑う) そうでしょう?実は....俺の手に負えないほどです。

ギョンミン : ちゃんと付き合っているんですよね?チン代表を見るといつも....

サンウ : (見る).....

ギョンミン : 容赦して下さいよ。不安だったんです。いつ倒れるか分からない人みたいで....。でも、今はユン作家のおかげで安心していられます。

サンウ : (薄い微笑み) まだ俺は不安です....。いつ消えるか分からない平和だと...

ギョンミン : だけど、あなたがが終わらせるというものではないでしょう?

サンウ : .....ええ、そうはしないつもりです。出来れば守ってやりたいです。.....御存知ですか?

ギョンミン : 何ですか?

サンウ : 俺が...親がなく育った事

ギョンミン : .....知っています。いつかお話の中に出ました...

サンウ : 親がいないという悲しみがどれほど大きいのか分からないと思います。世の中の全ての偏見と対立して争わなければならないというのが...物心ついた時からずっと自分を悲観していたんです。毒を持って生きなければならないと考えるしかなかったんです。

ギョンミン : ........

サンウ : 不当な目にも随分遭いました。それを俺は全て弁護する事は出来ないけど...とにかく世の中の全てが敵でした。頼る人がいないという事は人を荒廃化させます...

ギョンミン : ........

サンウ : ところで...笑えるのは...ユン・セアもそうだったんです。良い環境で、良い親の下で育ったユン・セアも、徹底的に一人だったんです。.... いや、そうではなく...一人だったと言うより...そうですね...夢を奪われた...夢を探すために一人で争わなければならない....

ギョンミン : .....良い環境というのは果してどうなんでしょうか?

サンウ : (苦笑) 余っているのでも足りなくもない事?

ギョンミン : そうでしょう?だけど人は常にあと少しが欲しいんですよね.....。満足という事があるのか....

サンウ : 今はただこんなふうに暮す事さえ出来ればいいと思います。それ以上は過ぎた欲心だと思います....

ギョンミン : ....だけどこのままではダメです。保証が何もないから。

サンウ : (苦笑) そうですね..。だけどあまりにも巨大な壁だから、意気消沈する時もあります。これから差し迫って来る事も .....

ギョンミン : 一つだけ聞かせて下さい。

サンウ : (見る)はい。

ギョンミン : どこまで覚悟したんですか?全てを諦める用意が出来ていますか?

サンウ : (考える) そうですね...全てを諦める....?

ギョンミン : (見る)........ ただ、一度聞いてみただけです。

サンウ : (そっと笑う) こんな話は....ちょっと.....

ギョンミン : ?.....

サンウ : 今の俺にとって全てというのはユン・セアのようです。(笑う) セアを除いた残りは非常につまらなく見えます。

ギョンミン : (驚いた顔で見る) ......(苦笑)チン代表の口からそんな言葉が出るとは想像も出来ませんでしたね....

サンウ : 俺もですよ...(笑う)


#ギョンミンとヨンウンの寝室

(ギョンミン、ジャケットを脱ぐ。ヨンウン、受ける。ギョンミン、ベッドに座る。)

ギョンミン : フー.....

ヨンウン : たくさん飲んだの?

ギョンミン : 少し...

ヨンウン : チン代表はどう?

ギョンミン : (微笑む).....

ヨンウン : (察する) あなた表情を見ると、悪くはないみたいね。

ギョンミン : ....二人が本当に上手行けばいい.....上手く行かなかったらとても辛いと思うから..

ヨンウン : 誰が?二人?それともあなたが?

ギョンミン : (苦笑) あの二人は言うまでもないし...俺も...

ヨンウン : (見る)..........何だったの?

ギョンミン : (そっと笑う) チン代表が.... ユン・セアを自分の全てだと言うんだ。ユン・セアを除いた他のものは全てつまらなく見えるんだと...

ヨンウン : (思いがけない。微笑滲む) 本当?チン代表がそんな事を言ったの?

ギョンミン : ああ。(見る).....こんななのに、上手く行かないなんて事は....(ため息)

ヨンウン : ...上手く行くわよ。上手く行かなくちゃ.....上手く行く、きっと....


#仕事部屋

(セア、玄関を開く。サンウ、微笑みを湛えた顔で立っている。)

サンウ : ちょっとだけ会って行こうと...

セア : (微笑む) どうしてちょっとだけ.....? 長く会ってもいいのに...?

サンウ : (暖かい目で見る) あまり長く会うと煮詰まるから....

セア : (眉間をしかめて笑う) 私、適応出来ないわ。あなたみたいな人とは違うもの....

サンウ : (笑う) 俺みたいなって、どんなだ?

セア : 反対に言う事。短く言う事。感性で言う事.....(穏かな目で見る)

サンウ : (じいんと熱くなった目で見る) .....俺は...そうだな.... ユン・セアに...俺の全てである女に....そんなふうに誠意がないんだ....

セア : (ジーンとする) .......どうしたの?変わり過ぎると不安よ。

サンウ : ......今まで辛い思いをさせてすまない。.....これからは辛くさせない...

セア : (胸が詰ったような) ...........

サンウ : (近付いて暖かく抱く) 絶対に放って置かない.... 俺が守ってやる....

セア : (涙が流れる) ...今日だけそんな事言って、あとは何も言わないんでしょ?こんなふうに、一度に出しちゃって...勿体無いでしょ...少しずつ取り出して少しずつ感動させてくれなくちゃ... これは何よ.....

(サンウ、平和な表情でセアを抱いている。セア、幸福感に目を閉じる.....)






(原作出処: sonkhj1116さんのブログ



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