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いなかの猫の天邪鬼部屋
3個の話、彼らの成長
3個の話、彼らの成長
<ナムジャイヤギ>を分かつ3個の脈絡、彼らはどうやって変わったのか
ドラマ'ナムジャイヤギ'は明らかに20部作ミニシリーズドラマだが、注意深く見ると、ストーリー展開上3段階に話が展開される事を知る事が出来る。この3段階の構成は、キム・シンとチェ・ドウの闘いの進行段階でもある。
まず'1段階'の初盤である1~3話では、チェ・ドウの陰謀によって家庭が崩れる姿、キム・シンの兄であるキム・ウクの死、生放送ニュース進行中に弓矢を持って乱入し、殺人未遂罪で監獄に入って行く事になったキム・シンの話を主に扱っている。同様に、それによって平凡な女性でキム・シンの恋人だったソ・ギョンアがシンの代わりに彼の私債を返すために直接'テンプロ'の道に飛び込む過程を見せてくれ、登場人物達を説明する。
4~7話では、出所したキム・シンを中心に周辺状況、そしてあまりにも変わってしまったギョンアの姿、チェドン建設をかすめ取ろうとするチェ・ドウの計略を話し、チェドン建設会長に対する復讐を決心するシン、彼と一緒に復讐という一艘の船に乗った4人の男、そして本格的にチェ会長に対する詐欺劇を試みる彼らを早い呼吸で見せてくれている。
結局彼らは、チェ会長に向けた詐欺劇には成功したが、根本的な復讐の対象がチェ会長でなく彼の息子であるチェ・ドウだという真実に遭い、完全な復讐を済ませられない。
続いて'2段階'の格である9話から、彼らは復讐の根本的な対象だったチェ・ドウを倒す事に集力するようになる。だが、いずれにしろチェ会長もあっさり誑かし、彼らなりに余勢を駆っていた彼らは10話でチェ・ドウという巨大な相手に敗北してしまう。表面的には株式戦争で敗北したが、結局彼らはチェ・ドウに代弁される巨大な何か、まさに金に敗北したのだ。
株式戦争に敗れたシンは、兄嫁が暮らしているミョンド市に下りて行き、強制撤去による苦しみを受ける村内の住民達の姿に憤怒する。偶然にも撤去村はチェ・ドウの社有地で、ドウの理想である'ネオモナコシティ'を建設する空間だ。これによってキム・シンとチェ・ドウの'第2ラウンド'が始まる。
'3段階'は、単にキム・シンとチェ・ドウだけの闘いではない。この闘いは、キム・シンに代弁される大多数の'庶民、一般人民、落ちこぼれ(少なくともチェ・ドウにとっては)'、そしてその大多数を除外したチェ・ドウに代弁される'500万名'の闘いだ。結局彼らはミョンド市を守り抜くため、人々を守り抜くために闘いを始める。
だが、そうして、どうなったのか?
結末はない。誰一人勝った人はおらず、負けた人もいない。従って、闘いは現在進行形だ。
どうであれ、続く闘いの中で主人公達の席は変わり、彼らはひょいと大きくなってしまった。
熱い心臓を持つ男キム・シン
キム・シンは、世の中に何の関心もなく過ごして来た無職の男だ。だが、彼は巨大権力とぶつかり、憤怒と挫折を経て、これに耐え抜き一歩一歩進んで行く。
勿論、これは多くの紆余曲折の末に成された成果だ。はっきりした目標も、未来に対する考えもない無職だった彼は、兄の死によって復讐を決心するようになり、監獄で天才株式分析家アン・ギョンテと出会い、監獄の外でドリームチームのメンバーに会う事になる。'ドリームチーム'のアン・ギョンテとド・ジェミョンがそれぞれの能力を発揮し、チェ会長あるいはチェ・ドウを倒す一助になる時、キム・シンは空々しい詐欺を打つキャラクターであるだけで、自分の役割あるいは'個人技'をはっきり鳴り響かせる事が出来ない。
そんなシンは、ドラマが進行されるに従い、徐々に成長して行く。一度の失敗あるいは失策の末に、復讐の対象は明確になるが、シンは相変わらずその対象であるチェ・ドウの相手になる事が出来ない。シンは、彼がチェ・ドウに勝つ事は不可能に近いという'事実'を認めたくない。それでシンは、続けてチェ・ドウあるいは見えない誰かと闘う。
彼は撤去民達の現実を見て憤怒し、彼らを理解するようになり、その中心に居たヤン市長の死を経て、チェ・ドウから農業ベンチャーとミョンド市を守るための闘争を始める。チェ・ドウに対する恨みによって始めた彼の復讐は、自分と同じ数多くの弱者と出会うようになり、社会の矛盾に対する復讐に発展する。そして、その弱者達を通して彼は更に一歩成長する。
卵一個で岩を割ろうとすれば笑われるが、無数に多くの卵を集めて投げてみれば、話は違って来る。キム・シンという一人の人、一個の卵では相手にすらならない敵を、100万個あるいはそれより多くの卵達を集めて屈服させる事が出来るという話だ。シンは明らかに、それ自体だけ見れば、とても優れていて賢くもないし、持つものも一人の個人でしかない。
だが、キム・シンという一人の男を通して作家が見せたかったのは、おそらく誰でも社会を変えて行く事が出来る卵一個一個だというメッセージではなかっただろうか。
キム・シンは明らかに成長したが、全体的なストーリーの中でシンのキャラクターは一貫出来ていなかったようだ。シンが闘う対象がチェ・ドウから世界、あるいは金に変化した事は、シンの発展とも関係があるが、彼は闘いを始めた根本的な原因であるチェ・ドウに勝つ事は出来なかった。むしろ結末で自分を敵と認めたチェ・ドウに微笑を浮かべて見せる姿だから…二人の男の闘いは終わらなかった。それではキム・シンは今まで誰のためにこんなふうに全身が壊され、心臓が壊され、人を失いながら闘ったのだろうか?
シンについてはあまりにも惜しい点が多いが、この点についてはチェ・ドウのキャラクターについて分析しながら少しでも言及してみよう。
血も涙もない絶対悪チェ・ドウ
次に分析してみるキャラクターはチェ・ドウだ。
事実'ナムジャイヤギ'でチェ・ドウほど一貫されたキャラクターを探すのは難しい。ドウのキャラクターは最初から最後まで'絶対悪'だ。悪の濃度に差異があるだけで、チェ・ドウという男は変化しない。IQ180の血も涙もない天才。自分の感情にだけ忠実で、他人の感情や苦しみなどは気にしない冷血漢を通り越したサイコパスがまさにチェ・ドウだ。
そうしながらも、ある部分においては子供のように純粋で幼稚に映るほどだ。結局ドウは彼の夢である'ネオモナコ'に対する優雅な想像で今まで生きて来る事が出来たと言っても過言ではない。
自分によってとても多くの人が死んで行き、従来ドウが唯一大事にしていた妹ウンスまでシンに代わって犠牲になるが、ドウは変わらない。ただ変わったように見えるだけだ。
悪者あるいはサイコパスの特徴の中の一つは、自分の罪や間違いを他人になすりつける責任転嫁型人間が多い事だ。
ドウもやはりそんな傾向を見せる。ウンスが、ケイが撃った銃にシンの代わりに撃たれて生命が危機に瀕すると、目に殺気を抱えたドウは、予想外にも自分に悪を集めた父のところに行って恨みを並べ立てる。
事実、チェ会長もドウほどではないが若干程度のサイコパスだと見る蓋然性が十分だ。18話でのキム・シンとチェ会長の対話場面を見ると、チェ会長はチェドン建設を再び手に入れたら実の息子であるドウがどうなっても関係ないと言う。また、ウンスの意思とは関係なく、まるで何か物のようにウンスをやるとシンを誘惑したりもする。
その時シンが壁に掛かっていた鏡を取り外してチェ会長の前に立つ。
"ここに居るだろう。確実に狂ってしまったあなたの息子。見えないか?
よく見えるだろう。高い鏡だから。"
※鏡を持ち出して割るシン。そしてその壊れた鏡に粉々に映る狂ってしまったチェ会長の姿。
ともすればこの言葉こそチェ会長の本当の姿なのではないか。
金と権力に縛られて生きて行く人々は死んでも理解出来ないと拒絶するようなシンの台詞。そして、絶対に変わらないチェ会長、チェ・ドウ、そして悪。彼の父であるチェ会長が変わらなかったようにチェ・ドウもやはり同様だ。特有の天才性を利用し、患者を装い椅子の上に立っているドウ。変わる事は何もない。
だが、彼にも少しの成果はある。自分自身と妹であるウンスを除いた、世界にある全ての存在を、虫、ゴミ、そしてただの道具とだけ思っていたチェ・ドウは、キム・シンに会ってから、世界が自分が考えたようにおいそれといかない事を悟る。
ドウが他人の痛みに気を遣いたい考えもなく、それが何かを知る事も出来ないサイコパスなら、自分自身より'私の人'が傷付く事がもっと辛い人であるキム・シンは、チェ・ドウという巨大な岩を割るために100万個の卵を集めに出る。
二人の男の相反する行動は、この社会全体を代弁すると同時に2009年現在の私達の社会の自画像そのものだと言える。
チェドンの大株主になった女王ソ・ギョンア
ソ・ギョンアは劇初盤、'金持ちの家の奥様'を夢見ながらもキム・シンを純粋に愛する二重的な姿を見せてくれた。財閥二世などに嫁いで良い暮らしをする事が即ち彼女の夢であり理想だった。
だが、恋人であるキム・シンはチェ・ドウのために完全に崩れ、彼女はそれを知らないまま、代わりに彼の私債を返すため'テンプロ'の道に飛び込む。王国を建設したいという男と女王になりたい女、ギョンアとドウは結局愛とは特に関係なく見える結婚をする。
だが、結婚後、チェ・ドウが実は精神病院で長く出席印を押したサイコパスで、キム・シンの前恋人である自分を道具として利用しようと結婚を選択したという事実に遭う。嗚咽して自分の間違った選択を振り返って後悔するが、もう手遅れだった。
普通、常識的にそんな場合には、ドウに対する復讐を選択するのが一般的なキャラクターだが、ギョンアはそうではない。むしろギョンアは前のようにドウの計画に加担するかと思えば、チェ会長とも連結し、二重に脱出口を作っておく。
結局このドラマの中で、本当に自分の夢を成し遂げたのは、もしかするとギョンアだけかもしれない。ドウが'ネオモナコ'の王妃を話した時、'女王でなければ嫌だ'と答えた彼女は、本当に女王になったのだろうか。金持ち同士の闘いで風飛霧散したチェドン建設は結局ギョンアの物になり、彼女はこの会社の代表理事になり、泥沼に落ちたチェドンを救い上げるのに努める。
'再びギョーザを食べたら人間じゃない'という前恋人キム・シンが、結局そんなふうに忌まわしく思っていたギョーザ工場社長になるかと思えば、天才的な頭を持っていて頭脳戦によって若くしてチェドン建設という企業の会長になった現夫チェ・ドウが、不可能な夢と欲に執着して妹まで失い、精神病者として扱われて監獄の代わりに精神病院に収監された時、ソ・ギョンアは毅然としてチェドンを経営する女王になる事にする。
ゲームに見立てると、本当にギョンテの言葉のように'臆病'から抜け出た真の'レベルアップ'を成し遂げたのだ。
だが、ギョンアの結末は少し気まずい。なぜ突然ギョンアは良妻賢母から、2歳の子供になってしまった(少なくともそのように見える)夫を子供のように扱いチェドン建設まで経営し抜くスーパーウーマンになったのだろうか?
勿論、チェ・ドウがどんな人間か知り、愛していたとしてもギョンアは本質的に'女王'だ。そのため、チェ・ドウとチェ会長の間で綱渡りをしてチェドンを占有したら、それで終わらなければならない。
チェ・ドウを本当に狂った人のように扱い、冷情に対しても良いところだった。
二人の悪魔に犠牲にされた天使チェ・ウンス
チェ・ドウの妹。チェ会長の娘。世の無情を知らないお嬢さん。父と兄のために傷付いた人達を助ける事が趣味であり特技である20代のお嬢さん。
これがキム・シンに出会う前までのチェ・ウンスという人だ。だが、キム・シンに出会ってウンスは違う世界を知るようになる。
勿論、ウンスは兄であるドウと違い、絶対的な'善'を象徴する人物だ。それだからか、初盤では大体どんな考えをしているのか分からないキャラクターでもあった。ドリームチームを手伝いながらも兄と闘いたい考えはなく、自分を必要とする人なら誰でもいつでも助ける事が出来るという考えを持ったウンスという女は本当に分からないキャラクターだった。
だが、絶対悪であるドウと絶対善であるウンスが一緒に居てようやく完璧な人間になる事が出来るという前提があったため、ウンスが存在する一次的な理由が生じたと見る事が出来る。
また、シンとの出会いを通して過去の二分法的な考え(父や兄のために犠牲になった人とそうでない人)から抜け出て、もう少し広い視野を持つようになったという事だけでもチェ・ウンスという人間は成長し発展した。勿論、視聴者達を少し混乱させたシンとのあまりにも突然のラブラインは最初から叶わない愛だったが、もう少し早く登場していれば良かったと思う。
作家が終映後、ドウは資本主義の象徴、ウンスは民主主義の象徴だと説明した。自然にシンは私達そのものだと言う。ようやくドラマの行間が読めた瞬間だ。ウンスがどうして死んだのか、彼女の死は結局民主主義の死だ。
ウンスの形体は死んだが精神は残った。それは選挙で、また別の方法で、表現される。
引きこもりから抜け出たアン・ギョンテ
伝説的な証券界の神話でありデータ分析家。ある事件を連想させもしていた特異なキャラクター。明らかに社会性は欠如しているが、そちらの業界では天才に近い分析家だ。
最初に新聞記事数枚とデータ数個でドウの'ダーティーな'作戦を見付け出し、キム・シンに知らせて復讐の対象を見付けるようにし、シンのドリームチームに加担し作戦にも参加したギョンテは、劇が徐々に社会参加的ドラマに流れて行き、少し存在感を失う。依然としてシンの作戦を手伝い、彼がする事なら何でも一緒にするが、彼のニックネームである'マジンガーハンター'としての面貌をもっと見せてくれても良かったようだ。
ヘッドセットを着けないと人と対話出来なかったギョンテは、これまでにない多くの人々との関係を通して対話する方法を覚え、遂にヘッドセットがなくても人と交流出来るようになる。それ自体がギョンテの発展と言えば発展だ。
次に、恐れるよりは立ち向かって闘うというギョンテの言葉を通して'強くなったアン・ギョンテ'の面貌を確認する事が出来る。
"最初は怖かったけれど、二番目は大丈夫でした。三番目は笑えました。ウハハハ。
捕まる事も何回かあって、レベルアップしています。私はもう臆病ではありません。"
父の束縛から抜け出たド・ジェミョン
13歳の時、アメリカに送られた後、生涯父と離れて暮らすと思っていたが、意外にも彼の父の死のため韓国に来る事になったジェミョン。
生涯チェ会長の陰として生きていた父を殺した者に対する復讐という一念でキム・シンと意気投合した彼は、何か多くの人達を後ろに置いて莫大な任務を遂行するシンと違い、復讐の対象が一貫している。最後まで父を殺したケイそのものを殺そうとし、彼に執着する姿を見せる。
勿論、話が徐々に社会参加劇として進み、ド・ジェミョンの存在価値は少し曖昧になる。明らかに彼は実に国際弁護士というきちんとした職業を持ち、優れた女性誘惑技術(?)を個人技にする'能力者'であるにもかかわらず、どこででも横になって寝て'辛ラーメン'に執着する若干滑稽なギャグ担当キャラクターに変質してしまった。
そうではあるが、彼は復讐の対象が確実で、その復讐のため努力する過程の中で、幼い頃自分を異国万里に捨てたが世界にもういない父と和解するようになる。
根本的に'こうするしかなかった'感情を理解し、父と真の関係を回復する事が出来たという点で、彼は十分に成長したと見る事が出来る。
"シンに伝えてくれ。上手くやれと。
そしてこの国。私が帰って来たくしてみろと。"
ジェミョンが戻って来たくなる国を作る事がシンの仕事であり、シンが存在する理由だ。
そして、その国の中で依然として人々は生きて行く。チェ・ドウも、ソ・ギョンアも、チェ・ウンスも、アン・ギョンテも、ド・ジェミョンも。そして、他の人々も日々良く生きて行く。
世界ではキム・ウクのように、この世界を耐えられずに去ってしまう人もいるし、チェ・ドウのように依然として所々に隠れているサイコパスもいるし、キム・シンのように岩に卵を投げて岩がいつ割れるか最後までぶつけてみる人もいる。
依然として、そんなふうに、私達は生きて行く。2009年の大韓民国で。
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