それゆけ!派遣社員! ~研究所編~

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花束





お昼休みに、坂本さんにバラのことを話した。


「バラの花束~っっっ?」

坂本さんは、周りがビックリするぐらい大きな声を出した。


私は慌てて、「し~っ。」っと言いながら

人差し指を、自分の唇に当てた。


「ごめん…。 でもやっぱり勘違いじゃなかったのね。

 それも花束とは…。 やることがスゴイわね…。

 しかも、赤いバラの中に白が1本って、なんだか気味悪い…。」


坂本さんは鳥肌がたったのか、自分の腕を交差して

両腕をさすった。


「一応、山中さんと彼のリーダーが

 吉沢さんに話してくれるそうなんですけど…。」


「そう…。 でも、難しいわよね…。

 彼を刺激しないように、注意しなくちゃいけないし…。

 それに注意するだけで、彼が止めるとは思えないし…。」

坂本さんは、とても不安な表情だった。


「一応、私に彼がいるっていうことに

 してあるんですけど…。」

彼女の発言に、私もだんだん不安になってきた。


「そう…。 上手くいくといいわね…。」

「はい…。」


とても暗い雰囲気の中、1時を知らせるチャイムが鳴った。


「私も、何か対策を考えてあげるから…。

 あまり気を落とさないでね…。」

部屋を出るとき、坂本さんは優しくそう言ってくれた。


「ありがとうございます。」

私は彼女にお礼を言った。


午後からの仕事は、なるべく彼のことを考えないよう

仕事に集中した。


終業時間になり、私は山中さんのところへ行った。

「あの…彼のことはどうなりましたか?」


山中さんは、いつもの笑顔で

「彼には、ちゃんと話しておいたから。

 彼もわかった…と言っていたから安心して。」

と、言った。


「ありがとうございました…。」

私は頭を下げた。


(本当にわかってくれたのだろうか…。)

私は、言葉とは裏腹に頭を下げながら嫌な予感がしていた。


坂本さんが言った言葉…

「注意するだけで、止めるとは思えないし…。」

という言葉が、引っかかっていたのだ。


私は、また何か届いていたら…と心配しながら帰宅した。

そして、その予感は的中していた。


今日も花束が入った箱が送られてきていたのだ。


母もさすがに、「これ、昨日と同じ人よね…。」

と、不安な目で私を見た。


私は、「うん。 でも明日は大丈夫だと思う。」

と、言った。


この花は、山中さんたちに注意される前に

注文したのかもしれないと、ほんの少し思ったからだ。


「これは、自分の部屋に飾るね。」

私はわざと明るく言い、花束を持って自分の部屋に入った。


本当は捨てたかった。

でも、花に罪はない。


私は小さい頃から、蚊さえ殺せない。

命ある花を捨てたくはなかった…。


仕方なく、花束が入った箱を開けてみた。


昨日とは違い、いろいろな花を使ってピンク系にまとめた

花束が入っていた。


そして、花の中に入っているメッセージカードが目に入った。


私は恐る恐るカードを開いた。


「愛さんへ

 バラが嫌いだったなんて、ごめんね。

 今日のは気に入ってもらえたかな?

              吉沢健人」


私は、寒気と同時に「あほちゃう」とつぶやいていた。


以前、関西に住んでいたせいか、時々独り言が

関西弁になる。


「嫌いなのはバラやないっちゅーねん!!

 何にも伝わってないやんっっ!!」


私は次第に、怒りがこみ上げてきた。




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