*壱原 侑子 の tea time*

*壱原 侑子 の tea time*

*黒猫のお話*


その猫は、ただの黒猫ではなかった。
なぜなら、この猫の瞳は、玉虫色をしていて、ビー玉のようにまるかったからだ。
その玉虫色の瞳は、「神様の使い」と言うことを表していた。
神様の使いなので、この猫はいろんな時代、いろんな場所を旅している。
例えば、エジプトでツタンカーメンが生きている時代や、二件隣の家に住んでいるのは、ロボットというようなハイテクな時代にも行った事があった。
そういうわけで、いつの時代でも、「神様の使い」ということでその猫は崇拝されていた猫は、いつの間にか「温室で育ったラン」のようにぬくぬくと生きていた。
そんな、成り上がりすぎた猫を戒めるためか、神様はこの猫を「黒い世界」というところへ送った。
そこでは、誰もが自分勝手で、たばこは道端の排水溝を詰まらせ、車道の真ん中に車を駐車し、歩道を歩けば足の裏にガムがくっつき、家は、ほとんどがツタに覆われ、すすけていて、学校も役所もない荒れた所だった。それを強調するかのように空はいつもどんよりとした灰色だった。
この世界の人々は、「神様の使い」が来ても、ただの猫と同じように扱った。
その扱いとは、「邪魔者扱い」だった。
猫は、空腹だったので、食べ物をねだろうとして「ニャァ ニヤァ」と泣いてみた。
しかし、そばにいたクマのように大きいおばさんに蹴飛ばされてしまった。
たまに、ポイ捨てをされるたばこの火を、足で踏んでしまい、3ヶ所ぐらい火傷をしてしまった。
猫はその時自分が、どれだけ人を頼っていたかを実感した。
いつもは、自分を人間が頼っていると思っていたのに・・・。
猫は、少し高い丘に登ってこう叫んだ。
「ごめんなさい。今までの生活をこれで見直して、人々のためにつくしますから・・・。」
すると、今までドンヨリとしていた、灰色の雲からオーロラのような光が降り注ぎ猫は一瞬にして、別の世界へ移動していた。
その国は、人々や町、空も明るく猫にはまぶしいぐらいだった。
そこで、猫は人々のために働き、尽くし、奉仕をしたので、人々からよりいっそう、崇められたということだった。
それから猫がどうなったのかは、誰も知らない。


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