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読書2015.5~7
紛争解決人 世界の果てでテロリストと闘う
の
感想
稲盛さんが、中東問題は貧困問題だと言われ、ダボス会議は成金の会議と評していたようなおぼろげ記憶がある。まさに、米欧による収奪と米欧自国内での権勢の為に使われた"正義"の打算がよくわかった。
読了日:7月30日 著者:
森功
殺人者はいかに誕生したか―「十大凶悪事件」を獄中対話で読み解く
の
感想
暴力的生育環境により抑止の効かぬ凶悪性が醸成蓄積され、放置されたままであると、最悪の結果となる事が説明されていた。裁判は量刑を決めるところで、原因究明、再発防止を発信しないところであるそうだ。量刑も弁護士と検事の競い合いの勝敗として決まり、勝敗に固執する価値観に支配されたのが司法の現実らしい。瀬木比呂志の言を思い出した。
読了日:7月26日 著者:
長谷川博一
トランクの中の日本―米従軍カメラマンの非公式記録
の
感想
1995年発刊で20年たつ。70年前の国家の惨劇と日本人の苦難がひしひしと伝わる写真の数々。米軍の記録をとる軍曹が私的にとった写真だそうだ。秘蔵45年間の月日をかけて米国で公開を決心したものだそうだ。戦争がもたらすものの本質を正しく理解しようとし続けねばいけないという気になる、厳粛な写真の数々。
読了日:7月25日 著者:
ジョーオダネル
蒼海に消ゆ 祖国アメリカへ特攻した海軍少尉「松藤大治」の生涯 (角川文庫)
の
感想
数奇な運命に果敢と挑み、全うした有為の青年の実話で、凛々しく、賢く、優しく、向学心に富む文武の青年像を知った時、太平洋戦争を指揮し、扇動した者に対してのやりばのない憤りが再びこみ上げる。珠玉の人材をも使い捨て、多くの兵士や民を餓死させた参謀達の罪の深さははかりしれない。8月に読むべき本のひとつと思う。
読了日:7月24日 著者:
門田隆将
耳鼻削ぎの日本史 (歴史新書y)
の
感想
古代から近世までの刑罰から見た社会史で日本人の歴史の素顔をみるようで大変興味深かった。死刑に準ずる罰の用意、女人と僧侶は男と違う別処断、論功証跡の代用証跡としての重宝、懲罰付加で濫用、封建制安定で禁止へと続く利用目的の変遷に、日本の歴史の実相を見るようでした。残酷さの必然性に図らずも得心させられた次第。
読了日:7月22日 著者:
清水克行
村上海賊の娘 下巻
の
感想
とても面白い船戦の物語でした。泉州の気質の源流をみるようでした。躍動あふれる活写の連続で著者の人気のほどがよくわかりました。
読了日:7月20日 著者:
和田竜
ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?
の
感想
限界集落と農業の振興を知恵と交渉と実践と説得で成功させた記録で、とても嬉しい物語でした。地方消滅、寺院消滅と突きつけられている未来ばかりでもないなという気になってきます。木村秋則さんが共鳴・協力すること、農地も人も活力を取り戻していくことが、自然の成り行きに感じられます。公務員でもあり僧侶でもある著者の人格にも感服します。とても気持ちのよい格闘記でした。
読了日:7月17日 著者:
高野誠鮮
村上海賊の娘 上巻
の
感想
豪胆な人物の痛快な物語は期待通り。史実の説明もほどよく楽しめる。劇画をみるようですかさず下巻に。
読了日:7月17日 著者:
和田竜
国境のない生き方: 私をつくった本と旅 (小学館新書)
の
感想
教育と本の大切さを自身の体験から訴えています。著者ののびやかな、冒険的、すこやかな人生観は、とても気持ちの良いものです。子の解決能力を体験的に鍛えた母堂の教育の仕方への著者の感謝と称賛があふれています。育てるのでなく、力を試す機会を設けて自ら育つ教育を心がけることを説いています。披露される率直な考え方と行動は気持ちの良いものでした。すこぶる健全です。
読了日:7月13日 著者:
ヤマザキマリ
「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)
の
感想
ユーロ圏の政治的理念が経済的な不均衡の前に難渋している様子がとてもよくわかった。東欧のソビエト時代に教育された質の高い労働力を低賃金で活用し、自国内の賃金も抑制して、ユーロ域内の貿易黒字を稼ぎだす、「ドイツ帝国」。規律重視、権威主義、家父長的社会システムが、自由と平等と個人主義の南欧諸国を支配し、仏をも隷属させているそうだ。金融資本主義の核戦争にかわる脅威がヨーロッパ格差社会を覆いはじめたと。エーゲ海の怒りも一理あるらしい。
読了日:7月12日 著者:
エマニュエル・トッド
寺院消滅
の
感想
高齢化、少子化、地方消滅の中で、地域にねざした寺院も人口動態の影響をもろに受け、更に、檀家、家、先祖との関係の希薄化でより一層衰退していくと言います。人口動態以上の要素もなぜあるのかよくわかりました。幕府の戸籍行政協力、国教化、高利貸しで地主化、廃仏毀釈、世俗化、戦争協力、農地改革で丸裸、副業兼業、経世済民模索ととてもよくわかりました。良書です。
読了日:7月11日 著者:
鵜飼秀徳
日本国最後の帰還兵 深谷義治とその家族
の
感想
大地の子、ワイルド・スワン同様の衝撃でした。専横、迫害、差別、虐待のすさまじさ、それを耐え抜いた気骨、忍耐、家族愛、同胞愛に圧倒され、いくどもこみ上げてきます。本書は、忘れられている歴史をとどめると同時に、資本主義国日本での苦悩と勤勉と親孝行の証でもあるようです。みごとな読みごたえがありました。
読了日:7月8日 著者:
深谷敏雄
鉄道技術の日本史 - SLから、電車、超電導リニアまで (中公新書 2312)
の
感想
鉄道先進国になるまでの歴史がよくわかった。営々と学び、造り、営繕してきた鉄道は、総合産業で技術文化でもあるようだ。西洋に遅れること40年の日本が、今や、世界有数の鉄道網、製造企業群、鉄道事業者を抱えるまでなれたことは日本の有力資産だ。新日鉄住金の車輪や車軸の競争力、日立製作所の培ってきた総合システムとしての鉄道構築力、イギリスでの事業化受注ともに力強い。140年前にイギリスに教えを請い、学び、イギリスで製造・運営するまでになった歴史は目を見張るものだ。これからも楽しみだ。
読了日:7月6日 著者:
小島英俊
文庫 悲劇の発動機「誉」 (草思社文庫)
の
感想
堀越二郎の零式艦上戦闘機のエンジンに三菱ではなく中島飛行機の栄エンジンが終戦まで使われ、数多くの悲劇を運んだ歴史があるが、後継機の高性能エンジン誉が若い学卒技術者に託され、開発、試作の後、繊細すぎて実用に耐えず、品質劣化のまま、実戦配備され、故障多発、保守繁忙で国力・生産力浪費の悲劇が繰り広げられていたとは・・技術・生産を戦略的に判断できる将官が皆無に近かったとは・・現代の技術人には心配はないのだろうか。
読了日:7月3日 著者:
前間孝則
資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)
の
感想
16世紀の低金利時代の及ぼした社会革命と、現代の低金利時代のアナロジーで、面白かった。もはや外に蒐集できる周辺はなく、自国内で格差つけて蒐集して利益だすしかないのが、現代の資本主義だと。処方は、今の状態を維持して定常社会、更新社会にして、脱成長という成長をしてれば、次の社会システムがみつかるだろうと。言いっ放しでした。
読了日:6月29日 著者:
水野和夫
コンテンツの秘密―ぼくがジブリで考えたこと (NHK出版新書 458)
の
感想
ネットで参加型コンテンツ披露空間を実用化した著者が、コンテンツ製作の最先端の創造行為を情報処理の視点で解説してくれる。興味深い。摩訶不思議なジブリの世界のつくられ方が、脳での情報処理の動きとして解説してみせるが、そうは言っても、結局、蓄積された主観、取捨された記憶と、長年磨いてきた表現技能が組み合わさってもたらされる創造行為で、コンテンツは限られた人の技の賜物と改めて感じた次第。
読了日:6月28日 著者:
川上量生
世界の未来は日本次第
の
感想
本書でも実態例の説得力に感服です。重工業の日本の力は日本のメディアではわかりませんが、著者の長年の観察に驚くばかりです。韓国、中国の実相も生産現場で起きている事例で端的に推察ができ、そうなった価値観、国民性を正しく理解できた気がします。二国の破滅的未来予測は必然のようです。英国の国際力、金融力の源泉もよくわかりました。日本を安売りせず、知恵とシステムを高く売るのが懸案で、できない話ではないようです。日本は否応なく特異な分野で先端を走り続けなければ生き残れない宿命のようです。
読了日:6月28日 著者:
長谷川慶太郎,渡邉哲也
日本インターネット書紀 この国のインターネットは、解体寸前のビルに間借りした小さな会社からはじまった
の
感想
ISPの立ち上げの志士伝に心が揺さぶられるようでした。苦難の末の開業、邁進、飛躍、資金調達、頓挫、転換、再起とつづくめまぐるしい技術の商用化の業績に圧倒されました。支えたのは信念と技術探求熱と公徳心と愛国心と体力と知力と同志であったようです。遅滞行政と学閥との格闘の歴史もあったとは。あの勝栄二郎が社長になった背景がなんとなくわかりました。
読了日:6月25日 著者:
鈴木幸一
ふしぎなイギリス (講談社現代新書)
の
感想
「ふしぎな国道」と似た題名で、英国価値観の不思議さがよくわかりましたが、実は、united kingdom of ...は、現実的で民主的で伝統的で妥協的で、尚且つ、変革的で寛容でもあって、ふしぎな優雅な洗練された階級社会、王室と国民と議会の議論と対立と親愛の三角関係、不道徳と許しの再生社会、歴史と民族の尊厳を守る社会と、なんとも奥深い。成長あり、原発新設あり、大量移民あり、暴動あり、国家分裂投票決着となんともすごい。
読了日:6月23日 著者:
笠原敏彦
日本木造遺産 千年の建築を旅する
の
感想
日本の引き継がれてきた木造建築の素晴らしさに驚きました。信仰、防衛、統治、庶民生活、貴族生活、茶道等の用途で作られてきた木造建築物が多様な表情をもっていてとても面白い。著者曰く、遺跡ではなく、たゆまぬメンテで過去の実物を現代に見せ、今後も生き続けさせることができるいわば現代建築で、未来の建築でもあるそうです。近代建築では味わえない精神性が迫ってくるものばかり。是非、実物を見たいと思う。
読了日:6月20日 著者:
藤森照信
世界を動かす技術思考 要素からシステムへ (ブルーバックス)
の
感想
プロダクト単体に固執してプロセスのスコープを吟味せず、的はずれの性能に自己満足して社会経済から遊離して漂い始めた技術者と学者と技官が多かったのか?日本の弱点は技術の実戦投入の実証吟味、兵站、運用の科学的立案が劣っていることは知っていた筈ではなかったのだろうか?と思ってしまう。
読了日:6月18日 著者:
木村英紀
はじめての福島学
の
感想
浅はかな風潮、上滑り善意、はた迷惑への啓蒙書でした。大手新聞社等マスコミ、タレント学者をうさん臭く感じる一般人に理解しやすいデータと整理した情報を提供してくれる本。正しい理解がやっとできた気になる。但し、これを読んでもわかったような気になったり、思考停止したりせんでねと著者に言われてるような好書でした。
読了日:6月16日 著者:
開沼博
田園発 港行き自転車 (下)
の
感想
瑞々しい舞台と再生の人生模様がとても気持ちのよいものでした。苦難や過ちを経ても心を込めて守りきる清々しい生き方が歌い上げられていました。風土と精神の健やかさが保たれている救われる物語でした。
読了日:6月13日 著者:
宮本輝
人生をいじくり回してはいけない (ちくま文庫)
の
感想
達観した幸福観、地道な経済観、のんびりした勤労観、努力した自負、努力に見返りを求めすぎない生活観と、いろいろ振り返えさせられます。妖怪と土人を愛する人が、ゲーテを愛読した青年であったとは。
読了日:6月13日 著者:
水木しげる
田園発 港行き自転車 (上)
の
感想
富山の入善、滑川、京都の宮川町、東京が舞台で、それぞれの生活のなかで黒部下流の田園の風土、気質に回帰している穏やかな心情が描かれている。清丸惠一郎の北陸資本主義で書かれている気質と風土がよくわかる物語。下巻でのそれぞれの過去から未来への人生の踏み出し展開に期待。
読了日:6月8日 著者:
宮本輝
さっさと不況を終わらせろ (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
の
感想
チャールズ・ファーガソンのPredator Nationも2012年刊で、悪事の告発書でしたが、本書は、悪事による危機発生の解明と不況脱出処方箋でした。犯人は、金融規制の箍をはずした民主・共和の歴代政治家、不良債権を優良と偽り乱売した銀行・証券、偽AAA乱発した格付け会社と同じ結論。本書の建設的不況克服具体策の論述はとてもわかり易く、読み易い。日本は、忠実に実行してて結果を見守られてるのがよくわかりました。御用学者、評論家を一刀両断でした。
読了日:6月5日 著者:
ポール・クルーグマン
日本海海戦 悲劇への航海 (下)―バルチック艦隊の最期
の
感想
坂の上の雲でもロジェストヴェンスキーの苦悩を知りましたが、ロシア人の書いた本書で情状がよくわかりました。皇帝への忠誠、官僚や貴族の堕落への嫌悪、だらしない将官への怒り、軍人としての気骨等々の複雑な苦悩がもうひとつの悲劇であると作者はいいたいのでしょう。捕虜の尊厳を守る対応、東郷の見舞い、シベリアでの革命気運の熱烈歓迎、家族愛、司令官として自分に課した責任の取り方、みごとなロシア軍人の物語でした。救いようのない堕落した時代に格闘した軍人像は、坂の上の雲を見上げる軍人の後の時代にやってくる境遇かも知れません。
読了日:6月2日 著者:
コンスタンティン・プレシャコフ
日本海海戦 悲劇への航海 (上)―バルチック艦隊の最期
の
感想
110年前の海戦の記録。ロシア人による海外資料に基づくとのことわりあり。バルチック艦隊自体の内部崩壊状況が帝、貴族将官、官吏の愚作、保身、権勢欲、汚職によってもたらされたことが描かれ、戦う前から敗戦を覚悟していた司令官の苦悩が描かれています。苦悩しながらも英雄的息抜きはしていたそうでお盛んです。上巻は、帝国を崩壊させた貴族政治と実戦歴のない軍事官僚の姿がよくわかります。日本は世界と丁々発止の国際政治ができていたように思えます。
読了日:5月31日 著者:
コンスタンティン・プレシャコフ
北陸資本主義
の
感想
内発的な発展をせざるをえなかった北陸地方、「裏日本」の歴史的、文化的事情に納得。収奪され、忍耐する歴史が、教育と努力と創意と紐帯に励む気質になり、明治以来の傾斜配分の最後尾でも北陸新幹線を得て、「裏日本」差別からの飛躍に期待が膨らむそうです。郷土への親愛に溢れる気持ちの良い本。著者は、北陸三県の幸福度が1位から3位を占めるのは、不思議、それほど日本は不幸なのかと。多々ある地の利に優れ、資本も優遇された地の人々が、それらに恵まれてこなかった地域より幸福に感じないのは確かに変だ。
読了日:5月30日 著者:
清丸惠三郎
東京劣化 (PHP新書)
の
感想
地方消滅では出生率の低下は原因不明と。本書は人口急減原因は年間死亡者数の急増・戦前国策で出生数増加の世代が死亡年齢到達と言う。人口高齢化の原因は、1950年の優生保護法改正での産児制限が不必要に長引いたからと。欧米はベビーブームは10年から20年続き、団塊はなく、人口動態に急峻なカーブがないと。日本はこの二つの人口政策で後の世代に災禍を及ぼしたと。避けられず。財政、税制、年金、福祉、自助、都市基盤、住宅基盤を身の丈に合った形にせざるをえずと。その方策ありと。実に明快。万事の起点にせねば・・・
読了日:5月27日 著者:
松谷明彦
ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか
の
感想
ジョージ・パッカーの綻びゆくアメリカでのイメージは、フェースブックの投資で10億ドル超儲けたベンチャー・キャピタリストで、リバタリアンで同性愛者でスタンフォード卒の弁護士だったがウォール街にいち早く見切りをつけ、起業家に。未来を信じず「テック・スローダウン」でインターネットの効能に懐疑的。複雑な人物イメージ。本書では、学生向きの起業講義なので、極めて全う。健全で本質的。浮利を追う金融や起業家を戒め、世の中を見つめなおして、自分の頭で考えて、新しい未来・プロダクトの創造に人生賭けてみろと。とても良い講義。
読了日:5月26日 著者:
ピーター・ティール,ブレイク・マスターズ
愛国論
の
感想
不愉快で関わりたくないテーマを明快軽妙に議論してくれて読み易かったです。隣人に嫌われ、疎まれ、憎まれるのは悲しいことですが、世界各地で先祖までいわれなき内容で批難されれば、無視する訳にもいかず、反論して情報戦に勝てとお二方とも言われます。子孫のためにも、隣人本人のためにも正しく説くべきと思います。本書で振り返ると民主党政権の拙劣や、朝日新聞の捏造史にはやはりあきれます。他国は右も左も愛国心は変わらないと。日本は愛国心のない似非文化人が多いそうです。
読了日:5月24日 著者:
田原総一朗,百田尚樹
辞書になった男 ケンボー先生と山田先生
の
感想
大正人の信念と気骨を貫いた一生、作り上げた辞書は渾身のできばえであることを知り感銘しました。情念と反骨と世間に対する責任感がこれほどに込められた国語辞書を持つ国であることがなんだか嬉しくも。言葉を説明することが、時勢や境遇の違う人や世代を繋ぐことであることがわかります。日本は、様々な考え方を表裏に亘って知れる辞書が身近にある国だったのですね。有難みを知りませんでした。辞書は堂々めぐりと思ってましたが、この辞書なら学んだ世代はしっかりした考えになるのではないかと思えます。いい本でした。
読了日:5月23日 著者:
佐々木健一
ゴルバチョフが語る 冷戦終結の真実と21世紀の危機 (NHK出版新書 455)
の
感想
25年前に冷戦を終結させたのは、露米欧の首脳同士が相互理解に努力した賜物と。話し合い妥協点を探り合意する努力を、レーガン、ブッシュ、ミッテラン、コール等は惜しまず。相互に事情立場を斟酌しての成果。その後、東西協調の成果を、米欧は勝利と思い込み、ロシアの市場経済導入を弱体化させ、ロシア経済は壊滅的状態に。石油で自力で立ち直り、米のテロとの戦いをロシアは支持もしたが、米は反対するロシアを無視してイラク侵攻。ロシアの米への信頼感は潰える。ゴルバチョフはプーチンのクリミア対応を評価。ロシアにも情状があると。
読了日:5月21日 著者:
山内聡彦,NHK取材班
撤退するアメリカと「無秩序」の世紀ーーそして世界の警察はいなくなった
の
感想
タイラー・コーエンは「大格差」で、人工知能を駆使した生産拠点が北米にリショアリングして、資源と軍事力と技術力と資本を力に21世紀は北米の世紀になり、15%の富裕層とそれ以外の所得の増えない層に二極化すると予言してますが、本書もアメリカ以外みんなあてにならず(特に日本は世界一の老齢国で衰えると)、自由と民主主義を踏みにじる権威主義のロシア、イラン、中国に対抗できるのは米国だけで、オバマの弱腰を止め、軍拡すべしと。貧困とか飢餓に著者は関心がないようで、軍事力で世界の警察になって取り締まれと言います。やれやれ。
読了日:5月19日 著者:
ブレット・スティーブンズ
国境の人びと: 再考・島国日本の肖像 (新潮選書)
の
感想
日本の経済水域や領海の起点となる離島が99あって、そこには海上保安官は一人もおらず、多くが廃れ始めていて外国からの収奪にさらされているのが現実らしい。島を守るとは島民の生活を維持することで、島民の生活事実が安全保障の基礎との主張。なぜ、過疎化、廃村化してきたのか。ご都合主義の行政、お人良しな国策、生活優先にならざるをえない庶民、軍事への嫌悪などのようです。周辺国は勢力拡大に邁進していて、もう、待ったなしと。こうなるまで宝をいかせていない現実話に気が滅入るようでした。
読了日:5月16日 著者:
山田吉彦
沖縄返還と通貨パニック
の
感想
沖縄返還の激動の歴史の中で、ニクソンによって突如もたらされた変動相場制への切り替え。庶民の生活と沖縄経済に打撃となるドル切り下げ、円切り上げ、投機勢力侵入に対して沖縄の行政の志士達がどのように対応したのか、日本の閣僚、省庁がどのように支援や傍観をしたのかが活写されている。米軍支配の中で秘密裏に沖縄の人々の資産毀損を防いだ信念の強さ、深さがどれほどのものなのか、沖縄で生活してきた人にしか推し量ることはできないのかもしれない。著者の憤りが満ちた本であった。
読了日:5月13日 著者:
川平成雄
帳簿の世界史
の
感想
簿記会計の二面性(善と秩序の道具、不正と腐敗の手段)が歴史的に繰り返し出現してきたことに納得。騙して奪って儲ける行動性向が西洋文明の歴史的性根と痛感。戦費で国家財政逼迫、国債で借金財政、貴族の課税逃れと富の独占、市民へ重課税、新大陸事業の粉飾バブル崩壊(英の南海会社、仏のミシシッピ会社)、会計改革への抵抗勢力、粉飾決算などなど。20世紀から起きた大恐慌、リーマンショック、巨大経済事件は、14世紀から犯されてきた筋金入りの悪事体質の繰り返しに思えてきます。著者も今の金融システムには希望を失っているようです。
読了日:5月9日 著者:
ジェイコブソール
江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統 (星海社新書)
の
感想
現代の世俗に不満を抱く昭和一桁世代の人間が江戸風俗を騙って世相批判した大量の愚痴話を、道徳的教材商品にしたてあげて利用した者がいるとは驚きです。読売はじめ朝日も日経も取り上げ、大手企業も真に受けて社員教育教材にし、挙句の果てに文部科学省も道徳本に盛っているそうです。内容が都合が良いからと虚偽の歴史事実を使って道徳を教えるなどファシズムと同じと。マスコミに踊らされずひろく本を読んで自分で判断できる力がますます必要なようです。
読了日:5月7日 著者:
原田実
常磐線中心主義(ジョーバンセントリズム)
の
感想
常磐地方は、首都圏、ひいては日本に対して、電力のみならず、農産物、工業製品、水産加工品などの大量流通品を供給し続けてきた重要地域であることを再認識。石炭に始まり、米、野菜、海産品まで一世紀以上に亘り供給している自負と、震災、津浪、原発爆発事故、放射能汚染で見失う誇り・・・。郷土愛とどのように折り合いつけていくのか、常磐地方の複雑な心が語られるとても良い本でした。
読了日:5月3日 著者:
五十嵐泰正,開沼博,稲田七海,安藤光義,大山昌彦,沼田誠,帯刀治,小松理虔
強欲の帝国: ウォール街に乗っ取られたアメリカ
の
感想
不動産屋、住宅ローン会社、銀行、格付会社、保険会社が、借金して家を買えば住宅値上がり益で儲けられると市民を騙し、バブル破綻するまでに奪い合い、自分だけ破綻を売り抜けようと、犯した悪事の数々。育てて儲けず、騙して奪って儲ける寡占金融勢力の本性が糾弾され、悪辣さにうんざり。買収された政党、閣僚、学者、有名大学の結社ぶりにはお先が真っ暗。オバマは金融勢力の悪人をひとりも訴追せず、制度もチェンジしないで支援者をだまし、重要な点で国を裏切ったが、米国で得られる悪の中では一番ましと。米国の衰退は止まらないと。
読了日:5月2日 著者:
チャールズ・ファーガソン,CharlesFerguson
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