プロローグ
かつて、大変動があった。地球の軌道上に建設されたスペース・コロニーの一つ＜ハイブ７＞で独立運動が起こったのは、圧政を強める大地球連邦のあり方を見れば、至極当然のことだった。
＜ハイブ７＞で始まった独立運動は瞬く間に支持者を増やして膨れあがり、やがて宇宙植民市連合、通称独立軍を形成。
それに対し、大地球連邦は武力による鎮圧を企てる。
そんな両者が激突するのに、大した時間はかからなかった。
当初、この戦争は連邦の圧倒的軍事力により早期に解決すると思われた。
しかし、独立軍は大地球連邦に対して未曾有の作戦を遂行する。
マルクス作戦―――通称、隕石落としである。
独立軍は外宇宙より牽引してきた巨大なスペース・デブリを、地球に向けて落下させたのだ。
数億人を死に至らしめ、フロリダ半島を消滅させ、北米大陸一帯を核の冬に追い込むという『戦果』に自信を得た独立軍は、大地球連邦に対して降伏を勧告する。
しかし、大地球連邦の返事は、核兵器による＜ハイブ３＞の破壊という血の報復であった。
独立軍は隕石落としの続行を表明。
大地球連邦も遂に一歩も引かず、両者は地球軌道上で激突した。
かつてない破壊が地上を覆った。
地球に落とされたデブリは６個。
地球を死の星にするには十分だった。
また、ハイブのほとんどが核兵器により壊滅。
軌道上での激突後わずか２時間で、地球圏における９割以上の人口が死滅し、地表は砂漠と化し、全ての文明が崩壊したのだ。
勝者など、いなかった。
しかし、人の力というものは凄まじい。
AC50（災厄後50年）の頃には各地で都市国家や軍団が建設され、見る影も無いとはいえ大地球連邦も復活を遂げていた。
そしてAC300の頃には人口は戦前の７割近くにまで回復。
経済や生産も持ち直し、人類は再び繁栄を迎えようとしていた。
しかし、ようやく復活したかに見えた世界は再び混迷の度合いを深めていく。
革命軍の登場である。
大地球連邦の圧政に対し、まるで＜大変動＞の時のごとく反乱が起きたのだ。
その抗争に中立の立場を取る大国インシャラフ。
しかし、大地球連邦とインシャラフ皇国との関係は必ずしも良好ではなく、いつ開戦に踏み切るとも知れない情勢であった。
時はAC315。
＜大変動＞によって砂漠地帯に変貌した北米大陸に存在する都市、プロム。
この街の郊外から、物語は始まる
© Rakuten Group, Inc.
