薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月 10
F&B 腐向け転生パラレル二次創作小説:Rewrite The Stars 6
天上の愛地上の恋 大河転生パラレル二次創作小説:愛別離苦 0
薄桜鬼異民族ファンタジー風パラレル二次創作小説:贄の花嫁 12
薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:羅刹の檻 10
黒執事 異民族ファンタジーパラレル二次創作小説:海の花嫁 1
黒執事 転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ 5
天上の愛 地上の恋 転生現代パラレル二次創作小説:祝福の華 10
PEACEMAKER鐵 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:蒼い華 14
火宵の月 BLOOD+パラレル二次創作小説:炎の月の子守唄 1
火宵の月×呪術廻戦 クロスオーバーパラレル二次創作小説:踊 1
薄桜鬼 現代ハーレクインパラレル二次創作小説:甘い恋の魔法 7
火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜 18
火宵の月 転生オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は 10
薄桜鬼ハリポタパラレル二次創作小説:その愛は、魔法にも似て 5
薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計 9
薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫 20
火宵の月 帝国オメガバースファンタジーパラレル二次創作小説:炎の后 1
薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母 13
コナン×薄桜鬼クロスオーバー二次創作小説:土方さんと安室さん 6
薄桜鬼×火宵の月 平安パラレルクロスオーバー二次創作小説:火喰鳥 7
天上の愛地上の恋 転生オメガバースパラレル二次創作小説:囚われの愛 9
鬼滅の刃×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:麗しき華 1
ツイステ×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:闇の鏡と陰陽師 4
黒執事×薔薇王中世パラレルクロスオーバー二次創作小説:薔薇と駒鳥 27
黒執事×ツイステ 現代パラレルクロスオーバー二次創作小説:戀セヨ人魚 2
ハリポタ×天上の愛地上の恋 クロスオーバー二次創作小説:光と闇の邂逅 2
天上の愛地上の恋 転生昼ドラパラレル二次創作小説:アイタイノエンド 6
黒執事×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:悪魔と陰陽師 1
天愛×火宵の月 異民族クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼と翠の邂逅 1
陰陽師×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:君は僕に似ている 3
天愛×薄桜鬼×火宵の月 吸血鬼クロスオーバ―パラレル二次創作小説:金と黒 4
火宵の月 昼ドラハーレクイン風ファンタジーパラレル二次創作小説:夢の華 0
火宵の月 吸血鬼転生オメガバースパラレル二次創作小説:炎の中に咲く華 1
火宵の月×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉 54
バチ官腐向け時代物パラレル二次創作小説:運命の花嫁~Famme Fatale~ 6
火宵の月異世界転生昼ドラファンタジー二次創作小説:闇の巫女炎の神子 0
バチ官×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:二人の天使 3
火宵の月 異世界ファンタジーロマンスパラレル二次創作小説:月下の恋人達 1
FLESH&BLOOD 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の騎士 1
FLESH&BLOOD ハーレクイン風パラレル二次創作小説:翠の瞳に恋して 20
火宵の月 戦国風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:泥中に咲く 1
PEACEMAKER鐵 ファンタジーパラレル二次創作小説:勿忘草が咲く丘で 9
火宵の月 和風ファンタジーパラレル二次創作小説:紅の花嫁~妖狐異譚~ 3
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ風パラレル二次創作小説:黒髪の天使~約束~ 3
火宵の月 異世界軍事風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:奈落の花 2
天上の愛 地上の恋 転生昼ドラ寄宿学校パラレル二次創作小説:天使の箱庭 7
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生遊郭パラレル二次創作小説:蜜愛~ふたつの唇~ 1
天上の愛地上の恋 帝国昼ドラ転生パラレル二次創作小説:蒼穹の王 翠の天使 1
火宵の月 地獄先生ぬ~べ~パラレル二次創作小説:誰かの心臓になれたなら 2
火宵の月 異世界ロマンスファンタジーパラレル二次創作小説:鳳凰の系譜 1
火宵の月 昼ドラハーレクインパラレル二次創作小説:運命の花嫁~愛しの君へ~ 0
黒執事 昼ドラ風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:君の神様になりたい 4
天愛×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:翼がなくてもーvestigeー 2
FLESH&BLOOD ハーレクイロマンスパラレル二次創作小説:愛の炎に抱かれて 10
薄桜鬼腐向け転生刑事パラレル二次創作小説 :警視庁の姫!!~螺旋の輪廻~ 15
FLESH&BLOOD 帝国ハーレクインロマンスパラレル二次創作小説:炎の紋章 3
PEACEMAKER鐵 オメガバースパラレル二次創作小説:愛しい人へ、ありがとう 8
天上の愛地上の恋 現代転生ハーレクイン風パラレル二次創作小説:最高の片想い 6
FLESH&BLOOD ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の花嫁と金髪の悪魔 6
薄桜鬼腐向け転生愛憎劇パラレル二次創作小説:鬼哭琴抄(きこくきんしょう) 10
薄桜鬼×天上の愛地上の恋 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:玉響の夢 6
天上の愛地上の恋 昼ドラ風パラレル二次創作小説:愛の炎~愛し君へ・・~ 1
天上の愛地上の恋 異世界転生ファンタジーパラレル二次創作小説:綺羅星の如く 0
天愛×腐滅の刃クロスオーバーパラレル二次創作小説:夢幻の果て~soranji~ 1
天愛×相棒×名探偵コナン× クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧に融ける 1
黒執事×天上の愛地上の恋 吸血鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼に沈む 0
魔道祖師×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想うは、あなたひとり 2
天上の愛地上の恋 BLOOD+パラレル二次創作小説:美しき日々〜ファタール〜 0
天上の愛地上の恋 現代転生パラレル二次創作小説:愛唄〜君に伝えたいこと〜 1
天愛 夢小説:千の瞳を持つ女~21世紀の腐女子、19世紀で女官になりました~ 1
FLESH&BLOOD 現代転生パラレル二次創作小説:◇マリーゴールドに恋して◇ 2
YOI×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:皇帝の愛しき真珠 6
火宵の月×刀剣乱舞転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:たゆたえども沈まず 2
薔薇王の葬列×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:黒衣の聖母 3
天愛×F&B 昼ドラ転生ハーレクインクロスオーパラレル二次創作小説:獅子と不死鳥 1
刀剣乱舞 腐向けエリザベート風パラレル二次創作小説:獅子の后~愛と死の輪舞~ 1
薄桜鬼×火宵の月 遊郭転生昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:不死鳥の花嫁 1
薄桜鬼×天上の愛地上の恋腐向け昼ドラクロスオーバー二次創作小説:元皇子の仕立屋 2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧き竜と炎の姫君~愛の果て~ 1
F&B×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:海賊と陰陽師~嵐の果て~ 1
YOI×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:氷上に咲く華たち 1
火宵の月×薄桜鬼 和風ファンタジークロスオーバーパラレル二次創作小説:百合と鳳凰 2
F&B×天愛 昼ドラハーレクインクロスオーバ―パラレル二次創作小説:金糸雀と獅子 2
F&B×天愛吸血鬼ハーレクインクロスオーバーパラレル二次創作小説:白銀の夜明け 2
天上の愛地上の恋現代昼ドラ人魚転生パラレル二次創作小説:何度生まれ変わっても… 2
相棒×名探偵コナン×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:名探偵と陰陽師 1
薄桜鬼×天官賜福×火宵の月 旅館昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:炎の宿 2
火宵の月 異世界ハーレクインヒストリカルファンタジー二次創作小説:鳥籠の花嫁 0
天愛 異世界ハーレクイン転生ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の巫女 氷の皇子 1
天愛×火宵の月陰陽師クロスオーバパラレル二次創作小説:雪月花~また、あの場所で~ 0
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「バチカン奇跡調査官」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。・平賀が両性具有です、苦手な方はご注意ください。BL・二次創作が嫌いな方は読まないでください。庚とロベルトの間に、暫く重苦しい空気が流れていた。最初に口火を切ったのは、庚の方だった。「ロベルト、わたしは今夜貴方に抱かれる覚悟をしていました。」「庚・・」「こういった事は初めてなので、どうすれば貴方を満足させられるのかがわかりませんが・・」庚はそう言いながら、頬を赤く染めて俯いた。「庚、無理をしなくていい。君を抱くのは、君と確かな信頼関係を築いてからにしたいと思うんだ。こういう事はとてもデリケートな問題だし、感情の赴くままに君を抱いてしまったら、お互いに後悔する。だから・・」「そんなにわたしには、魅力がないのですか?」「え?」庚の方をロベルトが見ると、庚は今にも泣きだしそうな顔をしていた。「君、誰かに変な事を言われたのかい?」「今日女学校で、貴方がわたしを抱かないのは、女としての魅力がわたしにはないからだと言われまして・・」「そんな事を言う人には、言わせておけばいい。君の結婚が妬ましいんだろう。」ロベルトは庚を慰めつつ、庚に心無い言葉を吐いたのは玲に違いないと思った。昼間自分と平賀邸で会った時、玲は自分に対して明らかな好意を寄せている事に気づいた。だがロベルトは庚の婚約者なので、自分よりも格下の存在であると思っていた庚が、玲は妬ましくて堪らなかった。だからわざと庚に心無い言葉を吐き、ロベルトを自分の物にしようと企んだのかもしれない。「玲さんがわたしに嫉妬しているというのですか?彼女はわたしよりも美人ですし、頭も良いですし・・」「いいかい、庚。どんな美男美女でも、ひとつやふたつくらい欠点というものがある。たとえば君の友人だって、顔は美しいが心は醜いんだろうね、きっと。」ロベルトの言葉を聞いた庚は、余り納得できないといったような表情を浮かべていた。「ロベルト、これからどうしますか?寝ようと思っても、目が冴えてしまって眠れません。」「僕も眠れないから、眠れるまで何かゲームでもしようか?」「そうですね。ロベルト、ポーカーはどうですか?」「いいね。」翌朝、平賀邸のダイニングルームに現われた庚とロベルトは、一晩中ポーカーをしていた所為で寝不足気味の顔をしていた。「二人とも顔色が良くないわね、どうしたの?」「一晩中ポーカーをしていたら、寝不足になってしまって・・」庚がエイダに昨夜のことを話すと、彼女は珍しく大笑いして飲んでいた紅茶を危うく噴き出しそうになってしまった。「結婚式が近いのだから、夜更かしをしてはいけませんよ、庚。睡眠不足は美容の大敵ですからね。」「はい、お母様。」「さてと、今日はお昼にホテルで慈善バザーが開かれますから、くれぐれも遅刻しないようにね、庚。」エイダはそう言って庚に微笑むと、身支度をするため自室へと向かった。「奥様、庚お嬢様にはお伝えしなくても宜しいのですか?」鏡台の前で真珠の粉をパフで叩いているエイダに向かってタキがそう言うと、彼女はパフを叩く手を止め、タキの方を振り向いた。「くどいですよ、タキ。いいですか、わたくしが自分の口からあの事を話す決心が固まるまで、他言は無用ですよ、わかりましたね?」「はい、奥様。」「タキ、貴方は長い間わたくしと庚に仕えてくれたわね。わたくしが居なくなっても、主人と庚達の事を頼むわね。」涙ぐんで自分を見つめるタキの手を、エイダは優しく握った。「泣かないで頂戴、タキ。貴方は泣き顔をよりも笑顔の方が似合うわ。」「申し訳ございません、奥様・・」「謝らないで。」タキは割烹着の袖口で目元に溜まっていた涙を拭き取ると、エイダの身支度を手伝った。にほんブログ村
Dec 1, 2022
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「バチカン奇跡調査官」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。・平賀が両性具有です、苦手な方はご注意ください。BL・二次創作が嫌いな方は読まないでください。「お母様、庚です。」「お入りなさい。」庚がエイダの部屋に入ると、そこには衣桁に掛けられた白無垢の美しさが庚の目を奪った。「お母様、これは?」「これは、わたくしがお父様の元に嫁ぐ際、貴方のお祖母様から譲り受けたものですよ。」エイダはそう言うと、庚を優しく自分の方へと抱き寄せた。「ロベルト様と幸せにおなりなさい、庚。これから遠い異国の地へ嫁ぐ貴方に、餞の言葉一つも言えないけれど、遠く離れていても、わたくしは貴方の事をずっと想っていますよ。」「有難うございます、お母様・・」庚は涙を流しながらエイダを抱き返した。ロベルトと庚の婚礼への準備が慌ただしくなり、庚は女学校を卒業した後、ロベルトと結婚し、イタリアへと渡ることとなった。「庚お嬢様、女学校ご卒業おめでとうございます。」「有難う、タキ。こうしてタキに髪を梳いて貰うのも、今日で最後になりますね。」「ええ。幼少の頃より庚様にお仕えしていたのに、明日庚様が異国へ嫁がれると思うと、何だかタキは寂しくなってしまいます。」「そんな事を言わないでください、タキ。わたしがロベルトに頼んで、タキを一緒に連れて行ってくれるようにしますから。」「そのお気持ちだけでも、充分でございます、庚様。どうかロベルト様と幸せになってくださいませ。」女学校卒業の日、庚はいつものようにタキに髪を梳いて貰いながら彼女とそんな会話を交わした後、ロベルトが運転する車で女学校へと向かった。「わざわざ送ってくださって有難うございます、ロベルト。」「婚約者を送るのは僕の役目だから、お礼なんて要らないよ。」ロベルトはそう言うと、庚を抱き寄せ、その頬に唇を落とした。「ねぇ庚、今夜君の部屋に行ってもいいかい?」「ロベルト、それは・・」ロベルトの言葉の意味が解ってしまった庚は、羞恥で白い頬を赤く染めた。その日の夜、庚は家族とロベルトと共に夕食を取った後、自室で身支度をしてロベルトが来るのを待った。「お嬢様、入りますよ?」「タキ、どうしたのですか?」庚がそう言って部屋に入って来たタキを見ると、彼女はハーブティーが入ったティーカップを載せた盆を両手に持っていた。「このお茶を飲んで気を落ち着かせなさいと、奥様が先程わたくしにハーブティーを渡されました。」「そうですか・・」どうやら、エイダには何もかもお見通しらしい。「ねぇタキ、愛する人に抱かれるというのはどんな気持ちになるのでしょうか?」「タキはもう年寄りですが、娘時代の時めくような気持ちは今でも忘れられませんよ。今は亡き旦那様とわたくしが結婚したのは、丁度お嬢様と同じ年でございました。旦那様はいつもわたくしに優しくしてくださって、出張の帰りにはわたくしの好きなお菓子を買って来てくださっては、二人で美味しく頂いていました。庚様、愛する人と生きると言う事は、些細な日常を大切にすることだと、タキは思うのです。こんな年寄りの意見でも、庚様のお力になれるかどうかわかりませんが・・」「何だかタキの話を聞いていると、わたしもロベルトとタキとご主人のような素敵な夫婦になりたいです。」「庚様なら、きっとなれますよ。ロベルト様の事を愛していらしていたら、きっと。」タキがそう言って庚に微笑んだ時、ドアが誰かにノックされた。「庚、居るかい?」「ロベルト、どうぞ入ってきてください。」「わかった。」「ではお嬢様、タキはこれで失礼いたします。」タキが部屋から出て行き、庚はロベルトと部屋で二人きりになった。にほんブログ村
Dec 1, 2022
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「バチカン奇跡調査官」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。・平賀が両性具有です、苦手な方はご注意ください。BL・二次創作が嫌いな方は読まないでください。玲達を連れて庚が帰宅すると、邸の前には従僕や執事達が慌ただしく何かの準備に追われていた。「お帰りなさいませ、庚お嬢様。」「安本、ただいま帰りました。今何をしているのですか?」「お嬢様がイタリアへ嫁がれる日がお決まりになられたので、奥様からお嬢様の荷物を船便でイタリアへ運ぶようにと、先程仰せつかりました。」「わかりました。後は母に聞いてみます。」「お客様がいらっしゃっているのに、お茶をお出しできなくて申し訳ありません。」安本はそう言って玲達に軽く会釈すると、そのまま仕事へと戻っていった。「庚様は、いつも使用人達や執事に対してあんな口の利き方をなさるの?」「それはどういう意味ですか?」居間で紅茶を飲んでいた庚は、そう玲から言われたので思わず彼女の顔を見た。「使用人達に対して親切な話し方をされるなんて、変わっているわね。」「立場が違うからと言って、相手を見下してはいけないと母様から教わりましたから。」「そうなの。」玲は少し馬鹿にしたような目で庚を見た。「ねぇ、貴方の婚約者はどちらにいらっしゃるの?早くお会いしたいわ。」「ロベルトは今・・」「庚、お帰り。厨房で君が好きなチョコチップクッキーを焼いていたから、君が帰って来た事に気づかなかったよ。」居間のドアが開き、中にエプロンをつけたロベルトがクッキーを載せた盆を片手でバランスよく運びながら入って来た。「このお嬢さんたちは、庚のお友達かい?」ロベルトがそう言って蒼い眸を玲達の方へと向けると、彼女達は黄色い悲鳴を上げ、一斉に顔を赤らめて俯いてしまった。「橘さん達は、ロベルトに会いたくてわたしの家に遊びに来てくれたのです。」「そうだったのか。それよりも庚、君の結婚が早まった話はもう聞いたかい?」「はい、さっき安本から教えて貰いました。ロベルト、少しこちらでお話ししませんか?」「勿論さ。」ロベルトはそう言った後、自然と庚の隣に腰を下ろした。「庚、また痩せたね?ちゃんと食事はとっているのかい?」「最近図書館から借りた本を読むのに夢中になってしまって、つい食事を後回しにしてしまいました。」「そんな事だろうと思ったよ。」ロベルトは溜息を吐くと、庚の細い腰にそっと手を這わせた。「ロベルト、橘さん達が見ています!」真っ赤な顔で庚がロベルトにそう抗議すると、彼は大胆にも庚の華奢な身体を自分の方へと抱き寄せた。「いいじゃないか、もうすぐ僕達は夫婦になるんだし。」「それはそうですけれど・・」「庚様、ロベルト様、わたくし達はもうお暇致しますわ、ごきげんよう。」玲達はそう言うと、何やら慌てた様子で平賀邸から去っていった。「折角いらしていただいたのに、何だか橘さん達に悪い事をしてしまいました。」「いや、君がそんな事を思わなくてもいいよ、庚。寧ろ彼女達にとってはいい刺激になったんじゃないのかな?」ロベルトはそう言って自分の膝の上に座りながらチョコチップクッキーを頬張る庚の姿を眺めた。庚は女同士の人間関係特有の、嫉妬や羨望といったものに疎い。今日はロベルトが何とか庚に助け舟を出したものの、イタリアへ戻ったら、いつも庚の隣に居る訳にもいかない。(これから大変だな・・)ロベルトが溜息を吐くと、チョコチップクッキーを頬張っていた庚がきょとんとした表情を浮かべながら自分を見た。「ロベルト、どうしたのですか?」「いや、何でもないよ。」その日の夜、庚は母・エイダの部屋に呼ばれた。にほんブログ村
Dec 1, 2022
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「バチカン奇跡調査官」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。・平賀が両性具有です、苦手な方はご注意ください。BL・二次創作が嫌いな方は読まないでください。「踊りが上手くなったね。この前は僕の足を踏んでばかりいたのに。」「あれからロベルトの足を踏まないように、頑張って練習したんですよ。」そう言った庚は、ロベルトの顔を見た後羞恥で顔を赤く染めた。「揶揄って済まなかった、庚。今夜の君はとても綺麗だよ。」「有難うございます、ロベルト。」「何だかお似合いの二人だこと・・有沢様もそう思いませんこと?」「ええ、そうですね。庚様と踊っていらっしゃる殿方はどなたなのですか?」「あの方は、ロベルト=ニコラス=プッチーニ様、プッチーニ侯爵家のご子息ですわ。」「プッチーニ家といえば、ローマを中心に貿易業で栄えている、あのプッチーニ家の?」「あら、どうやらご存知のようですわね。ロベルト様は、うちの庚の許婚なんですのよ。」エイダがそう言いながら有沢子爵の方を見ると、彼は何処か気まずそうな表情を浮かべていた。「当てが外れて残念でしたわね、有沢子爵。でもご子息は素敵な方ですから、いつかいい相手が見つかりますわ。」「そうなると良いですな。では、わたし達はこれで失礼いたします。」有沢子爵はそう言うと、平賀邸を後にした。「楽しかったです、ロベルト。」「僕もだよ、庚。それよりも足は痛くないかい?」「大丈夫です。」本当は慣れないハイヒールで踵が痛くて堪らなかったが、ロベルトを心配させないために庚はそう彼に嘘を吐いた。「ちょっと見せてご覧。」「ロベルト?」突然ロベルトが自分を横抱きにしたので、庚は思わず悲鳴を上げてしまった。「平賀伯爵、失礼ですがお嬢さんを少しの間僕に預からせて頂けないでしょうか?」「構わんよ、ロベルト君。」「下ろしてください、ロベルト!」庚はそう叫びながら、ロベルトの腕の中で暴れた。「そんなに暴れないでくれ、庚。何も君を取って食おうというわけじゃないんだ。」ロベルトは自分の腕の中で暴れる庚を優しく宥めながら、彼の寝室へと入った。男でありながら伯爵令嬢として育てられた庚の部屋は、レースの天蓋で覆われたベッドと、ロココ調の美しく赤いソファが暖炉の前に置かれていた。「あ~あ、やっぱり靴擦れしているじゃないか。どうしてすぐ僕には言わないんだ?」「ロベルトに心配を掛けさせたくなくて、黙っていました。」「水臭いじゃないか庚、君はもうすぐ僕の妻となる人なのに。」「止めてください、そんな事を言うのは・・」「照れているのかい?可愛いね。」ロベルトはそう言うと、庚の頬に唇を落とした。「わたしは、貴方に褒められる事に余り慣れていないのです。」「そんな初心な所が、可愛いよ庚。」ロベルトは庚に微笑むと、彼の艶やかな黒髪を梳いた。「あぁそうだ、僕は一週間ここに滞在することになったから、今夜から宜しくね、庚。」「こちらこそ、宜しくお願い致します、ロベルト。」こうして、ロベルトは一週間平賀伯爵家に滞在する事となった。「庚様、昨夜の舞踏会で貴方が素敵な異国人の殿方と踊っていらっしゃったって、本当なの?」翌日、庚が女学校に行って教室に入ると、彼はたちまち同級生達に囲まれた。「ええ、そうですが・・何故皆さん、そんな事をご存知なのですか?」「あら嫌だ、もう皆さんそんな事ご存知よ、ねぇ?」庚の言葉を聞いてそう言った橘玲は、同意を求めるかのように取巻き達を見た。「ねぇ庚様、急で申し訳ないのだけれど、放課後に貴方の家にお邪魔しても良いかしら?」「そんな、困ります。」「あらいいじゃないの、卒業するまで後半月しかないんだし。結婚したらわたくし達、離れ離れになってしまうのだから、今の内に親睦を深めておかないとね?」庚は玲の強引な“お願い”を断ることが出来なかった。にほんブログ村
Dec 1, 2022
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「バチカン奇跡調査官」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。・平賀が両性具有です、苦手な方はご注意ください。BL・二次創作が嫌いな方は読まないでください。1897(明治30)年、元日。平賀伯爵邸では、新年を祝う宴が華やかに開かれており、そこには政財界の名士達や、平賀伯爵と交流がある音楽家達が集まっていた。「庚お嬢様、早くお召し替えをなさりませんと・・」「どうしても出なくてはいけないのですか?」宴の主役である庚は、寝間着姿で机の上に医学書やノートを広げていた。「庚お嬢様、お願いですから研究をするのは後に為さってくださいませ。」「わかりました。」庚は溜息を吐いた後、タキに着替えを手伝って貰った後、鏡台の前に座った。「タキ、苦しいです。」コルセットでウェストをきつく締め付けられ、庚はそう言うと苦しそうに息を吐いた。「世のご婦人方はこの苦しさにいつも耐えていらっしゃるのです、お嬢様。」庚の艶やかな黒髪を櫛で梳きながら、タキはそう言うと彼の髪を美しく結い上げた。「姉様、綺麗。」身支度を終えた庚がタキと共に部屋から出て来ると、丁度二階へ上がって来た良太は、庚のドレス姿を見て感嘆の声を上げた。「有難う、良太。階下へ行ったら、貴方の為に何か取ってきますね。食べたい物はありますか?」「僕、チョコレートが食べたいな!」「わかりました、チョコレートですね。」良太とそんな会話を交わした後、庚はタキに手を引かれながら、ゆっくりと階段を降りていった。「平賀伯爵、本日はお招きいただいて有難うございます。」「こちらこそ、わざわざ来てくれて有難う、有沢子爵。」一階の大広間では、燕尾服姿の有沢子爵父子と、平賀伯爵が他愛のない話で盛り上がっていた。「平賀伯爵、こちらは倅の雄輔だ。今は帝国大学医学部に所属していて、近々独逸(ドイツ)に留学することになっている。」「初めまして、平賀伯爵。お目にかかり、光栄です。」「こちらこそ君と会えて嬉しいよ。」その時、一人の貴婦人―庚がゆっくりと大広間に入って来た。庚は裾や襟元にルビーが鏤められた淡いピンクのドレスを纏い、長く艶やかな黒髪にはルビーが鏤められた櫛を挿していた。「紹介致します、有沢子爵。こちらが娘の庚です。庚、有沢子爵にご挨拶なさい。」「初めまして、有沢子爵。庚と申します。」庚は母やタキから教えられた通りに、ドレスを優雅に摘まんで有沢子爵父子に挨拶した。「ほう、美しい娘さんだな。年は幾つだね?」「今年で17になります。」「うちの雄輔と年が近いし、丁度いいじゃないか。」父親と有沢子爵がそんな事を話しているのを聞いた庚は、少し落ち着かない様子で周囲を見渡した。その時、癖のあるダークブラウンの髪を揺らしながら、一人の青年が大広間に入って来た。「お久しぶりです、平賀伯爵。」「こちらこそ久しいね、ロベルト君。忙しい中よく来てくれたね。」「いいえ。庚はどちらに?」「庚、ロベルト様がいらしたよ。」「ロベルト!」庚はドレスの裾を捌きながら、ロベルトの元に駆け寄ると、彼に抱きついた。「庚、人前でみっともないですよ。」エイダがそう言って庚を窘めると、彼はシュンとした様子で俯いてしまった。「庚は久しぶりにロベルト君に会えて嬉しいんだ、大目に見てやれ。」「わかりました。」エイダが夫の言葉を聞いて溜息を吐いた時、ワルツを楽団が奏で始めた。「庚、ロベルト様と踊っていらっしゃい。」「はい、母様。」自分の前に差し出されたロベルトの手を優雅に取り、庚は彼と共に踊りの輪の中へと加わった。にほんブログ村
Dec 1, 2022
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「バチカン奇跡調査官」の二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。・平賀が両性具有です、苦手な方はご注意ください。BL・二次創作が嫌いな方は読まないでください。1873(明治6)年7月3日、平賀伯爵邸にて平賀伯爵夫妻の第一子であり待望の男児である庚が産まれた。「エイダ、でかしたぞ。良くやってくれた。」「有難うございます、貴方。この子のお顔を見てやってくださいな。」出産後、自分を労いに来た夫にそう言うと、彼は乳母から生まれたばかりの赤子を腕に抱いた。「可愛いなぁ。本当に男の子なのか?」「ええ。まるで天使のようですわ。」両親から深い愛情を注がれて育った庚は、黒檀の様な艶やかな黒髪と、黒曜石の様なアーモンド形の美しい瞳、そして肉感的な唇という愛らしい容姿と、人見知りしない性格で誰からも好かれていた。だが、庚は伯爵家の嫡子でありながら病弱であり、複雑な事情を抱えているが故に父方の祖母により彼は女として育てられることとなった。「庚お嬢様、こちらにおられましたか。」7歳となった庚は、毎日のように中庭を散策しては豪華な振袖を泥だらけにしていた。その日も彼は父から貰った虫眼鏡で蟻の行列を飽きずに眺めていた。「まぁ庚お嬢様、またお召し物を汚して・・すぐにお召し替えをなさいませ。」「嫌です、あと少しで蟻の巣が何処にあるのかわかるのに・・」「我儘を言ってはなりませんよ、庚お嬢様。」嫌がる庚を無理矢理立ち上がらせた乳母のタキは、彼を浴室に連れて行き、泥で汚れた彼の身体と顔を洗った後、真新しいワンピースを彼に着せた。「タキ、この服は何だか足元が寒いです。」「ワンピースとはそういう物でございますよ、庚お嬢様。さぁお客様がお待ちです、わたくしと共に客間へ参りましょう。」タキに手を引かれ、庚は彼女と共に客間へと向かうと、中庭でジャーマンシェパードのジョンと遊んでいる弟・良太の姿が窓から見えた。「タキ、わたしも良太と一緒にジョンと遊びたいです。」「いけません、お嬢様。お嬢様はこれから大切なお客様とお会いになるのですから、大人しくしなくてはなりませんよ。」タキにそう厳しくたしなめられ、庚が客間のソファに座っていると、そこへ一人の少年を連れた男性が客間に入って来た。癖のあるダークブラウンの髪と、少し垂れ目気味の蒼い瞳をしたその少年は、父親に手を引かれながらじっと庚の顔を見ていた。「お嬢様、こちらがロベルト=ニコラス=プッチーニ様、お嬢様の許婚でございますよ。」「許婚とは何ですか?」「お嬢様が将来結婚為さるお方ですよ。さぁ、ロベルト様にご挨拶なさってください。」『初めまして、平賀庚と申します。』父から教わったイタリア語でそう庚が少年に挨拶すると、彼は庚に向かって優しく微笑んだ。『初めまして、庚。僕はロベルト。これから仲良くしようね。』『はい!』これが、ロベルトと庚の出逢いだった。『ねぇ庚、庚は僕のお嫁さんになるんだよね?』『ええ、そうですが・・わたしは結婚というものがどういうものなのかがわからないのです。』『それは僕だってそうだよ。僕達の結婚は、お父様と君のお父様が勝手に決めたんだ。でも、僕は君と結婚したい。』ロベルトは蒼い瞳で庚を見つめながらそう言うと、彼の手の甲に接吻した。『大きくなったら、僕と結婚してくれる?』『はい、必ず貴方と結婚します、ロベルト。』『約束だよ、庚。』そんな約束を交わしてから7年の歳月が経ち、庚は愛らしい子供から美しく可憐な少年へと成長していった。にほんブログ村
Dec 1, 2022
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