薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月 10
F&B 腐向け転生パラレル二次創作小説:Rewrite The Stars 6
天上の愛地上の恋 大河転生パラレル二次創作小説:愛別離苦 0
薄桜鬼異民族ファンタジー風パラレル二次創作小説:贄の花嫁 12
薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:羅刹の檻 10
黒執事 異民族ファンタジーパラレル二次創作小説:海の花嫁 1
黒執事 転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ 5
天上の愛 地上の恋 転生現代パラレル二次創作小説:祝福の華 10
PEACEMAKER鐵 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:蒼い華 14
火宵の月 BLOOD+パラレル二次創作小説:炎の月の子守唄 1
火宵の月×呪術廻戦 クロスオーバーパラレル二次創作小説:踊 1
薄桜鬼 現代ハーレクインパラレル二次創作小説:甘い恋の魔法 7
火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜 18
火宵の月 転生オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は 10
薄桜鬼ハリポタパラレル二次創作小説:その愛は、魔法にも似て 5
薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計 9
薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫 20
火宵の月 帝国オメガバースファンタジーパラレル二次創作小説:炎の后 1
薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母 13
コナン×薄桜鬼クロスオーバー二次創作小説:土方さんと安室さん 6
薄桜鬼×火宵の月 平安パラレルクロスオーバー二次創作小説:火喰鳥 7
天上の愛地上の恋 転生オメガバースパラレル二次創作小説:囚われの愛 9
鬼滅の刃×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:麗しき華 1
ツイステ×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:闇の鏡と陰陽師 4
黒執事×薔薇王中世パラレルクロスオーバー二次創作小説:薔薇と駒鳥 27
黒執事×ツイステ 現代パラレルクロスオーバー二次創作小説:戀セヨ人魚 2
ハリポタ×天上の愛地上の恋 クロスオーバー二次創作小説:光と闇の邂逅 2
天上の愛地上の恋 転生昼ドラパラレル二次創作小説:アイタイノエンド 6
黒執事×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:悪魔と陰陽師 1
天愛×火宵の月 異民族クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼と翠の邂逅 1
陰陽師×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:君は僕に似ている 3
天愛×薄桜鬼×火宵の月 吸血鬼クロスオーバ―パラレル二次創作小説:金と黒 4
火宵の月 昼ドラハーレクイン風ファンタジーパラレル二次創作小説:夢の華 0
火宵の月 吸血鬼転生オメガバースパラレル二次創作小説:炎の中に咲く華 1
火宵の月×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉 54
バチ官腐向け時代物パラレル二次創作小説:運命の花嫁~Famme Fatale~ 6
火宵の月異世界転生昼ドラファンタジー二次創作小説:闇の巫女炎の神子 0
バチ官×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:二人の天使 3
火宵の月 異世界ファンタジーロマンスパラレル二次創作小説:月下の恋人達 1
FLESH&BLOOD 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の騎士 1
FLESH&BLOOD ハーレクイン風パラレル二次創作小説:翠の瞳に恋して 20
火宵の月 戦国風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:泥中に咲く 1
PEACEMAKER鐵 ファンタジーパラレル二次創作小説:勿忘草が咲く丘で 9
火宵の月 和風ファンタジーパラレル二次創作小説:紅の花嫁~妖狐異譚~ 3
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ風パラレル二次創作小説:黒髪の天使~約束~ 3
火宵の月 異世界軍事風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:奈落の花 2
天上の愛 地上の恋 転生昼ドラ寄宿学校パラレル二次創作小説:天使の箱庭 7
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生遊郭パラレル二次創作小説:蜜愛~ふたつの唇~ 1
天上の愛地上の恋 帝国昼ドラ転生パラレル二次創作小説:蒼穹の王 翠の天使 1
火宵の月 地獄先生ぬ~べ~パラレル二次創作小説:誰かの心臓になれたなら 2
火宵の月 異世界ロマンスファンタジーパラレル二次創作小説:鳳凰の系譜 1
火宵の月 昼ドラハーレクインパラレル二次創作小説:運命の花嫁~愛しの君へ~ 0
黒執事 昼ドラ風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:君の神様になりたい 4
天愛×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:翼がなくてもーvestigeー 2
FLESH&BLOOD ハーレクイロマンスパラレル二次創作小説:愛の炎に抱かれて 10
薄桜鬼腐向け転生刑事パラレル二次創作小説 :警視庁の姫!!~螺旋の輪廻~ 15
FLESH&BLOOD 帝国ハーレクインロマンスパラレル二次創作小説:炎の紋章 3
PEACEMAKER鐵 オメガバースパラレル二次創作小説:愛しい人へ、ありがとう 8
天上の愛地上の恋 現代転生ハーレクイン風パラレル二次創作小説:最高の片想い 6
FLESH&BLOOD ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の花嫁と金髪の悪魔 6
薄桜鬼腐向け転生愛憎劇パラレル二次創作小説:鬼哭琴抄(きこくきんしょう) 10
薄桜鬼×天上の愛地上の恋 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:玉響の夢 6
天上の愛地上の恋 昼ドラ風パラレル二次創作小説:愛の炎~愛し君へ・・~ 1
天上の愛地上の恋 異世界転生ファンタジーパラレル二次創作小説:綺羅星の如く 0
天愛×腐滅の刃クロスオーバーパラレル二次創作小説:夢幻の果て~soranji~ 1
天愛×相棒×名探偵コナン× クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧に融ける 1
黒執事×天上の愛地上の恋 吸血鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼に沈む 0
魔道祖師×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想うは、あなたひとり 2
天上の愛地上の恋 BLOOD+パラレル二次創作小説:美しき日々〜ファタール〜 0
天上の愛地上の恋 現代転生パラレル二次創作小説:愛唄〜君に伝えたいこと〜 1
天愛 夢小説:千の瞳を持つ女~21世紀の腐女子、19世紀で女官になりました~ 1
FLESH&BLOOD 現代転生パラレル二次創作小説:◇マリーゴールドに恋して◇ 2
YOI×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:皇帝の愛しき真珠 6
火宵の月×刀剣乱舞転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:たゆたえども沈まず 2
薔薇王の葬列×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:黒衣の聖母 3
天愛×F&B 昼ドラ転生ハーレクインクロスオーパラレル二次創作小説:獅子と不死鳥 1
刀剣乱舞 腐向けエリザベート風パラレル二次創作小説:獅子の后~愛と死の輪舞~ 1
薄桜鬼×火宵の月 遊郭転生昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:不死鳥の花嫁 1
薄桜鬼×天上の愛地上の恋腐向け昼ドラクロスオーバー二次創作小説:元皇子の仕立屋 2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧き竜と炎の姫君~愛の果て~ 1
F&B×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:海賊と陰陽師~嵐の果て~ 1
YOI×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:氷上に咲く華たち 1
火宵の月×薄桜鬼 和風ファンタジークロスオーバーパラレル二次創作小説:百合と鳳凰 2
F&B×天愛 昼ドラハーレクインクロスオーバ―パラレル二次創作小説:金糸雀と獅子 2
F&B×天愛吸血鬼ハーレクインクロスオーバーパラレル二次創作小説:白銀の夜明け 2
天上の愛地上の恋現代昼ドラ人魚転生パラレル二次創作小説:何度生まれ変わっても… 2
相棒×名探偵コナン×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:名探偵と陰陽師 1
薄桜鬼×天官賜福×火宵の月 旅館昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:炎の宿 2
火宵の月 異世界ハーレクインヒストリカルファンタジー二次創作小説:鳥籠の花嫁 0
天愛 異世界ハーレクイン転生ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の巫女 氷の皇子 1
天愛×火宵の月陰陽師クロスオーバパラレル二次創作小説:雪月花~また、あの場所で~ 0
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「FLESH&BLOOD」の二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。「貴様、何者だ?」「それはこれから死ぬ奴には教えられないな!」 ジェフリーの問いに、男はそう言って口端を上げて笑った後、隠し持っていた短剣で襲って来た。 ジェフリーは咄嗟に長剣で男の攻撃を防いだが、得物の大きさは自分の方が相手より勝っているというのに、ジェフリーはじりじり壁際まで追い詰められてしまった。(こいつ、一体・・)「長い間会っていない間に剣の腕が落ちたな、ジェフリー。」 その声を聞いた途端、ジェフリーの脳裏にある男の顔が浮かんだ。“ミニア、俺に剣を教えてよ!”“いいぞ。剣術が上手くなるには、足の運びが一番大切だぞ。” 幼い頃、ジェフリーの剣術の稽古に根気良く付き合ってくれた恩師との思わぬ再会に、ジェフリーは剣を下ろした。「ミニア、ミニアなのか?」「お前・・もしかして、ジェフリーか?」 目の前の男―ミニアことヤンは、美しく成長したかつての教え子に気づき、ジェフリーに倣って剣を下ろした。「ジェフリー、どうしたの?」 ジェフリーが中々戻って来ない事に気づいたのか、海斗が部屋から出て来た。「あなたは、誰?」 海斗の視線は、ジェフリーからヤンへと移った。「お初にお目にかかります、海斗王女様。俺はヤン=グリフィス、ジェフリーの剣術師範をしておりました。」「そうですか。どうして、俺の事を知っているのですか?」「それは・・」「ジェフリー、客人が来るのなら事前に連絡をしてくれと言っただろう!」「ナイジェル、そう怒るな。」 ダイニングにヤンを通したジェフリーと海斗は、三人で夕食を取った。「全く、準備をする身にもなってくれ。」 ぶつぶつとそう文句を言いながらも、ナイジェルはしっかりとビセンテと自分の分を含めた五人分の夕食を作っていた。「ミニア、今までどうしていたんだ?」「話せば長くなる。」 ヤンはそう言うと、葡萄酒を一口飲んだ。「俺は暫く王宮で働いていたが、内戦が起こって、俺は何もかも失った。家族も、仕事も。」 ヤンは内戦が終結した後、ある貴婦人の用心棒として雇われた。 その貴婦人は、反王政派に属していた資産家の夫から莫大な遺産を相続し、裕福な暮らしをしているという。「その者の名は?」「ラウル=デ=トレド。実家は名のある貴族らしい。」「ラウル・・」 ヤンの口からラウルの名が出た途端、海斗は思わず持っていたスプーンを床に落としてしまった。「カイト、大丈夫か!?」「うん・・ちょっと、気分が悪くて・・」「ナイジェル、済まないが・・」「あぁ、わかっている。」 ナイジェルは海斗の夕食をワゴンに載せると、ダイニングから出て行った。「カイト、一体どうしたんだ?」「ごめんなさい。あのね、俺、昔の事を思い出したんだ。」「昔の事?」 海斗は寝室でナイジェルが運んで来た夕食を食べた後、ジェフリーにある事を話した。 それはまだ、先王が善政を敷いていた内戦前の事だった。 当時五歳だった海斗王女は、先王に連れられて狩りへと向かった。 その時、狼に襲われそうになった海斗を救ってくれたのが、ラウルだった。 先王付きの女官であった彼女は、王宮内では王妃よりも権力を握っており、ラウルは先王の愛妾ではないのかという根も葉もない噂が流れたりしていた。 その所為なのか、先王と王妃の夫婦関係は冷え込み、王妃は数人の女官を連れて王宮から出て離宮へと引き籠もってしまった。 そんな両親の姿を、海斗は幼いながらも胸を痛めながら見ていた。 そして、内戦が勃発した。―カイト、お前だけでも生き延びてくれ! 王宮を離れる前、先王は海斗に“何か”を手渡した。「そうか、そんな事が・・」「あの人・・ヤンは、ラウルの手下で、俺を殺しに来たのかもしれない・・考え過ぎかもしれないね。」「今はゆっくり休め。」「うん、お休み・・」 ジェフリーと海斗の会話を、ヤンは廊下で聞いた後、その場から去っていった。にほんブログ村
Nov 8, 2023
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※BGMと共にお楽しみください。「FLESH&BLOOD」の二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。―なぁ、最近王都から来た神父様、失踪したんだとよ。―もしかして、悪魔に喰われちまったんじゃねぇのか?「おい、その話、詳しく聞かせて貰おうか?」「ひ、ひぃぃっ!」 村人達は、ヤンの強面を見て一瞬怯んだが、彼にこの地に伝わる“伝説”を話し始めた。「森の奥に、悪魔が棲む城があるんだ。その悪魔に毎年、“生贄”を捧げるのがこの村のしきたりなのさ。」「へぇ、その“生贄”となったのは、どんな娘だ?」「炎のような赤髪の娘さ。確か名前は、カイトだったなぁ。」「ありがとう。それで、その城までどう行けばいいんだ?」 居酒屋から出たヤンは、近くの宿屋に泊まった。「お兄さん、あんた兵士かい?見ない顔だね。」「ちょっと訳有りでな。」「へぇ。」 宿の主はそう言って胡散臭そうな顔をしてヤンを見たが、金貨が詰まった袋を見た途端、無言で一番上等な部屋に彼を案内した。(さて、これからどうするか・・) 日が暮れた後で城まで行くのは得策ではないと思ったヤンは、そのまま寝台に横になって眠った。 朝日が昇ると同時に、ヤンは悪魔が棲むという城へと向かった。(あの険しい崖の上に白亜の城があるのか・・) ヤンは背負っているリュックから太くて長いロープを崖上まで放り投げ、ロープを握り締めながらそこまで登った。「ふぅ・・」 ヤンは溜息を吐くと、手巾で額の汗を拭った。 同じ頃、崖から落ちて生死の境を彷徨っていたビセンテが漸く目を覚ましたのは、事故から四日後の事だった。「目が覚めましたか?」 ビセンテが目を開けると、自分の前には赤毛の天使が立っていた。 その姿を見た途端、ビセンテの脳裏にある光景が甦った。(王女様・・) それは、ビセンテがまだ神学校に入学する前の事だった。 当時、王国内では権力争いが絶えず、先王の娘である海斗は、常に命を狙われていた。「カイト様、こちらがメンドーサ様の甥の、ビセンテです。」「はじめまして、カイト様。」「はじめまして・・」 海斗は、当時八歳。「まぁ、すいません。カイト様は、少し人見知りなので・・」「緑のお目々、宝石みたい・・」 海斗は円らな黒い瞳でビセンテを見た後、そう言って笑った。 その笑顔を、ビセンテは忘れる事が出来なかった。 それから、王国内で内戦が勃発し、先王派の貴族は命からがら国から逃げ出した。 海斗王女は、国から棄てられた。 あれから九年の歳月が経ち、海斗王女は美しく成長していた。(何故、王嬢様が“悪魔”の城に?)「王女様・・」「あなた、俺の事を知っているの?」「はい。王女様、あなたは何故、あの男と暮らしているのです?」「今は、応えられない。」 海斗はそう言うと、寝室から出て行った。「どうした、海斗。食欲が無いのか?」「ジェフリー、あなたに隠している事があるんだ。」 夕食の席で、海斗はジェフリーに自分の身分を明かした。「俺は、この王国の王女だったんだ。」「“だった”?」「俺の父親、前の国王は、内戦で処刑されたんだ。俺は、乳母達とはぐれて、この村に辿り着いた時には、自分が誰なのかわからなかったんだ。」「じゃぁ、お前が俺の運命の相手・・」「え?」「実は・・」 ジェフリーが、次の言葉を継ごうとした時、外から大きな音が聞こえて来た。「何、さっきの・・」「俺が様子を見て来る。お前はここに居ろ。」「うん・・」 ジェフリーがダイニングルームから廊下へと出ると、そこには長身の男が立っていた。にほんブログ村
Mar 12, 2023
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「FLESH&BLOOD」の二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。「あそこか・・」 森の奥に聳える白亜の城をカンテラで照らすと、カソックの裾を摘まみながら森の中を進み始めた。 しかし、森の中を抜けると、険しい崖がビセンテの前に現れた。 この崖を登らなければ、“悪魔”には会えない―ビセンテは意を決して、崖を登り始めた。 しかし彼は足を滑らせ、崖から落ちてそのまま気を失ってしまった。「リリーに会いたい?」「はい。彼女は、村の外れに住んでいて・・俺の、姉代わりのような人なんです。その人が、体調を崩したので・・」「わかった、俺も行こう。」 こうして海斗は、ジェフリーと共にリリーの元へと向かった。「リリー!」「カイト、わざわざ来てくれてありがとう。」 リリーはそう言うと、海斗に抱き着いた。「風邪をひいたって聞いたから、心配になって来ちゃった。」「そう。馬車の中に居るのは、誰?もしかして・・」「あの人は、俺に優しくしてくれているから、大丈夫だよ。」「そう。」 リリーを見舞った後、海斗はジェフリーと共に馬車で城へと戻っていった。 その城の前に、一人の男が倒れていた。「どうした?」「ジェフリー、この人怪我をしているよ。」「そうか。城の中へ運ぼう。」「うん。」 男―ビセンテは、全身傷だらけだった。 漆黒のカソックは泥だらけで、ところどころ破れていた。「医者を呼ばないと・・」「大丈夫だ。」 ジェフリーはそう言うと、ビセンテの傷を治した。「まだ熱があるから、向こうの部屋に寝かせておこう。」「そうだね。」 ビセンテは、時折寝台の中で寝返りを打っては、呻いていた。「マリア・・」 彼は、病で亡くした幼い妹の名を呟いた。「まぁ、先王の娘が生きているというのは本当なの?」「はい。」「その娘を捜し出し、殺しなさい。」「かしこまりました。」 暖炉の前でコーヒーを飲みながら寛いでいた貴婦人は、そう言うと溜息を吐いた。「ラウル様、お客様がお見えです。」「そう。」 ラウルがコーヒーを飲んでいると、そこへ長身の男がやって来た。「ヤン、やっと来たのね。もう来ないと思ったわよ。」「心にも無い事を。」 ラウルにそう言って睨みつけた男は、ヤン=グリフィスといった。「先程、先王の娘がこの村に居るという情報を得たわ。ヤン、この村に行って先王の娘を見つけ次第、殺しなさい。」「わかった。先王の娘の名は?」「カイト。炎のような鮮やかな赤毛を持った娘よ。」 ラウルの淡褐色の瞳が、暖炉の炎を受けて黄金色に輝いた。(全く、こいつと会ったのが運の尽きだな・・) 旅支度をしながら、ヤンは初めてラウルと出会った時の事を思い出していた。 ヤンが船乗りとして西部の海で“仕事”をしていた頃、彼はある船の隠し部屋に入った時、ラウルと出会った。 ラウルは、怖がる振りをしてヤンを油断させ、王都へと彼を連行した。「もう支度は済んだ?」「ああ。」「カイトを殺すまで、戻って来なくていいよ。」「わかった。」 暫くの間ラウルから解放されると思うと、ヤンは少し気が楽になった。 彼が王都から村に着く頃には、季節は秋から冬になっていた。 厚手の外套を着ていって良かったとヤンは思いながら、村にある居酒屋へと入った。「いらっしゃい。」「親爺、ビールをくれ。」「はいよ!」 先王の娘を捜し出す前に、まずは腹ごしらえだ。にほんブログ村
Jan 29, 2023
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「FLESH&BLOOD」の二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。 (この人が、悪魔・・) 村人達から聞いた、“金髪の悪魔”は、鋭い牙を生やした、恐ろしい化け物だという。 だが今、海斗の前に居るのは、金髪碧眼の美男子だった。(人の噂って、あてにならないよな。) そんな事を思いながら、海斗が“悪魔”の方を見ると、彼は蒼い瞳で海斗を見て微笑んだ。「お前が、俺の花嫁か?」「はい・・」「そうか。」“悪魔”はそう言うと、海斗の唇を塞いだ。「んっ・・」「ナイジェル。」「わかった。」「お前は、俺と一緒に来い。」「はい・・」「俺の名はジェフリー。お前は?」「海斗です。あの、俺は喰われるんですか?」「いや、喰うつもりはない。別の意味で、お前を喰うが・・」「え?」「独り言だ、気にするな。」 海斗は、“悪魔”―ジェフリーに連れて行かれたのは、彼の寝室だった。「あの・・」「優しくする。」 ジェフリーは、海斗を寝台の上に寝かせると、キスの雨を降らせた。「んっ・・」「キスは、初めてか?」「はい・・」 ジェフリーは、海斗を優しく抱いた。「ナイジェル、話とは何だ?」「あの子をどうするつもりだ?」「ここに住まわせるつもりだが、それがどうした?」「“あの事”は、まだあの子には言っていないのか?」「あぁ。」「そうか。」 いずれ海斗には、“あの事”を言わなければならないだろうが、それは今ではない。「食事を後で運んで来てくれ。」「わかった。」(これから、どうなるのか・・俺には知ったこっちゃないがな。)「本当に、これ全部食べていいの?」「ああ、どうした、要らないのなら・・」「いいえ、頂きます!」 美味そうにナイジェルが作った夕食を頬張る海斗の姿を見て、ジェフリーは嬉しそうな顔をして笑った。(これから、楽しくなりそうだ。) 海斗達が夕食を楽しんでいる頃、村の教会では海斗とぶつかった黒髪翠眼の男―ビセンテ=デ=サンティリャーナが溜息を吐いていた。『悪魔退治、ですか?』『そうだ。あの森の奥の城に棲む悪魔を退治して欲しい。』『何故、わたしなのです?他に適任の者が居る筈・・』『君にしか出来ない事なんだよ。』 そう言った司教の顔は、何処か嬉しそうだった。 こうして、ビセンテは王都からこの村へとやって来た。 複雑な人間関係から解放され、ビセンテは村で穏やかな日々を過ごしていた。 そんな中、村で彼は一人の少女と出会った。 美しい赤毛を揺らした彼女は、いつしか村で姿を見せなくなった。「いらっしゃいませ。あら、神父様、今日は何かご用ですか?」「この前、こちらに来ていた赤毛の少女の事を、何か知っていますか?」「あぁ、カイトの事ですか?あの子なら、“生贄”に選ばれて・・」「“生贄”?」「すいません、これ以上は・・」 パン屋のおかみさんは、そう言うと店の奥へと引っ込んでしまった。 その後、ビセンテが他の村人達に海斗の事を尋ねても、皆一様に口を閉ざした。(皆、何かを隠している・・) ビセンテは教会の書庫で、“金髪の悪魔”について調べた。 すると、ある書物に“金髪の悪魔”に捧げられた女性の手記の一部が載っていた。『彼は美しかった。』 “金髪の悪魔”を、この目で見たい―そんな思いに駆られたビセンテは、夜の森の中へと入っていった。にほんブログ村
Jan 28, 2023
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「FLESH&BLOOD」の二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。「どうしたの、浮かない顔をしているわね?」「実は・・」 海斗は、リリーに今日村であった事を話した。「や~い、忌み子!」「や~い!」 村の子供達から石を投げられ、海斗が俯きながら歩いていると、そこへ一人の男が現れた。「やめろ! 子供達と海斗の間に割って入ったのは、全身黒づくめの男だった。「ひぃ!」「悪魔だ、逃げろ~!」 黒づくめの男は、翠の瞳で海斗を見つめた。「怪我は無いか?」「はい・・」 海斗の右手には、子供達から石をぶつけられた時に出来た痣があった。「酷い痣だ、すぐに手当てを・・」「いえ、大丈夫です。」 海斗がそう言って右手を見た時、その痣は消えていた。「わたしはこれで失礼する。」 男はその様子を見ると、急に気まずそうに海斗から目を逸らし、何処かへ行ってしまった。「そう、そんな事があったの。」「ねぇリリー、俺はどうして生まれて来たのかな?家族から捨てられて、村人達にも疎まれて・・誰も俺を必要としてくれる人なんて、居ないんだ。」「そんな事言わないで、カイト。あなたのお陰で、わたしもこの店も助かっているのよ。それに・・」 リリーが落ち込んでいる海斗をそう励ましていると、突然ドアを乱暴に叩く音が聞こえて来た。「誰なの、こんな時間に・・」 リリーがドアを開けると、外には深緑色の軍服を着た青年が立っていた。「こちらに、カイト=トーゴ―様はいらっしゃいますか?」「俺に何か用ですか?」 青年は海斗の前に跪くと、彼女にこう告げた。「おめでとうございます、あなたは“花嫁”に選ばれました。」「え?」 海斗は、自分が置かれた状況がわからなかった。 干ばつが続いた村では、次々と死者が出た。「これは、悪魔の呪いだ!」「このままだと、皆死ぬぞ!」「皆、良く聞け。悪魔を鎮める為には、この村から“花嫁”を出さねばならぬ。」「“花嫁”だと?」「そうじゃ。“花嫁”を悪魔に差し出せば、この村は救われる。」「でも、この村に“花嫁”を出せる家なんて・・」「一人、居るじゃないか。村の外れに住んでいる・・」 こうして、海斗は“花嫁”に選ばれたのだった。「“花嫁”かぁ・・」「カイト、あなた“花嫁”に選ばれた意味をわかっているの?」「“花嫁”って・・」「生贄よ。」「そう。俺は生まれて初めて、この村の為に役に立てるんだね。」「そんな事、言わないで・・」「リリー、今までありがとう。」 数日後、「白鹿亭」の前に一台の馬車が停まった。「カイト、元気でね。」「リリー、身体に気を付けて。」 純白のウェディングドレスに身を包んだ海斗は、馬車に乗り込んだ。 馬車は村から離れ、悪魔が棲むという森の奥にある城へと向かった。 その城は、悪魔が棲むには似つかわしくない、美しい白亜の城だった。(こんな所に、悪魔が居るの?) 海斗がそんな事を思いながら馬車から降りて城の前に立つと、中から一人の男がやって来た。 その男は、右目に黒絹の眼帯をつけていた。「お前が、“花嫁”か?」「は、はい・・」「俺はナイジェルだ。ついて来い。」「わかりました。」 謎の男と共に海斗が向かった先は、悪魔が棲む城の中だった。(どうしよう、俺食べられちゃうのかな?) そんな事を思いながら海斗は謎の男と共に城の大広間で待っていると、高らかな靴音と共に一人の男が二人の前に現れた。 彼こそが、“金髪の悪魔”―ジェフリー=ロックフォードだった。にほんブログ村
Jan 24, 2023
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「FLESH&BLOOD」の二次小説です。作者様・出版社様は一切関係ありません。海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。遠くから教会の鐘が鳴るのが聞こえ、村の少年・アンディはベッドから起きて、学校へと向かった。 アンディにとって、村での生活は退屈で仕方が無かった。 村には教会の近くにある小さな図書館しかなく、置いてある本は既に読んだ事がある、神話の絵本ばかり。 村の学校にある図書室に置いてある本も、似たようなものばかりだった。「バイバイ~」「またね~」 就業の鐘が鳴り響き、アンディは学校から飛び出して、ある場所へと向かった。「また来たのか。」 村はずれにあるグラハム家の屋敷のドアノッカーをアンディが叩くと、中からナイジェルおじさんが出て来た。 右目を黒絹の眼帯で覆ったナイジェルおじさんは、灰青色の瞳で少し呆れたような目でアンディを見た後、溜息を吐いて彼を屋敷の中へと招き入れた。「毎日来てよく飽きないな。」「だって、ここには沢山面白い本があるんだもの!」「そうか。」 グラハム家の蔵書には、本好きのアンディがここに住みたいと思うような、沢山の面白い本で溢れていた。「ねぇおじさん、今日もこの本読んで!」「またか。」 アンディが持って来た本を見たナイジェルおじさんは、溜息を吐いた。 真紅の革張りの表紙に、金糸で美しい刺繍を施されたその本には、飾り文字でこう書かれていた。“炎の花嫁と金髪の悪魔”「ナイジェルおじさんは、金髪の悪魔に会った事があるの?」「あぁ。」「やっぱり、怖い人だった?」「いいや。その本に書いてあるような、毛むくじゃらの化け物なんかじゃなかったぞ。」「本当!?」「あぁ、本当だ。」 ナイジェルおじさんは、アンディに自分だけが知っている“伝説”を語り始めた。 “金髪の悪魔”と呼ばれた、一人の男の真実の物語を― 「あ~あ、またか。」「こんなに干ばつが続いたら、あたし達の生活はどうなるんだろうね。」「さぁな。」 数年前から続いている干ばつによって、農村部は甚大な被害を受けており、村人達は一日分の食糧を確保する事すら出来ない状況だった。「ほら、またあの子だよ。」「赤毛の・・」 村人達の視線の先には、腰下までの長さがある赤毛をなびかせている一人の少女の姿があった。 彼女の名は、海斗。 村で自分が刺繍したハンカチなどを売って生活していたが、村人達は海斗をある理由で蔑んでいた。 それは、海斗が赤毛である事と、男女両方の性である事であった。 その所為で、家族から疎まれ、捨てられた海斗は、「白鹿亭」の女将・リリーと暮らしていた。「ただいま、リリー。」「お帰り、カイト。」にほんブログ村
Jan 24, 2023
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