薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月 10
F&B 腐向け転生パラレル二次創作小説:Rewrite The Stars 6
天上の愛地上の恋 大河転生パラレル二次創作小説:愛別離苦 0
薄桜鬼異民族ファンタジー風パラレル二次創作小説:贄の花嫁 12
薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:羅刹の檻 10
黒執事 異民族ファンタジーパラレル二次創作小説:海の花嫁 1
黒執事 転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ 5
天上の愛 地上の恋 転生現代パラレル二次創作小説:祝福の華 10
PEACEMAKER鐵 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:蒼い華 14
火宵の月 BLOOD+パラレル二次創作小説:炎の月の子守唄 1
火宵の月×呪術廻戦 クロスオーバーパラレル二次創作小説:踊 1
薄桜鬼 現代ハーレクインパラレル二次創作小説:甘い恋の魔法 7
火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜 18
火宵の月 転生オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は 10
薄桜鬼ハリポタパラレル二次創作小説:その愛は、魔法にも似て 5
薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計 9
薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫 20
火宵の月 帝国オメガバースファンタジーパラレル二次創作小説:炎の后 1
薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母 13
コナン×薄桜鬼クロスオーバー二次創作小説:土方さんと安室さん 6
薄桜鬼×火宵の月 平安パラレルクロスオーバー二次創作小説:火喰鳥 7
天上の愛地上の恋 転生オメガバースパラレル二次創作小説:囚われの愛 9
鬼滅の刃×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:麗しき華 1
ツイステ×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:闇の鏡と陰陽師 4
黒執事×薔薇王中世パラレルクロスオーバー二次創作小説:薔薇と駒鳥 27
黒執事×ツイステ 現代パラレルクロスオーバー二次創作小説:戀セヨ人魚 2
ハリポタ×天上の愛地上の恋 クロスオーバー二次創作小説:光と闇の邂逅 2
天上の愛地上の恋 転生昼ドラパラレル二次創作小説:アイタイノエンド 6
黒執事×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:悪魔と陰陽師 1
天愛×火宵の月 異民族クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼と翠の邂逅 1
陰陽師×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:君は僕に似ている 3
天愛×薄桜鬼×火宵の月 吸血鬼クロスオーバ―パラレル二次創作小説:金と黒 4
火宵の月 昼ドラハーレクイン風ファンタジーパラレル二次創作小説:夢の華 0
火宵の月 吸血鬼転生オメガバースパラレル二次創作小説:炎の中に咲く華 1
火宵の月×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉 54
バチ官腐向け時代物パラレル二次創作小説:運命の花嫁~Famme Fatale~ 6
火宵の月異世界転生昼ドラファンタジー二次創作小説:闇の巫女炎の神子 0
バチ官×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:二人の天使 3
火宵の月 異世界ファンタジーロマンスパラレル二次創作小説:月下の恋人達 1
FLESH&BLOOD 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の騎士 1
FLESH&BLOOD ハーレクイン風パラレル二次創作小説:翠の瞳に恋して 20
火宵の月 戦国風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:泥中に咲く 1
PEACEMAKER鐵 ファンタジーパラレル二次創作小説:勿忘草が咲く丘で 9
火宵の月 和風ファンタジーパラレル二次創作小説:紅の花嫁~妖狐異譚~ 3
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ風パラレル二次創作小説:黒髪の天使~約束~ 3
火宵の月 異世界軍事風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:奈落の花 2
天上の愛 地上の恋 転生昼ドラ寄宿学校パラレル二次創作小説:天使の箱庭 7
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生遊郭パラレル二次創作小説:蜜愛~ふたつの唇~ 1
天上の愛地上の恋 帝国昼ドラ転生パラレル二次創作小説:蒼穹の王 翠の天使 1
火宵の月 地獄先生ぬ~べ~パラレル二次創作小説:誰かの心臓になれたなら 2
火宵の月 異世界ロマンスファンタジーパラレル二次創作小説:鳳凰の系譜 1
火宵の月 昼ドラハーレクインパラレル二次創作小説:運命の花嫁~愛しの君へ~ 0
黒執事 昼ドラ風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:君の神様になりたい 4
天愛×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:翼がなくてもーvestigeー 2
FLESH&BLOOD ハーレクイロマンスパラレル二次創作小説:愛の炎に抱かれて 10
薄桜鬼腐向け転生刑事パラレル二次創作小説 :警視庁の姫!!~螺旋の輪廻~ 15
FLESH&BLOOD 帝国ハーレクインロマンスパラレル二次創作小説:炎の紋章 3
PEACEMAKER鐵 オメガバースパラレル二次創作小説:愛しい人へ、ありがとう 8
天上の愛地上の恋 現代転生ハーレクイン風パラレル二次創作小説:最高の片想い 6
FLESH&BLOOD ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の花嫁と金髪の悪魔 6
薄桜鬼腐向け転生愛憎劇パラレル二次創作小説:鬼哭琴抄(きこくきんしょう) 10
薄桜鬼×天上の愛地上の恋 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:玉響の夢 6
天上の愛地上の恋 昼ドラ風パラレル二次創作小説:愛の炎~愛し君へ・・~ 1
天上の愛地上の恋 異世界転生ファンタジーパラレル二次創作小説:綺羅星の如く 0
天愛×腐滅の刃クロスオーバーパラレル二次創作小説:夢幻の果て~soranji~ 1
天愛×相棒×名探偵コナン× クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧に融ける 1
黒執事×天上の愛地上の恋 吸血鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼に沈む 0
魔道祖師×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想うは、あなたひとり 2
天上の愛地上の恋 BLOOD+パラレル二次創作小説:美しき日々〜ファタール〜 0
天上の愛地上の恋 現代転生パラレル二次創作小説:愛唄〜君に伝えたいこと〜 1
天愛 夢小説:千の瞳を持つ女~21世紀の腐女子、19世紀で女官になりました~ 1
FLESH&BLOOD 現代転生パラレル二次創作小説:◇マリーゴールドに恋して◇ 2
YOI×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:皇帝の愛しき真珠 6
火宵の月×刀剣乱舞転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:たゆたえども沈まず 2
薔薇王の葬列×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:黒衣の聖母 3
天愛×F&B 昼ドラ転生ハーレクインクロスオーパラレル二次創作小説:獅子と不死鳥 1
刀剣乱舞 腐向けエリザベート風パラレル二次創作小説:獅子の后~愛と死の輪舞~ 1
薄桜鬼×火宵の月 遊郭転生昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:不死鳥の花嫁 1
薄桜鬼×天上の愛地上の恋腐向け昼ドラクロスオーバー二次創作小説:元皇子の仕立屋 2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧き竜と炎の姫君~愛の果て~ 1
F&B×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:海賊と陰陽師~嵐の果て~ 1
YOI×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:氷上に咲く華たち 1
火宵の月×薄桜鬼 和風ファンタジークロスオーバーパラレル二次創作小説:百合と鳳凰 2
F&B×天愛 昼ドラハーレクインクロスオーバ―パラレル二次創作小説:金糸雀と獅子 2
F&B×天愛吸血鬼ハーレクインクロスオーバーパラレル二次創作小説:白銀の夜明け 2
天上の愛地上の恋現代昼ドラ人魚転生パラレル二次創作小説:何度生まれ変わっても… 2
相棒×名探偵コナン×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:名探偵と陰陽師 1
薄桜鬼×天官賜福×火宵の月 旅館昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:炎の宿 2
火宵の月 異世界ハーレクインヒストリカルファンタジー二次創作小説:鳥籠の花嫁 0
天愛 異世界ハーレクイン転生ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の巫女 氷の皇子 1
天愛×火宵の月陰陽師クロスオーバパラレル二次創作小説:雪月花~また、あの場所で~ 0
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「進撃の巨人」の二次創作小説です。 作者様・出版者様とは関係ありません。 二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。 「お義父様も、お元気そうで何よりです。」 「奈々さんの事は非常に残念だったが、君達が来てくれた事は、奈々さんが喜んでいるんじゃないかな?」 「そうだと、いいんですか。」 エルヴィンとリヴァイが奈々の焼香を終えて寺を後にしようとした時、奈々の父親がエルヴィンに向かって何かを投げつけた。 「お前の顔なんて二度と見たくない、とっとと消え失せろ!」 「エルヴィン、行こう。」 「あぁ・・」 寺を後にした二人は、その足でリヴァイの実家へと向かった。 「ただいま戻りました、お義母さん。」 「お帰りなさい、エルヴィンさん。あちらの様子はどうだったの?」 「余り歓迎されませんでした・・当然ですよね、彼女を死なせたのはわたしなのですから。」 「それは違うわ、エルヴィンさん。そんなに自分を責めないで。」 「ありがとうございます、お義母さん。梓を預かって貰って助かります。」 「お礼なんて言わなくていいのよ。わたしも孫に会えて嬉しいわ。」 クシェルはそう言うと、エルヴィンに優しく微笑んだ。 「母さん、ここで一人暮らしは大変だろ?うちに来て一緒に暮らさないか?」 「そんな、悪いわよ・・」 「リヴァイの言う通りです、お義母さん。同居だとわたし達も安心ですし、何かあればすぐに対応できます。」 「そうね。ここの家は、一人で住むには広過ぎるわね・・」 クシェルの家からの帰り道、リヴァイはチャイルドシートに座って眠っている梓の頭を撫でた。 「なぁエルヴィン、この前の話、覚えているか?」 「二人目を考えるって話か?」 「あぁ。俺もお前もそんなに若くねぇし、梓に弟妹を作ってやりてぇ。」 「そうだな・・」 エルヴィンは、梓が可愛がっているキンクマハムスターのコスモが腫瘍を抱えてもう長く生きられない事を知っていた。 もともとスミス家に迎えられた時から、コスモは既に生後半年を過ぎていたし、ペットショップで粗悪な餌を与えられた所為で、彼の身体にはその毒素が蓄積していったのだと、エルヴィンは獣医からそう言われて、コスモが抱えている苦しみや痛みを代わってやれない悲しさに襲われた。 リヴァイとよく話し合い、エルヴィンはコスモに出来る限りの事をしてあげようと決めた。 コスモの腫瘍は日に日に大きくなっていたが、彼は生きる事を最期まで諦めなかった。 そして彼は、リヴァイ達が見守る中、静かに息を引き取った。 エルヴィンがコスモの遺体を植木鉢を入れ、彼が生前大好きだった向日葵の種と共に埋めた。 「パパ、早く早く~!」 「わかったよ、梓。お願いだからそんなに走らないでくれ。」 植木鉢に埋めた向日葵が咲いて何度目かの夏を迎えた後、エルヴィンは梓と共に近所の公園へ遊びに来ていた。 「ねぇパパ、ママと赤ちゃんはいつ帰ってくるの?」 「それは、パパにはわからないなぁ。」 リヴァイが梓の弟である忍を産んだのは、つい一ヶ月前の事だった。 リヴァイの産後の肥立ちが悪く、彼の体調が回復次第退院する事になっているが、それがいつになるのかはわからない。 「梓、もう帰ろうか?」 「やだ、まだ遊ぶ!」 「おい、余りパパを困らせるんじゃねぇぞ、梓。」 エルヴィンが駄々をこねている梓を必死に宥めていると、そこへ忍を抱いたリヴァイがやって来た。 「ママ、お帰りなさい。」 「ただいま、梓。」 リヴァイは、愛娘に優しく微笑んだ後、エルヴィンの方を見た。 「ただいま、エルヴィン。」 「おかえり、リヴァイ。」 夕陽が照らす中、リヴァイ達は仲良く並んで歩きながら家路を辿った。 (完) にほんブログ村
Apr 13, 2020
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「進撃の巨人」の二次創作小説です。 作者様・出版者様とは関係ありません。 二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。 「・・そうか、奈々が・・」 土方から奈々の自殺を知ったエルヴィンは、その日一日中仕事が手につかなかった。 「ただいま・・」 「お帰り、エルヴィン。」 珍しく夜遅くに帰宅した夫の様子がおかしいことに、リヴァイは気づいた。 「何かあったのか、エルヴィン?」 「奈々が自殺した。」 「それは本当か?」 「あぁ。彼女は取り調べの際、こんな事を言っていたらしい・・」 “わたしばかり不公平だわ。昔も今も、幸せになれない。” 「その言葉を聞いた時、奈々が“彼女”だとはじめて気づいた。それなのに、わたしは・・」 「エルヴィン、忘れろ・・昔の事は、みんな忘れるんだ。」 リヴァイはそう言うと、エルヴィンを抱き締めた。 「どれだけ昔の事を悔やんでも、もう時間を巻き戻す事は出来ない。だから、今を生きろ!」 「リヴァイ・・」 「奈々は、もう死んだ。」 リヴァイはそう言うと、エルヴィンの涙を手の甲で拭った。 「もう、昔の事は忘れるんだ。」 「わかった・・」 エルヴィンが浴室でシャワーを浴びている間、リヴァイが洗濯物をベランダから取り込んでいると、エルヴィンのスマートフォンに着信を告げるメロディーが鳴り響いた。 『もしもしエルヴィン、奈々さんが自殺した事は知っているわよね?離婚したからと言っても、あなたにはまだ奈々さんの夫としての責任があるんだから、ちゃんと喪主としての責任を・・』 エルヴィンの母親の声をそれ以上聞きたくなくて、リヴァイはスマートフォンの電源を切った。 「さっき母さんの声が聞こえたんだが、気の所為か?」 「さっき、お前のお袋さんが奈々の葬式の喪主として責任を果たせと、勝手な事を言って来た。」 「そうか・・」 「で、どうするつもりだ?」 「彼女の葬儀には参列するが、すぐに帰って来る。」 「俺も行こう。」 「いいのか。」 「俺はお前の女房だ。一緒に行くに決まってるだろう。」 「ありがとう、リヴァイ。」 翌日、奈々の葬儀にエルヴィンとリヴァイが参列すると、そこにはエルヴィンの両親も来ていた。 「お久しぶりね、リヴァイさん。」 「大変ご無沙汰しております、お義父様、お義母様。」 「元気そうで良かった、リヴァイさん。」 にほんブログ村
Apr 13, 2020
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「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「・・とんだ結婚披露宴になっちまったな。」「あぁ。」 披露宴の後、エルヴィンとリヴァイは宿泊先のホテルの部屋に入った後、そう言いながら溜息を吐いた。「奈々はどうして、ここに来たんだ?」「さぁな。だが、あの女はもう二度と俺達の前には現れないだろうよ。」「そう願いたいね。」エルヴィンはそう言うと、リヴァイを抱き締めながら眠りについた。「彼女の様子はどうだ?」「変化なしです。相変わらず支離滅裂な事ばかり言っています。」「そうか・・」 土方歳三は、何処か暗く淀んだ目で自分を見つめているような奈々の顔を、マジックミラー越しに見た。「・・わたしばかり不公平だわ。昔も今も、幸せになれないなんて・・」 奈々は、ブツブツとそんな事を言いながら、髪の毛をイライラとした様子でいじった。(わたしばかり、どうしてこんな目に遭うの?) そんな事を思いながら奈々が取調室の入口の方を見た時、懐かしい人物がそこに居た。「彼女と二人きりで話をさせてくれ。」「はい、わかりました。」 部下が取調室から出て行くのを確認した土方は、奈々の前に腰を下ろした。「お久しぶりですわね、土方様。」「あぁ・・確かあんたは、エルヴィン=スミスの許嫁だった女か?」「えぇ、そうよ。昔(前世)はわたくしとエルヴィン様は結ばれなかったけれど、今度こそ彼と結ばれると思ったわ。それなのに・・わたくしはエルヴィン様に愛されない!どうしてなの!?」「それは、あんたとエルヴィン様がそういう関係じゃなかったからさ。」土方の言葉を聞いた奈々―もとい美禰(みね)は激しく嗚咽した。「あの、今のを調書にどう書けば・・」「夫と元妻がよりを戻すと知り、嫉妬に狂ってやったとか、適当に書けばいい。前世との関係がどうのこうのとか書いたら、上にはねのけられるに決まってんだろう。」「そうですね・・」 土方は溜息を吐きながら、取調室で啜り泣く奈々の姿を見た。 前世の記憶に執着し、囚われるという事は、何と愚かで哀れな事だろうか。 奈々が自殺したという報せを土方が聞いたのは、彼女を取り調べてから数日後の事だった。 彼女は隠し持っていたカミソリで、喉を突いて長時間苦しんだ末に、自分の血で窒息して死んだのだった。にほんブログ村
Apr 13, 2020
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「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「こちらこそお久しぶりです、沖田さん・・あ、今は土方さんでしたね?」「手術成功と、退院おめでとうございます。結婚式、わたし達も出席しますね。」「ありがとうございます。」“沖田総司”こと、土方由美はそう言ってリヴァイに微笑んだ。「エルヴィン、一体何だ・・この招待客リストの長さは?」「色々と、わたし達が日頃お世話になっている人達の事を考えて作ったら・・こんな風に長くなってしまった。」「俺達は芸能人じゃねぇんだぞ?招待客リストをはじめから作り直せ、今すぐにだ!」「わ、わかった・・」 エルヴィンが慌てて奥の書斎へと戻っていくのを見た由美は、思わず噴き出してしまった。「どうした、由美?」「何だか、お二とも昔から変わってないなぁと思って。」「あ、もうお子さん生まれたんですか?」「えぇ、元気な女の子です。顔はわたしに似ているんですけれど、性格は土方さん似かなぁ?」「まだわからねぇだろ?」「良かった、無事に産まれたんですね、おめでとうございます。」「ありがとうございます、梓ちゃんは幼稚園ですか?」「えぇ。何だか、梓とエルヴィンと三人で暮らしている事が、俺はまだ信じられません。」「それはそうでしょう。前世が波乱万丈だっただけに、今の幸せが実感できないというか・・」「わかります。」 リヴァイがそんな事を言いながら由美と笑い合っていると、スミス家のハムスター・コスモが巣箱の中から顔を出してあくびした。 「うわぁ、可愛いなぁ~!」「最初、俺はハムスターなんてネズミと同じだと思っていたんですけどね、毎日世話をしている内にすっかり情が移ってしまいました。」「わたし達、子どもが出来るまで動物を飼うかどうか迷っていて・・でも結局、動物を飼う前に子どもが出来たからその話はなくなりましたけど。」「そうですか。動物を飼うのって、意外とお金がかかりますものね。」「おい総司、もうそろそろ桜を迎えに行く時間じゃねぇのか?」「本当だ、もうこんな時間!じゃぁリヴァイさん、また会いましょうね。」「えぇ、また。」 結婚式まで後一ヶ月を切った頃、リヴァイはエルヴィンに連れられて、ドレスショップへと向かった。「おいエルヴィン、俺は絶対にドレスなんて着ねぇぞ!」「リヴァイ、お願いだから・・」「おい、その目はやめろ。」「梓にお前のドレス姿を見せてやりたいんだ・・」「わかった、ドレスは着るから、今すぐその目をやめろ、エルヴィン!」 結局、リヴァイはエルヴィンの提案を渋々と呑み、結婚式にドレスを着る事になった。「お色直しは、白無垢でいこう!」「あぁ、わかったよ・・」 結婚式当日は、雲ひとつない快晴だった。「ハンジさん、お久しぶりです!」「エレン、元気そうで良かった。」 結婚式が行われる予定の教会には、ハンジやエレン、ミカサやナナバ、そしてケニーとクシェルがやって来た。「ミカサ、今まで辛い思いをさせてしまって、申し訳ないわね。」「謝らないで、母さん。もう辛くて苦しい日々は終わったのよ。」「そうね・・」 ミカサとクシェルがそう言いながら再会を喜び合っている頃、新婦控室では渋面を浮かべているドレス姿のリヴァイが、仁王立ちでハンジと対峙していた。「おいハンジ、そのデカい箱はなんだ?」「見てわからない?メイクボックスだよ。」「てめぇのメイクの腕前が壊滅的なのは知ってる。それ以上近寄ると、俺はあの窓から飛び降りる。」「やだなぁリヴァイ、あんたにメイクするのはわたしじゃなくて、ナナバだよ。」「そうか、それなら安心した。」「まぁ、あんたの人生の晴れの日を台無しにしないよ、わたしは。」「さてと、早速メイクしていくよ。」 一方、新郎控室では、エルヴィンが友人達に囲まれていた。「まさかお前が妻子持ちだったなんて、思いもしなかったよ!」「今まで黙っていて悪かった。」「まぁ、人嫌いで気難しいお前が選んだ相手なんだから、俺達は受け入れるぜ。」「ありがとう。」 教会に入って来たリヴァイの美しさに、招待客達は息を呑んだ。「ママ、綺麗。」「キレイだねぇ。」 結婚披露宴は、和気あいあいとした雰囲気で行われた。「何だか、平和過ぎて眠たくなっちゃう・・」ハンジがそう言ってあくびを噛み殺していると、突然宴会場のドアが開いて、一人の女が入って来た。「許さない、あんた達だけが幸せになるなんて!」 血走った目でエルヴィンとリヴァイを睨みつけた女―奈々は、包丁を握り締めながら高砂席の方へと突進してきた。だが、彼女が高砂席へ辿り着く前に、警察官が宴会場に入って来た。「何をするのよ、離せ~!」奈々は泣き喚きながら、警察官に連行されていった。
Apr 13, 2020
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「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。 手術室の前で、エルヴィンは梓とリヴァイの手術が終わるのを待っていた。 やがて、手術室からストレッチャーに載せられたリヴァイが出て来た。「リヴァイ!」「ママ!」 リヴァイの顔は、何処か蒼褪めていた。「ハンジ、どうなんだ?」「手術は上手くいったよ。けれど、出血が酷くてね・・後は本人の生命力に頼るしかない。」「そうか・・」「わたし達に出来る事は、リヴァイを信じる事だ。」ハンジはそう言うと、エルヴィンの肩を叩いた。「さぁ、これからはゆっくり休んでくれ、エルヴィン。リヴァイの事は、わたし達に任せてくれ。」「わかった。ありがとう、ハンジ。」 リヴァイは、遠くに見える光に向かって、ただ只管(ひたすら)闇の中を歩いていた。―人殺し!―気味の悪い化け物! 遠くから時折礫(つぶて)のように投げつけられる怨嗟の言葉など聞いても立ち止まりもせず、リヴァイは只管歩いていた。 彼が闇に包まれたトンネルを抜けると、眼前には一面の菜の花畑が広がっていた。―やっと、来たな。 誰かに肩を叩かれてリヴァイが振り向くと、そこにはもう一人の自分が立っていた。(どうして俺が、こんな所に?)―お前はもう、“過去”に縛られなくていいんだ。遠い昔の記憶も、お前が今まで苦しんで来た記憶も、全てここに置いていけ。(俺は、幸せになってもいいのか?俺は・・)―全て置いていけ。家族の元へ帰れ。(わかった。だが、お前はどうするんだ?)―消えるだけだ。 もう一人の“リヴァイ”は、そう言うとリヴァイの前から消えた。 やがて、リヴァイは全身を白い光に包まれ、気を失った。「う・・」リヴァイが目を開けると、そこには病室の白い天井が広がっていた。「リヴァイ、気がついたんだね?」「ハンジ・・」「お帰り、リヴァイ。」ハンジはそう言ってリヴァイに微笑むと、彼の手を握った。 「リヴァイ、朝食の時間だよ。」「あぁ。ハンジ、いつも忙しいのに済まねぇな。」「いいって。でもあんたの生命力と回復力は大したものだね。後遺症もないし、このまま順調に行くと退院は来週に出来そうだ。」「そうか、それは良かった。」「じゃぁ、また後でね。」 ハンジが病室から出て行った後、リヴァイは朝食を取りながら、不思議な夢の事を考えていた。 何故、前世の自分自身が出て来たのか―その夢の意味を知りたくて、リヴァイはずっとインターネットで夢の事を調べていたが、何もなかった。 朝食後、リヴァイがインターネットで再び夢の事を調べていると、その途中で某巨大掲示板の記事を見た。“記者殺しの真犯人、逮捕される!” リヴァイがマウスでその記事のタイトルをクリックすると、そこには自分達一家を狂わせたあの事件の犯人が緊急逮捕された事が詳しく書かれていた。―全て置いていけ。 あの時、夢の中でもう一人の自分が言った言葉の意味は、こういう事だったのかとリヴァイは理解した。『真犯人逮捕ってことは、A家はもう無罪放免ってこと?』『それは当然だろ。』『A家を誹謗中傷した奴ら、今頃震えてるんだろうなw』 手術から一週間が過ぎ、リヴァイの周囲が急に慌ただしくなった。 事件のことで、エルヴィンが手配したインターネット犯罪専門の弁護士がやって来た。「あなた方を長年誹謗中傷して来た七人の氏名と住所がわかりました。彼らを名誉棄損で訴えようと思いますが、いかがでしょうか?」「・・徹底的にやってくれ。」「わかりました。」 弁護士が去った後、病室に入って来たのはケニーとエルヴィンだった。「よぉリヴァイ、手術成功おめでとう。」「ケニー、相変わらず元気だな。」「エルヴィンから聞いたぜ、お前ぇこいつと結婚式を挙げるんだってなぁ?」「は?俺そんな事何も・・」「済まないリヴァイ、わたしが勝手に決めてしまった。」「てめぇ、一体どういうつもりだ?」「いいじゃねぇか、一生に一度の事なんだからよぉ、パァーっといこうぜ!」 退院したリヴァイは、結婚式の準備と裁判への準備を並行して進める事になり、休む暇なく忙殺される日々を送っていた。 そんな中、スミス家に意外な訪問者がやって来た。「お久しぶりです、リヴァイさん。」にほんブログ村
Apr 10, 2020
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「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「ママ~!」「よぉ梓、元気にしていたか?」「うん!パパもコスモも元気だよ!」「コスモ?」「おばあちゃんと一緒にペットショップに行って、お迎えしたの!」「そうか・・退院したら俺も会いてぇな・・」「ママ、いつおうちに帰ってくるの?」「手術が終わったら、帰ってくる。」「わかった、それまでパパの言う事を聞いてるね!」「良い子だ。」リヴァイはそう言うと、娘の頭を撫でた。 手術は簡単なもので、何も心配は要らないとハンジから説明を受けたが、未だにリヴァイは不安で堪らなかった。 もし手術が失敗してしまったら・・そんな事を考えないようにはしているものの、ベッドに一人横になっているとどうしても悪い事ばかり考えてしまうのだ。「こんにちは、今日も良いお天気ですね。」 突然、隣の病室から声を掛けられ、リヴァイが窓から視線を外すと、そこにはあの“沖田総司”の姿があった。「沖田・・さん?」「もしかして、わたしの事を覚えていてくれたんだぁ、嬉しいなぁ。」そう言って、“沖田総司”は微笑んだ。「沖田さんは、いつからここの病院に?」「半年前かなぁ・・妊娠中に病気が見つかって、出産するまでずっとここに居ます。」「そうなんですか・・」「リヴァイさんは、どうしてここに?」「少し心臓が悪くて、近々手術する予定です。」「さっきの可愛い子は娘さんですか?」「えぇ、もう三歳になります。」「そうですかぁ、わたしね、女の子が欲しいって言ったら、主人に大笑いされたんです。子どもは神様からの授かり物だから、性別関係なく健康でいればいいって言うんです。」「良いご主人ですね。」「えぇ、わたしにはもったいないくらい。」 そんな事をリヴァイが“沖田総司”と話していると、そこへ彼女の夫が病室に入って来た。「今日は随分賑やかだと思ったら、友達が出来たのか。」「はい。」「久しぶりだな・・リヴァイ。」「土方さん・・」“土方歳三”との思わぬ形での再会に、リヴァイは驚きの余り絶句した。「・・まさかあなたが、いえ、あなた達が結婚されているなんて思いもしませんでした。」「まぁ、色々あってな。お前の方も、色々とあるようだな?」「えぇ、まぁ・・」「お前の家族が巻き込まれた殺人事件の真犯人の目星がついた。」「母さんに殺しの濡れ衣を着せた奴の名前を教えて下さい。」「そいつの名は・・」“土方歳三”は、リヴァイの耳元であの事件の真犯人の名を告げた。「後は俺達(警察)の仕事だ。お前は自分の身体を労わってくれ。」「わかりました・・」 とうとう、リヴァイが手術を受ける日が来た。「兄さん、大丈夫だからね。」「ミカサ、俺に何かあった時は・・」「駄目、そんな事を言っちゃ。兄さんは強い。」「そうだな・・」「リヴァイ、行くよ。」「ハンジ、俺はお前を信じている。」「・・わたしは、絶対にあんたを死なせないよ。」ハンジはそう言うと、リヴァイの手を握った。「リヴァイ、あんたはここで死ぬような男じゃない。わたしに全て委ねて、必ずわたし達の元に戻って来い、いいね?」「・・わかった。」「じゃぁ暫く眠って、リヴァイ。」 酸素マスクをつけられ、全身麻酔をかけられたリヴァイは、ゆっくりと両目を閉じた。「先生、血圧と脈拍、共に安定しています。」「よし、このまま続けよう。」ピッピッという電子音のリズムを聞きながら、ハンジはリヴァイの心臓にメスを入れた。 手術は滞りなく進み、ハンジがリヴァイの傷口を縫合しようとした時、血飛沫が彼女の手術着に飛び散った。「ハンジさん、出血が止まりません!」「リヴァイ、こんな所で死ぬな!絶対にあんたを死なせない!」“・・おい、起きろ。” 何処からか、誰かの声が聞こえて来る。(うるせぇよ、俺はもう休みてぇんだ。)“まだ休む時じゃねぇだろ。” リヴァイがゆっくりと目を開けると、目の前には懐かしい光景が浮かんだ。(ここは・・西本願寺の屯所・・どうして俺は、こんな所に?)“リヴァイ。” 襖が開き、リヴァイの前に髷を結ったエルヴィンが現れた。“リヴァイ、前世ではわたし達は結ばれなかったが、今の世ではお前と幸せになりたいんだ。だから、生きてくれ。”(エルヴィン・・) エルヴィンに抱き締められ、リヴァイはその温もりを感じ涙を流した。 その時、一筋の光がさした。 その光に向かって、リヴァイはゆっくりと歩いていった。にほんブログ村
Apr 10, 2020
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「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。 翌朝、エルヴィンはキッチンで梓と自分の朝食を作っていた。「梓、おはよう。」「パパ、おはよう。」 梓に朝食を食べさせ、彼女を幼稚園へと車で送ったエルヴィンは、一人の保護者に声を掛けられた。「失礼ですが、もしかしてあなたは・・」「はじめまして、梓の父親です。」「まぁ・・」 その保護者は、矢代麗と名乗った。「折角ここでお知り合いになったところですから、一緒にお茶でも・・」「申し訳ありません、急いでいるので・・」「あら、そうですか・・」 麗は少し残念そうな様子で、他のママ友達と共に幼稚園を後にした。「母さん、梓の荷物を取りに来た。」「わかったわ。」 エルヴィンが幼稚園から実家へと向かうと、母はどこか気まずい様子で彼を家へ上げた。 梓の荷物は、梓が寝ていた部屋に置かれていた。「ねぇエルヴィン、奈々さんとは本当に別れるの?」「あぁ。」「昨日あんな事があった後、奈々さんのご両親から連絡があってね・・奈々さんが自殺未遂を・・」「俺の気をひく為だろう。」「それにしても、奈々さんはいつもあんなヒステリーを起こすの?」「あぁ。結婚してから、奈々は俺が仕事で帰りが遅くなると、浮気を疑ってヒステリーを起こしていた。もう彼女に振り回されるのは嫌なんだ。」「そう、わかったわ。奈々さんとは今、冷静に話し合える状態じゃないし・・エルヴィン、あなたが住んでいるマンション、ペットは飼えるわよね?」「あぁ、うちはペット可だけれど・・それがどうかしたの?」「ちょっと待ってて。」 そう言って一旦部屋を出た母は、ハムスターのケージを持って部屋に戻って来た。「この子は?」「梓ちゃん、ずっとハムスター飼いたいって思っていたんだけれど、中々リヴァイさんに言えなかったんですって。だからわたしがこの前ペットショップで一緒に選んでお迎えしたのよ。」 母の説明を聞きながら、エルヴィンは白い床材の中から顔を出したキンクマハムスターを見た。「わたしの所に置いて世話をしたいけれど、奈々さんがいつここを襲って来るかわからないし、あなたに預けた方が安全だと思って・・」「わかったよ、母さん。」 梓の荷物と、ハムスターのケージ、そして飼育本などのハムスターの飼育用品一式を車の後部座席に詰めて実家から帰宅したエルヴィンは、巣箱の中で眠っているハムスターに向かって話しかけた。「これから、よろしくな。」 エルヴィンが梓と暮らし始めてから一週間が過ぎた頃、奈々の両親がやって来た。「奈々とは別れてくれ、エルヴィン君。」「わかりました。」 「正直言って、奈々が君に執着するなんて思いもしなかったよ。一度、あの子を精神科で診て貰おうと思う。」「そうですか・・」「エルヴィン君、今まで娘が迷惑を掛けて済まなかったね。」「いいえ。」「梓ちゃんは、元気にしているの?」「はい。」「そう・・これからわたし達は奈々に寄り添っていこうと思います。」 玄関先で奈々の両親を見送った後、エルヴィンは深い溜息を吐いた。 彼らはああ言ってくれていたが、奈々がいつ自宅や実家を襲うのかわからないので、まだ気が抜けない。「パパ。」「梓、どうした?」「あずさ、ここに居てもいいの?」「いいよ。」「コスモちゃんも?」「あぁ、居てもいいよ。」 梓と暮らし始めてから、エルヴィンは仕事を定時で帰宅できるよう調整したり、休日は梓と一日中過ごすようにした。 そんな中でわかったのは、育児と仕事の両立の難しさだった。 働きながら育児をする父親たちの一番の障害は、育児休暇を父親が取得する事や、育児をする為の時短勤務に対する職場の無理解さだった。 エルヴィンの上司は、妻が専業主婦であるのが当たり前の時代で、ひたすら仕事に没頭してきた世代だった。 しかし、“男は仕事、女は家事・育児”という性的役割を重視していた時代はとうに終わりを告げ、今や離婚や同性婚、ひとり親など当たり前になっており、結婚に対する意識や価値観も多様化してきている。 そんな時代に逆行しているかのような会社の体質を変える為、エルヴィンは社長にある提案をした。「社内託児所の設置?」「はい、そうです。子供を預けて働こうにも、預ける所がない。預け先が決まっても、自宅や職場との移動時間がかかり、負担がかかる。社内に託児所があれば、仕事のコストパフォーマンスも上がり、働く親達のストレスが減るのではないでしょうか?」「良い考えだと思うんだが、前例がないねぇ・・」「前例がないなのなら作ればいいのです!」 その日の夜、エルヴィンがキンクマハムスター・コスモのケージの掃除をしていると、ハンジがやって来た。「ふぅん、あんたが社内託児所の設置をねぇ。以前のあんたなら、“育児は全て自己責任”で冷たく突き放してたのに、随分変わったねぇ。」「梓と一緒に暮らしてみて、育児の大変さを知ったよ。子供は大人の都合を完全無視で、どれだけ仕事や家事が忙しくても、子供を優先しなければならない。こんな大変な事を、リヴァイは一人でやっていたんだな・・」「そのリヴァイだけどね、手術の日程が決まったよ。」「そうか・・それは良かった。」にほんブログ村
Mar 30, 2020
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「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。 リヴァイの電話を受けてすぐ、エルヴィンはその足で実家へと向かった。「母さん、梓は何処だ!」「梓ちゃんなら、寝室で休んでいるわよ。」「梓をリヴァイから奪ったのか?」「あら、違うわよ。リヴァイさんが暫く入院して身動きが取れないから暫くお世話を・・」「母さん、リヴァイから電話があった。」「あの人ったら、余計な事をして・・」「どうして梓をリヴァイから、母親から引き離すなんて正気じゃない!」「あの子を犯罪者の子にしたくないからよ!」「母さん・・」「あの人に育児は向かないわ。それん、片親の子なんて梓ちゃんが可哀想・・」「母さんは何も知らないから、そんな事が言えるんだ!」「やめて、大声出さないで!」「梓は返して貰う。」「駄目よ。」「母さん、一体何を企んでいるんだ?」「何も企んでなんかいませんよ。孫を預かるだけよ。」 これ以上母には何を言っても無駄だと思ったエルヴィンは、そのまま実家を後にした。(これから、どうすればいいんだ?) 何日か仕事が忙しく、エルヴィンは中々実家へ帰る事が出来なかった。 その所為でエルヴィンは仕事に集中出来ずミスを連発してしまい、上司から叱責を受けた。「スミス部長、一体どうしたんですか?」「いや、ちょっとね・・」 エルヴィンが昼休みにコンビニ弁当を食べていると、そこへやたらと自分に話しかけてくる女子社員がやって来た。「聞きましたよ、部長。奥様と離婚調停中なんですってね?」「何処からその話を?」「奥様が昨日ここにいらして、引っ越す事になったから挨拶に来たとかで・・」「そうか。」「あ、下のロビーにお母様がお見えになってますよ。」「母が!?」 エルヴィンが下のロビーへ向かうと、ソファには母と梓の姿があった。「母さん、どうしてここに?」「梓ちゃんが、あなたに会いたいって聞かないのよ。」「パパ~!」 母の膝上に座っていた梓は、エルヴィンの顔を見るなりエルヴィンに抱き着いて来た。「ねぇ、あなたお昼まだでしょ?外で一緒に食べに行きましょうよ!」「母さん・・」 母に半ば強引に連れられ、エルヴィンは都内某所にある中華レストランへと向かった。 そこには、奈々と彼女の両親の姿があった。「少し遅くなってしまいましたかしら?」「いいえ、こちらも来たところですから。」「母さん、これは一体どういう事なんだ?」「昨夜話していたでしょう。梓ちゃんをうちで引き取るって。詳しい話は、食事をしながらでも・・」「母さん、奈々とは別れると言っているだろう!どうして勝手な事を言うんだ!」「エルヴィン、落ち着きなさい!」「あなた、やっぱりわたしを捨てて、あの人とよりを戻すつもりなんでしょう!」「もう君とは一緒に暮らしたくない、それだけだ!」「何よ~!」 奈々はそう言って、近くにあった皿をエルヴィンに向かって投げつけた。「もうわたしはこれで失礼する。」 エルヴィンが個室から出た後、中から皿が割れる音と奈々のヒステリックな声、そして母と彼女の両親の悲鳴が聞こえて来た。「あの人達の食事代はわたしが払います。」 エルヴィンは店への迷惑料を兼ねて、奈々達の食事代を払った後、店から出て行った。 仕事を終え、エルヴィンが帰宅した後、自宅の固定電話の留守電メッセージが十四件も入っており、それらは皆、母からだった。 母のヒステリックな声を聞きたくなくて、エルヴィンは浴室に入ってシャワーを浴びた。シャワーから出てエルヴィンが腰にバスタオル一枚だけを巻いた姿で浴室から出ると、今度は玄関チャイムが鳴った。 こんな時間に誰だろう―エルヴィンがそう思いながらインターフォンの画面を覗き込むと、そこには誰も居なかった。(気の所為か・・)そう思いながらエルヴィンが髪を乾かしに脱衣所へと戻ろうとした時、玄関チャイムが再び鳴った。『パパ・・』 インターフォンの画面越しに聞こえて来たのは、愛娘の声だった。「梓、どうしてここがわかったんだい?」「お祖母ちゃんが、パパの住所を教えてくれた。」「そうか・・」 何故こんな時間に、一人で梓が自宅へやって来た理由はわからないが、エルヴィンは彼女を放っておくわけにはいかず、彼女を家に上げた。「パパ、今夜はパパと一緒に寝てもいい?」「いいよ。梓、良く一人でパパの所まで来られたね、偉いねぇ。」「ねぇパパ、あずさは要らない子なの?」「どうして、そんな事を・・」「ママがそう言ってた。」「何て事だ・・」 大人達の罵り合いを、梓はどんな顔で聞いていたのだろうか。「梓は要らない子なんかじゃないよ。」エルヴィンの言葉を聞いた梓は、彼の隣で眠った。にほんブログ村
Mar 27, 2020
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「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。“純喫茶・シーナ”を後にしたエルヴィンは、適当に外で食事を済ませ、帰宅した後、ハンジから病院で渡されたリヴァイの育児日記に目を通した。“最近、貧血と吐き気が酷くて病院へ行ったら、おめでとうございますと医者から言われた。” リヴァイの震える字の下に、胎児のエコー写真が貼られていた。小さい黒点の上に矢印で『エルヴィンと俺の子』とリヴァイの字で書かれていた。“悪阻が酷くて何も出来ねぇ。食欲はあるが、食べ物の臭いを嗅いだだけでも吐いちまう。”“腹の子は順調に育っている。医者から性別は女だと言われた。エルヴィン(父親)に似るといいな。”“どうやら腹の子は俺に似てお転婆になりそうだ。胎動が激しすぎて寝られやしねぇ。”“ハンジに励まされながら、エルヴィンそっくりの女の子を産んだ。良かった、あいつに似て。眉毛は俺に少し似ている。” リヴァイの育児日記を読んだ後、エルヴィンは自然と涙を流していた。(リヴァイ、君に今すぐ会いたい・・) エルヴィンがリヴァイの育児日記を閉じた後、突然玄関のチャイムが鳴った。(こんな時間に、一体誰だ?) エルヴィンがそう思いながらインターフォンの画面を覗くと、そこには昼に会ったケニーが映っていた。 『よぉ、ちょっと中で話さねぇか?』「・・わかりました。」 エルヴィンがケニーを部屋の中へと招き入れると、彼は少し疲れたような顔をしながらソファに座った。「何かあったのですか?」「あぁ。」 ケニーはそう言うと、ある物をエルヴィンに見せた。 それは、今日発売されたばかりの週刊誌だった。「ここに、お前とリヴァイとの事が書いてある。」「何だって!?」 エルヴィンがケニーの手から週刊誌をひったくると、その記事に目を通した。 そこには、何処から入手したのか、中学時代のリヴァイの写真が載っていた。「どうして、こんなものが・・」「クシェルが殺した記者の知り合いが、俺達への復讐を始めたんだ。」「復讐?一体何の為に?」「それをお前に話そうと思ったんだよ。」 ケニーは、深い溜息を吐いた後、ズボンのポケットからICレコーダーを取り出した。「これは?」「クシェルが起こした事件の目撃証言がここに入っている。」 エルヴィンがICレコーダーの再生ボタンを押すと、若い男の声が流れた。『・・事件の日、わたしは現場の近くで友人と飲みに行っていました。友人達と別れた後、誰かが言い争う声が聴こえて来たので、声が聞こえて来た方へと向かうと、地面に倒れている男性を見ました。その男性の他に、人は居ませんでした。』「この目撃証言は、嘘だ。こいつは、金を貰って証言を偽った。」「誰が目撃者に金を渡したんです?」「この記事を書いた村瀬って奴だ。村瀬は、あの事件の真犯人に頼まれて、俺達に殺しの濡れ衣を着せた。その真犯人は、こいつだ。」ケニーはそう言うと、エルヴィンに一枚の写真を見せた。 そこに写っていた人物は、ある大物政治家の息子だった。「こいつは、親の権力を笠に着て、数々の悪事を重ねた奴だ。クシェルに付きまとっていた奴は、あの記者じゃなくてこいつだ。」「ケニーさん、話しが全く解らないのですが・・」「あの記者殺しの事件、俺もクシェルもあいつを殺しちゃいねぇ。」「もし彼が・・この写真に写っている青年があの事件の犯人だとしたら、その事をどう証明するんですか?」「俺は、色々と情報通の知り合いが多くてな。今、こいつがした悪事の証拠を探している最中だ。何かわかったら、連絡するよ。」「そうですか。」「この事は、リヴァイには内緒だぜ。」「・・わかりました。」 ケニーが部屋から出て行った後、エルヴィンは一気に疲れが押し寄せて来て、そのままソファで着替えもせずに寝てしまった。「・・もう、朝か・・」 エルヴィンはそう言って眠い目を擦りながらソファから起き上がると、浴室でシャワーを浴びた。 今日は久しぶりの休みで、エルヴィンは平日の昼間にソファに寝転がりながらテレビを見ていた。 夕食の時間になろうとした時、エルヴィンの元に突然母親がやって来た。「母さん、急に来るなんてどうしたんだ?」「エルヴィン、梓ちゃんをうちで引き取りましょう!」「母さん、梓の事をどこから聞いたの?」「奈々さんから聞いたのよ。昨日、奈々さんと奈々さんのご両親と話し合って来たの。不妊治療は諦めて梓ちゃんをうちで引き取ろうって。リヴァイさんの所より、うちの方が・・」「やめてくれ、母さん!」「エルヴィン、子供を諦めろと直接奈々さんに言えるの?奈々さんならきっと梓ちゃんの良い母親に・・」「もう、奈々とは暮らせない。愛のない結婚なんて、するんじゃなかった・・」「エルヴィン、離婚なんて絶対に認めませんからね!」 母親は言いたい事だけ言うと、部屋から出て行ってしまった。 翌日、エルヴィンがいつものようにオフィスで仕事をしていると、机に備え付けられた電話が鳴り出した。「もしもし・・」『エルヴィン、梓をどこへやった!』「リヴァイ?」『梓を・・娘を返せ!』 リヴァイの言葉を聞いたエルヴィンは、自分が恐れていた事が起きた事に気づいた。 にほんブログ村
Mar 16, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。クシェルは、未婚のままリヴァイとミカサを産んだ所為で、故郷の村人達から迫害を受けた。 だが、それは新興宗教団体の代表・宇佐見が現れた事により、終わりを告げた。「クシェルさん、あなた達は今まで、村人達から酷い目に遭わされて来たんでしょう?」「えぇ・・」「今の時代、未婚の母など珍しくも何ともないというのに、彼らの脳は江戸時代から退化したまま止まっている。」 ある日、クシェルは村内会の集まりに出た時、宇佐見と会った。 彼は髪と髭を長く伸ばし、白の上下のトレーナー姿だった。「あなたはこのまま、黙って村人達からの嫌がらせに耐えるおつもりですか?」「わたしは、近々この村を離れます・・」「村人達を、懲らしめてやりたいと思いませんか?」「・・えぇ。」「わかりました。」 宇佐見はそう言って笑うと、その場から去っていった。 その後、あの秋祭りの惨劇が起きた。 上京した後にそれを知ったクシェルは、宇佐見とのやり取りを思い出し、暫く震えが止まらなかった。 上京後、クシェルは昼のスーパーで、夜はスナックで働き、リヴァイ達を育てた。 独身時代にスナックで働いていたクシェルは、長年のブランクなどものともせず夜の世界でたちまちトップに君臨した。 そんな中、クシェルの元に一人の男がやって来た。「わたし、こういう者です。」そう言って男は、クシェルに一枚の名刺を見せた。“週刊スクープ 石川”「実は、葡萄酒毒殺事件の真相を探っていましてね。あなた、あの宇佐見とは生前親しかったようですね?」「ただの、ご近所さんでした、彼とは・・」「また来ます。」 その後、石川は何度も店に来ては、クシェルにしつこく付きまとった。「あいつ、また来ていますね。追い払いましょうか?」「えぇ、お願い。」 クシェルはママに事情を説明し、店を辞めた。これで恐怖は終わると思っていた。だが―「また、お会いしましたね。」 スーパーのパートを終え、クシェルが店の裏口から出て来た時、彼女を待ち伏せしていた石川がクシェルの前に現れた。「やめて、離して!」「お話を聞くだけでもいいじゃないですか~」 石川はそう言いながら、クシェルを人気のない倉庫の中へと引き摺り込もうとした。「やめて!」 クシェルは近くに置いてあった鉄パイプで石川の頭を殴った。「あ・・」 地面に倒れた石川が動かないのを見たクシェルは、その場から暫く動く事が出来なかった。「おいクシェル、そこで何してんだ?」「兄さん・・」 ケニーは、地面に倒れたまま動かない石川と、鉄パイプを握り締めて蒼褪めている妹を交互に見た後、瞬時に状況を把握した。「こいつは、俺が殺した。」「兄さん?」 ケニーは妹から鉄パイプを奪うと、そこについていた指紋を綺麗に拭い取った。「誰か、お前ぇとその男が揉めているのを見た奴は居ないな?」「えぇ、居ないわ。」「そうか。いいかクシェル、お前は誰も殺していねぇ。わかったな?」「わかったわ、兄さん。」 こうしてケニーは、妹の罪を被り刑務所で服役した。「何てことだ・・」 全てが真実ならば、リヴァイ達はどうなってしまうのだろう?「ハンジ、頼みたい事があるんだ。」 翌日、エルヴィンは休みを取って、ある場所へと向かった。 そこは、飲み屋街の一角ある雑居ビルの二階にある、“純喫茶 シーナ”だった。「いらっしゃい。」 エルヴィンが店の中に入ると、そこは何処か20世紀初頭の欧州を思わせるかのようなレトロな雰囲気で、椅子やティーカップはアンティークのようだった。「ご注文は?」「コーヒーを。」「かしこまりました。」 暫くエルヴィンがコーヒーを飲みながら読書をしていると、テンガロンハットを被ったマスターと思しき男が店に入って来た。「クソ、今日は2万負けたぜ。たく、パチンコはなんかするもんじゃねぇな。」「馬鹿ですか、あなた?それよりもマスター、あなたに客です。」「あん?」「ケニー=アッカーマンさんですね?わたしはエルヴィン=スミスと申します。」「エルヴィン?あぁ、リヴァイの別れた旦那か。一体俺に何の用だ?」「・・あなたが起こした事件の事を、お聞きしたくて・・」「おい、店を“準備中”にしておけ。」「わかりました。」「俺に何の用だ?」 リヴァイの伯父・ケニーは、そう言って溜息を吐いた。「クシェルさんの・・妹さんの手紙を読みました。」「そうか。なら、話が早ぇな。」ケニーはそう言って笑うと、テンガロンハットを脱いだ。「あの事件は、俺がやった。それだけだ。」「嘘を吐くのは、妹さんの為ですか?」「あぁ、そうさ。それ以外に何があるっていうんだ?」ケニーはそう言うと、ソファから立ち上がった。「話はもう済んだから、“準備中”の札を外せ。」「わかりました。」「コーヒー代は俺の奢りだ。わかったんなら帰りな。」「失礼します。」 エルヴィンは、何の収穫も得られずに、“純喫茶 シーナ”を後にした。にほんブログ村
Mar 9, 2020
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「進撃の巨人」の二次創作小説です。 作者様・出版者様とは関係ありません。 二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。 「何をしにここへ来たの?」 「リヴァイさんは何処?彼と会って話がしたいの。」 「兄さんは今、話せる状態じゃない。」 「そう、じゃぁあなたに話すしかないわね。」 奈々はそう言うと、クラッチバッグの中から一枚の書類を取り出した。 「これは?」 「リヴァイさんに代理母出産を頼もうと思ったけれど、無理みたいだから、梓ちゃんをこちらで暫く預かるわ。」 「そんな事、させない。あなたには、育児には向いていない。」 「やる前からどうしてわたしには育児が無理だと決めつけるの?優秀なシッターを雇うから、心配要らないわ。」 「あなたは、梓ちゃんを人質に取って、兄さんを自分の言いなりにしたいだけ。そんな事はさせない。」 「何でも疑うのが、刑事の性分なのね。人の好意をはねつけて・・」 「善意の押し付けは、好意とは言えない。」 ミカサと奈々が暫く廊下で睨み合っていると、そこへリヴァイを担当している看護師がやって来た。 「すいません、どちらがご家族の方ですか?」 「わたしです。」 「患者さんの意識が戻りましたので、一緒に病室まで来て下さい。」 「わかりました。」 ミカサが看護師と共にリヴァイの病室に入ると、丁度彼がベッドから起き上がる所だった。 「兄さん。」 「ミカサ、心配かけて済まなかったな。梓はどうしている?」 「梓は兄さんが居ない事に気づいて夜泣きが酷くなってる。だから、ゆっくりでもいいから身体を直してわたし達の所へ帰って来て。」 「・・わかった。」 「さっき、あの人が来た。梓を引き取ると言ってきた。」 「‥あの女、ふざけた事を・・」 リヴァイはそう言って拳を固めた後、溜息を吐いた。 「梓の事は、わたし達が守る。」 「ミカサ、済まねぇな。」 「謝らないで。」 ミカサが病室から出ると、廊下では奈々とエルヴィンが言い争っていた。 「君は狂っている!よくもそんな事が言えたものだな!」 「何よ、不妊治療の成果が出ないのはあなたが協力してくれないからでしょう!」 「もう君にはうんざりだ!」 「お二人共、これ以上騒ぐのなら出て行ってください!」 「わかったわよ、うるさいわね!」 奈々はヒステリックにそう叫ぶと、エルヴィンに背を向けて去っていった。 「リヴァイ、入ってもいいか?」 「お前ぇにはもう話す事はねぇと言った筈だが?」 「・・梓を、暫くこちらで預からせてくれないか?」 「あの女に育児は向かねぇ。それに、父親の資格すらないお前ぇに、安心して娘を任せられるか。養育費を毎月振り込むだけで、父親面するんじゃねぇ。」 リヴァイはそう言うと、エルヴィンにそっぽを向いた。 「ねぇ、エルヴィンに一度だけでも機会(チャンス)をあげたら?」 「あいつとは、もう終わっただけだ。」 「自己完結するのが、あんたの悪い癖だよ。あんたはそうやって、一人で抱え込むよね。」 ハンジはそう言うと、リヴァイに文庫本が入った紙袋を手渡した。 「これ、暇潰しにでも読んで。」 「あぁ、悪ぃな。」 「他に何か要る物があったら言って。」 「・・部屋のリビングに入ってすぐ左側にある薄茶のラックに、俺のノートパソコンがある。それを持って来て欲しい。USBメモリも一緒に置いてある。」 「わかった。」 ハンジが病室から出て行った後、リヴァイは紙袋の中から一冊の文庫本を取り出した。 カナダのL・M・モンゴメリーの『赤毛のアン』 孤児のアンが、プリンス・エドワード島に住む老兄妹と暮らす日々を描いたものだった。 「・・チョイスがかしいだろ、クソ眼鏡。」 そう言いながらも、ページを捲るリヴァイの顔は、優しく微笑んでいた。 「ここだね。」 リヴァイから合鍵を渡されハンジは彼が住んでいるアパートの部屋へと向かった。 そこは、潔癖症であるリヴァイによって、まるで手術室のように磨き上げられた清潔な部屋だった。 ラックからリヴァイのノートパソコンを取り出そうとした時、ハンジは丁寧に組紐で纏められた数冊のノートに気づいた。 「これ、参考になるかどうかわからないけど。」 「これは?」 リヴァイにノートパソコンとUSBメモリを手渡して、リヴァイの了解を得て、あのノートをエルヴィンに手渡した。 「梓ちゃんを妊娠中の時から、三歳まで毎日つけている育児日記。育児中のストレスや、妊娠中のストレス、孤立した中での育児の事を、リヴァイは毎日書いているよ。でもね、あんたへの恨み言は一行も書かれてなかったよ。」 「・・そうか。ハンジ、わたしは唯知りたいんだ。リヴァイが三年前、わたしの前から姿を消したのかを。」 「ねぇエルヴィン、ある人が罪を犯したら、その家族も裁かれるべきなのかな?」 「リヴァイの伯父さんの事を言っているのか?」 「・・いや、違うよ。クシェルさんの事だ。」 ハンジはそう言うと、ミカサから預かったクシェルの手紙をエルヴィンに手渡した。 「ミカサさんには・・」 「彼女からは許可は取ってある。これを読んだ後にあなたがどう行動するのかは、あなたが考えて決めて。」 「・・わかった。」 エルヴィンが帰宅すると、奈々は実家へと帰った後だった。 冷えたリビングのソファに座り、エルヴィンはクシェルの手紙に目を通した。 そこには、“あの日”彼女に何が起きたのかが詳しく書かれていた。 それは、衝撃的な内容だった。 にほんブログ村
Mar 2, 2020
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「進撃の巨人」の二次創作小説です。 作者様・出版者様とは関係ありません。 二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。 「梓、そろそろ起きないと、幼稚園に遅刻・・」 リヴァイがそう言いながら隣で寝ている筈の梓を起こそうとした時、彼女が今、ミカサの家に預けられている事を思い出した。 いつも朝は、幼稚園へと送り出す為に、梓の弁当を作り、朝食を済ませ、梓を着替えさせる慌しい時間帯だったが、梓が居ない今、ゆっくりと流れる時間の中でリヴァイは今まで溜まっていた洗濯物を片づけ、汚れたキッチンのガスコンロの掃除などをして一段落ついた後、時計を見たらもう昼の12時を過ぎている事に気づいた。 (こんなに家事に精を出したのは久しぶりだな。) いつも、梓の事で精一杯で、家事は二の次だった。 誰も親戚・知人・友人が一人も居ない中での育児は、孤独とストレスの塊に押し潰されそうな、終わりのない日々だった。 ストレスの所為で、リヴァイは何度か梓を殺そうとした事があったが、その都度思い留まったのは、学生時代からの友人であったハンジが、黙ってリヴァイの育児の愚痴を聞いてくれたからだった。 愚痴を聞いてくれるだけでも、リヴァイの中に溜まっていた負の感情が減ってゆくのを感じた。 “あんたさ、少し肩の力を抜いた方がいいよ。” “そうか?” “完璧を目指していたら、苦しくなるよ。だから、話しだけでもしてよ、聞いてあげるから。” リヴァイは紅茶を飲みながら、無意識にハンジの番号を呼び出していた。 「珍しいね、あんたがわたしにご飯を奢ってくれるなんてさ。」 「って言っても、牛丼屋だけどな。」 「別に良い、今研究論文書いていて、もう三日も食べてなかったから助かるよ~!」 「三種のチーズとアラビアータ牛丼大盛、お待ち~!」 「リヴァイ、ビール頼んでいい?一杯だけだから、いいよねぇ~?」 「好きにしろ。」 隣でハンジがこの牛丼屋の期間限定メニューを掻き込むのを半ば呆れ顔で見ながら、リヴァイはチーズカレーを食べた。 「かぁ~、三徹後に飲むビールは美味ぇ~!」 「良く昼間から飲めるな。」 「今日は久しぶりの休みだからね。ねぇリヴァイ、あんたがこうしてわたしにご飯を奢ってくれる時って、いつも深刻な話をする時だよね?」 「あぁ。」 牛丼屋から出たリヴァイは、自宅アパートの部屋にハンジを連れて行った。 「ここなら、人目につかねぇし、ゆっくりと話が出来る。」 「そうだね。それで、話って何?」 「ケニーが釈放された後、奴は俺にある“仕事”を紹介をしに来た。それが・・」 「あのビデオの仕事?」 「あぁ。一回の撮影でかなりの金が入る。契約は一か月間。撮影が終わったら、手術費用が・・」 「そんな仕事、辞めなって!あんたの身体が持たないよ!」 「まともな仕事に就いて稼いでいたら、手術する前に俺が死ぬ。」 「そんな・・」 気まずい沈黙が二人の間に流れた時、玄関のチャイムが鳴った。 「誰だろうね、こんな時間に?」 「さぁな。」 リヴァイがインターフォンの画面を覗き込むと、そこにはエルヴィンの姿が映っていた。 『リヴァイ、ここを開けてくれないか?』 「エルヴィン、何のつもりだ?」 『話がある。』 「・・わかった。」 リヴァイが渋々エルヴィンを部屋の中へと入れると、彼はいきなりリヴァイを抱き締めた。 「てめぇ、何を・・」 「リヴァイ、君の手術費用を全額君の口座に振り込んだ。だからあんなバイトはすぐにやめてくれ。」 「勝手な事をすんな!」 「リヴァイ、余り興奮したら、心臓に負担がかかるよ。」 「俺は、てめぇの助けなんて要らねぇ!」 そう叫んだリヴァイは、突然胸を押さえて苦しみ始めた。 「リヴァイ、しっかりして!」 「息が、出来ねぇ・・」 「今すぐ彼を病院へ連れて行こう!」 リヴァイを病院へと連れて行ったハンジは、彼の心臓が破裂寸前である事を知り、絶句した。 「ハンジさん、兄さんは・・」 「今すぐ手術しないとだめだ。」 「お願いします、兄さんを救ってください!」 手術によってリヴァイは一命を取り留めたが、彼の意識が戻らない状態が暫く続いた。 「ねぇ、クシェルさんはどうしているの?」 「母さんはこの旅館で仲居をしている。月に一回、手紙が来る。」 「そう。ねぇ、どうしてあなた達母子は離れて暮らすようになったの?」 「伯父さんが逮捕された後、わたし達は何処に行っても犯罪者の家族として迫害を受けた。その所為でわたし達は何度も引っ越しをした・・」 ミカサは、今まで話さなかった、“あの日”の事を静かに話し始めた。 それは、ミカサ達が何度目かの引っ越しを終え、漸く安定した生活を送れた頃の事だった。 その日、リヴァイ達がいつものようにトランプをしながらクシェルが仕事から帰って来るのを待っていると、玄関のドアが突然荒々しく誰かに開けられた。 「母さん・・」 「リヴァイ、ミカサ、あんた達は早く寝なさい!」 「でも・・」 「いいから、寝なさい!」 そう言ったクシェルのワンピースは、血と泥で汚れていた。 「お母さんに、一体何があったの?」 「それは、今でもわからない。今は兄さんに早く元気になって欲しい、それだけ・・」 ミカサがそう言ってハンジの方を向いた時、彼女は奈々が自分達の方へとやって来る事に気づいた。 「お久しぶりね。」 奈々はそう言うと、ミカサに向かって微笑んだ。 にほんブログ村
Feb 28, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「どうぞ、おかけになって。」「は、はい・・」 エルヴィンの妻・奈々がリヴァイを連れて行ったのは、二十四時間営業のファミリー・レストランだった。 平日の午前中だという事もあり、店内にはリヴァイと奈々の二人だけだった。「お話とは、一体何でしょうか?」「あなた、エルヴィンに対して未練はないのね?」「はい。彼とはもう赤の他人同士ですから・・」「そう。あなた、エルヴィンの子を産んでみたくない?」「は?」 リヴァイは最初、奈々の言っている事がわからなかった。「わたしは子どもが産めない身体なの。」 奈々はリヴァイに、不妊専門クリニックを受診し、自分が不妊症である事、不妊治療が上手くいかず、自分と夫の両親から責められている事などを話した。「この書類にサインして。」「“代理母出産”?」「お金ならいくらでも出すわ。だから・・」「お断りします。」 リヴァイは自分の紅茶代だけを払って店から出て行った。「金持ちは、これだから嫌いだ・・」 彼がそう呟きながらアパートのエレベーターに乗り込むと、そこへ一人の男が乗り込んで来た。「よぉリヴァイ、背は相変わらずだな。」「ケニー・・」「何だそのシケたツラは?」そう言ったケニーは、屈託のない笑みを浮かべた。「それで、久しぶりに俺に会いに来た理由は何だ、ケニー?」「ちょっと、お前ぇに頼みてぇ事があって来たんだよ。」「金ならねぇぞ。」「お前ぇ、エルヴィンの女房にさっき会って来ただろう?」「あぁ。」「実はな、お前ぇに仕事の紹介をしに来たんだよ。」「は?」 その日の夜、エルヴィンは仕事仲間と久しぶりに飲みに行った。「二次会行く人~!」「は~い!」 上司に連れられ、エルヴィン達は夜の繁華街へと繰り出した。「あの店にしよう!」 エルヴィン達が入ったのは、グランドピアノの生演奏が聴ける、少し高級なスナックだった。「いらっしゃいませ。」 店に入り、ボックス席に着いたエルヴィンは、フロアの向こうから青いドレスを着た一人のホステスが自分達の所へとやって来る事に気づいた。 そのホステスは、リヴァイだった。「リヴァイ・・」「エルヴィン・・」 リヴァイは思わぬ形で元夫と再会して少し動揺したが、すぐに営業用スマイルを浮かべた。「リヴァイ、あのお客さんと知り合いなの?」「・・あぁ。前に話したろ、別れた旦那だ。」「へぇ、結構いい男じゃない。何で別れたの?」「・・色々あってな。」 店のバックルームで、リヴァイはそう言うと煙草を咥えてそれに火をつけた。「まぁ、あたしもこの商売やっているから、色々とワケアリの人間を見て来たから何も言わないけどね。」「ありがとう、ママ。」「それよりさ、あんた身体の方は大丈夫なの?」「何とか大丈夫だ。今朝、別れた旦那と再婚した嫁が俺に会いに来て、金やるから代理母出産しろだと、ふざけた事を言ってきやがった。」「断ったんだよね?」「あぁ。金持ちはこれだから嫌いだ。」「言えてる。」「ナナバ、これから時間あるか?少し話したい事がある。」「わかった。」 店を閉めた後、ナナバはバーカウンターでリヴァイと酒を飲みながら今後の事を話し合った。「そうか・・あんたの伯父さんがねぇ・・」「これから、この店のバイトと、伯父貴の“仕事”の掛け持ちをする事になった。」「大丈夫なの?」「あぁ。」そう言ったリヴァイは、どこか疲れているように見えた。「大丈夫、誰にも言わないから。」「ありがとう。」 翌朝、エルヴィンはコーヒーを飲みながら朝刊を読んでいた。「じゃぁ、行って来るわね。」 女友達と五泊六日のハワイ旅行へと出かける妻を送り出した後、エルヴィンは自分のノートパソコンを起動させた。 仕事関係のメールをひと通りチェックしていると、ハンジから一通のメールが添付ファイルつきで届いた。“これ、リヴァイじゃない?” エルヴィンが恐る恐る添付ファイルを開くと、一本の動画が再生された。 それは、二人組の男達が一人の小柄な女を凌辱しているものだった。 観終わった後、エルヴィンは吐き気に襲われ、暫くトイレに籠もって胃の中の物を全て吐き出した。『エルヴィン、折角の休みなのにごめんね。』「ハンジ、あの動画はいつ見つけたんだ?」『三日前かな。モブリットが見せてくれてさ、あの動画を。あれ、かなりマニア向けのサイトのメインコンテンツになっているんだよね。』『その動画のサイトのURLを教えてくれ。』『・・わかった。』 エルヴィンがハンジに教えて貰ったサイトを見ると、そこには人気のコンテンツがサイトのトップ画面に表示されていた。(リヴァイ、どうして・・) その日一日中、エルヴィンは何も手につかなかった。にほんブログ村
Feb 24, 2020
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「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。 彼らが行う“正義”によって、リヴァイ達は何度も引っ越しを余儀なくされた。クシェルは心労が祟り、“あの日”を境にリヴァイ達と離れて暮らす事になった。(これは、罰だ。前世で多くの者を殺めた俺への・・) いつしか、リヴァイは笑う事も泣く事も忘れてしまった。無表情でいれば、周りが自分に何もしないとわかったからだ。 だから、リヴァイは学校や近所で嫌がらせを受けても、無表情を貫いた。その結果、リヴァイを構おうとする者は居なくなった。 ただ一人を除いては。「君、何でいつも一人なの?」 中学二年の頃、三学期を迎えた頃にやって来たその転校生は、何かと一方的にリヴァイに話しかけて来た。 転校生でリヴァイが抱える事情を全く知らない事もあったのだろうが、彼は毎日リヴァイに話しかけて来た。 はじめは鬱陶しがっていたリヴァイだったが、その転校生に少しずつ心を開くようになっていった。 そんな中、転機が訪れたのは社会のグループ発表の時だった。 リヴァイは次々とクラスメイト達がグループを作っていくのを遠巻きに眺めながら、一人で発表課題に取り組もうとしていた。「ねぇ、まだグループに入っていないんだったら、うちのグループに入れば?」「いい。一人でやった方がいいから。」「でも・・」「アッカーマンにはあんまり構わない方がいいぜ。」「そうそう、あいつ色々とヤバいから。」 それから、転校生はクラスメイト達に何を吹き込まれたのかはわからないが、リヴァイに話しかける事はおろか、目を合わす事もしなくなった。 中学を卒業してからは高校に行かず、悪い連中とつるんで無味乾燥な日々を送っていた。 ヤンキーの世界は、誰にも気兼ねすることなく本音で話し合える関係だったので、リヴァイは生まれて初めて自分の居場所というものを見つけたような気がした。 そんな中、リヴァイが出会ったのが、暴力団の若頭だった。彼は教養があり、リヴァイの事を一目で気に入って自分の愛人にならないかと誘って来た。 リヴァイは、その誘いに乗った。 ヤンキーの世界とは違い、極道の世界は厳格な上下関係で構成されていた。 組のナンバー2である若頭の愛人という地位は、リヴァイに束の間の安寧をもたらした。 彼はただ何も考えず、背中に色鮮やかな刺青も彫り、若頭が与えてくれた屋敷でのんびりとテレビを見て過ごす日々を送っていた。 抗争が起き、組が潰れたその日までは。 学歴も何もないリヴァイにとって、手っ取り早く金を稼げるのは水商売の世界だった。 その世界で、リヴァイは己の身を商売道具として金を稼いだ。 彼は生まれつき、男と女の機能を両方併せ持っていた。 リヴァイは、昼夜逆転の生活を送りながら、夜の世界に馴染んでいった。 そんな中、彼は客同士の喧嘩を仲裁した際ナイフで腹を刺され、病院に搬送された。 そこでリヴァイは、エルヴィンと出会った。 当時駆け出しの研修医だったエルヴィンは、救急救命室(ER)に配属されたばかりだった。 エルヴィンは、まだ少年らしさが残るあどけない顔立ちをしていたが、長身で白衣の上からでもわかる見事な肉体美の持ち主だった。 そんな彼がじっと青い瞳で自分を見つめて来るので、リヴァイは思い切って彼に尋ねてみた。「お前、俺の顔に何かついているか?」「ねぇ、もしかしたら・・リヴァイ君、だよね?」「は?何でお前俺の事知ってんだ?」「覚えてない?中二の時に・・」 エルヴィンの言葉を聞き、リヴァイの脳裏にやたらと自分に話しかけて来た転校生の顔が甦った。「エルヴィン・・エルヴィンなのか?」「思い出してくれたんだね、リヴァイ!」エルヴィンはそう叫ぶと、リヴァイを抱き締めた。「中学以来だね。今はどうしているの?」」「色々とやってる。それにしてもエルヴィン・・あの頃よりもデカくなったな。」「うん・・リヴァイ、これ・・」 エルヴィンが頬を赤く染めながら、リヴァイに携帯の番号が書かれたメモを手渡した。「じゃぁ、またね。」「あぁ・・」 中学生の頃から止まっていた時計の針が、再び動き出した瞬間だった。 エルヴィンと過ごしている間、リヴァイは何故か彼の傍に居る時だけ居心地の良さを感じていた。「ねぇ、僕達付き合わない?」「あぁ・・」 まるでこうなるのが必然であるかのように、エルヴィンとリヴァイは恋人同士となった。「リヴァイ、そろそろ結婚したいな。」「結婚・・」「ねぇ、リヴァイのご両親は何をしている方なの?」「・・親は、二人共交通事故で死んだ。」リヴァイはとっさに苦し紛れの嘘を吐いた。 その嘘がバレたのは、リヴァイがエルヴィンと結婚して三年目を迎えようとした春の事だった。「リヴァイさん、エルヴィンと別れて下さらないかしら?」 突然連絡もなくやって来た姑からそう切り出されたリヴァイは、エルヴィンに妊娠を告げずに彼と離婚した。 誰も知り合いが一人も居ない中でリヴァイが育児に悪戦苦闘している間、エルヴィンが再婚した事を風の噂で聞いた。 離婚してから、リヴァイはエルヴィンと会おうとしなかった。 彼の新しい家庭を壊すような事を、したくはなかったのだ。 だが―「あなたが、リヴァイさん?」リヴァイがゴミ捨てに行って部屋に戻ろうとした時、彼は一人の女性に声をかけられた。「はじめまして、エルヴィンの妻の、奈々です。ちょっとお話しできないかしら?」「・・わかりました。」リヴァイがそう言って女性の車を見ると、それはこの前自分を執拗に追い掛けて来た車と同じものである事に気づいた。にほんブログ村
Feb 21, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「待ったか?」「ううん、今来たとこ。」 大型商業施設の中にあるフードコートは、土日の混雑さがまるで嘘のように、静寂に満ちていた。「悪いな、せっかくの休みなのに呼び出して・・」「別に。それよりも兄さん、顔色が悪いけれど大丈夫なの?」「スーパーのパートは、さっきクビになった。」そう言いながら少し冷めた紅茶を一口飲んだリヴァイは、ここへ来る数時間前の事を思い出した。「アッカーマンさんは良く働いてくれているけれど・・昨夜こんなメールが人事部に届いてね。」新井がそう言ってリヴァイに見せたものは、ケニーが起こした事件を報じた週刊誌の記事のコピーが添付されたメールだった。「クビ、ですか?」「僕も上に何度か掛け合ってみたんだけれど・・駄目だった。」新井は申し訳なさそうにそう言った後、俯いた。彼に責任はない。「お世話になりました。」 リヴァイはロッカーの中の私物を全て取り出してリュックに入れ、昨日まで約四年間働ていた制服をクリーニングに出した。「そう・・また、なのね。」「あぁ。ミカサ、お前は職場で何も言われなかったか?」「大丈夫。戸籍をイェーガー家にうつしたから。」 ミカサの職業は刑事だ。 身内に犯罪者が居ると警察官に採用されないのだが、その時既にイェーガー家の養女となっていたミカサは警察官として採用され、約半年間の訓練を経て交番勤務から捜査一課の刑事となった。「兄さんの事が、わたしは心配・・それに、梓ちゃんの事も。」「梓は、何も言わねぇ。まだ三つだってのに、一丁前に俺に気を遣っていやがる。」「暫くうちに来ればいい。マスコミが兄さんの住んでいるアパートを嗅ぎつけるのは時間の問題。」「・・ありがとうな。」「兄妹同士、助け合うのは当然でしょ。母さんもきっとそれを望んでいる筈。」「あぁ、そうだな・・」 ミカサと別れ、リヴァイは一旦自宅に戻り、クローゼットの中からスーツケースを取り出して中にあった数少ない自分と娘の衣服や私物を詰めた。 一段落してリヴァイが紅茶を淹れようとした時、玄関のチャイムが鳴った。『やっほ~、リヴァイ!近くに来たから遊びに来たよ!』インターフォン越しにそう叫んでケーキが入った箱を片手で掲げたのは、リヴァイの長年の友人であるハンジだった。「うわぁ、綺麗に片付いてんじゃん!」「ハンジ、何しに来た?」「何って、あんたとケーキ食べて駄弁りに来たんだよ。」「・・そうか。」「梓ちゃんは元気?」「あぁ。」「昨夜、エルヴィンからRIME(ライム)が届いたよ。」ハンジはそう言うと、カーキ色のハンドバッグから革表紙カバーがついたスマートフォンを取り出した。「エルヴィンといつそんな事をしてたんだ、お前?」「わたしだけじゃないよ?ほら、こんなグループもあるよ?」 ハンジがそう言ってリヴァイに見せたのは、「チーム幕末組」という名前がつけられたグループだった。「何だ、そのダッセェチーム名・・」「いやぁ、だって“新選組”とかつけたらヤバいじゃん?」「それで、そのチームには、居るのか・・」「わたし達みたいに“記憶”がある人達が居るかって?沢山居るよ!」「そうか・・」「それよりも・・リヴァイ、あんたこれからどうするの?」 リヴァイがハンジを見ると、彼女の顔から笑顔が消えていた。「どうするって?」「あんたの心臓の中にある爆弾はいつ破裂してもおかしくない。その前に手術を・・」「手術は受けねぇ。前にもそう言った筈だ。」「リヴァイ、でも・・」「俺は昔、この手で多くの者を殺めてきた・・その罰が下ったんだろうよ。」「“昔”のあんたは、そんなに悲観的な性格じゃなかったよね?何があんたをそんな風にさせたの?」「・・ケニーが、近々仮釈放されるそうだ。」 ハンジが息を呑む音が聞こえた。「その事で俺は今朝、掛け持ちしていた昼の仕事をクビになったし、梓は幼稚園で孤立しているし、俺もボスママに目をつけられている・・こんな状況を笑い飛ばせなんて無理だろうが。」「リヴァイ・・」「あいつの所為で、俺達はいつも世間から白い目で見られ、石を投げられた事なんて数えてもキリがねぇ。まぁここが、田圃(たんぼ)と電柱しかねぇド田舎よりはマシだがな。」 リヴァイとミカサは、周囲を見渡せば田圃と畑、電柱しかない過疎地の村で生まれ育った。 そこにある娯楽といえば、他人の粗探しと悪口だけだった。 何処そかの嫁がどうの、三軒先の爺さんがボケてきたとか、そんな下らない噂話に興じる村人達を、何処かリヴァイは醒めた目で見ていた。 村人達は、自分達の“文化”を壊そうとする新参者や余所者を酷く嫌った。 彼らの餌食となった者達の多くは、田舎暮らしに憧れて都会から移住してきた人々だった。 長閑で豊かな自然に囲まれた田舎暮らしは、蓋を開けてみれば四六時中村人達から監視される息苦しいものだった。 リヴァイ達もまた、村人の監視対象だった。 リヴァイの母・クシェルは、未婚のままリヴァイを産んだ。 その所為で、村人達はクシェルの事を“娼婦”と罵り、リヴァイ達は村の子供達に石を投げられた。母に対する事実無根の中傷、いわれなき自分達への迫害―まるで生き地獄のような日々を送る自分達の前に、救世主が現れた。 その救世主は、ある宗教団体のリーダー、宇佐見だった。 都会から来た胡散臭い、自分達の生活を脅かす“敵”の存在に、村人達は一致団結し、宇佐見達を追い出そうと躍起になった。 そして、事件は起きた。 秋祭りの宴会で振る舞われた葡萄酒に、劇薬のストリキニーネが混入され、村人三十五人が死亡した。 警察は、事件の犯人である宇佐見を逮捕し、宇佐見は法廷で真実を語らぬまま獄中で自殺した。 クシェルはリヴァイ達を連れ、兄・ケニーが暮らす東京へと引っ越した。 東京での生活は、快適と自由に満ちていた。 道行く人々は誰もリヴァイ達に向かって石を投げたりしないし、通りすがりに罵声を浴びせたりしない。 そんな穏やかな日々が突然終わりを告げたのは、リヴァイが中学一年、ミカサが小学五年生の時だった。 ケニーが、人を殺したのだ。 事件はマスコミに大きく報道され、クシェルは子供達を守る為に、リヴァイ達を知人のイェーガー家に預けた。「いい、何があっても生き延びるのよ、わかったわね?」 そして、再びリヴァイ達は生き地獄のような日々を送った。 今回の加害者達は過疎地の村人達ではなく、正義の仮面を被った名も無き“善人たちだった。にほんブログ村
Feb 17, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「どこか、二人きりで話さないか、リヴァイ?」「お前とは話すことはねぇ。さっさと新しい家族の元へ帰れ。」「リヴァイ、わたしは・・」「パパ、お腹すいた~」 リヴァイがエルヴィンと口論していると、梓が退屈そうにリヴァイのトレーナーの裾を引っ張った。「梓、大きくなったね。」エルヴィンがそう言いながら梓を抱き締めようとしたが、彼女はじっとエルヴィンの顔を見て、こう言った。「おじさん、だぁれ?」 リヴァイとエルヴィンが離婚したのは、梓が生まれる前だった。だから自分の事を梓が憶えていないのは仕方がない―そう思っていたエルヴィンだったが、リヴァイの言葉を聞いてショックを受けた。「梓、知らないおじさんと話したら駄目だ。」「リヴァイ、また来る。」 エルヴィンはリヴァイ達に背を向けると、愛車に乗り込んでエンジンをかけた。 段々遠ざかってゆく元夫の車を見送った後、リヴァイは一人娘の手をひいてエレベーターで自宅がある六階へと向かった。「梓、今ご飯作るから、テレビ観ながら待ってな。」「うん!」 梓は玄関で靴を脱ぐとテレビの前に座り、お気に入りのアニメのDVDを観始めた。今日は夜の仕事は、店が定休日なので休みだ。大好きな娘の為にハンバーグカレーをリヴァイが作っていると、玄関のチャイムが鳴った。「はい・・」『リヴァイ、あたし、ナナバ。ちょっといいかな?』 インターフォンの画面に現れたのは、夜のバイト先のスナックのママ・ナナバだった。「ごめんね、急に来ちゃって。ちょっと話したいことがあってさ・・」「何か、あったんですか?」「実はね・・」 ナナバがリヴァイに話したのは、エルヴィンと結婚した妻が昨夜店に来てリヴァイの事を嗅ぎ回っていたというものだった。 その日、梓が急に熱を出し、リヴァイはナナバに店を休むという連絡を入れたのだった。「あいつの奥さんが、どうして俺の事を嗅ぎ回っているんだ?俺とエルヴィンの縁はとうに切れて・・」「梓ちゃんの親権の事で気になっていると思うのよ、向こうの奥さん。梓ちゃんの親権をリヴァイが持っているとはいえ、子供が居ない向こうとしては、色々と邪推しちゃうんじゃないの?」「たとえば、俺とエルヴィンがよりを戻すとか?そんな事はねぇと、向こうに言っておけ。」「わかった。ねぇリヴァイ、あんたはこのままでいいと思ってんの?」「何の事だ?」「何でもない、忘れて・・」 ナナバはそう言うと、クラッチバッグを掴んで部屋から出て行った。「いただきます!」「いただきま~す!」 美味しそうにハンバーグカレーを頬張る娘の横顔を見つめながら、リヴァイはいつまでこの幸せな時間が続くのだろうかと思っていると、突然彼は胸の激痛に襲われ、慌てて主治医から処方された薬を飲んだ。「パパ、大丈夫?」「大丈夫。だから、梓はもう寝なさい。」「うん・・」 翌朝、リヴァイが梓を幼稚園へ送る為、自転車の後部座席に梓を乗せて住宅街の中を走っていると、彼は突然一台の車からクラクションを鳴らされた。 はじめ、リヴァイはその車の進路を妨げているのではないかと思い、素早く自転車を脇道へと退けたが、車はクラクションを鳴らし続けた。 自転車で幼稚園へとリヴァイが急いでいる間、車は執拗に彼を追い掛けて来た。 幼稚園の敷地内に入ったリヴァイは、車が急にスピードを上げて住宅街の中を走り去っていくのを見て安堵の溜息を吐いた。「アッカーマンさん、どうされました?」「園長先生・・」「ここでは人目がありますから、中でお話ししましょう。」 リヴァイの顔を見て何か事情を察したのか、そう言うと園長先生は彼を応接室へと連れていった。「さっき、何があったのですか?」「急に変な車から煽り運転を受けました。俺はその車の運転手の事を何も知りません。」「そうですか・・」 園長先生はリヴァイの話を聞いた後、溜息を吐いてこう言った。「実は数日前、おかしな電話が園にかかって来たんです。」「変な電話、ですか?」「はい・・アッカーマンさんの事を、根掘り葉掘り相手の方は尋ねて来られました。」「そうですか・・」「アッカーマンさん、そのお話とは別に、少し気になっている事がありまして・・」「気になる事、ですか?」「えぇ・・」 少し気まずそうな顔をした後、園長先生は梓が幼稚園の中で孤立している事をリヴァイに話した。「どうして、そんな・・」「最近、お母さん達のSNSで、アッカーマンさんの伯父さんの事が話題になっています。・」 その言葉を聞いた瞬間、リヴァイは胸の動悸が高まるのを感じた。―まただ。 リヴァイの脳裏に、忌まわしい過去の記憶が、朧気に浮かんでは消えた。「アッカーマンさん?」「失礼します・・これから仕事があるので。」 震える手で椅子の背にかけていたダウンジャケットを掴んで応接室を飛び出したリヴァイは、堰堤を横切る途中、一人の保護者に声を掛けられた。「アッカーマンさん、来週のバザーの事でお話があるのだけれど、いいかしら?」 その保護者は、園に莫大な寄付を毎年している幼稚園の実力者の、矢代麗だった。「これから仕事があるので・・」「貴方の伯父様、もうすぐ仮釈放されるのですってね?」「ケニーが?」「あら、ご存知ないの?」 麗は少し驚いたかのような、しかしどこか勝ち誇ったかのような表情を浮かべながらリヴァイを見た。「ねぇ皆さん、アッカーマンさんとお話しするのは今度に致しましょう。」「そうねぇ、アッカーマンさんはわたし達と違って暇じゃないものねぇ。」「・・失礼します。」 リヴァイはまるで自分の元へ押し寄せて来そうな漣(さざなみ)から逃げるように、幼稚園を後にした。 パート先のスーパーで制服に着替えたリヴァイがタイムカードを押していると、そこへ店長の新井がやって来た。「アッカーマンさん、ちょっといいかな?」「はい・・」にほんブログ村
Feb 14, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。 「進撃の巨人」の二次創作小説です。 作者様・出版者様とは関係ありません。 二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。 「リヴァイさん、お身体の具合はいかがですか?」 「最近胎動が激しくて眠れねぇ。産まれたくて仕方ないんだろうよ。」 「それはそうでしょうね・・」 「まぁ、双子だからな。」 リヴァイがそう言って下腹を撫でた時、激しい痛みを感じた。 「リヴァイさん?」 「もう、産まれるかもしれねぇ。」 「えぇ!」 エレンが突然の事に慌てふためいていると、ミカサが産婆を連れてやって来た。 リヴァイの二度目の出産は、稀に見る難産だった。 彼は男女の双子を産んだが、出血が酷く危険な状態だった。 「あんたを呼んでいるよ、行ってやりな。」 「はい・・」 リヴァイの部屋にエレンが入ると、彼は苦しそうに息を吐いていた。 「エレン、頼みがある・・」 「何ですか?」 「こいつらを、頼む・・」 リヴァイは、そう言った後、息を引き取った。 「リヴァイさん、しっかりして下さい!」 (エルヴィン、漸くお前に会いに逝ける・・) 1880(明治十三)年4月、京。 この日、エルヴィンとリヴァイの長女・梓は、舞妓として正式に“店だし”の日を迎えた。 「遂にこの日が来たなぁ。」 「おかあさん、今までうちを育ててくださりありがとうございました。これからも宜しゅう御頼み申します。」 「あんたの舞妓姿を、あんたの両親に見せたかったなぁ・・」 幸はそう言うと、涙ぐんだ。 「姉上!」 「まぁ、誰かと思うたら忍ちゃんやないの。こんな朝早うからどないしたん?」 「この簪(かんざし)を姉上に渡してくれって、エレンさんが。」 「おおきに。」 梓はそう言って弟・忍から母の形見の簪を受け取り、それを割れしのぶに結ったばかりの髪に挿した。 「梓ちゃん、もう時間え。」 「へぇ、今行きます。」 梓はそう言った後、男衆(おとこし)に手を引かれながら、「花のや」の外へと出た。 2012(平成二十四)年12月、東京。 四年前に起きたリーマン・ブラザーズの経営破綻の煽りを受け、リヴァイの職場であった大手チェーンの飲食店は年明けを待たずに閉店する事になり、従業員は全員解雇された。 ハローワークには連日失業者で溢れており、公園で暮らすホームレスの数も日に日に増えていった。 リヴァイは昼はビルの清掃員とスーパーの惣菜のパート、夜はスナックで働き詰めの毎日を送っていた。 「パパ~」 幼稚園に娘・梓を迎えに行ったリヴァイは、彼女の手を握りながら買い物を近くのスーパーで済ませ、夕飯を食べに近くのハンバーガーショップへと向かった。 「美味しいね、パパ!」 「あぁ、そうだな・・」 自転車の後部座席に梓を乗せ、リヴァイが自宅アパートの駐輪場に自転車を停めていると、駐車場に停めていた一台の車から、一人の長身の男が降りて来た。 「リヴァイ、やっと見つけた・・」 「エルヴィン・・」 リヴァイは、数年前に離婚した元夫・エルヴィンと思わぬ形で再会し、驚きを隠せなかった。 にほんブログ村
Feb 13, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。“リヴァイへ、君がこの文を読む頃、わたしはこの世には居ないだろう。お願いがある、リヴァイ。最初で最後のお願いだ。どうかわたしの後を追うような事をしないでくれ。どうか、生きてくれ・・”(エルヴィン、こんな文遺して俺より先に逝きやがって・・馬鹿野郎が!) エルヴィンの文を読んだ後、リヴァイはそれを握り締めながら嗚咽した。「リヴァイ、ちょっといいかい?」「あぁ。」「じゃぁ、お邪魔するよ。」ハンジはそう言うと、握り飯と茶を載せた盆を持ってリヴァイの船室に入って来た。「はい、まだ港には着かないから、今の内に食べちゃって。」「悪いな。」 ハンジから握り飯を受け取り、リヴァイがそれを食べようとした時、彼は突然激しい吐き気に襲われた。「ちょっと、大丈夫?」「あぁ・・」「あんた、まさか・・」 リヴァイの脳裏に、エルヴィンと最期の時を過ごした湖での出来事が浮かんだ。(エルヴィン、俺に生きろと言ってくれたのは・・俺がこうなっている事を・・俺がお前の子を身籠っている事を知っていたんだな・・狡い野郎だ。) リヴァイは亡き夫への想いを募らせながら、まだ目立たない下腹を撫でた。「産みたいの?」「あぁ。」「これから蝦夷地は厳しい冬を迎える。身体を冷やさないようにするんだよ。」「わかった。」 1869(明治二)年5月11日。 新選組元副長・土方歳三、箱館・一本木関門にて敵の銃弾を受け、戦死。 享年三十五歳。 5月18日、榎本武揚が全面降伏、新政府軍の屯所がある亀田に出頭し、これにより約一年半続いていた戊辰戦争は終結した。 それから一ヶ月後、臨月を迎えたリヴァイは江戸から東京へと名を変えた所にあるエルヴィンの実家に身を寄せていた。にほんブログ村
Feb 12, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「エレンは何処に居るの、アルミン?」「僕も、エレンが何処に居るのかわからないよ。」(エレン、一体何処に・・)「おい、化け物が母成峠で戦っているぞ!」「化け物って、あのデカい猿の事か?」「いいや、黒髪の奴だ!」 藩士たちの話を聞いたアルミンは、その化け物がエレンだという確信を抱いた。「ミカサ、僕達も行こう、母成峠へ!そこにエレンが居るかもしれない!」「わかった!」 ミカサとアルミンが母成峠へと向かっているのと同じ頃、ジークは黒髪の巨人―エレンと死闘を繰り広げていた。 エレンはジークの顔や腹に何度も拳を振るった。彼が動かなくなるのを確認したエレンは、意識を失った。「エレン!」「アルミン、早くエレンを化け物の中から出さないと!」「わかってる。」 ミカサとアルミンが化け物の中からエレンを出そうとしたが、中々上手くいかなかった。「おいガキ共、そこを退け。」「リヴァイさん・・」 リヴァイは素早くエレンを化け物の中から出すと、舌打ちしてミカサとアルミンを見た。「おいガキ共、これは一体どういう状況だ?」「それは僕達にもわかりません・・」「そうか。だがこいつのお蔭で、敵の兵力が少し減った。」 リヴァイはそう言うと、気絶しているエレンをおぶった。「城へ戻るぞ。このままここに居たら危険・・」「リヴァイ、危ない!」 エルヴィンはそう叫ぶと、敵の銃弾からリヴァイを庇った。「エルヴィン!」「怪我は、ないか?」「大丈夫だ・・お前が守ってくれたから・・早く、血を止めねぇと・・」 1868(慶応四)年8月23日。 白虎隊二番士中隊、飯盛山にて自刃する。 リヴァイ達が鶴ヶ城に帰城したのは、日没前の事だった。 城内には怪我人が溢れ、血の臭いに満ちていた。「リヴァイ・・」「ハンジ、エルヴィンを助けてくれ!」 敵の銃弾と砲弾を受けたエルヴィンは、右腕を失った上に内臓を損傷しており、深刻な状態に陥っていた。「エルヴィン、俺はここに居る。だから目を覚ましてくれ、頼む・・」 エルヴィンが意識を取り戻すまで、リヴァイは一睡もせずに彼に付き添った。「リヴァイ、少しは食べないと・・」「わかった・・」リヴァイがそう言って立ち上がろうとした時、微かにエルヴィンが呻き声を上げた。「エルヴィン!」「リヴァイ、そこに、居るのか?」「あぁ、ここに居る。」 リヴァイは必死に涙を堪えながらそう言うと、エルヴィンの手を握った。「・・二人きりにさせてあげよう。」ハンジはそう言うと、エレン達を連れて部屋から出た。「リヴァイ・・お願いが、あるんだ・・」「何だ?」エルヴィンは、最期の言葉をリヴァイの耳元で伝えると、静かに息を引き取った。「リヴァイ・・」「エルヴィンは、さっき死んだ。」「そう・・モブリットも、死んだよ。日新館の火災に巻き込まれてね・・彼は、最期まで勇敢だったよ。」「そうか・・」 1868(明治元)年9月23日。 約一ヶ月もの籠城戦の果てに、会津は降伏開城する。 幕府の為に懸命に戦い、尽くしてきた旧会津藩士達は、1917(大正六)年9月8日にその名誉が回復されるまで、“賊軍”の謗りを受け、極寒の不毛の地・斗南へと強制移住させられた。リヴァイ達は会津を離れ、一路蝦夷地へと向かった。「それでは皆様、お気をつけて。」「八重殿も、どうぞご達者で。」「そういえば、エルヴィン様から文を預かっておりました。」「エルヴィンから?」 山本八重からエルヴィンの文を受け取ったリヴァイは、蝦夷地へ向かう船の中でそれを読んだ。にほんブログ村
Feb 11, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「リヴァイ、みんな無事だったんだね!」 先に城内に入っていたハンジと、リヴァイ達は合流した。「状況は?」「かなり悪い。城下では足手纏いになられねぇよう、自刃した奴らの遺体が転がっていやがる。」「そうか・・日新館は怪我人で溢れていたよ。モブリットを向こうへ手伝わせていたんだが、あちらが落ちるのが先か、こちらが落ちるのが先か、時間の問題だ。」「エルヴィンはどうした?」「白虎隊二番士中隊、朱雀隊と共に母成峠の守備に当たるために戸ノ口原へと向かうつもりだ。」「俺も行こう。」「リヴァイ、危険だ!ここでエルヴィンを待っていた方が・・」「俺はあいつの無事を祈りながら安全な場所であいつの帰りを待つなんて出来ねぇよ。」 リヴァイは背後で自分を制止しようとしているハンジの声を振り切るようにして、城から出た。 若松市中を歩いていると、道端に転がっている遺体の数が増えたような気がした。「エルヴィン、何処だ!」「リヴァイ、ここだ!」 リヴァイがエルヴィンの方へと駆け寄ろうとした時、彼の背後に敵が迫っている事に気づいた。「エルヴィン!」 リヴァイは愛刀の鯉口を切ると、それを敵に向かって投げつけた。リヴァイの愛刀はエルヴィンの肩越しに敵の頭部に命中した。「助かったよ、リヴァイ。」「ここを離れるぞ、エルヴィン。」リヴァイがそう言ってエルヴィンと共に戸ノ口原へと向かおうとした時、遥か彼方から人々の怒号と悲鳴が聞こえて来た。「ば、化け物だぁ!」「逃げろ~!」 藩士達は突如現れた巨大な猿の化け物の出現に戸惑ったが、その化け物による投擲で多くの者が犠牲になった。「さぁて、このまま敵を全滅させちゃおうかなぁ~。」 猿の化け物―もといジークがそんな事を呟いていると、自分が居た左翼側の軍勢が大きく崩れた。(何だ?) ジークが辺りを見渡すと、そこには大砲や兵士達を次々と空中へと放り投げている化け物の姿があった。「リヴァイ、少し休まないか?」「何言ってんだ、エルヴィン。こんな状況で休める訳が・・」そう言って自分を睨みつけたリヴァイは、全身敵の返り血で汚れており、足元も覚束なかった。「このまま君が戦い続けると、城へ戻る体力がなくなってしまう。そうなる前に何処か休める所を探そう。」「・・わかった。」 若松市中から離れたエルヴィンとリヴァイは、戸ノ口原から少し離れている山の中腹にある湖で休息を取った。「ここなら、敵も来ねぇし静かだから休めそうだ。」「そうだな・・」エルヴィンはそう言うと、湖の中で水浴びをしているリヴァイに背後から抱きついた。「てめぇ、何しやがる。」リヴァイがそう言いながらエルヴィンを睨みつけようとした時、腰に固いものが当たる感触に気づいた。「おい・・」「済まない、君の裸を見ていたら・・」「そうか・・俺もだ。」リヴァイはそう言った後、エルヴィンの手を己の股間に宛がった。「俺もお前と同じ事を考えていた。」「本当に、ここで抱いていいのか?」「あぁ・・」 湖の中で、二人は久しぶりに愛し合った。「リヴァイ、もう駄目だ・・」「エルヴィン、愛している・・」 何度もエルヴィンと互いの身体を貪り合った後、リヴァイは彼と抱き合いながら乱れた呼吸を整えた。「このままここに居たら、風邪をひくな・・」「そうだな。」「城に入る前・ある屋敷で死に掛けた女に止めを刺した・・そいつは、血の海の中で死んだ我が子を抱き締めていた。」「リヴァイ・・」「俺がそいつを介錯しようとした時・・そいつは最後に俺に向かって、“かたじけない”と言ったんだ。」「リヴァイ、もういい・・」エルヴィンはそう言うと、自分の胸に顔を埋めて嗚咽するリヴァイの頭を優しく撫でた。にほんブログ村
Feb 10, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「どうした、もう終わりか?」「まだまだ!」 リヴァイと竹子が薙刀で戦ってから、もうすぐ一時間が経とうとしていた。 薙刀の名手である竹子は、リヴァイ相手に苦戦していた。彼女は息を荒げ額に汗を滲ませていたが、リヴァイは汗ひとつ掻いていない。「あの竹子様を何度も打ち負かすなんて、信じられねぇ。」「八重様もお強いが、あの人もお強い・・」 いつしか道場内では、リヴァイと竹子の戦いを見守る者が増えていった。 戦いは、リヴァイの勝利で終わった。「参りました。」竹子とリヴァイは互いに一礼した。「俺は女だからと容赦はしねぇ。戦場では性別なんてねぇ、ただ殺すか、殺られるか、それだけの事だ。」「先程は失礼な事を申し上げた事を、お詫び致します。」「謝る相手は俺じゃねぇ、八重殿にだ。」「わたしは気にしてなどいない。」八重はそう言った後、屈託のない笑みを浮かべた。「もう済んだ事だし、お互い水に流そう。」「そうだな。」「お前が薙刀を嗜んでいたなんて全く知らなかったぞ。」「お前が聞いて来なかったから、話さなかったまでだ。」 道場からの帰り道、エレン達と別れたエルヴィンとリヴァイが宿への道を歩いていると、突然リヴァイが何かを見て立ち止まった。「どうした、リヴァイ?」 リヴァイの視線の先には、賑やかに声を上げながら遊んでいる子供達の姿があった。それを見たエルヴィンは、彼が今何を考えているのかがわかった。「梓は元気にしているだろうか?」「大丈夫だ、あいつは俺達の娘だ、そう簡単にくたばらねぇよ。」「そうだな・・」 1868(慶応四)年7月29日。 長岡城陥落の報せと同時に、二本松城も落城したという報せが届き、会津藩内で一気に緊張が高まった。 戦火は徐々に、そして確実に会津に迫りつつあった。「会津が戦場になるのは時間の問題だべ。」「大丈夫だ、そうなったら殿様をお守りするだけだぁ。」 若松市中をエレン達が歩いていると、そんな会話が藩士達の間で交わされているのを聞き、エレンは鳥羽・伏見の戦いを思い出した。「エレンてめぇ今、“力”をここで使おうと思っているんじゃねぇのか?」「リヴァイさん、俺は・・」「俺はお前の下した決断を信じる。その先にどんな結果が待っていようとな・・」 リヴァイはそう言うと、エレンに背を向けて歩き出した。 1868(慶応四)年8月23日。 新政府軍、会津城下へ侵入する。 若松市中は鶴ヶ城に入ろうとする者らで混乱状態に陥った。「リヴァイさん!」「エレン、アルミン、ミカサ、てめぇら無事か!?」「はい!でも早く城に入らないと、危険です!」「そうだな、急ぐぞ!」「はい!」 鶴ヶ城下では多くの婦女子が足手纏いにならぬよう、自刃して果てた。リヴァイ達が城へと向かっていると、何処からか女の呻き声が聞こえて来た。「お前らは外で待て、俺が中の様子を見て来る。」「はい!」 呻き声が聞こえた屋敷の中へとリヴァイが入ると、そこには白装束姿で自刃して果てた老夫婦と幼子の姿があった。 呻き声は、幼子を抱いている母親が発していた。 彼女は老親と我が子の後を追おうとしたが、どうやら失敗してしまったらしく、白い喉元を血で赤く染めながら、苦しそうにヒューヒューと息を吐いていた。「今、楽にしてやる。」リヴァイは愛刀の鯉口を切ると、白刃を閃かせた。「リヴァイさん・・」「立ち止まっている暇はねぇ、行くぞ!」「は、はい!」 リヴァイ達が城へ入った直後、ジークが部下達を率いて若松市中に現れた。にほんブログ村
Feb 7, 2020
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「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「エルヴィン、どうしてここに?」「文を寄越さずに済まなかった、リヴァイ。」エルヴィンはそう言うと、リヴァイを抱き締めた。「おい、こんな所でそんなことするんじゃねぇ!ガキどもが見ているだろうが!」「じゃぁ、二人きりだといいのか?」 エルヴィンに耳元でそう囁かれ、リヴァイはその場にへたり込みそうになった。「相変わらずお熱いねぇ・・」「うるせぇ、ハンジ。」 リヴァイが赤くなった顔を誰にも見せたくなくて俯きながら歩いていると、彼は一人の長身の女とぶつかった。「さすけねぇか(大丈夫か)?」そう言って自分に向かって手を差し伸べた女は、エルヴィンと並んでも遜色ない程背が高かった。 彼女は髪を結わず、頭頂部でひとくくりにしていた。「リヴァイ、大丈夫か?」「あぁ・・」「 “リヴァイ”・・京の伝説の人斬りか。それにしても随分と・・」「八重殿、それ以上言うて下さりませぬな。」「そうだな。あぁ、自己紹介が遅れたな、わたしは山本八重、以後よろしくお願い致す。」「山本八重・・確か京で、山本覚馬殿とお会いした事があるな。」「山本覚馬は、わたしの兄だ。こんな所でお会いしたのは何かのご縁、今から我が家へ案内致します。」「かたじけない。」 こうしてリヴァイ達は、“幕末のジャンヌ=ダルク”こと、山本八重と出会った。「これが、エゲレスのスペンサー銃だ。官軍が使っているミニエー銃よりも連弾が可能だ。」 山本家に着くなり、八重はそうリヴァイ達に銃の構造を説明すると、おもむろにスペンサー銃を手に取り、的の中心を狙って撃った。 耳を劈(つんざ)くかのような破裂音がした後、リヴァイがうっすらと目を開けると、的の中心は穴が空いていた。「ほぉ、これが銃か・・」「鉄砲は飛び道具で卑怯という考えは古い。これさえあれば、味方を失わずに多くの敵を倒せる。」「やみくもに敵陣に突っ込んで部下や仲間を死なせる前に、こいつで敵の額を撃ち抜きゃいいって事か・・悪くねぇな。」そう言ったリヴァイの瞳は、好奇心旺盛な子供のようにキラキラと輝いていた。「八重殿、いらっしゃいますか?」 山本家の庭の方から声が聞こえて来たかと思うと、一人の女性がリヴァイ達の前に現れた。 艶やかな黒髪を結い上げ、若草色の小袖姿のその女性は、切れ長の瞳でリヴァイと八重を見た。「八重殿、こちらの方は?」「こちらは新選組のリヴァイ=アッカーマン殿。リヴァイ殿、こちらは中野竹子殿だ。」「初めまして、リヴァイ殿。京での貴方のご活躍ぶりはお聞きしております。」「それは光栄だな。」「竹子殿、わざわざこちらにお越しになられるとはお珍しい。何かわたくしに御用ですか?」「はい。わたくしは八重殿にひとつ、ご忠告申し上げたくこちらに参った次第にございます。」「忠告?」「戦場で飛び道具は不要。そう申し上げたく参りました。」 竹子の言葉を彼女の傍で聞いていたリヴァイは、思わず吹き出してしまった。「何がおかしいのですか?」「あんた、どれだけ偉いのか知らねぇが、戦場を見た事がない奴がよく言うぜ。」 リヴァイの言葉に、竹子は怒りで顔を赤くした。「あれ、止めなくていいんですか?」「まぁ、見てなって。」そう言ったハンジは、何処かこの様子を面白がっているようだった。「戦場で互いに名乗りを上げて刀や槍で戦うのがあんたらのやり方で結構だが、その“武士の誇り”とやらを大事にした所為で、鳥羽・伏見で何人死んだと思う?鉄砲と刀さえありゃ、鬼に金棒だと思うが?」「そこまでおっしゃるのなら、貴方の剣の腕は確かなようですね。ここはひとつ、わたくしと勝負して頂けませんか?」「・・望むところだ。」 山本家を出たリヴァイ達は、竹子と共に道場へと向かった。 そこには、道着姿の女性達が薙刀の稽古に精を出していた。「さぁ、貴方の実力を確めましょうか?」竹子はそう言うと、壁に掛かっていた稽古に使う薙刀をリヴァイに手渡した後、素早く襷(たすき)掛けした。「大丈夫かなぁ?」「エレン、リヴァイの事は心配しなくても大丈夫だよ。」「ハンジさん?」「まぁエレン君、見ていなさい。」エルヴィンはそう言うと、エレンの肩を叩いた。にほんブログ村
Feb 6, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。 1868(慶応四)年3月、甲州勝沼。 甲陽鎮部隊と名を改めた新選組は、新政府軍の圧倒的な兵力を前に、敗戦した。―おい、あいつらだろ・・―今日で名を馳せた人斬り集団・・―狂犬の集まり・・「あいつら、言わせておけば!」「やめておけ。言いたい奴には勝手に言わせておけばいい。こんな所で貴重な戦力を使うんじゃねぇ。」「はい・・」 リヴァイにそう諫められたエレンは、江戸で土方達と話し合った事を思い出していた。「成程、それで、エレンの“力”で戦がこちら側に有利になると?」「あぁ、こいつさえ居れば大量の武器も弾薬も要らねぇ。ただ、その“力”の代償はこいつの命だという事が厄介だが。」「考えておこう。」 甲州勝沼を発った新選組は、流山へと向かった。「副長、大変です!」「どうした、島田?」「新政府軍がこの周辺を包囲しています。敵兵は三百・・」「クソ、このままだと埒が明かねぇ・・」「俺が行こう、トシ。」「馬鹿言うんじゃねぇよ、近藤さん!」「そうですよ局長、今行ったら殺されに行くようなものです!」「大丈夫だ。」そう言った近藤の顔は、何処か優しく、晴れやかなものだった。「エレン君、これからも頑張って戦ってくれ。」「今までお世話になりました。」 それが、近藤とエレンが交わした最後の会話となった。 1868(慶応四)年4月25日。 板橋の刑場で新選組局長・近藤勇は斬首刑に処された。 享年三十五歳。 近藤という大黒柱を失った新選組は、宇都宮へと向かった。 1868(慶応四)年4月19日。 土方達率いる新選組と旧幕府軍は、敵が籠城している宇都宮城への攻撃を開始した。 だが、籠城を続ける敵との戦闘は長引き、膠着状態に陥った。「このままじゃ埒が明かねぇ。今から俺が合図をするから、端に居る塀から敵陣に突っ込め!」 土方の言葉を聞いた兵の一人が怖気づき逃げ出そうとしたが、彼は容赦なくその兵を斬り捨てた。「ひぃ、鬼だぁ!」「俺は死にたくねぇ!」 兵達が恐怖で震えていると、彼らの前に白刃が閃いた。「ピーピー喚くなクズ野郎。戦をしに来たんだろう?だったら命懸けで戦え!」 旧幕府軍は宇都宮城を奪取したが、4月23日、新政府軍によって奪還された。 戦いの最中、土方は足を負傷し、4月27日に会津城下に入り、療養生活に入った。「今度の戦でも、沢山の人が死にましたね・・」「あぁ。」「あの時、俺が“力”を使っていれば、近藤さんを助けられたのに・・」「エレン、あの時局長はおまえにそれをさせない為に自ら投降した。」「でも・・」「後ろを振り返るな、前だけを進め。」「はい・・」エレンはそう言った後、鼻を啜った。「そういえば、エルヴィンさんから文は・・」「来ねぇ。まぁ、便りが来ねぇのはあいつが元気な証拠だ。」「そうですか。」 新選組が会津入りし、リヴァイ達新選組は会津藩に歓迎された。「あ、あの人が・・」「伝説の人斬り・・」「うわぁ、ちっせぇ・・」 沿道をリヴァイ達が歩いていると、見物に来ていた少年達の歓声が聞こえた。「チビは余計だ、クソガキ・・」「まぁまぁ、落ち着いて・・」 ハンジがそう言ってリヴァイを宥めた時、彼女は突然大声を上げて向こうからやって来る人物を指した。 その人物は、エルヴィンだった。にほんブログ村
Feb 5, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。 1868(慶応四)年、鳥羽・伏見。 前年の大政奉還により、政権は徳川将軍家から、倒幕派であった長州・薩摩が握った。「まさか、今まで会津と手を組んで戦いっていた薩摩が長州と手を組むなんて考えてもいなかったぜ。」「あぁ、とんだ正月になったな・・」 新たに屯所となった伏見奉行所で、隊士達がそんな話をしていると、一人の隊士が何やら慌てた表情を浮かべながら大広間に入って来た。「副長から伝令だ、全員戦闘準備!」 新選組は会津藩・旧幕府伝習隊と共に薩摩藩と対峙していたが、一発の砲声により約一年半にわたる「戊辰戦争」の幕が開けた。 鳥羽方面の砲声、旧幕府軍の敗走により、伏見方面でも薩摩藩と新選組の戦闘が開始された。「畜生、奴らからこっちは完全に丸見えだ!」「このままだと全滅する!」 薩摩藩の攻撃に晒された土方は、何とかこの不利な状況を打開しようと、永倉とリヴァイを呼んだ。「奇襲作戦だと?それは本気か、土方さん?」「あぁ。最新式の武器を持っているあいつらに勝てる確信はないが、奴らに揺さぶりをかける事が出来るだろう。」「わかった。」 永倉とリヴァイは、それぞれ部下を率いて、敵陣へと突っ込んだ。 この奇襲作戦により戦況は一時好転したが、伏見奉行所は薩摩藩の砲撃を受け全焼した。1868(慶応四)年1月4日。「おい、あれ・・」「錦の御旗だ!」 淀堤の千両松に布陣した新選組は、戦場に錦の御旗が新政府軍によって掲げられた事を知った。「じゃぁ何か?今まで幕府の為に必死こいて働いてきた俺達が、その旗如きの所為で賊軍扱いってか?」 その知らせを受けたリヴァイは冷静沈着な口調でそう言ったが、彼の瞳の奥には怒りの炎が宿っていた。大坂城へと到着した新選組を待ち受けていたものは、徳川慶喜が敵前逃亡したという知らせだった。「クソが、総大将が敵前逃亡するなんて聞いた事がねぇぞ!」 大阪城で将軍不在の知らせを聞いたリヴァイは、そう叫ぶと怒りを紛らわす為に畳を拳で殴った。「リヴァイ、落ち着け。今は冷静になるんだ。」 背後からそんな声が聞こえたのでリヴァイが振り返ると、そこには洋装姿のエルヴィンが居た。 髷を結っていた彼の金髪は短く切り揃えられ、その所為で彼の端正な美貌が一際目立っていた。「髪を、切ったんだな・・」 リヴァイの、うなじまで短く刈り上げられた黒髪を見たエルヴィンは、そう言った後残念そうに溜息を吐いた。「あぁ、戦場で長い髪は邪魔でしかねぇ。それに前から鬱陶しかったから丁度良かった。」「そうか・・」「エルヴィン、そんなしけたツラするなよ、たかが髪の長さだろうが。」 リヴァイがそう言った後、エルヴィンが所在なさげに一本の簪を握り締めている事に気づいた。「お前、その簪・・」「今日、俺達の結婚記念日だろう。だからお前の黒髪に似合うかと思って・・」「それは知らなかったな・・まぁ、戦が終わったらつけてやるよ。」「・・そうか。」「エルヴィン、お前に会えて良かった。」「俺もだ、リヴァイ。」 新選組をはじめとする旧幕府軍は、船で江戸へと向かった。「エレン、ここに居たんだね。」「ハンジさん・・」そう言ってハンジの方へと振り向いたエレンの両目には涙が溜まっていた。彼は今しがた、山崎の死を看取ったばかりだった。新選組に入隊して幾度となく仲間の死を看取ってきたハンジだったが、“それ”に慣れる事はない。「別れは何度経験しても慣れる事はない。それが普通なんだ。慣れてしまったら、人は人ではなくなる。」「ハンジさん、俺の“力”で、敵を倒す事が出来ますか?」そう言ったエレンの金色の瞳には、揺るぎない決意の光が宿っていた。にほんブログ村
Feb 4, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「エルヴィン、落ち着いて!」「そうですよ、そんなに揺さぶったらリヴァイさん死んじゃいます!」エレンがそう言いながらエルヴィンとリヴァイの間に割って入ると、リヴァイは苦しそうに喘いだ。「エルヴィン、俺は一体・・」「リヴァイ、今からわたしの話を落ち着いて聞いてくれ・・」 ハンジはリヴァイに、貧血が酷いのは血液が上手く働いていない所為で、それは梓の出産の時の後遺症だという事を話した。「ハンジ、リヴァイが梓を産んだのは三年前だぞ?それなのに今更どうして・・」「普通の妊娠・出産でも、女性の身体にかかる負担は大きい。リヴァイの場合、半陰陽での妊娠・出産は普通の女性のものよりも負担が倍以上かかる。だから・・」「これ以上の出産は望めないと?」「端的に言えばそうなるね。」「それは、治らないのか?」「あぁ。」「済まないが、リヴァイと二人きりにして貰えないか?」「わかった。」 エレンとハンジが席を外した後、リヴァイとエルヴィンは向き合うような形で座り、互いに一言も交わさなかった。 最初に口火を切ったのは、リヴァイだった。「エルヴィン、今まで黙っていて済まなかった・・」「なぁリヴァイ、今後の事だが・・「言っただろ、俺は何も望まないって。」「リヴァイ、わたしが馬鹿だった・・済まない。」「謝るな。」 リヴァイは、子供のように泣きじゃくるエルヴィンにそう言いながら、彼の大きな背を優しく撫でた。「なぁ、少しは落ち着いたか?」「あぁ。リヴァイ、暫くここで休んでくれ。」「わかった。」 リヴァイは屯所に宛がわれた自室で数日休んだ後、いつものように道場で朝稽古に参加した。「リヴァイさん、もう体調は大丈夫なんですか?」「あぁ。寝てばかりだと身体が鈍るからな。」 数日臥せっていたとは思えない程、リヴァイの平隊士による朝稽古の指導は厳しく、その剣の腕は少しも衰えていなかった。 1867(慶応三)年10月14日、徳川慶喜は大政奉還を宣言し、約二百五十年余り続いた徳川幕府は事実上崩壊した。 それはまさに、新選組にとって青天の霹靂(へきれき)であった。「新選組はなくなるのか?」「これからどうなるんだ?」 隊士達の間では、大政奉還によって様々な憶測が飛び交っていた。 そんな中、斎藤一が御陵衛士の元から新選組屯所へと戻って来た。 彼は伊東らの動きを探る為、間者として潜入していたのだった。「伊東は、局長を亡き者にしようと企んでいます。」 斎藤の報告を聞いた近藤は、伊東達御陵衛士らを暗殺する事を決めた。 1867(慶応三)年11月18日。 近藤の妾宅を訪れた伊東は、酔って帰宅したところを新選組に襲われ絶命した。新選組は伊東の遺体を路上に放置し、御陵衛士らを誘き出した。 その中には、試衛館以来の同志である藤堂平助が居た。「土方さん、平助だけは助けてくれ。」「・・わかった。」 だが、その願いは聞き届けられなかった。 藤堂らを含む四人の御陵衛士らは新選組との戦闘により絶命した。「リヴァイさん、どうしてこんな惨いことを・・」「見せしめだ。」「せめて藤堂先生のご遺体だけでも・・」 路上に放置された藤堂達の遺体を前にして、エレンはそう叫ぶと涙を流した。「エレン、行くぞ。」 1867(慶応三)年12月9日、王政復古の大号令が発令され、それと同時に京都守護職、京都所司代が廃止された。「もう、京都で暮らして五年も経ったのか、色々な事があったな、トシ。」「あぁ。」 1867(慶応三)年12月18日。御陵衛士の残党によって、馬上の近藤勇は帰宅途中に狙撃された。近藤は右肩の骨が砕け、大坂へと結核が悪化した沖田総司と共に下った。 新選組は、否応なく戦の嵐へと巻き込まれていった・・にほんブログ村
Feb 3, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「お初にお目にかかります、リヴァイと申します。」「エルヴィンから何度か君の話を聞いているよ。」そう言ったスミス氏の顔は、何処か優しかった。「彼から、俺の事で美禰様がお怒りになられている事は聞いております。」「そうか・・君は、これからどうしたい?」「一生、俺は日陰の身のままでいいと思っています。今までエルヴィンには沢山のものを頂きましたし、何より俺には梓が居ます。それだけで充分です。」 リヴァイはそう言うと、スミス氏に向かって一礼した。「遠路はるばるお越し頂いたのに、大したおもてなしも出来なくて申し訳ありません。」「いいや、君と会えて話がしただけで充分だ。」 スミス氏はリヴァイにそんな言葉を掛けた後、リヴァイに見送られながらエルヴィンと共に宿へと向かった。「父上・・」「リヴァイさんは、良い人だね。あの人を大事にしてやりなさい。」「はい、わかりました。」「わたしは明後日、江戸へ帰る。見送りは結構。」「父上、わたしは・・」「みなまで言うな、エルヴィン。」「はい・・」 エルヴィンがリヴァイと暮らしている隠れ家へ戻ると、三味線の音と梓がはしゃぐ声が聞こえて来た。「そうそう、ここでくるりと回って・・上手だぞ。」リヴァイはそう言って三味線を弾きながら、梓に舞を教えていた。「まだ舞を教えるのは早いんじゃないか?」「そうか?」「少し茶でも飲まないか?」 エルヴィンがそう言いながら団子が入った包みをリヴァイに見せると、彼は少し嬉しそうな顔をして三味線をしまった。「父上は、君の事を気に入っていたよ。」「そうか・・」「わたしは、もう江戸には戻らない。このまま家族三人で暮らすつもりだ。」「一人で勝手に決めるな。お前はさっさと江戸へ戻って、嫁を抱け。跡継ぎさえできりゃぁ、向こうも文句言わなくなる・・」「一人で勝手に決めているのは、お前の方だろう。」 エルヴィンはそう言って背後からリヴァイを抱き締めると、彼の着物の懐に手を入れた。「やめろ、エルヴィン・・」リヴァイの声を無視して、エルヴィンは彼の着物の裾を割り、大きく足を開かせた。「お前が欲しい・・」 はじめは苦痛の呻き声を上げていたリヴァイだったが、いつしかそれは快楽の喘ぎへと変わった。 1867(慶応三)年6月10日。 この日、新選組隊士全員が幕臣に取り立てられる事となり、近藤勇は長年抱いていた“武士になる”という夢を叶える事が出来た。「漸く、俺達は武士になったな。」「あぁ、そうだな・・」 近藤達が喜んでいる一方、彼らに対して不満を抱いている者は少なからずいた。 そして、事件は起こった。 三月に新選組から脱退した伊東甲子太郎が新選組に残した茨木司、佐野七五之助、富川十郎、中村五郎ら十人の隊士達がこの幕臣取り立てに異議を申し立て、会津藩に新選組脱退の嘆願書を提出したのだった。 彼らの処分は会津藩本陣にある守護職屋敷で下される事となった。「てめぇらの決意は変わらねぇのか?」「はい。」「そうか・・」彼らとの話は平行線を辿り、翌日改めて話し合いをする事となった。「あいつら、どうなるんだろう?」「それは、誰にもわからないよ。でもこのままだと、彼らは・・」「おい、大変だ!茨木達が守護職屋敷で腹を切った!」 茨木達の葬儀を終えた新選組は西本願寺から不動堂村へと屯所を移した。 それまで、“借家”状態で暮らしていた新選組にとって、漸く手に入れた“自分の城”だった。「おいガキ共、久しぶりだな。」「リヴァイさん、どうしてここに?」「引っ越し祝いを持って来た。」そう言ったリヴァイは、少し顔色が悪そうだった。「リヴァイさん、お身体何処か悪いんですか?顔色が・・」「貧血が酷くてな。月のものが来る時はいつもこうだ。」「そうですか・・ハンジさん、呼んで来ますね。」「あぁ、頼む。」 エレンがハンジを呼びに行っている間、リヴァイは暫く柱に凭(もた)れ掛かるようにして座っていたが、やがて彼は激しく咳込んだ後蹲(うずくま)った。「リヴァイ、しっかりして!」「誰か、医者を呼んでくれ!」 リヴァイがゆっくりと目を開けると、そこには心配そうに自分の顔を覗き込んでいるエレン、ハンジ、そしてエルヴィンの姿があった。「俺は、一体・・」「リヴァイ、どうしてわたしに言ってくれなかったんだ、どうして!?」エルヴィンはそう叫ぶと、リヴァイの身体を揺さぶった。にほんブログ村
Jan 31, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。 「進撃の巨人」の二次創作小説です。 作者様・出版者様とは関係ありません。 二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。 「藤堂先生、例の件はどうなりましたか?」 「あぁ、あいつなら何とか生け捕りに出来た。今は、ハンジが監視している。」 「そうですか、良かった・・」 二月に山南が新選組から脱走し、その罪で切腹して果てた後、彼が行っていた“研究”は、ハンジが引き継ぐ事になった。 「エレン君、ハンジさんが呼んでいるよ。」 「はい、今行きます!」 モブリットと共にエレンがハンジの部屋へと向かうと、そこでは彼女が何かの書物を熱心に読んでいた。 「ハンジさん、エレン君を連れて来ました。」 「エレン、ちょっと待ってくれるかな?」 「は、はい・・」 「え~と、何処にしまったっけ、あ、ここだ。」 書物が乱雑に積み上げられた文机の中からハンジが取り出したのは、あの化け物が描かれた読売だった。 「あの、これがどうかしましたか?」 「山南さんが生前していた“研究”が何か、意味は知っているかい?」 「いいえ・・」 「実は、その“研究”は、君と深く関わりがあるものなんだ。」 「俺に、ですか?」 「あぁ。とにかく、これを見てくれ。」 ハンジはそう言うと、エレンにある物を見せた。 それは、瓶の中に入った液体だった。 「これは?」 「あの化け物の脊髄液だよ。山南さんは、隊規に違反した者達にこれを飲ませていた。」 「何の為に、そんな事を・・」 「恐らく、動かなくなった自分の左腕を、治す為だろうね。山南さんは、あの化け物の生態について良く研究していた。あの化け物は、西洋の戦場で兵器として使われていたて、その正体は人間だという事・・」 ハンジの言葉を聞いたエレンの脳裏に、ある記憶が断片的に甦った。 “・・お前が、この世界を救うんだ、エレン!” 「エレン?」 「いいえ、何でもありません・・」 「山南さんが君に固執していたのは、君の中に流れている血・・化け物へと姿を変えられる力だ。」 「俺は、これからどうなるんですか?」 「それは、君自身の問題だ。残酷な真実を知っても、君は生きなきゃならない。」 ハンジはそう言うと、エレンを励ますかのように彼の肩を優しく叩いた。 1867(慶応二)年、5月5日。 「梓ちゃん、満二歳の誕生日おめでとう。」 「おめでとう~!」 この日、新選組の屯所では、リヴァイとエルヴィンの長女・梓の満二歳を祝う宴が開かれていた。 「あれ、エルヴィンはどうしたの?」 「あいつなら、江戸へ行った。何でも野暮用とかで・・」 「リヴァイ、あんたはこのままでいいと思っているの?」 「俺は一生日陰の身でいいと思っている。あいつにだって立場がある。」 「でも・・」 更に言い募ろうとしたハンジを、リヴァイは手で制した。 「今は何も考えたくない。」 リヴァイはそう言うと、梓の元へと向かった。 「梓、もううちへ帰るぞ。」 「やだぁ、まだあそぶ。」 「わがまま言うな、行くぞ。」 「やだ~!」 エレン達に遊んで貰っていた梓は、そう叫ぶとエレンの背に隠れた。 「リヴァイさん、梓ちゃんは俺達が見ていますから、大丈夫です。」 「そうか、悪いな。」 梓をエレン達に任せ、リヴァイは自室で溜まっていた書類仕事を片付けた。 一方、江戸ではエルヴィンが両親と妻の三人と対峙していた。 「美禰、どうしてもわたしと離縁してくれないか?」 「致しません。あの女の元へは、絶対に行かせません!」 エルヴィンは何度も妻に離縁を申し出たが、離婚話は平行線を辿っていた。 「わたくしは、死ぬまであなたの傍に居ります。」 「エルヴィン、一度その女(ひと)に会わせてくれ。」 「父上・・」 「わたしはお前が心底惚れている女と一度会って話をしてみたいのだ。」 エルヴィンは、父親を連れてリヴァイと梓の居る京へと戻った。 「ようこそお越し下さいました・・お義父様。」 リヴァイはそう言うと、エルヴィンの父を正座して玄関先で出迎えた。 にほんブログ村
Jan 30, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。 「進撃の巨人」の二次創作小説です。 作者様・出版者様とは関係ありません。 二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。 「あんな事を言っても大丈夫なのですか?」 「大丈夫な訳ないだろ。まぁ、人の修羅場を傍から眺めるのはとても愉快だけれどね。」 そう言って笑うジークの横顔を、ライナーは呆れたように見ていた。 「漸く寝たな。いつもこんな時間まで君は起きているのか?」 「まぁな。こいつが産まれてから、飯すら碌に食う暇がねぇ。」 授乳を終えてリヴァイが梓の背を軽く叩いてげっぷさせると、彼女は寝息を立て始めた。 「リヴァイ、これからどうするんだ?」 「梓はこの家の跡取りとして育てる。おかあさんにもそう話した。」 「そうか。」 「こいつを身籠った時、こいつをよそへ預けようと思ったが、気が変わった。花街(ここ)なら芸さえ身につけりゃぁ何とでもなるさ。」 「リヴァイ、わたしと君は夫婦となったはいえ、わたしは・・」 「妾でも何でもいい、お前と共に居られるんなら。」 リヴァイはそう言って一瞬寂しそうな顔をした後、笑った。 「リヴァイさん、大丈夫かなぁ?」 「何が?」 「エルヴィンさんには許嫁が居るんだろう?」 「その事は二人の問題。わたし達は口を出しては駄目。」 「でもさぁ・・」 「エレン、この期に及んでまだ兄さんの事が好きなの?安心して、エレンにはわたしが居る。」 「ミカサ、顔近ぇし怖ぇよ・・」 エレン達がそんな話を巡察中にしていると、彼は背中に衝撃を受けた。 「痛ぇ・・」 エレンが周りを見渡すと、自分の足元に小さな石が転がっていた。 「壬生狼は去(い)ね!」 「会津は鬼や!」 彼を憎悪に満ちた目で睨みつけそう叫んだ子供達は、雑踏の中へと消えていった。 「エレン、怪我はない?」 「あぁ。」 「あの子達、きっと禁門の変で親を亡くしたんだよ・・」 アルミンの言葉を聞いたエレンは、一年前に京で起きた事を思い出した。 1864(元治元)年7月19日。 池田屋事件から端を発した長州藩と会津藩の武力衝突が起き、戦闘ははじめ長州側が有利だったが、薩摩藩が会津・桑名の援軍に駆け付けた事により敗退を余儀なくされた。 この戦で京都市中は炎に包まれ、死者は三百四十名にものぼった。 常日頃から長州贔屓(びいき)である町民達から嫌われている会津と新選組は、禁門の変でさらに彼らの憎悪の対象となった。 「俺達、正しい事をしたのに、何で憎まれなきゃなんねぇんだ?」 「・・仕方ない、この世界は残酷なんだから。」 「もう屯所に帰ろう。」 三人が屯所に戻ると、何やら蔵の方が騒がしかった。 「何かあったんですか?」 「大変だ、山南さんの実験体が逃げ出しちまった!」 「実験体って、あの化け物がですか?」 「あぁ、見た所そんなに遠くには行ってねぇようだが・・人を襲う前に早く捕まえねぇと。」 原田の言葉を聞いたエレンの脳裏に、あの時山南に連れられて見た化け物の姿が浮かんだ。 一目だけ、確めるだけでよかった。 夜陰に紛れながら、美禰はジークから聞いたエルヴィンの隠れ家へと向かった。 そこには、仲睦まじい様子で寄り添うエルヴィンとリヴァイの姿があった。 「娘は父親に性格に似るっていうのは本当だな。梓はお前が傍に居ないとすぐ癇癪(かんしゃく)を起しやがる。」 「わたしは乳をやれないが、お前が家事で忙しい時はいつもこの子を抱いてあやしているからかな?」 「そうだろうな。」 「なぁリヴァイ、梓が少し大きくなったら・・」 「ガキはもう産まねぇ。骨盤の歪みがまだ治ってねぇのにそんな気にもなれねぇよ。」 「はは、そうだな・・」 (エルヴィン様が、あの女と幸せそうに笑っている・・) 美禰の心は、リヴァイへの憎しみで完全に黒く染まってしまった。 「ジークさん、お話しがあるの・・」 「へぇ、そいつは面白そうだ。」 にほんブログ村
Jan 29, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「まさか君がこんな所に居るなんて思っていなかった。」「エルヴィン、お願いだ、何も聞かずに俺を抱いてくれ。」 リヴァイはそう言うと、エルヴィンの唇を塞いだ。「身体は辛くないか?」「あぁ、大丈夫だ。」 早く、エルヴィンに触れて欲しい―リヴァイがそう思いながら彼の胸に顔を埋めていると、エルヴィンはそっとリヴァイから離れた。「エルヴィン?」「リヴァイ、君を抱きたいのはやまやまだが、君は普通の身体じゃない。だから、こういう事は・・」「俺を抱いてくれねぇのか?俺が、汚い女郎だからか?」「違う、君の為を思って・・」 リヴァイはおもむろにエルヴィンの袴へと手を伸ばすと、彼の分身を口に含んだ。「リヴァイ、やめてくれ・・」言葉とは裏腹に、リヴァイが口に含んでいるエルヴィンの分身は大きくなり、先走りの汁が垂れていた。「早くお前のを、俺のここにくれよ・・」「リヴァイ!」 エルヴィンは堪らず、リヴァイを己の膝上に乗せると、奥まで彼を貫いた。「もっと、激しくしてくれ・・」「リヴァイ・・」「何も考えられなくなるように・・」リヴァイの言葉に呼応するかのように、彼の内壁がエルヴィンの分身を締め付けた。「駄目だ、あぁ!」 まるで脳髄の神経が焼き切れてしまいそうになる程強い快感に襲われ、リヴァイはエルヴィンの腕の中で蕩けた。「まだだ、まだ足りねぇ・・」 その夜、リヴァイはエルヴィンと互いの身体を貪り合った。「リヴァイ、大丈夫か?」「あぁ。」「お前があんなに甘えるなんて珍しいな。」「それ程、お前が恋しかったんだ。」「ここから、お前を自由にしてやる。」「信じよう、お前のその言葉を。」 リヴァイとエルヴィンが束の間の幸せな時間を過ごしていた頃、「鶴屋」にハンジとエレンがやって来た。「本当に、ここにリヴァイさんが居るんですか?」「あぁ。信頼できる情報屋から聞いたから確かさ。さぁ、ここまで来たら乗り込むしかないよ!」ハンジはそう言うと、「鶴屋」の中へと入った。「おいでやす。」 二人を出迎えた「鶴屋」の女将は、少し迷惑そうな顔をした。 「この店に、李花と言う子は居るかな?」「へぇ、李花でしたら、今・・」「おや、確か君はリヴァイの友人の・・」「鶴屋」の玄関先で、エレンとハンジは二階から降りてきたエルヴィンと会った。「あなたが、リヴァイの・・」「リヴァイさんはここに居るんですか?」「あぁ、居るよ。わたしがここに来たのは、リヴァイを身請けする為だ。」「身請け・・」「ここの女将にももう話は通してある。」「へぇ。」 女将は少しバツの悪そうな顔をした後、店の奥へと引っ込んだ。「リヴァイに会わせてくれないか?」「あぁ、構わないさ。」 ハンジとエレンがリヴァイの部屋へと向かうと、そこには華やかな打掛姿に、綿帽子を被った彼の姿があった。「リヴァイさん・・」「エレン、ハンジ、心配かけて済まなかったな。」「リヴァイ、エルヴィンと幸せにね。」「あぁ。」 廓から出たエルヴィンとリヴァイは、その足で新選組屯所とリヴァイの実家へ結婚の挨拶をしに行った。「そうか、リヴァイ君が・・幸せになって欲しいなぁ。」「おいおい近藤さん、あんたが泣いてどうすんだ。」「すまん・・」 リヴァイとエルヴィンの祝言は、新選組屯所内で行われた。「何だか、敵わないな・・」「エレン、何事も諦めが大事・・」「なぁアルミン、リヴァイさんの腹の子はどっちかな?」「それは産まれてみないとわからないよ。」 1865(慶応元)年5月5日、端午の節句にリヴァイは難産の末に元気な女児を産んだ。「可愛いな。」エルヴィンは産まれてきた我が子に“梓”と名付けた。梓は「花のや」で育てられる事となった。「何ですって、エルヴィン様が・・」「あぁ、本当さ。嘘だと思うのなら、自分の目で確かめればいい。」ジークはそう言って美禰を見た後、口端を上げて笑った。にほんブログ村
Jan 28, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。 土方隊が池田屋に着いた頃には、激闘は一段落しており、アルミンとミカサはエレンが無事である事を知って喜んだ。「おい、今頃会津と桑名の奴らがやって来たぜ。」「大方、手柄を横取りする気なんだろう・・汚ねぇ連中だぜ。」エレン達がそんな事を言いながら遅れてやって来た会津・桑名藩の兵達を睨んでいると、彼らの前に土方が立ちはだかった。「おう土方、今までご苦労であったな、後で我らが・・」「ここからは手出し無用願いたい!」「何だと!?」「今池田屋は戦闘の只中にある。隊服を着てねぇてめぇらが敵と間違えて斬られるかもしれねぇだろう。」「退け!」 一夜明け、緋色の地に金字で「誠」と刺繍された隊旗を掲げ、新選組は池田屋から壬生村の屯所へと勝利の凱旋をした。 しかしその中に、リヴァイの姿はなかった。「あ、ハンジさん、リヴァイさん知りませんか?」「いいや、知らないよ。リヴァイがどうかしたの?」「リヴァイさんの姿が見えないんです。」「それは、いつから?」「昨夜からです。」「昨夜から?エレン、屯所に戻ったら詳しい話を聞かせて貰えないかな?」「は、はい・・」(リヴァイさんを早く見つけないと・・何だか嫌な予感がする。) 朝を迎えた島原は、夜の喧騒ぶりとは打って変わって静まり返っていた。 その一角にある「鶴屋」の一室で、ジークは煙管を咥えながら、自分を睨みつけているリヴァイを見た。「そんなに睨むなよ。俺だってこんな事をしたくないんだよなぁ。」「俺をどうするつもりだ?」「ここは廓だ。お前みたいな奴を抱きたがる客は多いと思うぜ?」「この外道が!」「何とでも言えよ。それよりもお前、エルヴィンとの子を身籠っているんだって?」「何故それを・・」「知っているかって?俺は裏との繋がりがあるんだよ・・勿論、闇医者ともな。」ジークはそう言うと、下卑た笑みを浮かべながらリヴァイの黒髪を撫でた。「これから、お前とここで過ごすのが楽しみだよ・・」「それで?エレン、君が最後に見たリヴァイは、池田屋で舞妓姿だったんだね?」「はい・・」「そこからは、誰もリヴァイの姿を見ていないんだね?」「はい。」「他に思い出せる事があったら、何でもいいから思い出してくれ。」「そうだ、リヴァイさんはあの時、“お座敷に呼ばれている”と言っていました。客は二階に居ると・・」「そうか。朝早くに呼び出して済まなかったね。エレン、君も疲れているだろうから休んでくれ。」「わかりました。」 エレンが部屋から出た後、ハンジは少し唸ると、モブリットにある仮説を話した。「恐らく、リヴァイは何者かに拉致されたに違いない。そして、リヴァイはまだ京に居る筈だ。」「京は広いですよ、一体どうやってリヴァイさんを探すんです?」「リヴァイはふたなりだ。そんな彼を、拉致した奴は何処に売ると思う?」「島原辺り、ですかね?」「わたしの仮説が正しければ、リヴァイは島原の何処かに居る筈だ。」 こうしてハンジ達は、リヴァイ捜索に当たった。 一方、リヴァイは「鶴屋」で客を取らされていた。「旦那、どうだった?」「どうもこうもないわ。泣きもせんし怒りもせん。まるで人形を抱いているみたいや。」 ジークに拉致された当初、リヴァイは泣き喚いて怒りもしたが、それをしたらジークや客達が喜ぶので、次第に感情を殺すようになった。 そんなリヴァイを客達は気味悪がったが、中には抱きたがる物好きな客も居た。 しかし、リヴァイは遊女達の間から嫌われ、孤立していた。「何やの、あの子、遊女やのに左褄なんか取って・・」「いつまで舞妓のつもりでおるんやろ・・」 客を取らされているリヴァイだったが、腹の子は流れず順調に育っている。 この生き地獄の中で、腹の子がリヴァイの唯一の希望だった。「リヴァイ、客だ。」「へぇ・・」 今夜はどんな物好きが来るのかとリヴァイが客の待つ座敷へと向かうと、そこにはエルヴィンの姿があった。「エルヴィン、どうして・・」「お前を迎えに来た。」エルヴィンはそう言うと、リヴァイを抱き締めた。その時、リヴァイは今まで堪えていた涙が一気に溢れ出るのを感じた。「エルヴィン、会いたかった・・」にほんブログ村
Jan 27, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「こんばんわぁ、李花どす。」「李花ちゃん、堪忍え。どうしてもお客様が李花ちゃんやないと嫌や言うさかい・・」「そうどすか。お客様はどちらに?」「確か、二階に・・」「御用改めである、神妙に致せ!」 リヴァイが池田屋の女中とそんな話をしている時、玄関に浅葱色の揃いの羽織を着た新選組が現れた。「李花ちゃん、これは一体どういう事なん?」「早う裏口から外へ。」 女中を逃がしたリヴァイが近藤達の方を見ると、彼らは舞妓姿のリヴァイを見て驚きを隠せない様子だった。「リヴァイさん、どうしてここに?」「お座敷に呼ばれて来たんだ。客は二階に居る。」「行くぞ!」 階下の騒ぎに気づくジークが蝋燭(ろうそく)の火を吹き消した時、複数人の足音が聞こえたかと思うと、新選組が部屋に踏み込んできた。「御用改めである、神妙に致せ!」「殺れ!」 ジークの一言で、彼の周りに居た浪士達は一斉に刀の鯉口を切り、近藤達に向かって突進していったが、彼らは物言わぬ骸と化した。「刃向かう者は直ちに斬り捨てる!」「壬生狼を恐れるな、戦士達よ!」ジークは愛刀の鯉口を切ると、二階の窓から飛び降りた。「ジーク、何処へ行く気だ?」「暫く適当な所に身を隠す。生き延びろ、エルヴィン!」「待て、ジーク!」 エルヴィンの叫びは、虚しく闇の中へと消えていった。「ふぅ、何とか逃げ切れた。だが、まだ油断できねぇな・・」ジークはそう言って溜息を吐いて歩き出した時、彼は誰かとぶつかった。「いってぇな・・」「すいまへん、お怪我は・・」「あれぇ、丁度いい時に会ったな。」「お前か、俺を池田屋に呼んだのは?」 怒りと驚きがない交ぜになったリヴァイの顔が、月夜に照らされた。「あぁ、そうだよ。エルヴィンの前でお前をまわそうとしたが、てめぇらの所為で計画が台無しだぁ。」 ジークから危険な気配を感じたリヴァイは、身を翻して逃げようとしたが、ジークに鳩尾を殴られて気絶した。「さてと、これからどうするかなぁ?」ジークはそう言うと、気絶したリヴァイを抱えてある場所へと向かった。にほんブログ村
Jan 24, 2020
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「李花ちゃん、お粥さんできたで。」「頂きます・・」 リヴァイは億劫そうに布団から起き上がり、粥を一口食べた。「無理せんでもええよ。」そう言った「花のや」の女将・幸は悪阻の所為でやつれてしまったリヴァイの顔を見た。「俺は、人の親にはなれねぇ・・」「生まれて初めて人の親になるんやから、不安になるのは当然や。」「違う・・俺みたいな人殺しは、命を産み育てる資格はねぇ。」「李花ちゃん・・リヴァイちゃん、あんたはどないしたいの?」「産みたくないから、堕胎薬を買った・・でも無駄になっちまった。腹のガキは・・産むが、何処かへやろうと思う。」「もう、それは決めたことなん?」「あぁ。俺は人殺しだが、腹のガキには罪はねぇ。一生会わなくてもいい、生きてさえいれば幸せになれるさ。」「お腹の子の父親には、その事は・・」「伝えねぇ。」リヴァイはそう言うと、下腹を撫でた。「え、古高があいつらに捕まったって?」「はい、そのようです。」」「畜生、あいつら・・」ジークはそう言うと、拳を握り締めた。「どうします、ジークさん?」「三条小橋の近くの旅籠で会合を開くと、あいつらに伝えておけ。」「旅籠の名は?」「・・池田屋だ。」 1864(元治元)年6月4日。 古高俊太郎を捕縛したのちに拷問した新選組は、過激派浪士達が今宵会合を開く事を知り、慌ただしく動き出した。「ミカサとアルミンは俺達土方隊で、エレンは近藤隊で二手に分かれて捜索を始めろ。」「エレン、わたしが居なくても大丈夫?」「大丈夫だよ、ミカサ!」 新選組が動き出した頃、リヴァイはケニーに支度部屋へと呼ばれた。「他の妓じゃ駄目なのか?」「あぁ、お前を連れて来いとうるさくてな。」「わかった。お座敷の場所は何処だ?」「三条小橋近くの旅籠、池田屋だ。」 ジークは池田屋で会合を開き、仲間達を集め彼らと今後の事を話し合っていた。その会合には、エルヴィンも出席していた。にほんブログ村
Jan 23, 2020
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「これは何だと聞いている?」「風邪薬だ。」「風邪薬を、闇医者で買ったのか?」「てめぇ、俺の後を・・」 リヴァイがそう言った時、エルヴィンは射るような眼差しでリヴァイを見た。「君は、嘘を吐くのが下手だな。この薬は、遊女達が使う堕胎薬だろう?」「エルヴィン、てめぇには許嫁がいる。俺は・・」「駄目だ。」 エルヴィンはそう言うと、堕胎薬が入った包みを掴んで中身を中庭へとばら撒いた。「てめぇ、何しやがる!」「リヴァイ、俺の子を産め。」「孕ませた奴は何とでも言えるがな、ガキを産むのは命懸けなんだよ!それに俺は、人の親にはなれねぇよ。」「・・また来る。」エルヴィンはそう言ってリヴァイを抱き締めると、屯所を後にした。「あなたが、リヴァイさんの恋人ですか?」「そうだが・・君には何か問題でも?」 正門前でエルヴィンと対峙したエレンは、彼に思いの丈をぶつけた。「俺はリヴァイさんのことをお慕いしております。」「それは上司として?恋人として?」「どちらもです。」エレンはキッとエルヴィンを睨みつけると、こう言った。「俺はただ、リヴァイさんに幸せになって欲しいだけです。」「君は真っ直ぐでいいな。」 エルヴィンはそう言って笑うと、エレンに背を向けて歩き始めた。彼のようにあんなに純粋であったのなら、リヴァイとの関係がこんなに拗れる事はなかっただろうに。「エルヴィン?エルヴィンじゃないか?」 突然声を掛けられたエルヴィンは、自分に話し掛けている男が誰なのか思い出せなかった。「どちら様ですか?」「嫌だなぁエルヴィン、俺を忘れたのか?西崎だよ、西崎愛之助!」男がそう名乗った時、エルヴィンの脳裏に懐かしい日々の事が浮かんだ。「西崎、久しぶりだな。」「元気そうで良かったよ。」そう言って男―エルヴィンの私塾時代の友人・西崎愛之助は屈託のない笑みを浮かべた。「リヴァイ、迎えに来たぜ。」「済まねぇな、ケニー。」 エルヴィンの子を宿したリヴァイは、産み月を迎えるまで実家に帰る事になった。にほんブログ村
Jan 22, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「母上~!」 何処からか幼子の声が聞こえてリヴァイが振り向くと、そこには自分に向かって必死に歩いて来る男児の姿があった。 年の頃は二、三歳といったところだろうか。美しい金の髪を揺らしながら、彼は嬉しそうに自分に抱きついてきた。「どうした、そんなに急いで?」「父上が呼んでいますよ。」「わかった、すぐ行く。」 リヴァイが家の勝手口から裏庭へと出ると、そこには畑仕事に精を出している夫の姿があった。「父上~!」 鍬を持っていた夫が男児の声を聞いて、ゆっくりとリヴァイ達の方へと振り向いた―「リヴァイ、気が付いた?」目を開けると、そこは見慣れた部屋の天井だった。(そうだ、俺は急に吐き気に襲われて・・)「ハンジ、俺は・・」「今町医者をモブリットに呼んで来て貰っているから、お茶でも飲んで。」「済まねぇ・・」 リヴァイはハンジから湯呑みを受け取ると、茶を一口飲んだ。「最近、身体が怠くてたまらねぇし、炊きあがった飯の匂いを嗅いだだけで吐いちまう。ただの夏風邪だといいんだが・・」「さぁ、どうだろうね。」町医者がリヴァイに告げたのは、彼が妊娠七週目に入ったという揺るぎない事実だった。「どうするの?」「ここに、あいつとの子が居るのか。」リヴァイはそう言うと、まだ目立たない下腹を撫でた。 あの夢は、まだ見ぬ我が子が見せてくれたのだろうか。「父親は、エルヴィンなの?」ハンジの言葉に、リヴァイは静かに頷いた。「産みたいの?」「・・俺は、人の親にはなれねぇよ。」 今まで散々人を殺めてきた自分が、人の親になどなれるものか。 妊娠が判ってから数日後、リヴァイは闇医者の元を訪ねた。「堕胎薬をくれ。すぐに効くやつを頼む。」 堕胎薬を手に入れたリヴァイは、その時誰かに見られている事に全く気づかなかった。「リヴァイ、久しぶりだな。」「エルヴィン、どうしてここに?」「それは、何だ?」 突然屯所を訪ねてきたエルヴィンは、そう言うとリヴァイの手から堕胎薬を奪った。にほんブログ村
Jan 21, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。性的描写が含まれます、苦手な方はご注意ください。 乾いた音が室内に断続的に響いた。「エルヴィン、もう嫌だ・・」「駄目だ。」エルヴィンはそう言うと、リヴァイの華奢な身体をそのまま自分の膝上まで移動させ、そのまま奥まで彼を貫いた。「あぁ~!」 乾いた結合部からは鮮血が滴り落ち、リヴァイはエルヴィンが動く度に、白い喉を仰け反らせながら叫んだ。「痛てぇ・・やめてくれ・・」「もう限界だ、リヴァイ・・」 エルヴィンの動きが激しくなり、これから彼が何をしようとするのかがわかったリヴァイは涙を流しながらこう言った。「やめてくれ、嫌だ!」「孕め、リヴァイ・・」 エルヴィンはリヴァイの耳元でそう囁くと、彼の最奥で爆ぜた。「何でこんなことを・・」「お前を愛しているからだ。」「笑わせんな、てめぇが今した事はあの獣(けだもの)と同じじゃねぇか。」 涙に濡れた瞳でリヴァイがそう言ってエルヴィンを睨みつけると、彼はリヴァイの黒髪を優しく梳き始めた。「俺は、君を俺以外の男には触れさせたくない。」「そんな台詞はてめぇの許嫁に言え。」「俺は美禰を愛してなどいない。所詮花序の戸は家同士が決めた結婚だ。」「で?俺を妾にでもするつもりか?」「出来る事なら、お前を妻として迎えたい。」「馬鹿言うな。」 エルヴィンの言葉に激しく動揺したリヴァイは、彼にそっぽを向いた。「そんな事、出来る訳ねぇだろうが。」「リヴァイ、俺は絶対にお前を諦めない。」そう言いながら、エルヴィンは再びリヴァイの上に覆い被さった。 それから三日三晩リヴァイはエルヴィンに抱き潰され、漸く彼から解放されたのは四日目の朝の事だった。「また会おう、リヴァイ。」「あぁ・・」 京の街から春が過ぎ去り、うだるような夏の暑さの気配が漂い始めた頃、いつものようにリヴァイが朝餉の支度を始めようと竈(かまど)の蓋を開けた時、彼は酷い吐き気に襲われた。 目の前が闇に包まれ、リヴァイはそのまま意識を失った。にほんブログ村
Jan 20, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「あなたは、エルヴィン様の事が好きなのね?だから、わたくしからエルヴィン様を奪おうと・・」「しつけぇ女だな、あんたは。俺はエルヴィンの事なんか・・」「それじゃぁ、その赤い痣は何よ!」美禰はそう叫ぶと、リヴァイの首筋に残る鬱(うつ)血痕(けっこん)を指した。 どれだけ念入りに白粉で覆い隠そうとしても、結局無駄になってしまった。「あ~あ、もうエルヴィンとそんな関係かぁ。エルヴィンの前でお前の初物を頂こうと思ったのになぁ。」 ジークは残念そうな口調でそう言うと、溜息を吐いた。「用がないなら、俺はもう失礼するぞ。」「待て、今お前をここで逃がす訳にはいかないなぁ。」ジークはそう言って笑うと、リヴァイを畳の上に押し倒した。「やめろ、離せ!」「エルヴィンに抱かれるのは好きなのに、他の男に抱かれるのは嫌だって?金でも払えれば抱かせてくれるのか?」「俺は娼妓じゃない・・」「良く言うぜ、てめぇの母親はどこぞの馬の骨ともしれねぇ男に抱かれた癖によぉ・・」「やめろ、ジーク!」 襖が勢いよく開き、エルヴィンが入って来てそう叫ぶと、ジークを拳で殴った。「エルヴィン様、お待ちください!」美禰はそう叫んで気絶したリヴァイを抱えて部屋から出てゆくエルヴィンを追いかけようとしたが、遅かった。「う・・」「目が覚めたかい?」 リヴァイが目を開けると、そこは料亭の一室ではなかった。「喉が、渇いた・・」「そうか、これでも飲め。」 エルヴィンはそう言うと、リヴァイに口移しで水を飲ませた。「エルヴィン、ここは?」「初めて君を抱いた場所だ。」そう言ったエルヴィンの瞳は、どこか冷たかった。「正直に聞こう・・リヴァイ、ジークに抱かれたのか?」「そんな事、あるわけ・・」「君の言葉は、信じられないな。」エルヴィンはそう言うと、おもむろにリヴァイの振袖の裾を捲(まく)り上げた。「何を・・」「黙れ。」 エルヴィンに睨まれ、リヴァイはまるで金縛りに遭ったかのように動けなかった。にほんブログ村
Jan 17, 2020
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「リヴァイは居るか~、髪結いのケニーがやって来たぜ!」「うるせぇぞ、ケニー。そんなに大声出さなくても聞こえてる。」 リヴァイがうんざりしたような顔をしながらそう言って部屋から出ると、そこには仕事道具一式を抱えたケニーが立っていた。「おいケニー、その荷物はなんだ?」「長屋の家賃を滞納しちまって、その所為で大家から追い出されちまった・・」「おいおいおい、まさかここに住まわせろとか言うんじゃねぇだろうな?」「そのつもりで来たんだが・・悪いか?」「ふざけるな。ただでさえ隊士の数が増えて屯所が手狭になっているってのに、居候にやる部屋はねぇよ。」「わかったよ。あ、そういやぁ、お前ぇにお座敷のご指名だ。」「こんな昼間からか?変な物好きもいるもんだな。」 リヴァイはケニーから話を聞いた時微かに嫌な予感がしたが、ケニーを部屋へ招き入れた。「リヴァイさん、お茶をお持ち致しました。」「入れ。」「失礼致します。」 エレンがリヴァイの部屋に入ると、丁度リヴァイがケニーに髪を結って貰っているところだった。「あ、すいません・・」「いや、大丈夫だ。」 エレンは、美しくケニーによって結われたリヴァイの髪を見つめていた。「それにしても、変わり者も居るもんだな。昼のお座敷を呼ぶなんてよ。」「リヴァイさん、これから出かけるんですか?」「あぁ。暫く土方には屯所には戻らねぇと伝えておいてくれ。」「わ、わかりました。」「じゃぁ、行ってくる。」 エレンは何かリヴァイに声をかけようとしたが、結局何も言えずに黙って彼を見送る事しか出来なかった。「こんにちはぁ、李花どす。」 リヴァイがお座敷のある料亭の一室に入ると、そこにはジークと美禰の姿があった。「すっかり化けたものね。」「だろう?こんなのに迫られたら、あんたの婚約者も骨抜きにされちまうのも仕方ないな。」「お黙りなさい!」 ジークの言葉に激昂した美禰は、そう叫ぶと彼の頬を平手で打った。「気が強い女は、これだから嫌なんだ。」にほんブログ村
Jan 16, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「あんたもつくづく性格が悪いよねぇ。よりにもよってエレンにこんな物を買わせるなんてさぁ。」「他に頼む奴が居なかっただけだ。」「でもさぁ、エレンこの軟膏が陰部の痒み止めに使われる事を知ったらどうなるんだろうね?」「うるせぇ、クソ眼鏡。」「それで、エルヴィンとは寝たの?」「・・死ぬかと思った。」 リヴァイはそう言うと、座布団に顔を埋めた。 目を閉じると、昨夜のエルヴィンとの情交が目蓋の裏に浮かんできた。“リヴァイ、愛しているよ・・” そう自分の耳元で囁いたエルヴィンの声が、一夜明けても忘れられない。「あんた、顔真っ赤だよ?」「うるせぇ・・」「あとこれ。念の為に飲んでおいて。」 ハンジがそう言ってリヴァイに手渡したのは、避妊薬だった。「・・わかった。」「ねぇリヴァイ、あんたはこのままエルヴィンを利用するつもりなの?」「あぁ、あいつに近づいたのも、元からそのつもりだ。」「それで、あんたは幸せなの?もし彼と家庭を持って幸せに生きたいと思わないの?」「・・それは、普通の女が望むことだろう。」 リヴァイはそう言いながら、エルヴィンと仲良く連れ立って歩く美禰の姿が脳裏に浮かんだ。 エルヴィンには、彼女のような“普通の女”が相応しい。 男でも女でもない、自分とは違う。「・・ごめん。」「謝るな。ただ俺は、自分の身体が愛せないだけだ。」「きっと、あんたを愛してくれる男が現れるよ。」「そうだといいんだが・・」 一方、「椿屋」の一室で、美禰はジークにある事を相談していた。「最近、エルヴィン様の様子がおかしいのです。」「俺に恋愛相談とか無理だからね。あ、でもいい事思いついた。」ジークはニヤリと笑った後、美禰の耳元にある事を囁いた。にほんブログ村
Jan 15, 2020
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「エレン君、リヴァイさんが呼んでいるよ。」「は、はい・・」 エレンがリヴァイの部屋の前に立つと、リヴァイの溜息が襖越しに聞こえてきた。「あいつ、こんなに痕をつけやがって・・エレンに気づかれただろうが、クソが。」 リヴァイの呟きを聞いたエレンがそのまま立ち去ろうとした時、不意の部屋の襖が開いた。「うわぁ!」 エレンは驚きの余り、そのまま中庭へと転落してしまった。「てめぇ、そこで何してる?」「す、すいません・・」「水浴びしてから部屋に来い、わかったな?」「は、はい・・」 井戸の水で顔や髪についた泥をエレンが洗い落としていると、そこへハンジが通りかかった。「エレン、何してんの?」「ちょっと泥で汚れちゃって・・リヴァイさんに怒られちゃいました。」「あはは、そうかぁ。リヴァイは絶対に土足で自分の部屋に上がらせないし、朝稽古の後必ず自分の防具や道着を洗う程の潔癖ぶりだもんね。」「ハンジさん、リヴァイさんはいつからあんな風になったんですか?」「さぁ、わたしも詳しい事は知らないね。」「そ、そうなんですか・・」「おいエレン、いつまで油を売っているつもりだ、早く来い!」「す、すいません!」「・・まぁ、リヴァイは何だかんだ言っても、君の事を気に入っているけどね。」 ハンジのその呟きは、春風によって掻き消された。「失礼します。」 エレンがリヴァイの部屋に入ると、リヴァイは少し眠そうな顔をしながら鏡台の前に座っていた。「エレン、お前に少し頼みたい事がある。」「何でしょうか?」「この軟膏を、いつもの店で買って来てくれ。」「わかりました。」 エレンが薬屋でリヴァイから頼まれた軟膏を店主に頼むと、彼は何処か気まずそうな顔をしていた。(あの人、どうしてあんな顔をしていたんだろう?)「エレン、それは?」「リヴァイさんから頼まれていた軟膏です。」「これはわたしが渡しておくから、エレンは仕事に戻って。」「はい、わかりました・・」 結局ハンジから、その軟膏の事は聞けなかった。にほんブログ村
Jan 14, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。 「進撃の巨人」の二次創作小説です。 作者様・出版者様とは関係ありません。 二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。 「辛かったら、途中でやめようか?」 「それじゃぁ、てめぇが辛いだけだろう・・」 エルヴィンに組み敷かれ、彼に内側を穿かれながら、リヴァイはそう言って眉間に皺を寄せた。 「あぁ・・」 エルヴィンはとめどなく襲ってくる快感に、いつしか腰を激しく打ち付けていた。 その度に、リヴァイの細い身体がガクガクと揺れた。 「てめぇ、ガッツキ過ぎだろう!」 「済まない、気持ち良過ぎて・・」 エルヴィンは荒い息を吐きながら、リヴァイの唇を塞いだ。 「エルヴィン・・」 「リヴァイ、愛しているよ・・」 リヴァイは最奥でエルヴィンが絶頂に達するのを感じながら、彼の背に爪を立てた後意識を失った。 何処から鳥が囀る声が聞こえてリヴァイが目を開けると、隣には自分の髪を優しく握ったまま眠っているエルヴィンの姿があった。 リヴァイがゆっくりと起き上がろうとした時、下半身に鈍痛が走った。 それと同時に、内腿から血と生臭い液体が伝い落ち、リヴァイは思わず舌打ちした。 「おいエルヴィン、起きろ。」 「う・・」 「いつまで寝ているつもりだ、早く起きやがれ!」 リヴァイがそう言ってエルヴィンの頭を軽く叩くと、彼は低く呻いた後、ゆっくりと目を開けた。 「リヴァイ、おはよう。」 「おはようじゃねぇ。さっさとここから出るぞ。」 「リヴァイ・・その、身体は大丈夫か?」 「痛くて死ぬかと思ったぜ。今も腰が痛くて堪らねぇ。」 「本当に済まない・・」 出逢茶屋の前でエルヴィンと別れたリヴァイは、そっと勝手口から屯所の中へと入った時、運悪く井戸の近くで洗濯をしているエレンに見つかってしまった。 「リヴァイさん、今まで何処に行っていたんですか?心配していたんですよ。」 「エレン、俺は暫く部屋で休んでいるから、何かあったら言え。」 「は、はい・・」 「頼んだぞ。」 リヴァイはそう言うと、エレンの肩を軽く叩いた。 その時、彼の白い首筋に幾つも赤い虫刺されのような痕がある事に気づいた。 「どうした、エレン?」 「いいえ、 何でもありません。」 にほんブログ村
Jan 13, 2020
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「リヴァイ、何を言っているんだ?」 エルヴィンはリヴァイの様子が少しおかしい事に気づき、彼の脳裏にジークの言葉が浮かんだ。“中を確めたら、あいつは半陰陽だった。”「エルヴィン、お前は知っているんだろう・・俺の身体の事を?」 リヴァイはそう言うと、着物の合わせ目の隙間から覗く素肌をエルヴィンから隠そうとして、彼にそっぽを向いた。「リヴァイ、わたしは君を決して傷つけたりはしない。だから、こちらを向いてくれないか?」 リヴァイはエルヴィンの言葉に応えるかのように、ゆっくりと彼の方を見た。 その瞳は、少し涙で濡れていた。「大丈夫、何も怖がる事はない。」 リヴァイはエルヴィンの言葉に安心するかのように、おもむろに濡れた着物と袴を脱ぎ捨てた。 一糸纏わぬ姿のリヴァイを見たエルヴィンは、思わず生唾を呑み込んだ。 それほどまでに、リヴァイの裸は美しかった。 均等についた美しい筋肉に覆われた中に見える、こぶりだが形の良い乳房、贅肉などがついていない割れた腹筋―男である自分とは違うのは、全体的に丸みを帯びながらもしなやかな肢体だという事だった。「そんなにジロジロ見るな。俺の身体は見世物じゃねぇぞ。」「すまない・・君の身体が余りにも美しかったものだから、つい見惚れてしまった。」「男に向かって言う台詞かよ・・」 リヴァイはそう言いながら、エルヴィンの股間を見た。「済まない、これは・・」「俺を抱きてぇと、素直に言えよ。身体ならいくらでも貸してやる。」「リヴァイ、君は今まで、その・・」「この身体で稼いだ事なら、いくらでもある。仕事だと割り切っていれば、何も感じなくなる。」そう言ったリヴァイの横顔は、少し寂しそうに見えた。 男でもない女でもない身体に生まれついた彼が、今までどんな思いを抱えて生きて来たのか―エルヴィンがそう思っていると、リヴァイは少し呆れたような顔をしながら、優しく手の甲で自分の涙を拭ってくれた。「何でてめぇが泣いてんだ?」「済まない・・リヴァイ、このまま君を抱いてもいいか?」 エルヴィンがそう言ってリヴァイの方を見ると、彼は顔を赤く染めながら頷いた。にほんブログ村
Jan 10, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「リヴァイ、少し顔色が悪いがどうかしたのか?」「それは、お前には関係のない事だ。おいお前ら、行くぞ。」「は、はい!」 エルヴィンは去ってゆくリヴァイの背中が見えなくなるで、その場に立ち尽くしていた。「エルヴィン様、もうあの方の事を忘れてくださいませ。」「何故そんな事を言うんだ?」「あの方は、わたくしの兄を殺した仇なのですよ!それなのに、どうしてあの方ばかり・・」「済まないが美禰、暫くわたしを一人にしてくれないか?」「わかりました・・」 美禰と別れ、エルヴィンは彼女の兄・吉之助が眠る墓へと向かった。「エルヴィンはん、おいでやす。」「住職さん、来るのが遅くなって済まなかった。」「そない謝らんでも、仏様は許して下さいます。」 住職に一礼し、エルヴィンが吉之助の墓へと向かうと、そこには既に新しい花が手向けられていた。「住職、この花は・・」「あぁ、それならさっきの方が・・」 住職の言葉を最後まで聞かずに、エルヴィンは来た道を引き返した。 すると、寺の正門前でリヴァイを見かけ、そのまま彼の手を掴んだ。「リヴァイ、待ってくれ!」「離してくれ、エルヴィン!」「嫌だ、お前を離したくない!」 エルヴィンはそう言って自分から逃げようとしているリヴァイを自分の方へと抱き寄せた。「やめろ、離せ・・」「離したくないと言っただろう。」「てめぇとはもう会わねぇと言った筈だ!」「では、何故君はわたしを突き飛ばそうとしない?」「それは・・」そう言ったリヴァイの瞳は、涙で潤んでいた。 やがて、空が急に暗くなり、雷鳴と共に激しい雨が降り始めた。「ここに居ては風邪をひく。何処かで雨宿りしよう。」「・・わかった。」 リヴァイがエルヴィンと共にやって来たのは、市中から少し離れた出逢茶屋だった。「濡れた服を脱いで乾かした方がいい。」「あぁ・・」エルヴィンが濡れた着物を脱ぐ様子を、リヴァイは見ていた。「お前は、脱がないのか?」「俺は、いい・・」 そう言った後、リヴァイは赤くなって俯いた。 何故か急に、彼の前で裸を晒すのが怖くなった。にほんブログ村
Jan 9, 2020
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「うわぁ、綺麗ですね!」「おいエレン、そんなに騒ぐな。」「す、すいません・・リヴァイさんとこうしてお花見に行ける事が、嬉しくて・・」 エレンはそう言うと、花見弁当が詰まった重箱を抱え直した。 漸く風邪が治ったリヴァイは、日頃の労をねぎらう為、部下達を誘って花見に行く事にした。「ガキ共、飯だ。」「うわぁ、美味しそうですね!」 重箱に詰められた花見弁当を見たサシャは、そう言うなり手づかみでいなり寿司を食べようとして、リヴァイにその手を叩かれた。「この弁当は俺が朝早くからお前達の為に精魂込めて作ったもんだ。味わうならゆっくり味わえ。」「す、すいません・・」「わかればいい。」 満開の桜の下、リヴァイ達が花見をしていると、彼らから少し離れた所で数人の若者達が酒を飲んで騒いでいた。「あいつらうるさいですね、注意しましょうか?」「いい、放っておけ。」「ですが・・」「季節の変わり目には、おかしな奴が出て来るもんだ。」 リヴァイがそう言いながら酒を飲んでいると、突然誰かが彼にぶつかって来た。「済まん、小さくて見えなかった。」 ぶつかってきた男は、先程酒を飲んで騒いでいた男達の一人だった。「美味そうな握り飯だな、俺にもひとつくれよ。」 男がそう言いながら重箱の中にある握り飯を掴もうとした時、リヴァイの拳が彼の顔にめり込んだ。「失せろ、てめぇらの所為で飯が不味くなる。」 若者達は何かを囁き合いながら何処かへと消えていった。「何だったんでしょうね、あいつら?」「さぁな・・」 エレンとリヴァイ達が屯所へと戻る道すがら、向こうから一組の男女がやって来た。 それは、エルヴィンと美禰(みね)だった。「エルヴィン・・」「リヴァイ・・」 エルヴィンとリヴァイは、暫くその場から動けなかった。にほんブログ村
Jan 8, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「お前が、わたくしの兄上を殺した・・」 美禰はそう言うと、懐剣を鞘から抜いた。「わたくしから大切な兄を奪い、その上愛する者まで奪おうというの!?」(この女、何故俺が“黒猫”だと知っているんだ?) 誰にも己の正体を悟られぬよう、仕事は抜かりなくやってきたつもりだった。 リヴァイの脳裏に突然、自分の正体を知っている男の顔が浮かんだ。まさか、あの男が美禰に自分の正体を話したのだろうか?そんな事を考えていたリヴァイは、金切り声を上げながら自分の方へと突進してくる美禰の姿に気づき、身を躱(かわ)そうとしたが、間に合わなかった。「死ねぇ!」「やめろ、美禰!」 突然リヴァイの視界に鮮やかな金が飛び込んで来たかと思うと、エルヴィンが自分と美禰の間に割って入り、彼女が振り翳した刃をその大きな掌で受け止めていた。「エルヴィン・・」「エルヴィン様、何故わたくしの仇討ちを止めるのですか!?」「そんな事をしても、吉之助は帰って来ない。」 エルヴィンの言葉を聞いた美禰は、彼の胸に顔を埋めて激しく嗚咽した。 その姿を見たリヴァイは、胸が痛んだ。「待ちなさい!」 彼がエルヴィン達に背を向けて立ち去ろうとした時、美禰が般若のような形相を浮かべながらリヴァイを呼び止めた。「わたくしは決してお前を許さない!わたくしの兄を殺した罪、お前の命で贖(あがな)うがいい!」「・・そうか。俺は許されようなんてこれっぽっちも思っちゃいねぇ。大義の為とか言いながら、俺がやっているのは所詮ただの人殺しだからな。」「リヴァイ、わたしは・・」「エルヴィン、もう俺には構うな。俺とお前とは生きる世界が違う。」「リヴァイ、待ってくれ!」 背後から聞こえてくるエルヴィンの声を振り払うかのように、リヴァイは闇の中へと消えた。「お帰り、リヴァイ。今までどこに行っていたの?」「少し人に会って来た。」 リヴァイの顔色が少し悪い事に気づいたハンジは、おもむろに彼の額に手をあてた。「ちょっと熱があるね。」「そんなの、寝ていれば治る。」 リヴァイはそう言った後、自室に入って布団も敷かずに眠った。“リヴァイ、愛しているよ・・” 夢の中でリヴァイは、エルヴィンに抱かれていた。 彼の肌の温もりは、夢の中であってもやけに生々しかった。 朝を迎え夢から醒めた時、リヴァイは何故か大粒の涙を流していた。1864(元治元)年、四月。 京の街から冬の気配がなくなり、所々に満開の桜を見かけるようになった。 冬から春への季節の変わり目に、リヴァイは良く体調を崩した。 今年も、リヴァイは三ヶ月前にひいた風邪がなかなか治らず、床に臥せていた。「リヴァイさん、お粥が出来ました。」「いつも済まねぇな、エレン。」「いいえ、ちゃんと食べて栄養をつけてくださいね。」 エレンはそう言うと、一口大の粥が入った匙をリヴァイの口元へと持っていった。「馬鹿野郎、粥くらい一人で食べられる。」「そうですか・・じゃぁ何かあったら呼んで下さいね!」「わかったから、早く出て行け。」 エレンが去った後、リヴァイは溜息を吐きながら用意された粥を全て平らげた。 一方、エルヴィンは美禰と共に花見をしに、産寧坂へと来ていた。「美しい桜ですね。何だか心が洗われるようです。」「あぁ、そうだな・・」 エルヴィンは視線の端に、紅い簪を挿した黒髪の芸妓の姿が映り慌てて駆け寄ったが、それはリヴァイではなかった。(わたしはまだ、リヴァイの事を・・)にほんブログ村
Jan 7, 2020
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。 エルヴィンが「椿屋」に戻って来たのは、日が暮れた後だった。「エルヴィン様、お客様がお待ちどす。」「わたしに客?」「へぇ、美禰(みね)様とおっしゃる方が・・」「お帰りなさいませ、エルヴィン様。」 エルヴィンが部屋に入ると、そこにはどこか冷たい顔をしている美禰の姿があった。「美禰、どうした?何故わたしの部屋に・・」「エルヴィン様、あの芸妓と別れて下さいませ!」「いきなり何を言い出すんだ、美禰?」「エルヴィン様、先程わたしはジーク様から“黒猫”の事を知りました。それなのに何故、あの女と・・」「美禰、一体何を言っているんだ?」「とぼけないで下さいませ!」 美禰はそう叫ぶと、簪の残骸をエルヴィンに見せた。「この簪は、あの女に渡すつもりだったのでしょう!」「美禰、お前は・・」「わたくしは、あの女が許せません、わたくしが兄上の仇を討たなければ!」 我を忘れた美禰は、そう叫ぶと「椿屋」から飛び出していった。「美禰、待つんだ!」 慌てて美禰を追いかけたエルヴィンだったが、時すでに遅く、彼女の姿はどこにもなかった。「エルヴィン様、文をお預かりしてます。」「わたし宛ての文を?誰から預かった?」「さぁ、お名前はお聞きしてまへんけど、黒髪で小柄な方どした。」「そうか、ありがとう。」 女中から文を受け取ったエルヴィンは、すぐさまそれに目を通した。そこには、“戌の刻(午後八時頃)、巽橋の袂にて待つ”とだけ書かれていた。 戌の刻まで、時間がなかった。 リヴァイは空から舞い散る雪を見て、軽く舌打ちした。(エルヴィン、遅ぇな。) あの女中は、エルヴィンにちゃんと文を渡したのだろうか?そんな事を思いながら寒さでかじかんだ指先をリヴァイが擦っていると、白い影が自分の前に突然現れた。 それは、白装束姿の美禰だった。 頭に白い鉢巻を巻き、朱塗りの懐剣以外帯に至るまで白一色の彼女の姿は、まるで幽霊そのものだった。「お前が、“黒猫”・・」 血走った眼で自分を睨みつけている美禰の口から、その容貌に似つかわしくないしわがれた声でその名を呼ばれ、リヴァイはまるで金縛りに遭ったかのようにその場から動けなくなった。にほんブログ村
Jan 6, 2020
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。 リヴァイ達が屯所に戻ると、何やら屯所の中が騒がしかった。「ハンジ隊長、リヴァイ隊長、大変です!山南総長が何者かに襲われ、左腕を負傷しました!」「何だって!?」 ハンジとリヴァイが屯所の中へ入ると、奥の部屋から微かに血の臭いがしてきた。「ハンジさん!」「エレン、町医者は呼んだのかい?」「はい。」「そうか、じゃぁ町医者が来るまでわたしの手伝いをしてくれ。」「わかりました。」 リヴァイは山南の怪我の具合を土方に尋ねる為、副長室へと向かった。 その時、襖の向こうから土方と近藤の声がした。「山南さんを襲ったのは不逞浪士じゃねぇだと?それは一体どういう意味だ、近藤さん?」「俺もまだ確証は掴めていないが、どうやら山南さんを襲った相手は、京都見廻組の誰からしい。」「じゃぁ、同士討ちって事か?それが本当なら、かなり不味い事になるな・・」「あぁ・・」 二人の会話を聞いた後、リヴァイは「椿屋」へと向かった。「おい、エルヴィンはここに居るか?」「エルヴィンはんなら、今からお出かけしていつ戻られるのかわかりまへん。」「そうか、ではこの文をエルヴィンに必ず渡してくれ。いいか、必ずエルヴィンにだけ渡せ、頼んだぞ。」「へぇ・・」 リヴァイが「椿屋」から出たのと入れ違いに、美禰(みね)が「椿屋」に入って来た。「エルヴィン様はいらっしゃる?」「エルヴィンはんなら、出掛けております。」「そう、では彼の部屋に案内して頂戴。」 女中に案内され、エルヴィンの部屋に入った美禰は、文机の上に真紅の簪が置かれている事に気づいた。“リヴァイへ、君の黒髪には青や紫よりも、紅い簪の方がよく映えると思う。”(エルヴィン様、わたくしではなく、あの女にこの簪を・・) 美禰はエルヴィンがリヴァイの髪に紅い簪を挿す姿を想像した途端、リヴァイに対して激しい憎しみが湧いてきた。「あれぇ、誰かと思ったらエルヴィンの許嫁の美禰様じゃないですか?そんなに怖い顔をされてどうなさったのです?」「・・ジーク様、“黒猫”の事についてわたくしに教えて下さらないかしら?」「えぇ、喜んで。」 美禰はジークから“黒猫”の正体を聞き、驚きの余り持っていた簪を握り潰していた。
Dec 26, 2019
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「あぁ、美味しかった。」 エルヴィンは口端に餡子(あんこ)をつけたままそう言うと、少し膨らんだ腹を擦った。「おい、ついているぞ。」「え、何処だ?」「ここだ。」リヴァイはそう言うと、エルヴィンの口端についた餡子を舐め取った。「あ、ありがとう・・」 エルヴィンは頬を赤く染めながらリヴァイに礼を言ったが、その姿を美禰(みね)が見ている事に気づかなかった。「それじゃぁリヴァイ、また会おう。」「ああ・・」 リヴァイが小鳩屋の前アでエルヴィンと別れた後、彼は誰かに尾行されている事に気づいた。「おい、俺に何か用か?」「エルヴィン様を、美禰から奪わないで!」「何か勘違いをしているようだが、俺はあんたからエルヴィンを奪おうとなんか思っちゃいえねぇ。」「嘘よ、エルヴィン様があなたを見る目は、あの方がわたくしを見る目とは全然違うわ!」(面倒臭ぇ女だな・・) どう彼女をあしらってやろうかとリヴァイが考えていると、そこへハンジがやって来た。「やっほ、リヴァイ~!ねぇこれ見て、最近貸本屋で手に入れた春画本なんだけどさぁ~!」 ハンジがそう言いながら広げた春画本には、かなり際どい錦絵が描かれていた。「ハンジ、往来の真ん中で変なもん広げるんじゃねぇ!」「あはは、ごめん、ごめん!」 リヴァイがそう言いながらハンジを睨みつけていると、彼女はケラケラと笑った後、本を閉じた。「それで、そちらのお嬢さんは?」 ハンジがそう言ってリヴァイから美禰へと視線を移した時、彼女はまだリヴァイを睨みつけていた。「あなたからもこの方に言ってくださらないかしら、わたくしの許嫁に手を出さないで欲しいと!」「人の気持ちは、誰かに強制されるものではないよ。だから、あなたのお願いは聞けないな。」「エルヴィン様はわたくしだけのものよ、あなたになんか渡さないわ!」 美禰はそう叫ぶと、リヴァイ達に背を向けて去っていった。「彼女が、エルヴィンの許嫁かい?随分と強烈な子だね。」「そうだな。女ってのは、妙に勘が鋭いから困るな。」「“エルヴィン様”が好きな事は否定しないんだ?」「うるせぇ、さっさと帰るぞ。」「はいはい、わかったよ。」 雑踏の中へと消えてゆく二人の背中を、ジークは木陰からじっと見ていた。にほんブログ村
Dec 25, 2019
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。 正月三箇日が過ぎ、正月気分が抜けた京の街はいつもの賑わいを見せていた。「あ~、寒い。」「いつまで経っても、この寒さには慣れないよ。」 エレンとアルミンがそんな事を話しながら巡察をしていると、彼らの前方を歩いていたリヴァイが不機嫌そうな顔をして彼らの方を振り向いた。「おいガキ共、無駄話をするんじゃねぇ。」「す、すいません!」 この前の時より、リヴァイの顔色が少し良くなったかのようにエレンは見えた。 ハンジが作った薬湯の中身はわからないが、月のもの特有の痛みに良く効くようだ。「何人の顔をジロジロ見ていやがる?」「す、すいません・・」 今日の巡察で、特に異常はなかった。「リヴァイ!」「エルヴィン・・」 突然背後から肩を叩かれ、リヴァイが振り向くと、そこには笑顔を浮かべたエルヴィンが立っていた。「お前ぇ、何でここに居る?」「いや、今日はこれを買いに来たんだ。」 そう言ってエルヴィンはリヴァイに菓子が入った包みを見せた。「これは?」「あぁ、これは小鳩屋の大福さ。」「へぇ、そうか・・」「良かったら、一緒に食べないか?」「は?」 いきなり何を言い出すんだ、この男は。「おい、俺は今仕事中だ。てめぇと仲良く茶を飲む時間なんてねぇんだよ。」「それは残念だな。」 そう言ってエルヴィンは、捨てられた子犬のような顔をした。「す、少しだけならいい・・」「じゃぁ、俺もご一緒してもいいですか?」 エレンがそう言ってリヴァイとエルヴィンの間に割って入ろうとした時、慌ててアルミンが彼を止めた。「何すんだよ!」「エレン、気持ちはわかるけど、二人の邪魔をしない方がいい。僕達は屯所に戻ろう。」「わかったよ・・わかったからそんなに引っ張るなって!着物破けちゃうだろうが!」 エレン達が屯所へと戻るのを確認したリヴァイは、溜息を吐きながらエルヴィンの方へと向き直った。「やっと二人きりになれたな。」「良かったな、じゃぁ、少し静かな所へ行こうか。」 同じ頃、美禰は人気の京菓子を買いに小鳩屋へと向かった。「おいでやす。」 人気の京菓子を買って店を後にしようとした美禰は、店の隣ある茶店でエルヴィンとあの芸妓が仲睦まじい様子で大福を食べている姿を見かけた。(どうして・・あの女と・・どうして・・)にほんブログ村
Dec 24, 2019
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。 あの後、エレンは一睡も出来ぬまま朝を迎えた。「エレン、顔色悪いね、どうしたの?」「いいえ、何でもありません。」「そう。それにしても、新年早々災難だったね。」 ハンジはそう言って雑煮を啜りながら、エレンの肩を軽く叩いた。「山南総長のお姿が見当たりませんね。」「彼なら、副長と一緒に大坂へ出張中だよ。挨拶回りってことかな。」「新年早々、大変ですね・・」「さてと、わたし達ものんびりとしていられないよ。こういう時期が一番、風紀が乱れやすい時期だからね。」「正月もゆっくり休んでいられないなぁ・・」「まぁそんなに落ち込みなさんな!」 ハンジがそうエレンを励ましていると、大広間にリヴァイが入ってきた。いつも不眠気味で顔色が悪い彼だが、今日の彼の顔色は貧血の所為で一段と悪かった。「ちょっとリヴァイ、大丈夫?」「あぁ・・」 リヴァイはそう呟くなり、下腹を押さえてその場に蹲った。「エレン、リヴァイを部屋まで一緒に運んでくれるかな?」「は、はい!」 エレンとハンジは、下腹を押さえて苦しんでいるリヴァイを彼の部屋まで運んだ。「リヴァイさん、どうしたんですかね?」「彼は今、月のものの真っ最中でね。女のわたしより症状が重いんだよ。」「月のものって・・じゃぁ、リヴァイさんは・・」「君は話をすぐに理解してくれて助かるよ。」 ハンジはそう言った後、リヴァイを布団の上に寝かせた。「わたしは薬湯を作ってくるから、その間リヴァイの事を頼むよ。」「わかりました。」 ハンジが部屋から出て行った後、エレンは眠っているリヴァイの手をそっと握った。 その時、リヴァイは微かな声で誰かの名を呼んだ。「エルヴィン・・」 その名を聞いた途端、エレンの脳裏にあの金髪碧眼の男の姿が浮かんだ。(リヴァイさんは、その人が好きなんだ・・夢の中で名前を呼ぶ位に・・)「お待たせ、薬湯を持ってきたよ。あれ、リヴァイまだ寝てる?」「えぇ、そうみたいです。」「起こすのも可哀想だから、暫くそっとしておこうか?」「はい・・」 部屋から出る時、エレンがリヴァイの方を見ると、彼は嬉しそうに笑っていた。エレンはリヴァイを起こさぬよう、そっと部屋の襖を閉じた。
Dec 24, 2019
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※BGMと共にお楽しみください。「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。 この奇妙な身体に生まれついてから、リヴァイは女にしかない、月に一度のものに悩まされていた。 下腹部の鈍痛、頭痛、そして何よりリヴァイが悩まされているのは、ホルモンバランスの乱れによる情緒不安定な状態に陥ることだった。「リヴァイ、あんたそんな所で寒い中何してんの?」「汚れた袴を洗っているだけだ。」「そうか、そういう時期だもんねぇ、あんた。」 リヴァイの身体の事を知っているのは、土方とハンジ、そして監察方で医者の息子である山崎烝だけだ。「はいこれ、例の薬。」「いつも悪いな。」「女のわたしでも、いつまで経っても慣れないよ・。リヴァイはわたしよりも症状が重いから辛いよねぇ。」「ガキなんて生まないってのに、いつもこんな苦しみを味わうなんて冗談じゃねぇ。」「まぁリヴァイは、今まで男として生きてきたんだもんねぇ。“女”の部分を受け入れたくないのは当然だよねぇ。」「あぁ・・」 亡くなった母はよく、“普通の身体に産んであげられなくてごめんな”と、涙を流しながら幼い自分を抱き締めていた。 男女両方の性を持ったリヴァイは、女として今まで生きてきたが、自分は男だと思って生きている。 その想いを裏切るかのように、リヴァイの身体は“女”として変化していっている。「俺は女として生きるなんてごめんだ。」「わかっているよ、あんたの気持ちは。」 ハンジはそう言って励ますかのようにリヴァイの肩を優しく叩いた。 二人の会話を密かに聞いていたエレンは、驚きの余り、暫くその場から動けなかった。(リヴァイさんが、そんな・・) 医者の息子であるエレンは、父・グリシャから半陰陽の話を何度も聞いていたが、存在をエレンは今まで信じていなかった。 しかし、自分が一番尊敬し、密かに想いを寄せている上司が、半陰陽―「エレン、そこで何をしているの?」 いつの間にかエレンの隣には、ミカサが立っていた。「ミカサ、お前は知ってんのか?その、リヴァイさんの身体のこと・・」「あの人と長い間一緒に暮らしてきたから、あの人の身体の事は知ってる。」「信じられねぇ、あの人が半陰陽だなんて・・」「エレン、あの人の事が好きなの?」「俺は・・」「あの人の事を、好きにならない方がいい。あの人の事を好きになったら、エレンが辛いだけ。」 その日の夜、エレンはなかなか眠れずに部屋から出て廊下を歩いていると、風呂場の方から微かな水音が聞こえてきた。 風呂場の窓からエレンが中を覗き見ると、そこには生まれたままの姿のリヴァイが居た。 湯煙の中から垣間見える彼の姿は、とてもなまめしかった。にほんブログ村
Dec 23, 2019
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