薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月 10
F&B 腐向け転生パラレル二次創作小説:Rewrite The Stars 6
天上の愛地上の恋 大河転生パラレル二次創作小説:愛別離苦 0
薄桜鬼異民族ファンタジー風パラレル二次創作小説:贄の花嫁 12
薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:羅刹の檻 10
黒執事 異民族ファンタジーパラレル二次創作小説:海の花嫁 1
黒執事 転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ 5
天上の愛 地上の恋 転生現代パラレル二次創作小説:祝福の華 10
PEACEMAKER鐵 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:蒼い華 14
火宵の月 BLOOD+パラレル二次創作小説:炎の月の子守唄 1
火宵の月×呪術廻戦 クロスオーバーパラレル二次創作小説:踊 1
薄桜鬼 現代ハーレクインパラレル二次創作小説:甘い恋の魔法 7
火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜 18
火宵の月 転生オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は 10
薄桜鬼ハリポタパラレル二次創作小説:その愛は、魔法にも似て 5
薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計 9
薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫 20
火宵の月 帝国オメガバースファンタジーパラレル二次創作小説:炎の后 1
薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母 13
コナン×薄桜鬼クロスオーバー二次創作小説:土方さんと安室さん 6
薄桜鬼×火宵の月 平安パラレルクロスオーバー二次創作小説:火喰鳥 7
天上の愛地上の恋 転生オメガバースパラレル二次創作小説:囚われの愛 9
鬼滅の刃×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:麗しき華 1
ツイステ×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:闇の鏡と陰陽師 4
黒執事×薔薇王中世パラレルクロスオーバー二次創作小説:薔薇と駒鳥 27
黒執事×ツイステ 現代パラレルクロスオーバー二次創作小説:戀セヨ人魚 2
ハリポタ×天上の愛地上の恋 クロスオーバー二次創作小説:光と闇の邂逅 2
天上の愛地上の恋 転生昼ドラパラレル二次創作小説:アイタイノエンド 6
黒執事×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:悪魔と陰陽師 1
天愛×火宵の月 異民族クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼と翠の邂逅 1
陰陽師×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:君は僕に似ている 3
天愛×薄桜鬼×火宵の月 吸血鬼クロスオーバ―パラレル二次創作小説:金と黒 4
火宵の月 昼ドラハーレクイン風ファンタジーパラレル二次創作小説:夢の華 0
火宵の月 吸血鬼転生オメガバースパラレル二次創作小説:炎の中に咲く華 1
火宵の月×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉 54
バチ官腐向け時代物パラレル二次創作小説:運命の花嫁~Famme Fatale~ 6
火宵の月異世界転生昼ドラファンタジー二次創作小説:闇の巫女炎の神子 0
バチ官×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:二人の天使 3
火宵の月 異世界ファンタジーロマンスパラレル二次創作小説:月下の恋人達 1
FLESH&BLOOD 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の騎士 1
FLESH&BLOOD ハーレクイン風パラレル二次創作小説:翠の瞳に恋して 20
火宵の月 戦国風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:泥中に咲く 1
PEACEMAKER鐵 ファンタジーパラレル二次創作小説:勿忘草が咲く丘で 9
火宵の月 和風ファンタジーパラレル二次創作小説:紅の花嫁~妖狐異譚~ 3
天上の愛地上の恋 現代昼ドラ風パラレル二次創作小説:黒髪の天使~約束~ 3
火宵の月 異世界軍事風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:奈落の花 2
天上の愛 地上の恋 転生昼ドラ寄宿学校パラレル二次創作小説:天使の箱庭 7
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生遊郭パラレル二次創作小説:蜜愛~ふたつの唇~ 1
天上の愛地上の恋 帝国昼ドラ転生パラレル二次創作小説:蒼穹の王 翠の天使 1
火宵の月 地獄先生ぬ~べ~パラレル二次創作小説:誰かの心臓になれたなら 2
火宵の月 異世界ロマンスファンタジーパラレル二次創作小説:鳳凰の系譜 1
火宵の月 昼ドラハーレクインパラレル二次創作小説:運命の花嫁~愛しの君へ~ 0
黒執事 昼ドラ風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:君の神様になりたい 4
天愛×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:翼がなくてもーvestigeー 2
FLESH&BLOOD ハーレクイロマンスパラレル二次創作小説:愛の炎に抱かれて 10
薄桜鬼腐向け転生刑事パラレル二次創作小説 :警視庁の姫!!~螺旋の輪廻~ 15
FLESH&BLOOD 帝国ハーレクインロマンスパラレル二次創作小説:炎の紋章 3
PEACEMAKER鐵 オメガバースパラレル二次創作小説:愛しい人へ、ありがとう 8
天上の愛地上の恋 現代転生ハーレクイン風パラレル二次創作小説:最高の片想い 6
FLESH&BLOOD ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の花嫁と金髪の悪魔 6
薄桜鬼腐向け転生愛憎劇パラレル二次創作小説:鬼哭琴抄(きこくきんしょう) 10
薄桜鬼×天上の愛地上の恋 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:玉響の夢 6
天上の愛地上の恋 昼ドラ風パラレル二次創作小説:愛の炎~愛し君へ・・~ 1
天上の愛地上の恋 異世界転生ファンタジーパラレル二次創作小説:綺羅星の如く 0
天愛×腐滅の刃クロスオーバーパラレル二次創作小説:夢幻の果て~soranji~ 1
天愛×相棒×名探偵コナン× クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧に融ける 1
黒執事×天上の愛地上の恋 吸血鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼に沈む 0
魔道祖師×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想うは、あなたひとり 2
天上の愛地上の恋 BLOOD+パラレル二次創作小説:美しき日々〜ファタール〜 0
天上の愛地上の恋 現代転生パラレル二次創作小説:愛唄〜君に伝えたいこと〜 1
天愛 夢小説:千の瞳を持つ女~21世紀の腐女子、19世紀で女官になりました~ 1
FLESH&BLOOD 現代転生パラレル二次創作小説:◇マリーゴールドに恋して◇ 2
YOI×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:皇帝の愛しき真珠 6
火宵の月×刀剣乱舞転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:たゆたえども沈まず 2
薔薇王の葬列×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:黒衣の聖母 3
天愛×F&B 昼ドラ転生ハーレクインクロスオーパラレル二次創作小説:獅子と不死鳥 1
刀剣乱舞 腐向けエリザベート風パラレル二次創作小説:獅子の后~愛と死の輪舞~ 1
薄桜鬼×火宵の月 遊郭転生昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:不死鳥の花嫁 1
薄桜鬼×天上の愛地上の恋腐向け昼ドラクロスオーバー二次創作小説:元皇子の仕立屋 2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧き竜と炎の姫君~愛の果て~ 1
F&B×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:海賊と陰陽師~嵐の果て~ 1
YOI×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:氷上に咲く華たち 1
火宵の月×薄桜鬼 和風ファンタジークロスオーバーパラレル二次創作小説:百合と鳳凰 2
F&B×天愛 昼ドラハーレクインクロスオーバ―パラレル二次創作小説:金糸雀と獅子 2
F&B×天愛吸血鬼ハーレクインクロスオーバーパラレル二次創作小説:白銀の夜明け 2
天上の愛地上の恋現代昼ドラ人魚転生パラレル二次創作小説:何度生まれ変わっても… 2
相棒×名探偵コナン×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:名探偵と陰陽師 1
薄桜鬼×天官賜福×火宵の月 旅館昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:炎の宿 2
火宵の月 異世界ハーレクインヒストリカルファンタジー二次創作小説:鳥籠の花嫁 0
天愛 異世界ハーレクイン転生ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の巫女 氷の皇子 1
天愛×火宵の月陰陽師クロスオーバパラレル二次創作小説:雪月花~また、あの場所で~ 0
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表紙素材は、黒獅様からお借りしました。「陰陽師」・「火宵の月」二次小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「不味いな・・」「不味いとは?」「すぐにわかる。」檜扇の中でそんな会話を晴明と有匡が交わしていると、渡殿の方から騒がしい足音が聞こえて来た。「晴明!」「まぁ、何ですか博雅殿、中宮様の御前ですよ。」晴明達の元へ向かおうとした博雅だったが、中宮付の女房に止められた。「も、申し訳ありませぬ。知り合いが居たような気がしたので・・」(危なかった・・)晴明はなるべく博雅と目を合わさぬよう、自分に宛がわれた局へと戻っていった。―ねぇ、あの方なの?―お美しい方ね・・―姉妹共に、まるで絵巻物から抜け出て来たかのような美しさだわ・・楽競べから数日後、有匡と火月は時折女達の視線を感じるようになった。「それにして、晴明様・・晴子様はどうなさっているのでしょうね?」「さぁな。中宮様を呪詛しようとする者は未だに見つからないし、いつまで後宮に居るのやら・・」そんな事を言いながら有匡が書類仕事をしていると、そこへ一匹の猫が迷い込んで来た。「まぁ、可愛らしい事。」「何処の猫かしら?」その猫は、雪のように白く、碧い目をしていた。猫は、自然に有匡の方へと寄って来た。「可愛い・・」「迷い猫か?だとしたら、すぐに飼い主に届け・・」有匡がそう言った時、猫が彼の膝上に丸まった。「すっかり、懐かれてしまいましたわね、有子様。」猫は、飼い主が見つかるまで、有匡と火月が世話をする事になった。「ねぇ、この子の名前を決めましょう。“猫”と呼ぶのはね・・」「う~ん、そうだな・・」有匡はそう言うと、猫の碧い目を見た。「碧、というのはどうだ?」「いいですね。碧、良かったね~」火月に撫でられ、碧は嬉しそうに喉を鳴らした。「あの猫は、ちゃんと藤壺へ放ったか?」「はい、仰せの通りに。」彰子が住まう藤壺から少し離れた桐壺では、一人の女が、そう言って主を見た。「幸いにも、あの陰陽師達はまだこちらには気づいておりません。」「そうか、決してあやつらには気づかれてはならぬぞ。」「はい・・」女は、衣擦れの音を立てながら桐壺を出て、藤壺へと向かった。「遅かったわね、大山掌侍。」「申し訳ございませぬ、中宮様。」「ねぇ、あの二人がここに来てから、藤壺が少し華やかになったとは思わない?」「ええ。」「あの二人には、ずっとここに居て欲しいわ。」「わたくしも、そう思います。」彰子付きの女房・大山江子は、そう言って頷いた。内に秘めた、企みに気づかれないよう、俯いたまま。「晴子様、わたくしに琵琶を教えてくれない?」「定子様、何故わたくしのような身分卑しき者に・・」「楽の音は、人の貴賎など関係ないわ。楽競べでわたしはあなたの琵琶の音に心が癒されたのよ。」「中宮様・・」こうして晴明は、定子に琵琶を教える事になった。だがそれを、快く思わない者が居た。「きゃぁ~!」「晴子様の夜着に、野犬の死骸が!」「誰がこんな酷い事を!」「晴子様がお可哀想・・」周囲が騒然としている中、晴明はじっと、“ある人物”を見つめていた。「ねぇ、晴子様の夜着に・・」「酷いわねぇ・・」「一体、犯人は誰なのかしら?」晴明への嫌がらせは、日に日に酷くなっていった。だが、晴明は冷静だった。「晴明・・晴子様、大丈夫なのでしょうか?」「大丈夫だろう、あの方はお強いから。」有匡と火月がそんな事を話していると、渡殿の方から何処か力強い足音が聞こえて来た。「晴明、晴明はおるか~!」(あの声は、道長様・・)有匡が御簾の中から外の様子を窺うと、道長が顔を怒りで赤く染めながら定子の元へと向かってゆくのを見た。「これはこれは、道長様。そのように大声を出されて、何かありましたか?」「“何かありましたか?”ではないわ!見よ、これを!」道長はそう晴明に向かって怒鳴ると、ある物を彼に投げて寄越した。「これは?」「桐壺の庭に埋められておった!」それは、定子の名が書かれた呪詛人形だった。「成程、“敵”は色々と焦っているようですね。」「そのような悠長な事を言っている場合か!早くこの人形を埋めた相手を見つけよ!」「わかりました・・」(これはまた、厄介な事を・・)道長が去った後、晴明は深い溜息を吐いていた。「晴子、顔色が悪いわよ、大丈夫?」「大丈夫、です・・」晴明はその日、朝から誰かに見張られているような気がしてならなかった。(何だ、この絡みつくようなものは・・)「中宮様、中宮様、大変でございます!」「どうなさったの、少納言?」「弘徽殿から、火の手が上がっております!早く、安全な場所へ避難なさってください!」―またなの?―この前は桐壺で付け火が・・―桐壺といえば、“あの方”の・・慌てふためきながら安全な場所へと避難しながら、女房達がそんな事を囁いている姿を、“ある人物”は遠巻きに眺めていた。「どうした?」「呪詛は、もうすぐ成就致します。」「そうか。」(そのあかつきには、あなたには消えて頂かなければなりません・・)「晴明・・晴子様、ご無事で良かった。」「有子様も、ご無事で何より。」藤壺で晴明と合流した有匡と火月は、そう言いながら笑い合った。「前回は桐壺、今回は弘徽殿・・何やら、共通点がありそうですね。」「共通点?」「今、紫式部がお書きになられている“物語”に登場する、二人の女性―桐壺更衣と、弘徽殿女御・・」「では、次に狙われるのは・・」「これ以上、悪い事を考えるのは止めましょう。」「ええ。」晴明はその時、全身に悪寒が走り、そのままその場に蹲ってしまった。「晴子様!?」「どうかなさったのですか!?」「誰か、誰か来て!」晴明は、謎の高熱に苦しめられた。「晴明様、どうしちゃったんだろう?」「恐らく、誰かが晴明様に呪詛をかけたのだろう。」「呪詛って、誰に?」「さぁな。それよりも、少し出掛けて来る。」「どちらへ?」「桐壺だ。そこに呪詛の痕跡が残っているかもしれないからな。」「そうですか、お気をつけて。」火月に見送られ、有匡は桐壺へと向かった。かつては美しい妃とその女房達が住み、華やかであったそこは、不気味な雰囲気を醸し出す廃墟と化していた。(あそこか・・)有匡が、人形が埋められていた庭へと向かうと、そこには何かがまた埋められた跡があった。(何だ?)有匡がそっと新しく埋められた穴を掘ると、そこには晴明の名が書かれた呪詛人形が埋められていた。「やはり、な・・」有匡は祭文を唱え、人形に込められた“念”を、元の持ち主へと“返し”た。その日の夜、一人の男の屋敷に雷が落ちた。「お館様、どちらに・・きゃぁぁ~!」「誰か、誰かぁ~!」その屋敷の主は、両目から血を流して死んでいた。「これから、どうなさいますか・・“御息所様”?」「あとは、わたくしに任せておきなさい。」女は、そう言った後笑った。「晴子様、もう大丈夫なのですか?」「えぇ。」晴明は、高熱に襲われてから数日後、回復した。「良かった、心配していたんですよ!」火月はそう言うと、晴明に抱きついた。「おやめなさい、はしたない!」有匡はそう言った後、火月の頭を軽く小突いた。「す、すいません・・」「申し訳ありませんでした、“姉上”・・」「火月は、本当に晴子様がお好きなのね。」「あら晴子様、もう体調は大丈夫なの?」「はい。紫式部様、ご心配をおかけしました。」「そうだ、これを皆さんにお見せしたかったの。」紫式部はそう言うと、有匡達にある書物を見せた。「それは?」「この前のお話の、続きを書いてみたの。」「まぁ、嬉しい!読んでもいいですか?」「えぇ、勿論。」有匡達が紫式部の“物語”に夢中になっていると、そこへ大山江子が通りかかった。「随分と楽しそうね?」「また、紫式部様の“物語”を皆で読んでいたのですよ。江子様も如何です?」「わたくしは、遠慮しておくわ。」江子はそう言って晴明と有匡を睨みつけた後、去っていった。「何あれ、カンジ悪いわねぇ。」「もしかして、晴明様に嫌がらせしていたの、あの方じゃない?」「下らん憶測だけで人を犯人扱いするな。」有匡はそう言うと、式神達を睨んだ。「も、申し訳ございません、殿・・」「さ、仕事に戻りましょう!今日は主上がお渡りになられる日だから、忙しいわ~」「そうね~」宮中の外―京では、疫病が猛威をふるっていた。「疫神か・・」「殿、どうかなさいましたか?」「いや、何でもない。」(陰の気が押し寄せて来る・・外側からではなく、内側から?)にほんブログ村二次小説ランキング
Apr 29, 2024
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表紙素材は、黒獅様からお借りしました。「陰陽師」・「火宵の月」二次小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。―狐の子だ!―気味の悪い化け物め!―山へ帰れ!思い出すのは、石を投げられ、罵倒され、蔑まれた日々。―所詮人間なんて、こっちの力を利用するか怖がる事しか知らない、下等動物さ。脳裏に響く、誰かの声。「う・・」「先生。」「火月・・?」有匡が苦しそうに呻きながら目を開けると、そこには涙を流して自分の手を握っている火月の姿があった。「毒消しの薬湯だ、飲むといい。」「あぁ・・」晴明から毒消しの薬湯を渡され、有匡はそれを一口飲んだが、むせてしまった。「先生、大丈夫ですか?」「おい晴明、この薬湯、酷い臭いがするぞ!」博雅は晴明が作った薬湯を有匡の手から奪い、その臭いを嗅ぐと、それは腐った肉のような臭いがした。「いやぁ、この前お前が調合したものを再現して作ろうと思ったんだが、上手くいかないなぁ。」「晴明・・」博雅はそう言いながら、薬湯を下げた。「済まない、薬湯は俺が作る。」「じゃぁ、これを。」そう言って火月が博雅に差し出したのは、己の紅玉を粉末にしたものだった。「これを、薬湯に混ぜて飲ませて下さい。」「わかった。」有匡の全身から蜘蛛の毒が抜けるまで、数日かかった。「有匡殿、怪我の具合はどうですか?」「良くなりました。晴明殿、我らを保護して下さりありがとうございます。」「いや、何の。同族のよしみで助けたいと思っただけだ。」「晴明、晴明はおるかっ!」有匡と晴明が屋敷の中でそんな話をしていると、門の方から男の声が聞こえて来た。「先生、お客様ですか?」「火月、お前は奥に居ろ。」「はい。」「晴明殿、門の所で叫んでおられるのはどなたなのですか?」「藤原道長様です。」(藤原道長だと!?)時の権力者である藤原道長が、晴明に一体何の用なのだろうか―そんな事を想いながら有匡が晴明と共に奥の部屋から寝殿へと移動すると、そこには藤原道長が渋面を浮かべながら彼らを待っていた。「道長様、このような夜明け前にいらっしゃるとはお珍しい。何かわたくしにご用なのですか?」「勿体ぶった言い方をするな、晴明!わしがここに来たのは・・」「中宮となられた彰子様の御身に、何かあったのですか?」「流石だ晴明、わしがお主の元へ来たのはその事よ。」道長はそう言った後、晴明の隣に立っている有匡の存在に気づいた。「晴明、その男は誰だ?」「こちらの方は、わたしの遠縁の従兄にあたる、土御門有匡殿です。」「お初にお目にかかります、道長様。土御門有匡と申します。」「遠縁の従兄だと?確かに、少しお主に似ておるな。」道長はそう言って鼻を鳴らすと、ジロリと有匡を見た。「して、道長様、詳しくお話を聞きましょうか?」「あぁ、実はな・・」道長は寝殿に通され、晴明と有匡に“ある事”を依頼した。それは、出産を控えた娘・彰子を呪詛しようとしている者を突き止めよ、というものだった。「ほぉ、それはそれは・・」藤原道長は、娘を入内させ、その娘が懐妊した事により、自分達を恨む者が呪詛を企んでいると考えている。「して、その者に心当たりはございますか?」「それを突き止めて欲しいと言うておるのだ!」何という無理難題をふっかけるのだろうと、有匡は晴明と道長の会話を聞きながらそう思った。いつの世も、時の権力者というのは身勝手な者が多い。「彰子様の周りに居る者達の中に、呪詛を企む者が居るのでは?」「あぁ、そうだ。そこで、お前とその従兄に、後宮へ潜入して貰う。」「後宮へ、ですか?」「そうだ。お前達ならば、男だと簡単に露見する事もなかろう。」「承りました。」権力者に逆らえる筈もなく、晴明と有匡は後宮に潜入する事になった。「先生、お似合いです!」「やけに楽しそうだな、火月?」「前に一度、式神のおねーさん達と、先生が女装したら絶世の美女になるだろうなぁって話していた事があったんですが、まさにその通りになりましたね!」「そうか・・」有匡がそう言って溜息を吐いていると、“式神のおねーさん達”こと、有匡の式神である種香と小里が二人の元へとやって来た。「きゃ~、殿、お美しいですわ~!」「う、眩しい、目が、目がぁ~!」「先生、頑張ってくださいね!」「火月、お前も一緒に行くんだぞ。」「え?」「お前を一人にすると、心配だからな。」「え、えぇ~!」こうして、火月と種香達は有匡と共に後宮に潜入する事になった。「うわぁ、華やかな所ですね~」「火月、余りキョロキョロするな。」「す、すいませんっ!」「そこ、私語を慎みなさい!」「申し訳ございませぬ、こちらの者は、宮仕えが初めてな者でして、中宮様にお会いできる日を指折り数えて待っていたので、つい興奮してしまったのですよ、そうよね、火月?」有匡はそう言うと、年嵩の女房に睨まれた火月を庇った。「はい、申し訳ありません。」「中宮様の前では、失礼のないようにね!」年嵩の女房はジロリと有匡達を睨むと、そのまま主である彰子の元へと向かった。「中宮様、起きていらっしゃいますか?」「ええ、起きているわ。」そう言って御帳台の中から顔を出したのは、道長の娘であり中宮である、藤原彰子だった。「お父上様から、遣わされた新しい女房達がいらっしゃいました。」「まぁ、父上も心配性がますます拍車がかかっていらっしゃるようね。」(綺麗な方だ・・)真に美しい人は性別問わずその美は顔の美醜に関係なく、“内側”―心の美しさにあるのだと、有匡は彰子と会ってそう思った。「お初にお目にかかります、有子と申します。こちらは、わたくしの妹の、火月です。」「お初にお目にかかります、火月です。」「素敵な瞳の色ね。まるで炎を映したかのようだわ。」「ありがとうございます・・」「中宮様、妹は宮仕えが初めてなので、何かと至らぬ所もございますが、何卒ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い致します。」有匡がそう言って彰子に頭を下げ、彼女の局から去った時、火月が少し拗ねたような顔をして自分を睨んでいる事に気づいた。「どうした?」「べ、別にっ!」「お前、もしかして、わたしが中宮様と浮気するとでも思っているのか?安心しろ、わたしはお前しか愛さない。」「せ、先生~!」火月は喜びの余り、鼻血を出してしまった。「全く、あれ位の事で鼻血を出す奴が居るか。これから先が思いやられるな。」「す、すいません・・」有匡が火月を介抱していると、そこへ一人の女房がやって来た。「あなた方が、新しくいらした方ね?はじめまして、わたくしは紫式部よ、よろしくね。」「有子と申します。紫式部様、その巻物は?」「これは、わたくしが今書いている物語なの。中宮様のお心が、少しでも軽くなられるようにと、続きを書いてみたのよ。」「少し拝見してもよろしいでしょうか?」「ええ、構わないわよ。」女房―紫式部から巻物を見せて貰った有匡は、その物語が後に世に残る大作である事に気づいた。「まぁ、面白くなかったのかしら?」「いいえ、面白かったです。中宮様が続きを読みたいとおっしゃる理由がわかるような気がしますわ。」「ありがとう、この物語は、一人の男の人生と、その子供達のお話なのよ。」「お引き留めしてしまって申し訳ありませんでした、紫式部様。ひとつ、お願いがございます。」「何かしら?」「この物語の続きが出来たあかつきには、中宮様よりも先に読ませて頂けませんか?」「まぁ、そんなのお安い御用よ。」紫式部はそう言って、鈴を転がすような声で笑った。「ねぇ有子様、ご存知?定子様の所に、新しい女房が来られたのですって!」「定子様の所に?どのようなお方なのかしら?」「さぁ・・その方は、射干玉の如き艶やかな黒髪と、涼やかな目元をされておられるとか・・名は、晴子様とおっしゃったわね。」「まぁ、何という因縁なのでしょう、従妹同士がそれぞれ違う主に仕えるなんて・・」「晴子様、有子様とご親戚でいらっしゃるの?」「ええ・・親戚といっても、名前だけ知っている間柄ですわ。」「まぁ、そうなんですの。」周りの女房達から、“晴子”との関係を質問責めにされ、有匡がそう言ってのらりくらりと彼女達の質問をかわすと、彼女達はたちまち他の話題を話し始めた。(危なかった・・)「何やら、彰子様の方が少し賑やかですわね。」「新しい女房が二人、いらっしゃったようですわ。おひとりは美しい黒髪の方と、もうひとりは眩い金の髪を持った方だとか。」定子の元に仕える女房・清少納言は少し苛立ったかのような口調でそう言うと、持っていた檜扇を指先で弄った。「何をそんなに苛々しているの、少納言?」「紫式部が、あの物語とやらを・・」「あなたの随筆も、中々面白いですわ。」「ありがとう、晴子さん。」檜扇の中で溜息を吐きながら、“晴子”―もとい晴明は、彰子を呪詛しようとする者を突き止める前に、女だらけの職場である後宮独特の空気に参ってしまうのではないかと思い始めていた。そんな中、後宮で楽競べというものが行われ、有匡と火月は和琴で、晴明は琵琶でそれぞれ出る事になった。楽競べは滞りなく終わる筈であったが、博雅が彰子に招かれて後宮で女装姿の晴明を見つけてしまった。(晴明、晴明ではないか!)にほんブログ村二次小説ランキング
Mar 26, 2024
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※BGMと共にお楽しみください。「陰陽師」・「火宵の月」二次小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「今日は月が綺麗だな、晴明よ。」「あぁ。」源博雅は、いつものように親友であり恋人である安倍晴明と共に、空に浮かぶ紅い月を眺めていた。「知っているか、博雅。紅い月には魔力があって、願い事を叶えてくれるそうだ。」「そうか。」「もし、願いを叶えるとしたら、博雅よ、お前は何を望む?」「こうして、いつまでもお前と酒を酌み交わしたい。」「そうか・・」そう言った晴明の横顔は、何処か悲しそうに見えた。「なぁ、晴明・・」博雅がそう言って晴明の方を見た時、激しい揺れが京の都を襲った。「何だ!?」「晴明、俺から離れるな!」揺れは暫くすると治まったが、晴明の邸の土塀が少し崩れていた。「無事か、博雅?」「あぁ・・」晴明はそう言って邸の周辺を見渡すと、向こうの通りから誰かの叫び声が聞こえた。「どうした?」「何やら、おかしい。」「おかしい、とは?」博雅がそう言って晴明に尋ねた時、彼の姿は既になかった。「晴明!?」京が地震に襲われる数時間前、鎌倉では一組の夫婦が生命の危機に瀕していた。「火月、しっかり掴まっていろ!」「はい!」土御門有匡と、その妻・火月は、突如幕府から倒幕祈禱に加担したという疑いをかけられ、逃亡先の唐土への次元通路を開こうとしたが、開かなかった。「先生、これから一体何処へ行けば・・」「それはわからん。今は、追手を撒く事だけを考え・・」有匡がそう言いながら馬を走らせていると、突然地の底から轟音が響き、地面に大きな裂け目が出来た。「先生!」「火月!」有匡と火月は、互いに抱き合ったまま、静かに落ちていった。「う・・」「火月、大丈夫か?」「はい。でも・・」火月はそう言うと、有匡の肩越しに何かを見て、怯えた。「どうした?」“美味そうだぁ・・”闇の中で不気味な声が響いたかと思うと、鋭い鋏と牙を持った巨大な蜘蛛が二人の前に現れた。「火月、さがっていろ。」“この芳しい匂い・・其方から、白狐の匂いがするぞ。”蜘蛛はカチカチと牙を鳴らしながらそう言うと、有匡に襲い掛かって来た。「縛鬼伏邪、急急如律令!」“おのれ・・”蜘蛛の身体は、砂のように消えていった。「先生、大丈夫ですか?」「あぁ・・」火月を安心させる為に有匡はそう言ったが、蜘蛛の毒牙が右胸を掠めていた。「おぉい、あそこに誰か居るぞ!」「運が良い、こんな日に貴族を見つけるとはなぁ!」「しかも連れの女は上玉だ。さっさと男を殺して女を売り飛ばそうぜ。」そう言いながら二人の前に現れたのは、野盗と思しき男達だった。「火月、お前は先に逃げろ。」「嫌です!」(まだ毒は全身に回っていない・・相手は五人・・一か八か、やるしかない!)「火月、目を閉じていろ。」「はい。」有匡は深呼吸した後、妖狐の力を解放した。「ひぃっ・・」「た、助け・・」「わたしに会ったのが、運の尽きだったな。」物言わぬ骸となった男達を見下ろしながら、有匡は苦しそうに喘ぐと、地面に蹲った。「先生、しっかりして下さい!」「心配するな。お前は、わたしが守る・・」 有匡は、自分達の方へと近づいて来る人の気配を感じた。(敵か・・?)「おや、俺と同じ“気”を感じるなと思って来てみれば、“同族”だったか。」紅い月が、自分達を見下ろす一人の男を照らした。「あなたは、誰?」「俺は、安倍晴明。この京の都を守る陰陽師だ。」「先生を、助けて下さい!」火月は、そう晴明に助けを求めた後、有匡を己の方へと抱き寄せ、涙を流した。その涙は、美しい紅玉となった。「晴明、そこに居たのか。」「博雅、いい所へ来た。」「その者達は?」「話はあとだ。まずは、怪我人を邸で手当てせねば。」「あぁ、わかった・・」 鎌倉の世と平安の世に生きた二人の陰陽師は、こうして紅い月に導かれる様にして、出会った。その出会いが、二人の運命を変える事になろうとも、この時の彼らには知る由もなかった。にほんブログ村
Jan 24, 2024
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