薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月 10
F&B 腐向け転生パラレル二次創作小説:Rewrite The Stars 6
天上の愛地上の恋 大河転生パラレル二次創作小説:愛別離苦 0
薄桜鬼異民族ファンタジー風パラレル二次創作小説:贄の花嫁 12
薄桜鬼 昼ドラオメガバースパラレル二次創作小説:羅刹の檻 10
黒執事 異民族ファンタジーパラレル二次創作小説:海の花嫁 1
黒執事 転生パラレル二次創作小説:あなたに出会わなければ 5
天上の愛 地上の恋 転生現代パラレル二次創作小説:祝福の華 10
PEACEMAKER鐵 韓流時代劇風パラレル二次創作小説:蒼い華 14
火宵の月 BLOOD+パラレル二次創作小説:炎の月の子守唄 1
火宵の月×呪術廻戦 クロスオーバーパラレル二次創作小説:踊 1
薄桜鬼 現代ハーレクインパラレル二次創作小説:甘い恋の魔法 7
火宵の月 韓流時代劇ファンタジーパラレル 二次創作小説:華夜 18
火宵の月 転生オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は 10
薄桜鬼ハリポタパラレル二次創作小説:その愛は、魔法にも似て 5
薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計 9
薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫 20
火宵の月 帝国オメガバースファンタジーパラレル二次創作小説:炎の后 1
薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母 13
コナン×薄桜鬼クロスオーバー二次創作小説:土方さんと安室さん 6
薄桜鬼×火宵の月 平安パラレルクロスオーバー二次創作小説:火喰鳥 7
天上の愛地上の恋 転生オメガバースパラレル二次創作小説:囚われの愛 9
鬼滅の刃×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:麗しき華 1
ツイステ×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:闇の鏡と陰陽師 4
黒執事×薔薇王中世パラレルクロスオーバー二次創作小説:薔薇と駒鳥 27
黒執事×ツイステ 現代パラレルクロスオーバー二次創作小説:戀セヨ人魚 2
ハリポタ×天上の愛地上の恋 クロスオーバー二次創作小説:光と闇の邂逅 2
天上の愛地上の恋 転生昼ドラパラレル二次創作小説:アイタイノエンド 6
黒執事×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:悪魔と陰陽師 1
天愛×火宵の月 異民族クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼と翠の邂逅 1
陰陽師×火宵の月クロスオーバーパラレル二次創作小説:君は僕に似ている 3
天愛×薄桜鬼×火宵の月 吸血鬼クロスオーバ―パラレル二次創作小説:金と黒 4
火宵の月 昼ドラハーレクイン風ファンタジーパラレル二次創作小説:夢の華 0
火宵の月 吸血鬼転生オメガバースパラレル二次創作小説:炎の中に咲く華 1
火宵の月×薄桜鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉 54
バチ官腐向け時代物パラレル二次創作小説:運命の花嫁~Famme Fatale~ 6
火宵の月異世界転生昼ドラファンタジー二次創作小説:闇の巫女炎の神子 0
バチ官×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:二人の天使 3
火宵の月 異世界ファンタジーロマンスパラレル二次創作小説:月下の恋人達 1
FLESH&BLOOD 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の騎士 1
FLESH&BLOOD ハーレクイン風パラレル二次創作小説:翠の瞳に恋して 20
火宵の月 戦国風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:泥中に咲く 1
PEACEMAKER鐵 ファンタジーパラレル二次創作小説:勿忘草が咲く丘で 9
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天上の愛地上の恋 現代昼ドラ風パラレル二次創作小説:黒髪の天使~約束~ 3
火宵の月 異世界軍事風転生ファンタジーパラレル二次創作小説:奈落の花 2
天上の愛 地上の恋 転生昼ドラ寄宿学校パラレル二次創作小説:天使の箱庭 7
天上の愛地上の恋 昼ドラ転生遊郭パラレル二次創作小説:蜜愛~ふたつの唇~ 1
天上の愛地上の恋 帝国昼ドラ転生パラレル二次創作小説:蒼穹の王 翠の天使 1
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火宵の月 異世界ロマンスファンタジーパラレル二次創作小説:鳳凰の系譜 1
火宵の月 昼ドラハーレクインパラレル二次創作小説:運命の花嫁~愛しの君へ~ 0
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FLESH&BLOOD ハーレクイロマンスパラレル二次創作小説:愛の炎に抱かれて 10
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FLESH&BLOOD ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の花嫁と金髪の悪魔 6
薄桜鬼腐向け転生愛憎劇パラレル二次創作小説:鬼哭琴抄(きこくきんしょう) 10
薄桜鬼×天上の愛地上の恋 転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:玉響の夢 6
天上の愛地上の恋 昼ドラ風パラレル二次創作小説:愛の炎~愛し君へ・・~ 1
天上の愛地上の恋 異世界転生ファンタジーパラレル二次創作小説:綺羅星の如く 0
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天愛×相棒×名探偵コナン× クロスオーバーパラレル二次創作小説:碧に融ける 1
黒執事×天上の愛地上の恋 吸血鬼クロスオーバーパラレル二次創作小説:蒼に沈む 0
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天上の愛地上の恋 BLOOD+パラレル二次創作小説:美しき日々〜ファタール〜 0
天上の愛地上の恋 現代転生パラレル二次創作小説:愛唄〜君に伝えたいこと〜 1
天愛 夢小説:千の瞳を持つ女~21世紀の腐女子、19世紀で女官になりました~ 1
FLESH&BLOOD 現代転生パラレル二次創作小説:◇マリーゴールドに恋して◇ 2
YOI×天上の愛地上の恋 クロスオーバーパラレル二次創作小説:皇帝の愛しき真珠 6
火宵の月×刀剣乱舞転生クロスオーバーパラレル二次創作小説:たゆたえども沈まず 2
薔薇王の葬列×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:黒衣の聖母 3
天愛×F&B 昼ドラ転生ハーレクインクロスオーパラレル二次創作小説:獅子と不死鳥 1
刀剣乱舞 腐向けエリザベート風パラレル二次創作小説:獅子の后~愛と死の輪舞~ 1
薄桜鬼×火宵の月 遊郭転生昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:不死鳥の花嫁 1
薄桜鬼×天上の愛地上の恋腐向け昼ドラクロスオーバー二次創作小説:元皇子の仕立屋 2
火宵の月 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説:碧き竜と炎の姫君~愛の果て~ 1
F&B×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:海賊と陰陽師~嵐の果て~ 1
YOI×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説:氷上に咲く華たち 1
火宵の月×薄桜鬼 和風ファンタジークロスオーバーパラレル二次創作小説:百合と鳳凰 2
F&B×天愛 昼ドラハーレクインクロスオーバ―パラレル二次創作小説:金糸雀と獅子 2
F&B×天愛吸血鬼ハーレクインクロスオーバーパラレル二次創作小説:白銀の夜明け 2
天上の愛地上の恋現代昼ドラ人魚転生パラレル二次創作小説:何度生まれ変わっても… 2
相棒×名探偵コナン×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説:名探偵と陰陽師 1
薄桜鬼×天官賜福×火宵の月 旅館昼ドラクロスオーバーパラレル二次創作小説:炎の宿 2
火宵の月 異世界ハーレクインヒストリカルファンタジー二次創作小説:鳥籠の花嫁 0
天愛 異世界ハーレクイン転生ファンタジーパラレル二次創作小説:炎の巫女 氷の皇子 1
天愛×火宵の月陰陽師クロスオーバパラレル二次創作小説:雪月花~また、あの場所で~ 0
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表紙素材は、装丁カフェからお借りしました。「薄桜鬼」「天官賜福」「火宵の月」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。「ん・・」「兄さん、気がついた?」 謝憐が目を開けると、隣には心配そうに自分を見つめる花城の姿があった。「三郎、わたしは・・」「兄さんは、熱中症に罹ってこのホテルのお世話になったんだよ、憶えていない?」「あ・・」 謝憐は勢い良く起き上がろうとしたが、酷い眩暈に襲われ、また布団の中で横になった。「余り無理しないで、兄さん。そうだ、お腹空いていない?」「いや・・余りお腹は空いていないんだ。」「そう。兄さん、俺は先に温泉に入って来るから、兄さんはゆっくり休んでいて。」「あぁ、わかった。」 花城は謝憐を部屋に残し、大浴場へと向かった。 脱衣所で浴衣を脱いで彼が中へ入ると、たちまち彼は好奇の視線を向けられた。 そんな事を気に掛けず花城が温泉を満喫していると、そこへ騒がしく話しながら大浴場に数人の男達が入って来た。『全く、法事の間あいつは俺達に愛想笑いすら浮かべなかったな。』『そうだな、相変わらず愛想がない奴だ。よくあんな性格で客商売が出来るものだな。』『まぁいいさ、あぁいうのはこういう所で暮らすのが性に合っているだろうよ。』 男達の会話を聞いていた花城だったが、彼らが何を話していたのかはわからなかった。 花城が大浴場から出て部屋に戻る途中、廊下を仲居達が忙しく走り回っている姿を見た。「はぁ~、やっとあいつらが帰るっていうのに、今度は花火大会見たさに飛び込みで泊まりに来る客の所為で忙しくて嫌になっちゃうわ。」「宴会場でうるさく騒いでいたし、擦れ違いざまにあたし達の尻を触ろうとするし・・」「ま、一晩だけなんだからいいんじゃない?」 厨房で種香と小里がそんな事を愚痴り合っていると、そこへ渋面を浮かべた有匡が入って来た。「あら女将、どうされたのです?」「どうしたもこうしたもあるか。本家の爺共がしつこく東京に戻れと付きまとって来た。」 有匡はそう言うと、空のビール瓶が入ったカゴを持って外に出た。 昼間の茹だるような暑さは少しマシになったものの、夜になってもまとわりつくような暑さが続き、有匡は思わず溜息を吐いてしまった。「先生、こんな所に居たんですか?」「火月、どうした?何かトラブルでもあったのか?」「はい、実は・・」 火月は、先程フロントであった出来事を有匡に話した。 それは、花火大会が始まる二時間前の事だった。「いらっしゃいませ。」 火月はいつものようにフロントで仕事をしていると、そこへ一人の女性客がやって来た。 彼女は開口一番、今夜泊まりたいから部屋を用意して欲しいと火月が言ったが、彼女は満室なので部屋を用意できないと断った。 するとその女性客は、激昂して火月に絡んで来た。「お客様は神様なんでしょう、早く部屋を用意しなさいよ!」「申し訳ありません、それは出来ません。」「もういい!」 女性客はそう叫ぶと、ホテルから出て行った。「そうか。報告してくれてありがとう。」「女将・・」「花火大会はもう終わるし、あの迷惑な連中に接客するのは今夜限りだから、後少しの辛抱だ。」「はい・・」「わたしが暫くフロント業務につくから、お前は少し休んでいろ。」「わかりました。」 火月と入れかわりにフロント業務についた有匡は、淡々とそれをこなしていった。 花火大会が終わり、有匡が仕事を一段落させようとしていると、火月が話していた女性客がフロントにやって来た。「ちょっと、あんたが部屋を用意してくれなかった所為で花火が見られなかったじゃない!どうしてくれるのよ!」「お客様、申し訳ありませんが、当ホテルではそのような責任は負えません。先程若女将から話を伺っておりましたが、そんなに花火をご覧になりたかったのなら、早めに当ホテルをご予約して頂ければ良かったものを・・」 有匡がそう言いながら女性客を見ると、彼女は怒りで顔を赤く染め、無言でホテルから出て行った。「とんだ災難だったね。」「いいえ、あれ位のクレームを上手くあしらえませんと、この商売は務まりません。」 常連客と有匡がホテルのフロントでそんな話をしていた時、厨房の方から悲鳴が聞こえて来た。「女将、大変です・・」「どうした?」「それが・・」 有匡が厨房に入ると、そこには顔中煤塗れになった昼の客―謝憐の姿があった。『お客様、何をなさっているのですか?』『すいません、皆さんのお手伝いをしたくて、パイを焼こうと・・』 オーブンの中には、パイの残骸が散らばっていた。「板長、パイの在庫は?」「まだ、冷蔵庫にあります。数日分の朝食ビュッフェ分まであるかと・・」 有匡が冷蔵庫の中を確めると、朝食ビュッフェ用として数日分のブルーベリーパイがまだ残っていた。『あの、これは・・』『お客様は、このままお部屋にお戻り下さい。』 謝憐は有匡の圧に負け、部屋へと戻っていった。「疲れた・・」「先生、お疲れ様です。」 有匡は溜息を吐きながら、ノートパソコンのキーボードを叩いていた。彼は“女将”として結い上げていた髪を下ろし、軽く編み込みにして邪魔にならないように横に垂らしていた。「まぁ、明日からはゆっくり出来る。」「そうですね。」 翌朝、チェックアウトする宿泊客達を玄関先で見送った後、有匡と火月は遅めの朝食を自室でとった。「火月、今度の週末、何処かへ出掛けないか?」「えっ、いいんですか?」「あぁ。このところ、働き過ぎたからな。たまに休むのもいいだろう。」「楽しみだなぁ~」 二人がそんな事を話していると、有匡のスマートフォンが鳴った。「もしもし。」『あぁ、やっと出て下さいましたね、有匡殿。』 まるで神経を逆撫でするかのような男の声を聞き、有匡の顔は思わず険しくなった。「先生?」「・・誰から、この番号を知った?」『そんなに怖い声を出さないでください。あなたのご親戚筋の方からこの番号をわたしに教えて下さったのですよ。今こうしてあなたにお電話を差し上げたのは、“ある事”で、お話したい事ががるのですよ。』「わかった・・」 有匡はそう言うと、スマートフォンの通話ボタンをタップした。「先生、どうかされたんですか?」「少し、出掛けて来る。夜までには戻るから、心配するな。」「わかりました・・」「では、行って来る。」 着替えを済ませた有匡は、電車で東京へと向かった。 海岸沿いの風景から高層ビル群へと風景が変わる頃、彼は自宅から暇潰しに持って来た単行本を読み終えてしまった。 長髪でスーツ姿の彼の姿が珍しいのか、時折擦れ違う通行人達が彼に好色な視線を向け、悲鳴のような歓声を上げて去っていった。「有匡殿、わざわざお呼び立てしてしまってすいません。」 都内の一等地にあるホテル内のカフェに有匡がやって来ると、先に来ていた男―文観が彼に気づいて嬉しそうに手を振った。「わたしをこんな所に呼び出した理由は何だ?」「そんなに怖い顔をして睨まないで下さい。実は、あなたが昔担当した事件について、大きな動きがありましてね。」 文観はそう言った後、持っていた鞄の中から分厚い茶封筒を取り出した。「これは?」「あなたが法曹界から去った後、わたしが見つけた事件の証拠ですよ。」 文観の言葉を聞いた有匡の眉間に皺が寄った。「それで?これをわたしにどうしろと?」「別に。わたしはこれを裁判所に提出し、あの事件の再審請求を致します。そのご報告だけをしたくて、あなたをここへ呼び出したのですよ。」「そうか。では、長居は無用だな。」 有匡は自分のコーヒー代だけ払うと、カフェから出て行った。 そのまま火宵グランドホテルへと有匡は戻ろうとしたが、大雨洪水警報が鎌倉に発令され、電車が通行止めになってしまったので、彼は駅の近くにあるビジネスホテルに一泊する事になった。『そうですか。気を付けて帰って来てくださいね。』「わかった、お休み。」にほんブログ村二次小説ランキング
Jul 3, 2024
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表紙素材は、装丁カフェからお借りしました。「薄桜鬼」「天官賜福」「火宵の月」二次小説です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。「兄さん、来て良かったね。」「あぁ。」その日、花城と謝憐は、新婚旅行で海辺の観光地に来ていた。絶景スポットとして知られる縁結びの神社に参拝し、神社の近くのカフェで昼食を取った後、二人はとんでもない災難に見舞われた。「え、予約されていない?」「はい・・」予約していた筈のホテルにチェックインしようとした時、ホテルのフロントで予約されていないとスタッフから言われた二人は、急遽他の宿を探す事になったが、折しもその日は祭りと花火大会があり、花火が見える海辺のホテルは全て満室だった。「兄さん、大丈夫?」「うん・・」少し日が落ちて涼しくなるだろうと思っていた二人だったが、彼らは日本の酷暑を舐めていた。熱が籠りやすい浴衣姿の謝憐は、花火が見える高台へと向かう際に、軽い熱中症になってしまった。「兄さん・・」謝憐の異変に気づいた花城は、背負っていたリュックサックのサイドポケットからミネラルウォーターのペットボトルを取り出し、それを謝憐に手渡した。『もし、その方、どうかなさいましたか?』二人が困っていると、そこへ一人の和服姿の女がやって来た。『宿を探しているのですが、恋人が熱中症になってしまって・・』『まぁ、それは大変ですね。よろしければ、うちのホテルに来ませんか?』『助かりました。』女性に二人が案内されたのは、高台にある高級ホテルだった。『ようこそ、火宵グランドホテルへ。お連れ様はそちらのソファに寝かせて下さい。』『はい・・』謝憐をソファに寝かせた花城は、フロントでチェックインを済ませると、謝憐の隣に腰掛けた。「兄さん、辛くない?」「うん・・」『お部屋に、ご案内致します。』『はい、わかりました。』花城は謝憐を横抱きにすると、自分と彼の荷物を持ち部屋へと向かった。『こちらです。』案内された部屋は、海と市街地が見渡せる最上階の部屋だった。『この宿は全室、オーシャンビューとなっております。どうぞ、ごゆっくりお寛ぎ下さいませ。』花城に部屋の説明をした仲居は、そう言うと花城に向かって一礼すると、部屋から出て行った。「ねぇ種香、あのお客さん達見た?凄いイケメンよね。」「モデルか俳優かしらね。」厨房で仲居頭の種香と小里がそんな話をしていると、そこへ花城と謝憐を助けた和服姿の女性が入って来た。「お前達、何をくっちゃべっている!」「ま、まぁ殿・・随分とお早いお帰りで・・」「ここでは、“女将”と呼べ。」「まぁ、すいません。」「夕食の時間までまだ時間があるから、わたしは風呂に入って来る。」和服姿の女性―火宵グランドホテルのオーナー兼女将・土御門有匡は、そう言うと厨房から出て行った。「今日は機嫌悪そうね。」「何たって、もうすぐ法事があるんだもの。」「そりゃ、あいつらと会うの、あたし達だって嫌よ。」厨房を出た有匡は、大浴場の脱衣場へと入ると、籠の中に着物と帯、そして襦袢と紙に挿していた簪を入れ、広い湯舟の中に浸った。(もうすぐ法事か・・)湯舟から上がり、有匡は髪を洗いながら、法事で初めて父方の親族と顔を合わせた日の事を思い出していた。『お前が、あの時の子か?』『本当に、不吉な色の目をしているわねぇ。』有匡は、忌まわしい過去を振り払うかのように、ドライヤーで念入りに髪を乾かした。「先生!「火月、ここでは“女将”と呼べと言っているだろう。」「す、すいません・・」有匡の元へ駆けて来た金髪紅眼の女性―有匡の妻であり火宵グランドホテル若女将・火月は、そう言って俯いた。「今日は忙しくなる。」にほんブログ村二次小説ランキング
Apr 19, 2024
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