龍刀【朧火】製作所

二章【始まりの風】




「ふぅ、ただいまぁって言っても誰もいないけどな・・・」

当麻[学校]という戦場から我が家へと
帰還した喜びを噛み締めたくふと一人でつぶやいた。

将との約束の時間まであと1時間
それまで何しようか考える・・・

(まぁアイツが時間通りにくるわけないし
夜中でも眠くならないようちと寝とくか・・・)

そして当麻は普段着に着替えたあと
転寝をし始めた。




(ん?ここはどこだ?)

当麻は辺りを見回すがさっきまで寝ていたはずの
部屋ではなく小高い丘と果てしなく草原が
広がっていた。

「ん~?一体どうしたんだ、あぁ夢か・・・な~んだ、
どうせならもっと美人のお姉さん達にハーレム状態にされる
ような夢を見たかったなぁ~」

そんなことを考えていると先ほどまで何もなかった
草原の上に何やら一匹の動物がポツンと4本の足で
立っていた。

「ありゃ何だ?、美人なお姉さんじゃねぇのかよ~
はぁ~夢くらいいい思いしたって良いじゃないか!」

当麻はその動物に吐き捨てるようにそんなことを
叫んでいた。

その動物がゆっくりと当麻の方へ近づいてくる、
段々近づくにつれその動物は青白い光を全身にまとい
何やらバチバチいってることに気付いた。

「な、なんだ?やるか?」

身構えるが距離が残り5メートル位のところで
その動物はピタリと止まる。
そしてその動物は口を開いた

「       !」

しかし当麻には何と言ってるのか分からない
ただ何かを問いかけている気がした。

「は?今何ていった」

その動物はまた口を開く

「我   て れ!」

今度は微妙に聞き取れたがやはり
何て言っているか分からない。

その時その動物の体が強く光だし
当麻を包みこんだ。

「!?ぐ、ぐあ」




「は  やん?」
「 い!  やん!」
「起きろはまやん!」

当麻はその声に目を開ける

「ん?将?アレ、オレどうしたんだ?」

「は?何言っとるのかね?それよりはまやん!
家の鍵も閉めないで転寝なんて危険だぜ?」

「え?転寝?」

「そうだはまやん!もしオレじゃなくてドロボーに
入られてたら大変だぞ!」

(って事はやっぱさっきのは夢なんだな・・・・それより
何でコイツは勝手に人の家に上がりこんでオレに説教
かましてんだ!)

「お前も立派な住居侵入罪だって事忘れるなよ?」

ガミガミ言っている将の口がうっ!っという言葉と
同時に閉ざされる。

「まぁまぁはまやん!俺達心の友だろぉ~」

そう言い将は当麻に抱きつこうとする

「よせ!気色悪い!お前はジャイ○ンか!」

「うぅ酷い!アタシの体を傷物にしておいて
そんな事言うなんて!うっうぅ~~」

そんな将をほっておいて当麻はスッっと立ち上がり
PS2の方へ向かう。

「馬鹿やってないでモンスターハンターやるぞ!」

将は嘘泣きを止め笑って応えた

「おう♪」

当麻はテレビをつけPS2の電源を入れた

・・・・・・・・?

「アレ?PS2は動いてんのに映らねぇな」

「このテレビはまやんと同じでポンコツだなぁ」

「うるせぇ!」

しかし次の瞬間画面が一瞬青白く光ったと思うと
画面にいつも通り映りだした。

「あ、映った!ささ早くやろうぜはまやん!、さ~って
はまやんのデータを拝ませてもらおうかネェ♪」

「まだイァンクック討伐のところだって・・・・アレ?
データが無い!?」

今まで当麻が使っていたキャラのデータが
綺麗さっぱり消えていた。

「んなばかなぁあああああ!!!」

あんまり進んでなかったとはいえ
ショックで頭が真っ白になった。

「だっはっはっは、じゃあデータのない当麻君は
オレのキャラを指をくわえて拝んでなさい♪」

そして将は自分のメモリーカードを差し込むと
あることに気付く。

「お、おれのデータもない・・・・」

将がセピアに色あせていく

そして当麻は何かを決心したかの用に
新しいキャラを作成し始めた。

その隣で将は声にならない声で嘆いていた

「ふぅできた・・・あぁしかたないこのキャラで
頑張りますか」

「お前立ち直り早すぎだばかやろぉ~!」

将はそう言い奥の部屋へとこれまた
勝手に駆け込んでいった。

「何なんだアイツ?」

当麻は一笑すると視線を画面に戻した

「さてと始めるとするか」

そうして当麻は素っ裸のキャラを操作し
村長の所へいくと・・・・何かが違った

「あれ、村長1500zくれね~ぞ!?
さっきからデータは消えるは1500zはもらえないは
どぉーなってんだ!?」

そして村長の言葉もいつもと違った

「お主にな緊急の依頼があってな、是非
引き受けてくれんか?」

「は?どうなってんだ?」

当麻は不思議に思いながらもその緊急クエストを確認する。
そこにはクエスト名が「助けてくれ」という
どうもおかしな依頼があった。
当麻は何か不気味になってきたが所詮はゲームだと思い
そのクエストを受けた。

しかし何も起こらない、いや正確には何も起きないのではなく
テレビの画面がプツリと消えたのだった。

「な、何なんだよぉ~?おい!将ちょっと来い!」

ドゴン!
ドサドサ!
ガシャン!

「あ、あぁ今行くよ~」

(ったく人の家で何やってんだよまったく・・・)

将がドタドタと走ってこっちに来た

「あぁ将!ちょっとお前新しいキャラ作成して
村長に話しかけてくれないか?」

「えぇ~まだオレ立ち直ってないのにぃ~?」

「うるせぇ~いいからやれ!」

「はいはい」

将はブスッとした感じでしぶしぶ言われた通り
キャラを作成し始めた

(でも一体さっきのは何だったんだ?、コイツのでも
試してみるか)

そして画面には素っ裸の将のキャラが立っていた。
すると将はあることに気付いた

「ん?これ村でのBGMが流れてないぞ?」

将はそういいテレビのスピーカーに耳を押し当てた
当麻も同じように押し当てる・・・

「たしかに聞こえねぇな」

そして当麻はさっきの出来事を将に話した

「へぇそんなことがねぇ、まあいいオレのでもやってみよう♪」

将はそう言うと楽しそうにコントローラーを持ち
村長に話かけた。
するとやはり

「お主にな緊急の依頼があってな、是非
引き受けてくれんか?」と言った

「たしかにおかしいな」

将は少し真剣な表情でクエストを確認した
そこにはクエスト名が「二人の少年の旅立ち」と
書かれたクエストがあった。

「二人の少年ってもしかして・・・・」

「オレとはまやん?」

「で、でもこれゲームだぜ?俺達がどうやって
旅立つって言うんだ?」

「はまやんは夢がないねぇ、まあとりあえずこの
クエスト受けてみよう~♪」

そういうと将は当麻が止める前にクエストを受けてしまった。

その時部屋中の電気が消えた

そして二人の意識も段々と薄れていき

そして・・・・





2部【モンスターハンター】

それは巨大な剣と巨大な砲を手に

飛竜に挑みし者達

広大な大自然は今 狩猟場となった

弱肉強食の世界で勝鬨を上げるのは

狩人か、あるいは飛竜か・・・・・・










当麻が目を覚ますとそこには
見覚えのない木造の天井とそこからぶら下がっている
やけに古めかしいランタンのような物が
視界に飛び込んできた。

「ん?ここは?」

体を起こして辺りを見回すとやはり自分の家ではないし
家の造りが全体的に古かった。

そこへガチャリと前方のドアが開く

「あ!気がつきましたか?」

姿を現したのは年は20~25くらいの年齢かと
思われる一見優しそうな感じの女性が立っていた。

「え、え~とちょっとききたい事があるんだけどいいか?」

女性は首を傾げて何でしょう?と言った

「あの、ここはどこでどうしてオレがここにいるんだ?」

その女性は少し驚いた顔をして
笑って応えた

「ここはリース村、レイズ地方の端の端にある村で
最果ての村とも呼ばれてるまぁある意味田舎の村ですね。」

(リース村?レイズ地方?この人何言ってんだ?
ここは日本のはずだろ!?オレをおちょくってんのか?)

「あなたはリース村の入り口の門のところで
倒れていたんですよ?」

(え?オレが?)

「あまり見ない格好ですけど旅の方ですよね?」

「え、え~と話がまだ理解できないんだけど・・・・
とりあえずここは日本なんだろ?」

女性は不思議そうな顔で

「ニホン?何ですかそれ?えと地名か何かですかね?」

「ああ!そうだよ日本だ!知らないわけないだろ!?
だいたいアンタだって日本語しゃべってんじゃねぇか」

女性は当麻にいきらり怒鳴られたので
一歩身を退くと静かに答えた

「す、すみませんニホンって場所私は聞いたこともありません
それとこれはニホン語ではなくティール語っていいます!」

「あ、いや怒鳴って悪かった、とりあえず外に出てみていいか?」

(外に出ればこの人が言ってる事が本当か嘘か
分かるだろう・・・)


女性はほっとしたように
また笑顔を取り戻した

「ええ、体調に問題がないのでしたらどうぞ
村の人達あなたのこと心配してたから
元気な顔みせてあげてね♪」

当麻はその笑顔に少し頬を赤く染めたが
あわててお礼を言った

「あ、えっとアンタが看病してくれたんだろ?ありがとう!
え~とアンタの名前は?」

「私の名前はミリア=ローゼ、ミリアって呼んでくれて
いいですよ、あなたのお名前は?」

「あ、オレの名前は浜崎 当麻、当麻って呼んでくれて
いいよ」

「ハマサキ=トウマさんですか変わった名前なんですね~」

(でもこの人の名前ってミリア=ローゼってことは
ローゼが名字ってことか)


「あ、でも多分ここだとトウマ=ハマサキになると思うから」

「そうですか分かりました、トウマさん、外にでたら村長にも
顔をみせてやってください、一番村長が心配して
いましたから、ふふ♪」

「ああ、分かった!えっとミリア!外に行って来るよ」

「ええ、お気をつけて」

当麻は足早に部屋をでていき外に出た
そこで当麻は絶句した、予想はしていたものの
こうまで違うと驚きを通り越してある意味感動してしまう。

「スゲ~、機械が見当たらないし電線の一本すら
ないじゃねぇか」

当麻の視界には草原が広がり
その上に家々が立ち並び
小高い丘の上には何台もの風車があった

「って言ってもこりゃあ十中八九夢だろ、何感動してんだか
オレは、はぁ」

当麻は冗談混じりに頬をつねってみる

「痛えぇ!あれ?ゆ、夢じゃないぃぃ~!?ど、どうなってんだよ
じゃあ何だ?この村!」

当麻は昨日の事を思い出してみる

(えっとたしか将がオレの家に来て、モンスターハンターを
やってて、二人ともデータが消えてたんだよな・・・・・
そんで新しいキャラ作ったらなんかココット村の様子が変で
・・・・・・!!そうだオレあの変な依頼を受けたんだ!
オレはたしかクエスト名が「助けてくれ」って依頼を
受けて・・・・そうだ!将が「二人の少年の旅立ち」って
クエスト受けた瞬間部屋中の電気が消えて
そんで・・・・・もしあれが原因だとしたら
将は?アイツは一体どこへ行った?
ということはオレの予想が正しければここは・・・)

と、その時村の入り口の方から悲鳴が聞こえた

「な、何だ?」

当麻はその悲鳴の所へと走る




~村入り口にて~

そこには村の入り口のところに
腰を抜かして倒れている婆さんと
一匹の獣がいた

(あ、あれはランポス?くそ!やっぱりここは・・・・
この世界は、モンスターハンター!)

当麻はその婆さんとランポスの間に
入り込んだ!

ランポスはそんな当麻を殺気のこもった眼で睨んだ
その眼光に当麻の足は震えだす

(何て殺気だ!マジで恐ぇ~~!でもオレが逃げたら
この婆さんは・・・・クソッ)

「婆さん!アンタ動けるか!?」

「む、無理じゃ!足が動かん!」

当麻は意を決したように武器も何も持たず
ランポスとの距離を縮めていく

「うおおおおおおおおお!」

当麻はランポスに全身全霊のパンチを
浴びせる。
だがしかし、ランポスの体は鱗に覆われており
見た目以上に硬かった

「っつ!!!硬い!」

さっきの悲鳴で村人達もどんどん
集まってくる。

「お、おい!ランポスがメイ婆さんを襲ってるぞ
それにあれ!ランポスと戦っている奴!
門の前に倒れてた奴じゃねぇか!!」

村人達の言葉が飛び交う

「で、でもアイツ武器もってねぇぞ!
武器なしでランポスを狩るなんて無謀だ!」

「あ、アタシ村長呼んでくる!」

「オレも行く!ついでに村長からハンター用の武器を
借りてくる!!」

その間にも当麻はパンチや蹴りを浴びせるが
ランポスには全く効いていない・・・

「ハァ、ハァくそ!どうすれば!?」

そこへランポスの反撃がくる!
ランポスは己の爪で当麻に斬りかかる!

当麻は避ける間もなくそれに左腕を斬り裂かれる

「!!??ぐあああああぁぁ」

当麻は腕を押さえてうずくまってしまう

ランポスは容赦なく
当麻へ次の攻撃を浴びせようとする


そこへ先ほど村長を呼びにいった女性と男性
そして村長がやってきた。

男は片手剣を持ってランポスのもとへと走り出す

「待ってろ坊主!今オレが奴を狩ってやる!」

片手剣を持った男性はランポスに斬りかかる
が、しかし

「ギャー!」

ランポスは鳴き声と共に男性に飛び掛る
それをギリギリ剣と盾で防ぐが
両方とも弾かれてしまう
剣と盾は中を舞い当麻の横へと落ちる

「くっ!」

男性は尚も戦おうとするが
村長の退け!という言葉に反応し
後退していく。

その時当麻は心の中の恐怖と
必死に戦っていった。

(恐い、恐い、恐い!!!痛ぇ!イテェ~!!
に、逃げなきゃ!で、でもオレがやらなきゃ婆さんが・・・・
でもやっぱりオレには無理だ!)

当麻はふと自分の横にある剣と盾を見据えた

(恐い、でもアレがあれば狩れるか?
ゲームじゃランポスなんて雑魚にすぎない
武器の形状から察するにあれはハンターナイフだろう
あれなら何回か斬りつければランポスは死ぬはず・・・)

しかしさっきのランポスの攻撃で
左腕は使えない。

(くそ、でもさっきとは違う!今度は武器がある!
オレでもできるはずだ!!ゲームでだって何匹も
狩ってきたじゃないか!)

当麻の隣にいたら鼓膜が破れるんじゃないかと
思う程の叫びと共ににやりと笑う

「はっ!やってやろうじゃねぇか!」

そして当麻は剣だけを持つ
そして今まさに婆さんに襲い掛かろうとしている
ランポスの下へと走り出す

(狙うのは胴体!その後首もとを斬りつけて
お終いだ!)

そうしてランポスの胴へと剣を振り下ろす




3部【アイルー・メラルー】

それは猫の手の形をした武器と樽状の爆弾を手に

自らの平和と生活を守るため

大自然を駆け巡る者達

一匹一匹の力は微々たるものであっても

集まれば狩人や飛竜の強敵ともなる

その者達は強く賢く臆病だった









現時間ちょうど当麻がリース村で目覚める頃
この男も目を覚ましたのだった・・・

「ん?ふぁ~~あよく寝た~!」

将は辺りを見渡すと
黒い毛の猫と白い毛の猫達に
囲まれていた

「!!!お、おきたニャ」

黒い毛の猫がしゃべった

「お~猫がしゃべった!ってか君メラルー?」

なんとも間の抜けた声で将は尋ねた

「そ、そうニャ!メラルー五兄弟の三男、にゃん吉ニャ!」

「ほ~にゃん吉ニャ君ねぇ~よろしく♪オレは
浅村 将、将でいいよ」

「ち・が・う・ニャ!にゃん吉ニャじゃなくてにゃん吉ニャ!」

「?ん~?まぁ黒にゃんって呼ばせてもらうよ♪」

「も、もう勝手にするニャ!」

(にしても結構ヘビーな状態だねぇ~
地面の湿り気を感じるからしてこれは夢じゃないだろうし
やっぱはまやんの家で受けたあの依頼が原因かなぁ)

「どうしたニャ?」

「ん?なんでもないニャ~」

「マネするんじゃないニャ!」

そこへ声が少し低い白い毛のアイルーが
口を開いた

「まぁまぁ二人ともやめなさい、え~ショウ殿?」

「あ、族長!」

この白い毛のアイルーはこの群れの族長らしい

「ん何かにゃ~?」

「マネするニャって言ったニャロ!!」

「にゃん吉!少し黙ってなさい。
私等は見ての通り貴方を取り囲んでいる、この意味が
分かりますかな?」

「ん~やっぱ警戒されてる?オレ」

その族長はうなづいた

「まずいくつか質問をしても構いませんかなショウ殿?」

「いいよ~その後オレからの質問もいいかにゃ?」

族長はもう一度うなずくと
そっと問いかけてきた

「まず一つ目はあなたは私達に危害を加える
気はありますか?」

「そんな、とんでもない~オレはそんなことしないよ~」

周りを取り囲むアイルー、メラルーたちが
ほっと安堵の息を漏らした

「では二つ目、と言ってもこれが最後の質問なんですが」

そこで言葉を切り真剣なまなざしで
問いかけてきた

「あなたはどこから来たんですか?、我々はある一定の周期に
住みかを換えて世界中を旅しています、そのたびに人間の
村や街などに行って人間達と少なからずコンタクトを
とっています、ですがあなたのその格好は見たことがありません」

将も真剣な顔つきになって答えた

「実はオレもよく今の自分の状況がいまいち理解できて
いないんだ、君達は日本という場所を知っているかい?」

アイルー、メラルー達は首を横にふる
族長が答える

「行った事も見たことも聴いたこともないですね」

「やっぱりね、オレは君たちからすれば
異世界からきた人間って事になるね」

「異世界?」

「そう、信じてもらえないかもしれないけど
オレはたしかに日本という場所、というより
国にいてついさっきまで友達の家にいたんだ」

族長はジッと将の目をみつめる

「いや、信じます」

アイルーとメラルー達がどよめく

「何で信じてくれるんだい?普通信じられる話じゃ
ないだろう?」

族長はニコっと笑うと
静かに言った

「私達アイルー、メラルーは知能が高いため
人間達と交流を持つことが多いんです
中には人間の仕事をアイルーやメラルー達がこなしている
という話も聞きます、ですが私達は人間達からすれば・・・」

そこでまた族長は言葉を切った
そして言った

「魔物・・・モンスターなんです、人間達の中には
我々との交流を拒むどころか街や村から追い出そうとする者や
私達を騙し、金目の物を奪っていくという非人道的な人間も
いるのです、そんなことから逃れるためには
この人間が信用できるか、真実を言っているのか
見定めなくてはなりません、ですから私達は目を見れば
嘘か本当かわかるんです」

「で、でもそんな酷い人間がいる何て・・・」

「さっきも言ったでしょう?人間の仕事をメラルーやアイルーが
やっているって・・・職のない人間はそれを妬み羨み
認めようとしないのです・・・」

将は何て可哀想なんだとと思っていた。

「そ、そんな哀れみの目で見ないでください!
そんな人間は極一部で他のみなさんは本当に親切で
優しい人ばかりなんですから!」

「あ、あぁごめんごめん」

「で?そちらの質問とは?」

急に聞かれたので一瞬とまどいながらも将は
尋ねる。

「え、え~っと一つ目はオレの他に良い奴だけど
目つきが悪い、そんな人間も一緒にいなかったか?」

「さぁ?森の中には貴方だけしか倒れていません
でしたよ?」

「そうか・・・・」

(たしかあの妙なクエストには「二人の少年の旅立ち」って
書いてあったから、はまやんもこの世界に来ている
はずなんだけどなぁ~)

「お役に立てなくて申し訳ありません・・・」

「あ、いいよ~全然OK♪んじゃあ二つ目
これは質問というより頼みなんだけどいいかな?」

「内容によりますね」

「あぁこの世界の地図かなんかあるかな?
よければ頂きたいんだけど」

「ありますよ、チョット待っててください、
にゃん吉!悪いが取ってきてくれないか?」

「にゃ?盗って来る?人間から盗んでくるんですかニャ?」

「馬鹿者!物置から取ってくるんだ!」

「はいですニャ!」

族長はやれやれといった顔をしている

「お待たせしましたニャ」

「うむ、ご苦労!ではショウ殿これです」

「ありがとう♪」

「それでこれからどうするおつもりですか?」

「ん~まずオレの友達を捜そうと思うんだよねぇ
こっから一番近い街や村はあるかい?
今は少しでも情報を集めたいんだ」

「そうですか、え~と現在地はこのレイズ地方の
端っこにある森ですから・・・」

そう言いながら村長は地図のある場所を
にくきゅうで叩いた

「このリース村になりますね、ここには
気さくで親切な村長さんがいますから
私の紹介だと言えば・・・いや、言わなくとも
色々力になってくれるはずですよ」

「へぇそうなんだ~んじゃあ早速そのリース村って
ところに行こうかな」

「もうですか!?」

族長はびっくりしたように言った

「ああ!善は急げって言うしね♪」

「そうですか・・・ではにゃん吉!にゃん太!にゃん子!にゃん美
ちょっと来なさい」

不思議そうな顔をして2匹のメラルーにゃん吉とにゃん美
2匹のアイルーにゃん太とにゃん子がやってきた

「「「「にゃんですかニャ?」」」」

4匹の声がピタリと合わさる

「このショウ殿のと共に旅をして
力になってやりなさい」

4匹のアイルーは一瞬戸惑い将もまた
戸惑っていた

「「「「「何でですか(ニャ)?」」」」」

今度は4匹と1人の声が合わさる

「ショウ殿は先ほど言ってらした通りこの世界の
事はほとんど知らない異世界の方です
このさき無知故に辛いことがたくさんあるでしょう
だからそんなショウ殿をサポートしてあげるんだ!」

「で、でも何でオレなんかのために?」

将は一番の疑問を投げかけた

(オレは族長さん達には何かお礼をされるような事を
した覚えはないしなぁ~)

族長は笑って答えた

「さきほど言ったでしょう?私達は目を見れば
その人がどんな人かが分かると
貴方の目は今まで見たことのないくらい澄んでいた
だからさきほども貴方を信じたのです」

「でもオレは何も・・・」

していないと言い切る前に
族長の言葉にさえぎられる

「それに、理由がなければ人助けをしては
いけないのですか?」

将は族長の申し出に甘えることにした

「ありがとうございます!!よろしくな♪にゃん太君に
にゃん子ちゃんとにゃん美ちゃん!
そ・れ・と、にゃん吉ニャ君もな♪」

「違うニャ!にゃん吉ニャじゃなくてにゃん吉ニャ!」

(ははは、自分で同じ事言ってるって自覚が
ないところがカワイイよなぁ♪)

将はプッっとふきだしてしまった

「な、何が可笑しいニャ!」





こうして将は当麻がランポスと戦っている頃
族長達のご好意で1人と4匹でリース村へと
行く事になった






4部【真実を求めて】




(狙うのは胴体!次に首もとを斬りつけて終わりだ!!)


当麻は叫びながらランポスへと向かって走る


(今奴の気は婆さんに向いている、チャンスだ・・・)

当麻は恐怖を振り払うべく
大きな叫び声と共に一閃、ランポスの鱗を突き破り
ハンターナイフが深く突き刺さる

「ギャウ!!」

絶叫とも聴こえる声とともにランポスが
2m程吹っ飛ぶ

そして当麻は相手が体勢を立て直す前に
とどめを刺すべく斬りかかる

しかしランポスは素早く横に飛び回避する
剣が空を斬り大地を叩く、その衝撃で当麻の左腕が痛む

「くッ!くそ」

(いてぇ~、畜生!!)

ランポスは体勢を立て直し当麻に飛び掛る
何とか回避するもののランポスはすかさず
突進を体勢を崩した当麻の胸にくらわせる

「ぐぁーー!!」

当麻は地へと伏すが気合ですかさず立ち上がる

しかし立ち上がった瞬間、当麻の視界には
飛び掛るべくランポスが地を蹴る様子が映っていた

(だめだ・・・避けられない)

当麻の胴をランポスの爪が切り裂く

「う・・・・あ・・・・」

切り裂かれた痛みと地面へ背を叩きつけてしまった
痛みが一挙に当麻を襲う

「トウマさん!!誰か・・・誰か彼を助けてぇ!!」

ミリアの悲痛の叫びが轟く

しかしランポスは一歩一歩と当麻に向かって歩んでくる
おそらく邪魔者から片付けようということだろう


当麻に激しい痛みと恐怖が押し寄せる・・・・はずだった・・・

当麻は思う
(人間って自分の生命の危機だっていうのに
ある一線を越えると痛みも・・・恐怖も・・・
感じなくなるんだな・・・・・・・・・・・・)

当麻は笑っていた
何故か胸が高鳴る、そう・・・例えば長年求め続けたものが
ようやく手に入った時の喜びにも似た胸の高鳴り・・・・・


ドクン・・・・ドクン・・・・


ランポスが当麻に噛み付こうとする瞬間
ランポスの喉めがけてハンターナイフを突き出す
しかし瞬間的に察知したのかかわされる

「・・・・・」

当麻は無言のまま立ち上がる
村人達はランポスよりも今は当麻の表情に恐怖した
胸からの血は止まらず、左腕からも血がでている
なのに当麻は笑っていた、遠い目をして

ランポスも何か危険を感じたのか
威嚇の声を上げる

その瞬間村人達の視界から、ランポスの視界からも
当麻が消えた・・・


次の瞬間・・・


ザシュ


村人達は奇妙な音のした方を見ると
そこには・・・・・・・・・・


不気味に笑った当麻と首の無いランポスがそこにいた






数時間後



(オレは・・・・一体・・・)

当麻はミリアの家にいた
先ほどの戦いの後当麻はすぐに倒れてしまったのだ
回復薬グレートと言う傷口の細胞分裂を大幅に活性化させる
薬を飲ませてもらったらしく、痛みはまだあるが傷口は
しっかりと塞がっていた。

気付いたのは1時間程前
ミリアが言うには当麻がランポスを倒したらしいが
当麻にはランポスに胸を爪で斬られた時からの記憶がない


(あの時・・・何もかも真黒になって・・・・・
真黒と言うより漆黒だったな・・・そんな中
何かが・・・そっとオレに語り掛けてきたような・・・)

考えようとすると当麻の頭は激痛を発する

(クソッ!)


「トウマさん?」

「え?」

気付くとミリアが目の前に立っていた

「え~と何か用でしょうか?」

「はい、何やらセン・・・村長がトウマさんにお話があるそうで
もし暇ならば来てくれないかって」

「村長さんが?どうしたんだろ?」

「きっと先ほどのお礼ですよ、トウマさんのおかげで
今みんな無事でいられるんですから」

「そんな、たいしたこと・・・してないですよ・・・」

ミリアの言葉に心が痛む
あのランポスは例えこっちの命を狙っていたにしても
生きていたんだ、家族もいれば仲間もいただろう
当麻は命を奪って自分が称えられるのにためらいがあった
ゲームならランポスを狩ってもどうってことなかった


(でも・・・これは現実だ・・・・)


「どうしたんですか・・・?とても辛そう・・・」

ミリアが心配そうに当麻を見る
当麻はあわてて作り笑いをして

「何でもありませんよ、それより村長のところに
行ってきますね」

「あ、はいまだお体の方は万全じゃないのですから
無理しないでくださいね?」

「ああ、ありがとう」



当麻が家を出ると気持ちがいい風が吹き抜ける

(はぁ、気持ちいい・・・辛いことを忘れさせて
くれそうな風だな)


すると一人の体格のいいハチマキを巻いた男性が
当麻を見るやいなや目を輝かせ詰め寄ってきた

「おぉ~この村の英雄様じゃねぇか、さっきは
格好よかったぜ~~」

この男からする生臭い臭いからして
魚屋かなにかだろう

「は、はぁ~まぁどうも」

「うんうん!いいねぇ、褒められても決していばらない
男だねぇ~~」

「えっと、ところで村長さんの家はどこかわかるか?」

「おうよ!あそこの丘の上に家が建ってるだろ?
あそこが我等が村長さんの家だ!」

「ありがとな!」

「おう!今度オレの店に来な、負けてやるぜ~」

「ははは」


もうすぐ村長の家に着くってところで
呼び止められる

「あ、あのぉ~、先ほどランポスをやっつけてくださった方
ですよね?」

数人の少女・・・と言っても自分とそう変わりなさそうな
年の女の子達が先ほどの男のように目を輝かせ詰め寄ってくる

(ま、またかよ・・・・でも女の子ならノープロブレムだな♪
あのおっちゃんみたいなのに詰め寄られてもうれしくないし)


そのあと握手をせがまれたりと色々あったが
途中村長の家に行かなくちゃならないんだ、と言って
心惜しいがその場を後にした



コンコン!


木造に扉をノックすると中から
男性の声が聞こえてきた

「は~い、どちらさまでしょうか?」

「えと、当麻ですけど」

「ああ!」

そういうと扉は勢いよく開け放たれ当麻の顔面に直撃する


ボゴン!!


「ごふっ・・・・・」


「あぁすみません!!大丈夫ですか?あぁなんて事を
してしまったんだぁ~どうか!どうか成仏してください!!」


「か、勝手に殺すな・・・・」

「な~んだ、行きてらしたんですか!よかったぁ~」

(なんだとはなんだ!!)

「で?話があるんでしたっけ?」

「あ、そうでした!どうぞ上がってください」


そういうと当麻は部屋の奥へと案内された
中は割りと広く、ここは会議室かなにかだろう
長いテーブルの上にはお茶とおつまみが置かれていた

「申し送れました私の名前はセント=ローゼって言います
どうぞよろしくお願いいます」

「オレの名前はご存知の通り当麻です・・・ん?・・・
う~ん・・・ローゼ?・・・!!ミリアさんと同じ名字ですが
ま、まさか・・・・」


「あ~えと、ミリアは私の妻です・・・半年前式を
挙げたばかりで・・・はは・・・」

(何かチョットショックだ・・・)

「で、ですねぇ話はそういう事じゃなくてぇ!」

(あ、話逸らした・・・・)


「トウマさん・・・あなたはあのランポスを狩った時
どう思いましたか?」

「いや、それが狩った時の記憶がなくて・・・」

「そうですか・・・じゃあ一つの命を奪った事に対して
どういった思いを抱かれましたか?」

セントが何を言いたいのか分からないが
今自分が捜してる答えを導いてくれる、そんな気がして
当麻は正直に話すことにした


「あのランポスにはきっと、家族もいれば友達や仲間が
いたと思うんです・・・それが生命というものだから。
だけどその生命をオレは奪ってしまった・・・・
オレがした行動は正しかったのか?そう思うんです
確かにあの場でランポスを狩らなかったら大変なことに
なってたかもしれない、でも・・・オレは命を奪ったんだ
なのに褒め称えられるなんてちょっと変じゃないかって・・・」



当麻は自分の思ったすべてのことをセントに話した



「ふぅ~、やっぱり当麻さんは優しい方なんですね」

「な、何を突然」

「いえ、この世の中には命を奪った事にそういった
感情を抱く人が少なくなってきているんです」

当麻は黙って聴いていた


「私には良き友人がいました、ある日この村にやってきて
しばらく滞在していたんです、その間に私と彼は
仲良くなり、互いに良き友人と呼び合えるような仲になりました」

セントは思い出すように遠い目をしながら
一言一言思いを込めて言う


「しかし、彼の職業が私は大嫌いでした・・・・
モンスターハンター・・・それが彼の職業です」

当麻は聞き覚えのあるフレーズに
一言も聞き逃すまいと耳をかたむける


「ある日私は彼に言ったんです・・・・」







~数年前~


「おい、へリング!もうハンターなんて辞めてくれ!」

「どうしてだい?」

「私は君の職業が嫌いだ!生き物を狩って武器を造って
そしてその武器でまた狩って・・・生き物を何だと思って
いるんだ!しかも、王族の奴等がたかがペットが欲しい
とかいう理由で捕獲を依頼したり!!
頼む方も頼む方だが実行するほうもおかしいじゃないか!」

「セント聞いてくれ!僕は」

「何だ?言い訳でもあるのか!?」

「僕が目指しているのはそんなハンターじゃないんだ!」

「何を言ってる?それがハンターじゃないか!」

「そうだよ、確かにそうだけど!僕がハンターになったのは
モンスターを守るためなんだ」

「え?」

「確かに王族から捕獲依頼がくることは
たびたびあるけど、そんな依頼は僕は受けない
僕が受けるのは討伐依頼だ」

「討伐?結局は殺すんじゃないか!!」

「そうじゃない、依頼主はそいつがその地域にいるから
困っているんだ、だから討伐せずに追い払うんだよ
依頼主はそいつがいなくなればいいんだからね」

「だからってそんな毎回うまくいくか?」

「そう、逃がすっていうのは討伐より難しいんだ
相手より確実に圧倒して力の差を見せ付けないと
飛竜なんかは逃げてくれない・・・・
だから僕は強いハンターになりたい!
僕が目指しているのはそういうハンターだよ」


「で、でもこの前この村にイァンクックが
迷い込んできた時は殺したじゃないか」

「あれは死んでいないよ、あの時僕玉のような物を投げて
いただろ?アレは捕獲用麻酔玉といって
ハンターが飛竜を捕獲する時に使う玉なんだ
だからアレは眠っていたんだよ」

「じゃあ眠らせた後はどうしたんだ?」

「皆が寝静まった頃イァンクックの回りにこやし玉を
投げたんだ、飛竜はあの臭いが嫌いでね
まぁモンスターのう○こから作っているからね
すぐにイァンクックは逃げていったよ」


「だからあんなに朝起きた時くさかったのか・・・・」


「ははは!あそこまで臭い消すの苦労したんだよ?」


「でもさ、お前一人で大丈夫なのか?
相手は飛竜だぞ?」

「ああ、だから明日この村を出ようと思う
街でオレと同じ・・・全く同じとまでは言わないけど
似た目的をもった人を捜すんだ」

「お、おい!この村をでるなんて聞いてないぞ!?」

「そりゃそうだ、今言ったんだから」

「ずいぶんと急だな・・・・」

「寂しがる事はないさ、また会えるよ!僕たち親友だろ?
それに!お前にはミリアちゃんがいるからな!」

「い、いやだからミリアとはそんな関係じゃ・・・」

「はいはい、はははは!」

「わ、笑うな!!」






「そう言ってへリングは村を出ていきました、
結局あの時からまだ彼とは一度も会ってないよ」


「そう・・・なんですか・・・」

当麻はへリングという男に共感した
しかし、それと同時にへリングの考え方が甘いんじゃないかと
思った。

たしかに討伐依頼ならその行為は許される
しかし大量発生したため駆除して欲しいという依頼だったら
きっと逃がすなんて事は無理だろう、狩るしかない・・・・
しかしセントにこのことを言うのは気が引けた


「そこで当麻さんに提案があります」

「提案?」

「そう、あなたもハンターになってみたらいかかでしょう?」

「一体何故いきなり?」

「あなた、異世界からいらっしゃた方でしょう?」

その一言に当麻は驚きを隠せない

「やはりそうでしたか・・・私の知り合いに
あなたと同じく異世界からやってきたと言う人がいるんです
彼の名はクロノ、クロノ=ゼルファー
本名は他にあるようですがこの世界ではそう名乗っているようです
彼もこの世界から元の世界に帰れる方法を探しています
彼に会えば少なくとも何か分かるでしょう」

「そ、そんな・・・でもそれとハンターと
どう関係があるんですか?」

「彼は言っていました、彼の世界ではこの世界のことを
モンスターハンターと呼ぶらしいです、だから
ハンターになればきっと何か分かると」


「それでハンターなるべきだと?」

「はい、でもあなたが
ランポスの命を奪ったことになんのためらいもなかったら
それが当たり前だと思っていたらこれは教える気は
ありませんでした・・・」

「だからへリングさんの話をしたんですね」

「ええ、私はあなたを信じます!どうか
今日抱いたその気持ちだけは常に持ち続けてください」


「わかりました、色々と教えてくれてありがとう!」

「はい」




「オレ!モンスターハンターになります!!」





5部【一陣の風と新たなる旅立ち】



村人達は歌う

一人の少年の来訪と感謝を込めて

それはまるで、天も地も少年を歓迎しているようだった

そしてその日、少年は狩人・・・ハンターになることを

強くなることを強く自分の胸に誓った







当麻はセントの家を後にした
そしてセントの最後の言葉を思い出していた

「トウマさん、ハンターとして活動するのなら
街へ行って正式にギルドに認定してもらった方が
情報収集や腕を上げるには効率がいいですよ!」

「で、でもオレまだランポス倒すのだって
一苦労だし・・・」

「そういう時こそ、腕のいいハンター達に
色々指導してもらったりするんです!
中には悪い人もいるからそこらへんは
しっかり相手を見極めなくてはダメですよ♪」

「ダメですよ♪って言われてもなぁ~
大体武器はどうしたらいい?」

「私の家に昔へリングが護身用にってくれた
ハンターナイフがあります、と言っても
トウマさんがランポスを狩った時の物なんですけどね」

「でもへリングって人はセントの親友なんだろ?
そんな大切な人からもらった物をオレが
もらうなんてできないよ」

セントは笑って答える

「でも僕は少しでもあなたの力になりたいのです
だから受け取って欲し・・・」

セントが言い切る前に当麻は言った

「いや、気持ちだけで十分だよ
それにハンターになるとは言ったものの
まだ正式になった訳じゃないしな♪
実際街で正式に登録してから
武器は買うことにするよ」

「そうですか、でしたらここから一番近い街は
リース村から北東へ30km程にある
[商業の街ホープクレイン]になります、そこまで行くのに
少なくとも丸一日は掛かります
ですから街へ着くまでの水と食料、街についてからの
宿代はこちらから出させてください」

「で、でもさすがにそこまでしてもら・・・」

今度は当麻が言い切る前にセントが言う

「あなたはこの街の命の恩人です、怪我までして
命を張って僕の村の人を守ってくれました
これくらいするのは当然でしょう?」

「はは、まいったな・・・」

そして二人はひとしきり笑ったあと
一度別れまた明日会う事になったのだった



「ふぅ、でも一体この状況どうすべきかなぁ~」

当麻の目の前には今日の祭りのゲストはまだかまだかと
待っていて、そのゲストがようやく村長の家から
出てきて目を輝かせている村人たちの群れがあった

そして村人達が一挙に静まり返る

「ん?どうした?みなさん」

そして村人の群れの中から一人の老婆が
現れる。
そしてその老婆に当麻は見覚えがあった

「あ!あなたは・・・」

「いやぁさっきは助かったよ!お礼が遅くなっちゃって
すまんねぇ~」

それはさきほど当麻が命を賭けて守りきった
あの老婆だった。

「え、いやいいですよ!それより腰はもういいんですか?」

「なっはっは!大丈夫じゃよ!、自己紹介が遅れたな
アタシの名前はメイ、皆からはメイ婆さんと
呼ばれてるよ!よろしくね」

そういってメイ婆さんは手を差し出す

「オレは当麻っていいます」

そして当麻はメイ婆さんと握手を交わし
その直後村人たちの歓声が村中へと響き渡る

当麻はメイ婆さんの手の暖かさが
心地よく感じた
これが自分が守った温もりなんだと
この嬉しさを当麻は深く胸に刻み込んだ・・・・




しばらくした後、村人達は村中に散り
酒を飲んだり歌ったりと
おのおの祭りを楽しんでいた。

そして当麻はミリアとセントの二人と一緒にいた

「え?本気ですかトウマさん!」

セントが驚きの声をあげる

「もう少しこの村に居ればいいのに・・・」

「そうですよ!何も明日村を出なくても・・・」

当麻は笑って答えた

「色々考えたんだけど、今はまずハンターの仕事が
どんなものかやってみようと思う、それに
訳あってはぐれた友達も捜さなくちゃいけないし
出来るだけ早く街に行きたいんだ」

「友達ですか?」

当麻はうなずく

「そうですか・・・分かりました、先ほど言いましたように
水と食料の心配はいりませんよ」

「なんかせかしちゃってすみません」

「そんなことはないのよトウマ君
あなたはこの村の恩人なんだからもっと
胸を張ったっていいんだから」

「はは、ありがとう!」

「では僕とミリアは明日の準備をしてきますね
お疲れになったら僕たちの家で一晩を過ごしてください」

「何から何までありがとうございます」

「いえいえ」

では、と一礼すると二人は
その場を離れた

(ふぅ、将は無事なんだろうか)

当麻は月明かりの下そんなことを
考えていた・・・・・











「ぜぇぜぇ・・・にゃん吉ニャ~まだリース村には
着かないのぉ~」

「違うニャ!僕はにゃん吉ニャ!」

「だからにゃん吉ニャでいいんだろ?」

「だ~か~ら~」

「ショウさん、もうそのぐらいにしてあげてくださいな♪」

もう一匹のメラルーのにゃん美が笑を堪えて言う

「はいはい、わかったにゃー♪」

「やっぱわざと言ってたニャ!?」

「さぁ~?にゃー♪」

「もう相手にしないニャ!!」

アイルーのにゃん太が言った

「まぁまぁにゃん吉、名前くらいどうだっていいじゃないか」

もう一匹のアイルーのにゃん子も
にゃん吉をなだめるように言った。

「そうよ、そんなことですねないの!」

「しかたにゃいニャー、にゃん子ちゃんとにゃん美ちゃんが
そう言うならゆるしてあげるニャー♪」


そう言いにゃん吉は喉をゴロゴロと鳴らし始める


「へぇ~にゃん吉って女ったらしなんだネェ」

「う、うるさいニャ!
り、リース村は明日の夕方には着くニャ」

「あぁ!にゃん吉?話そらしたな?」

「い、いいからとっとと行くニャ!」

「行くったって今日はここで野宿って
さっき話したんじゃなかったけ?」

「う・・・そうだったニャ・・」



当麻が心配していたころ将は
にゃん吉をからかって楽しんでいたのだった












~翌日~

「じゃあそろそろ行きますね!」

当麻は次の日の朝はやく、まだ日も完全に
昇ってなくほかの村人達はまだ眠っている
うちに村を出ることにしたのだった。

「ええ!バッグの中には水と食料、地図とお金を
少し入れておきましたので、街に着いてから
困ることはないですよ」

「本当に色々ありがとうございました!」

ミリアが心配そうな顔をして言う

「まだ腕のケガが治りきってないんだから無理しないでね?
またいつでも帰ってらっしゃいね?」

「ああ、ありがとう!それじゃあ元気で!」

当麻はこれでもかというくらい手を振った後
身をひるがえし歩きだす

(目指すのは商業の街ホープクレインだ!)



そして当麻の旅は今始まった

そこへ一陣の風が吹きつける

それは当麻の旅の始まりを物語る始まりの風であった

リース村の風車は今日も穏やかに回り続ける・・・



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき

どうもお久しぶり~クロノことヨーグルトでっす!
ようやく二章も完結しました!
より多くの人に読んでもらえるような
いい作品をつくるよう努力しますので
これからも感想等!よろしくおねがいしまっす!

でわ!また三章で!
もしくはどこかの街でお会いしましょう♪
ヨーグルトでした!


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