四章上編【雷鳴と聖獣】
手紙を出して直ぐに特別狩猟区域として認定され、
ドンドルマの支援の元始まった、
街の防衛強化計画がやっと安定期に入って行った。
「レス!!マスターが呼んでるわよ。頼みたい事があるって。」
工房の爺さんと話していたレスがエレンの声に驚きながら振り返った。
「じゃあ爺さん頼むよ、さてと今度はなにが必要なんだろ？」
「ガウルとヴェールも呼んでくるから、先に行っといて。」
エレンが住宅街に駆けて行くのをみながら、
「相変わらず元気だなぁ・・・」
とつぶやいた。
「すまぬの、呼んだのは他でもない・・・」
ギルドマスターは少し考えて話し出した。
「頼みたい事は特別狩猟区域に発見された幻獣【キリン】を討伐し、
その雷尾を取ってきて欲しいのじゃ。」
「キリンか・・・」エレンの目が輝きながら奮い立った。
「雷角!雷角!!雷角!!!」
「行くしか無いですわね・・・」
「そうだな・・・」
うれしそうに回るエレンを諦めたようにレスが頷いた。
キリンは古龍種に含まれるが、龍属性はほとんど効かないのだ。
唯一効果のあるのが火と水属性だが効果はやはり薄い。
物理的に威力が高い武器を使えば問題ないのだが、
キリンは見掛けを裏切る頑丈さをもつので難しい。
頭や顔が唯一柔らかいのだが、動きが早いので太刀などでは狙いにくい。
ヴェールはボウガンで全く問題ないく、ガウルの打撃もキリンには通る。
問題なのはレスとエ・・・
レスはいまだサイクロンを愛用し、
エレンは鉄刀【神楽】から斬破刀、それから鬼斬破へと、
かなり強化されたが、これが雷属性でキリンには通用しない。
そこでヴェールが提案した。
「わたくしがキリンを眠らしますわ。そこから爆弾で顔を狙いましょう。」
みんなそれがいいと頷く。
主戦力はヴェールとガウル。
レスとエレンは雷尾を狙うことになった。
ヴェールは部屋でライトボウガンの［メイルシュトローム］をとって、
アイテムボックスから調合書を４冊と材料を取り出して袋に詰め込む。
「これは、以前の金獅子くらい厳しくなりそうですわ・・・」
ヴェールは溜め息をついてから部屋をでた。
キリンは忘れられた土地に佇む古塔にいるという。
四人はギルドマスター直属の馬車に乗って、街をあとにした。
「何度見てもデカいわね～・・・」
現代より文明が高かった太古の時代に建てられとされる建造物。
天まで昇り、雲を裂く古塔は古龍や火竜達のねぐらとなっていた。
「目撃情報は第3経路のエリア８だそうですわ。」
「ここから半時間ってところだな、時間がない。急ごう!!」
「とりあえず・・・お肉ね♪」
香ばしい匂いが辺りに広がった。
「どうやら今は居ないみたいですわね。」
エリア８に着いたはいいが、肝心のキリンの姿は無かった。
代わりにランポス亜種、といってもゲネポスやイーオスでわなく、
雪山で稀に見られる、
白いランポスが9匹程居座っていた。
「すまない、あいつの素材が少しいるんだ。」
レスが言うとヴェールがサイレンサーを取り付けながら、
任せてくださいと囁いた。
通常弾を装填すると一番近くのランポスの背中に狙いをつけた。
ランポスは背中を攻撃され、悲鳴をあげる。
仲間達が警戒すると、最初のランポスがまた攻撃を受けて、絶命した。
そこから次々と倒れる仲間をみて、ランポス達は混乱する。
最後の三頭になって、レス達が現れたが、
対応しきれず三頭も仲間と同じことになる。
みんなは手分けして剥ぎ取る。
ランポス種は死んでからすぐ腐敗し始めるので、時間との戦いになる。
一頭分間に合わなかったが、白い鱗と皮が４つずつ、レスは受け取った。
「ありがとう。助かった」
レスは自分のリュックに大事そうに入れた。
「一体何に使うのだ？ランポスＵ装備か？」
ガウルが不思議そうに訊く。
「悪いがコレだけはエレンにさえも秘密だ♪」
レスは意地悪な笑みを見せる。
「ちょ、なになに！？気になるじゃない！」
エレンがレスに迫るが、答えない。
「じきにわかるさ。さぁ、行こうぜ。」
レスは裂けた壁の隙間へと歩き出した。
© Rakuten Group, Inc.
