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カルーア啓子さんサイド自由欄
「ところで、何の用でこちらへ?」コリーが尋ねる。
「しばらく、この集落に住もうと思ってね。どこか、家でも借りれるといいのだが。」と三木。
「住みたい?何の冗談だ。無理、無理。」
「電気もガスもないことを承知している。その覚悟もある。」
「そんなことではない、長が許可しない。」
「長が・・・・それなら、説得して欲しい。」
「無理だ。以前、南の集落が攻撃されて、そこの人たちが逃げ込んできたとき、追い返そうとしたんだ。よそ者は絶対ダメだと。
狩りで南の集落の世話になっていたから、助けたかった。だから、長を説得した。説得も大変だった。いずれ出て行ってもらう条件で、かくまったんだ。今もよそ者を入れていない。家が増えているが、それはこの集落の若者と他の集落の娘との夫婦の家だ。とにかく、長は、よそ者の定住を認めない。」
「話すだけでいいから、伝えてくれ。名前はミキー。ダメなら、近くの森に住む。」
コリーは三木の熱意に負けて、長ハリーの家へ三木の定住許可を願いに行った。
三木はコリーの家を出て、あたりを眺めた。雪はもう止んでいて、青空がのぞいている。北西に目をやると、遠方の雲の上に白い山々が見える。
(あの山脈はアパラチア山脈だ。雪を被っている。以前は白くなかった、気候がもとに戻りつつあるのかな。以前来た時よりも家が増えている。どの家の前にも、日本製の農機具。変わったにはそのくらいで、のどかさは以前のままだ。以前は違和感を感じていた向こうの川岸の土手も、よくできた水路も、古の民、いや、日本人がつくったものなのだ。 )
三木がそんなことを考えながら集落を歩いていると、「こんなところにいたのか、探したぞ。」と言いながら、コリーがやってくる。
「住んでもいいって。家までも用意するだと、どうなってるんだ。とにかく、帰ろう。」
コリーは三木を促すようにして、自宅に向かって歩き出した。