この映画はひとことで言えば、飛行機事故で奇跡的に一命を取り留めた男の心理を描いたシリアスなドラマで、「お涙頂戴モノ」でも「感動ストーリー」でもないのだが、これを見ると毎回のように涙が出そうになる(注.過去20年以上泣いたことのないオイラとしては、これは非常にマレなことである)。 「悲しい映画」でも「感動の名作」でもないのになぜ泣きたくなるのか、これがうまく説明できない。泣きたくなる場面はいつも、墜落している飛行機の中の回想シーンなのだが、乗客がパニックになったり、必死に祈ったり、隣の乗客と手をつないだり、遺言を録音している中で主人公がとても穏やかな顔で、”This is it. This is the end of my life. Let it go. I can let it go.”と(心の中で)言って完全にこの世への執着を放棄し、ほかの乗客に笑顔で声をかけたりするシーンを見ていると、「火垂の墓」を見てさえ泣かず日ごろ知人から鬼畜扱いされているオイラの心に深い哀しみが湧き起こるのである。