生活雑記1

水草育成法


■水草水槽の正誤

水草水槽を楽しむのに必要なこととはなんだろうか?

・60cm水槽に蛍光灯4本つける
・CO2が逃げないように外部フィルターを使う
・CO2を強制添加する
・ソイルを使うべき
・コケが出るから照明は10時間以下にする


というのは 誤りである
よく言われるのが、

「光量が少ないから枯れた」
「CO2を添加してないから枯れた」
「ライトつけすぎてコケた」

などと水草の不調原因を妙なところに押し付けている。重要なのはバランスである。

・光
・栄養
・CO2


これらの バランスさえとれていれば、水草は間違いなく育つ 。※硬度やpHが高いと、いくらバランスをとってもダメ。光が弱くとも、葉色が薄くなることはあるが、成長が悪くなるということは決してない(60cm水槽で蛍光管1本は必要)。また、CO2を強制添加しなくとも、生き物が適正量居さえすればそれが原因で枯れることはなく、CO2を添加しなければ育たない水草はない。あるとすれば、それは水草とはいえない。

そして、それらの 中でも 最も重要なのが栄養バランス である。



■水草に必要な栄養素

栄養と一言で言っても植物に必要な栄養は何種類もあり、 全てがバランス良く揃っていなければ植物(水草)は育たない のである。栄養素には以下のように、大量に必要とされる大量要素、中程度必要の中量要素、微量でよい微量要素に分けられる。

       ・窒素
大量要素 ・リン酸
       ・カリ

       ・カルシウム
中量要素 ・マグネシウム
       ・硫黄

       ・鉄
       ・マンガン
       ・ほう素
微量要素 ・亜鉛
       ・モリブデン
       ・銅
       ・塩素

これらの中で 窒素とリン酸は餌に含まれるたんぱく質などからバクテリアによって生成される ため、通常、特に水槽内へ添加する必要はない。しかし、それ以外の栄養は自然に生成されないので、特別に添加しなければいけない。もし、餌から得られる窒素やリン酸だけしか無いとどうなるだろうか?

「ひどく藻類が蔓延る」

それはおかしくないだろうか。植物が育つには大量要素・中量要素・微量要素がバランスよく揃っていなければいけないはずなのに、なぜ藻類が生えるのだろうか?

藻類は窒素、もしくはリン酸だけでも育ってしまうのである。また、緑色の藻類は「窒素」を栄養源とし、黒色の藻類は「リン酸」を栄養源とする。

「窒素やリン酸が過多だから藻類が生えた。だから換水で、余剰している窒素とリン酸を水槽外へ出す」

と言うことができるが、 通常、水草水槽で窒素やリン酸が過多になることは少ない 。発想の転換だが、 窒素やリン酸が多いのではなく、それ以外の要素が足りない のだ。つまり、窒素・リン酸以外の栄養素を添加してあげればいいのである

ここまで気づいた人は、窒素・リン酸以外の栄養素を添加し始めるのだが、ここにも落とし穴が存在するのである。

園芸用化学肥料

これを使っている人は多いと思うが、極めて危険だ。「藻類を招くから」ではなく、浸透圧バランスやph、硬度などを大きく変えてしまう製品が多く、水中への添加には適していない。

園芸用化学肥料を投与するとpHや硬度の変化、浸透圧バランスの崩れにより、生体や植物が異常をきたし、ひどい場合は死に至る。※但し、一部の製品にはpHや硬度に影響を与えないものが存在する。


■有機肥料のススメ

肥料には化学肥料(無機物)と有機肥料(有機物)がある

植物は無機物を栄養として吸収ため、化学肥料は即効性であると言える。逆に、有機肥料は、一旦、微生物に分解されて無機化しなければ植物に吸収されないため、遅効性であると言える。

化学肥料は即効性 のため、施肥したとたんに肥効が現れるという長所があるが、 使用量を間違えると、やはり浸透圧を狂わし、植物の脱水症状を招く 。これは水草だけでなく、陸上植物にもいえることである。特に、生き物(濾過バクテリアを含む)が存在するアクアリウムでは気をつけなければいけない。よほど熟練した達人でない限り、水槽に園芸用化学肥料(特に液体肥料)を使用してはいけない。

有機肥料は遅効性 であるため、少々多めに施肥したとしても、それが常識の範囲内であれば、特に害を与えることはない。また、 有機肥料には中量要素や微量要素を豊富に含むという特徴がある

しかし、窒素を含む有機肥料を底床内に添加してはいけない。有機窒素(蛋白質)は嫌気環境(酸素が乏しい環境)では毒性の強い硫化水素を発生させ、水槽を崩壊へと導くのである。

では、どのような有機肥料が水草育成に適しているのだろうか?

先述した通り、生き物がいる水槽では窒素とリン酸以外の栄養素を添加する必要があるのである。カリや中量要素、微量要素を含む有機肥料とは・・・・・

草木灰

園芸ではしばしば「草木灰」というものがカリウム肥料として使われる。 草木灰はカリウムや中量要素、微量要素をバランスよく含んでいる のである。(ものによってはリン酸を含む場合もあるが微量な為ほとんど無視できる)



■テトラ・イニシャルスティックのススメ

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私の独自の判断ではあるが、テトラ社が出している「イニシャルスティック」は草木灰ではないかと推測しており、個人的には、ほぼ断定している。肥料成分(ドイツのサイトで検索)や質感、匂いがあまりにも草木灰に酷似している。

しかし、値段の安い微粉状の草木灰よりも、成型されたイニシャルスティックを使うほうが、便利(特に追肥する時)であるため、こちらをお勧めする。なによりもアクアリウム用に開発されたものなので安心である。

イニシャルスティックには当然即効性はないが、微生物にじわじわと分解されながら肥効が現れ、効果は約一年続く。

よく、「藻類が恐いので少なめにイニシャルスティックを埋めた」と言われるが、イニシャルスティックには窒素やリン酸が含まれないため、これにより藻類が発生することはない。もし、藻類が発生したとしたら、それはイニシャルスティックを入れすぎた為ではなく、カリや中量要素・微量要素が足りないからである。つまり、イニシャルスティックの投与量が足りないのだ。もちろん、 イニシャルスティックは有機肥料であるため、効果が現れるまでには一定期間が必要 であり、その間は藻類が発生する。



■テトラ・クリプトのススメ

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魚や植物に優しい万能イニシャルスティックの唯一の欠点は有機肥料であるがゆえの肥効が現れるまでの遅さである。そして、それを解消するものが同じくテトラ社が出している「クリプト」という商品だ。こちらも肥料成分(栄養素の含有比率)をドイツのサイトで調べてみたところ、イニシャルスティックと同じということがわかった。違いはその 即効性 で、これはメーカーも謳っている。ということは自ずと、それが化学肥料であることがわかる。質感や見た目も有機肥料のそれとはかけ離れ、普段我々が飲む風邪薬の明らかに無機物だろう、というような姿形なのである。

先ほどは化学肥料の弊害を述べたが、こちらのクリプトは窒素やリン酸を含まず、pHや硬度にもほとんど影響を与えないため、魚や植物に害は一切ない。

同じ化学肥料でも、 園芸用のものとアクアリウム用のものでは製法が違い、溶け出す速度などメーカー独自の配慮がされているのである。 「園芸用の肥料とアクアリウム用の栄養添加剤の中身は同じだ。ならば、値段の安い園芸用のものを使おう」などと言われたりもするが、陸上と水中ではあまりにも環境が違いすぎるのである。園芸用のものは陸上の土に使われるため、ある程度溶解性が高くなければ困るが、アクアリウム用のものは水中で使うため、溶解性が高いと逆に困るのである。また、そういったことをアクアリウムメーカーは考えているのだ。


ただし、有機肥料ではないため、中量要素や微量要素が含まれるかどうかは不明である。

園芸用(特に化学肥料)の肥料では過去に何度も水草や魚に虐待を加えてしまったが、 イニシャルスティックやクリプトを使用しての魚や植物への害は確認されていない。

無論、陸上植物を育てる場合は園芸用の肥料を使う必要があり、イニシャルスティックでは育たない。言うまでもなく、それには窒素とリン酸が含まれないからなのである。また、陸上植物の場合は、多少多めに化学肥料を与えてしまっても、常識の範囲内であれば弊害は出ないものである。


イニシャルスティックは300gで1000~1500円程度である。これで60cm水槽ならば安全に約5年維持できるため、決して高価ではないはずだ。クリプトは10錠700~900円で、イニシャルスティックと比べると割高感あるが、常に使う必要はなく、水槽立ち上げ時や、即効性がほしい時に使うだけでよいため、それほど高価であるとはいえない。通常は10錠使い切るのに、1年はかかるはずだ。これらを使えば 1年間の肥料代が1000円程度というランニングコストの低さを実現でき、 そして、園芸用のようなリスクを伴わない。



■最後に

ある程度の水草が植わっていれば、照明時間が長くても藻類はあまり生えない。それでも生えるならば、窒素・リン酸以外の栄養素が足りないために、水草が育たず、栄養が藻類にまわっているということである。

足りないものを足すべきである。

水草が不調の時、藻類が発生する時、あなたの水槽にCO2を添加しても、蛍光灯を追加しても、照明時間を落としても、上部フィルターから外部に変えても状況が改善されることは少ない。


※このホームページで紹介させていただいている内容を実践され、結果生じた一切の損害などについては責任を負いかねますので、全て自己責任において実践されますようにご注意願います。


                                                文・神田 亮

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