リョウの巻(歌う水中出産記)
～「歌う水中出産」記～ (リョウの巻)＜２００３年２月６日 午前＞
３８週の検診日。いつものようにドプラーで心音を聞き、計測と血圧測定の後に内診を受ける。
先生より「子宮口が開いているねぇ、もう、ほぼ全開だよ。よくこぼれ落ちなかったね」と言われる。
前回の内診でも７センチ位は開いていたそうだが、そんなことは聞いていなかった。
しかし、ここ一週間 日に日にお腹の張りは強くなり、外へ出るのもおっくうだった。
「もういつ産まれてもいいような状態だから、何かあったらすぐに来てね」と言われ、一旦帰宅する。
＜２月６日 午後＞
１２時半頃より下腹部に短い張りのようなものを感じる。
陣痛のような感じもするが、随分弱く、５分間隔で来るかと思えば、胎動があるとその間だけなくなり、陣痛とは思えない。
前駆陣痛だと思ったが、とりあえず ダンナに検診の結果と陣痛のようなものを感じることを携帯でメールする。
しかし、陣痛もどきは夕方近くになっても変わらず、不規則で弱い。
おしるしも破水もなかったが、念のため...と早めに入浴を済ませると、 それで陣痛もどきも遠のいてしまう。
ダンナには「陣痛はニセモノみたい」とメール。
私はヨシと一緒にダンナ実家でお世話になっていて ダンナは毎日夕食を 食べに来るが、
翌日も仕事があるために ダンナだけ自宅へ帰る。
そして、夜更かし娘とともに２３時に就寝。
＜２月７日 深夜＞
急にお腹の強い張りを感じて目が覚める。
布団から出て座り、フーフーと呼吸を整える。時計を見ると１時０５分。
もしかして陣痛？と思いながら、様子を見ると、１０分後に更に強い陣痛。
とにかくダンナにＴＥＬ。次は５分後にまた強い陣痛が来る。
呼吸を整えようにも声が出てしまい、ヨシがグズリかける。
娘を起こさないように隣の義母の部屋へ。
陣痛が始まったことを伝え、一旦トイレへ行く。少量だが、破水もしていたらしい。
もう陣痛も間隔がわからないくらいになっていたので、義母に助産院へＴＥＬしてもらう。
ダンナが実家に到着。抱えてもらうようにして車に乗り込み、助産院へ向かう。
昼間ならヨシにも立ち会って欲しいと思っていたが、まだ２歳半で 起こしてもグズるだけで無理だと思い、
義母にお願いする。
真夜中に車をとばしたので、すぐに到着。インターホンを押してもらうと すぐに先生が出てくる。
下腹部に手を当て「フッフッフッ...」と呼吸を教えながら「今のうちに中へ」と言われる。
が、陣痛の山が遠のいても痛みが残ってすぐに動けない。
どうにか中に入り診察室兼分娩室に通される。
時計を見ると１時４０分頃。
分娩室には組立型の大きなビニールプールがあり、直径２．１ｍ、高さ ６～７０ｃｍ(くらいかな？)の大きさで、
金属の骨組みが入っているもの。
もう私が来ることは予想されていたので予め組み立てていたとのこと。
しかし、電話してまだ間もないせいか、水はまだ浅く、ホースで入れられている途中のようだった。
パジャマと下半身を脱がせてもらい(上半身はＴシャツを着ていた)プールに入ると正座して太股が浸かる程度だったが、
水...というよりは丁度いい湯加減のお湯だった。
先生はＴシャツに短いスパッツ姿。中に水着を着ているようだった。
ダンナも立ち会う予定だったので 荷物の中に水着を入れておいたが、夜中の為に介助者が先生一人だけで
ダンナはカメラとビデオカメラも用意していたので、ダンナは服を着たまま撮影係になる。
ダンナも入るのなら縁にもたれるようにして座り 後ろから抱えてもらう格好になるらしいが、
今回は私だけなので プールの中心に背を向けて 脇にある診察台(平らな ベッド)に肘をかけるような形になる。
フッフッフッ...フー、フー、フーと呼吸を整えた後、次の陣痛から歌い出す。
歌はヨシの時にも歌った「翼を下さい」。
始めから歌うのではなく、サビの部分を中心に使う。
そして、歌の張り上げる部分は「・・・いきたいよ－－－ヨッヨッヨッヨッ...ハッハッハッハッ...」と
声を切りながら歌って(?)陣痛を逃し、陣痛が弱まって来るとその後を歌い、 最後は「フー、フー、フー」と呼吸を整える。
時にはそのまま始めから歌うこともあるが、歌い方は先生のリードに任せる。
先生は産道に片手をあて、もう片方の手で腰にお湯をかけてくれる。
温かいお湯が腰にあたると とても気持ちよく、思わずため息をつきたくなる。
陣痛はヨシの時よりも強く感じ、歌っても少しがなり立てているような 感じになってしまって、
陣痛を思う通りに逃すことができない。
何度か歌っていると、急にピタッと陣痛の痛みを感じない時が来た。
ヨシの時も、陣痛と陣痛の間がとても楽になって眠ってしまう時があった。
もう、ラストスパートなのかもしれない。先生にその話をした。
「(陣痛が)ガンガンきてるの、わかるねぇ。でも、優しく出そうね」と先生。
ヨシの時は頭が見えてから産まれるまでに３時間かかった。
確か、経産婦は１時間かかると安産学級で聞いた記憶がある。
ゆっくり時間をかけて...と思った。
が、次に来た陣痛で子供の頭はぐんぐん押されて出てくる。出口付近が まだ伸びきってないのか痛い。
「いたたた...」と叫ぶと「逃して！」と先生。
押される力が強かったが「ヨッヨッヨッヨッ...ハッハッハッハッ...」と 息を出しながらなんとか納める。
始めからこんな風になるとは思わなかったが、しばらくは頑張って逃さないと...と思う。
２回ほど弱目の陣痛を逃し、また大きな陣痛。今度は前よりも強く グイグイと子供の頭が押し出される。
先生は歌を途中で止めることなくそのまま歌の始めからテンポよく歌い続ける。
やっぱり出口は痛い。「痛いね。ちょっと待って」と先生に言われても、今度はなかなか引っ込んでくれない。
陣痛はやがて遠のいてきたが頭は納まりきらず、逆にお腹からグン！と 押し出される感じがある。
思わず「ハァッ！ハァッ！ハァッ！...」と息を出しながらも殆ど叫び声になる。
出口は...痛くない。
・・・・・・・・・・！！
「あ、男の子だねぇ」と先生は最後まで歌い終えてから言われる。
え！男の子？？ 性別を聞いたことはなかったが、女の子の名前しか 考えていなかった...。
子供はまだ水の中。まだ羊水の延長線上のようなものなので産声はない。
それに後ろに出ていったので、様子がわからない。
それでもとっさに 「元気元気！」と叫ぶと先生も「元気元気！」と言われる。少し安心。
「ほうら、抱っこしてあげて」と先生が足の間から子供を前へ通す。我が子との対面！
水の中から抱き上げて思わず抱きしめる。
「お母さんの頭で赤ちゃんが(ビデオに)写らないよ」と言われても、しばらくは顔が上がらなかった。
水から上がってしばらくは泣き声もあるかどうかだったが、ガーゼで顔を拭いていた先生が
「こんにちは！」と目を合わせたとたんに
「オギャーーーーー！！」 ……なんと失礼なヤツ！
それからは泣き声もグングン大きくなり、身体が見る見るうちに赤くなっていった。
抱き上げた時に部屋の時計を見上げる。２時２０分。
陣痛が始まってから１時間余りで産んだことになる。...早い！！
へその緒はダンナが切る。片手にビデオカメラ、片手にはさみ。
切り終えると「これでお母さんとサヨナラだねぇ」と言われる。
母親とつないでいたものが切れて 一人の人間として頑張って生きていくことになるんだなぁと思った。
２００３年２月７日(金)(３８週５日)
午前２時１９分 長男 リョウ 誕生。
身長 ４７センチ、体重 ２８８０グラム。
胎脂は殆どなく、華奢な体つき。
おっぱいの飲み方が初めから上手だったけど、丸々と太って大きくなっていくとは この時は思わなかった...。
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