お茶かけごはん と ねこまんま

お茶かけごはん と ねこまんま

ナンシーとマイケル




 数日後、大きな箱が届いた。
 いそいそと開いてみると、5~6冊の薄いテキストと、数枚のCD-ROMが収納されたファイルだった。
 テキストの題名は、どれも馴染みの無いものばかり。「WEBデザイナー入門」というものも確かにあるが、「MOUSE対策(1)(2)(3)」とか、「初級アドミニスター資格試験対策」とか、本当に必要なの?というものがほとんどだった。
 パラパラとページをめくりながら、こういうテキストを全てマスターしなければならないのかと思うと、気が遠くなる思いになった。

 とりあえずCD-ROMを見てみようと思い、一番先頭に納められていた一枚をドライバに入れる。そして面食らった。
 「ハーイ、ボクはマイケルだよ!」「私はナンシー♪」(正確な名前は覚えていないが、こういう感じ)ときたもんだ。
 あっけにとられた後、失笑した。センスなさすぎだ。
 そのCD-ROMは、ナビゲーターのマイケルとナンシーから、パソコンというものについて説明を受けるものだった。
私はそこではじめて、CPUとかOSとかいう横文字の意味を知った。その意味では、私にとっては意義のある一枚だったのかもしれない。

 一通りそのCD-ROMを見終わって、次の一枚を見たとき、軽い怒りを感じた。
 「3次元アート」。より目にしてみると映像が浮かび上がってくるという、一世を風靡したあれだ。それが8種類ほど収められている。だから?で?と、思うのも当然。

 次の一枚を見たとき、怒りを忘れて私はあきれ果てた。
 「映像特典」…私が若かった頃のアイドル達の、これまた若い頃の写真や、顔も観たことのない女の子の水着姿の写真が、ズラーッと出てきた。

 これはいったいナンなんだ??

 CD-ROMはもう1~2枚あったようだが、特典映像のインパクトに負けて思い出せない。

 これって…。
 いや、そんなわけがない。あの電話の親切な対応が、親身になってくれたあの女性が…そんなわけがない。
 胸の内に沸いてきた言いようの無い不安を、私はあえて無視した。

 私に限って―。
 その自信には何の確証のないことに、本当は気付いていたのに…。


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