①１１/２９ ゲーム脳・・・って？
子どもや若者に絶大な人気のテレビゲーム。しかし、テレビゲーム漬けの日々を送っていると、脳の中でも、人間らしく生きるために重要なはたらきをしている前頭前野の活動が、著しく低下してしまうということが、日本大学大学院文学研究科教授（脳神経科学）森昭雄氏らの実験で明らかになった。研究結果は米神経科学会でも発表される。
β波がつねにゼロに近く前頭前野がはたらかないゲーム脳
森氏らは、昨年4月から今年にかけて6歳から29歳までの男女240人を対象に、テレビゲームを始める前後のα波とβ波という2種類の脳波の変化を調べた。α波はリラックスしているときに、β波は考えごとをするなど頭を使っているときによくでる脳波。通常、起きているときには、β波がα波よりも多くでている。実験の結果は、次の4つに類型された。
（１）ノーマル脳は、つねにβ波がα波よりも多いという通常のパターンで、ゲームを始めても、脳波にはほとんど変化のないタイプ。テレビゲームもしないし、テレビもほとんど見ない、という人の脳波だ。
（２）ビジュアル脳は、ゲーム開始前は通常パターンだが、開始するとβ波がガクンと減ってしまうタイプ。テレビやビデオを1日1～2時間は見るものの、テレビゲームはほとんどしない。
問題なのは次の2つのタイプ。
（３）半ゲーム脳は、ゲーム前の段階からβ波が低く、2つの脳波のでかたがほぼ同じ。さらに、ゲームを始めるとβ波の値がガクンと下がり、α波のレベルを下回る。週3～4日、1回1～3時間テレビゲームをしている人の脳波だ。
（４）ゲーム脳はさらに深刻で、ゲームをしなくてもβ波がつねにゼロに近い状態にある。ほぼ毎日、2～7時間ゲームをしている人にみられる。「β波がほとんどでなくなったり、極端に減少するのは、思考や意思決定を行ったり、理性や創造性を生みだす、脳の前頭前野の活動が著しく低下していることを意味します。テレビゲームは、目から入る刺激に対し、前頭前野を使うことなく、機械的に手を動かしているだけなのです」（森氏）
ゲームを長く続けることにより、脳の神経回路がテレビゲームに適した形につくられてしまうのだと森氏は指摘する。 人間らしさを保つためにもっとも重要な脳の部分（前頭前野） が使われなくなり、動物的・本能的な部分だけがはたらくようになるとどうなるのか。「状況や周囲に配慮しない行動をとるようになり、自分勝手な態度や非常識な振るまい、暴力的な行為につながっていきます」（森氏）
実験に参加した “ゲーム脳人間”には、キレやすい、集中力がない、人づきあいが苦手と自覚している人が多かったという。 “ゲーム脳人間”になってしまったら、改善できないのだろうか。「“ゲーム脳人間”の大学生に、お手玉3個を使って5分間やってもらったところ、2週間でビジュアル脳のレベルまでβ波が上がり、3か月で、ほぼ正常に。ボーっとしている時間が減って、表情が豊かになり、顔つきまでもが変わりました。お手玉にはかなりの集中力が要求されるため、前頭前野が刺激されるのです。 手足を使って自然に接することも、ゲーム脳の改善に有効です」 （森氏）
ただし、小学1年生のときから毎日続けていた大学生の場合、今のところ何をやってもβ波は低下したままだという。
森昭雄『ゲーム脳の恐怖』（NHK出版）より
10歳までは脳の発達に大切な時期。テレビゲームは中学生以降に
「脳の神経回路は、10歳くらいまでに急速に発達します。この時期には前頭前野を十分に使って、正常な神経回路を増やしていくことが大切」と森氏。
そのため、 テレビゲームをするのは、せめて中学生以降、できれば大学生になってから、それも週に1日30分以内で、と指摘する。 「今は、小さい頃からパソコンに接している子どもも少なくありませんが、やはり年齢に応じた機械の使い方をさせることが、子どもの脳の健康のためには重要」と森氏。
パソコンの脳波への影響については現在実験中だが、β波などの視覚刺激に慣れた人は、その多くがビジュアル脳で、ビジュアル脳はゲーム脳に移行しやすいという点も気になる。 「大人の場合でも、パソコンやテレビなどのビジュアル刺激にだけ熱中するのではなく、俳句を書く、手書きで日記をつけるなど、前頭前野を使う習慣を日常生活にとり入れることが脳の健康のために不可欠。 今後は、からだの健康だけでなく、脳の健康も同じように考えてほしいですね」（森氏）
いかがでしたか・・・？
この話題についてはこれからも注意を払う必要がありそうですね！
では・・・。
ページトップへ
© Rakuten Group, Inc.
