その他の病原微生物から、人体を守るだけのために創り上げられた。
他の野生動物で、数年間も他者の介護を必要とするヒトのような存在はあり得ない。
すぐに捕食者か仲間の栄養になる。
免疫は、漸次衰えて行くようにプログラムされている。
加齢によって細胞は劣化し、その特異性は内外ともに障害を生じ始める。
外からの侵入に対して、非自己を認識できなくなり、更に自己を非自己と捉
えてしまうようになる。つまりバクテリアやウィルスが感染しても、其れを
排除できなくなるし、自分自身の身体の一部さえそうでないと認識してしま
うのだ。これが、自己免疫疾患の状態だ。
私たちが、人間をみることができるのは生きている人間であり、死んだひとたちではな
い。勿論記憶や、映像や、ことばとして残る「容」はあるが、それは、「真のひ
と」ではない。語り合えるのは、生きている人間とだけだ。然し、思えば
何と瞬間のことであろうか。懐かしいひとたちは、遂に過去のひととなり、
尊敬すべきひとは、もう眼にすることもできない人たちばかりだ。愛するも
のはいるが、それをもう素直に自分の口から言うことはないだろう。
今は、もう誇れるものはなにもない。のこすべき優しいことばも彼方に忘れ
ている。在るのはささやかな日々でしかないだろう。
せめて、知ることとあと僅かな時間。
ひとは、勝つことのない自然へのチャレンジ。
自然の摂理とともにあり、種としてのヒトのプログラムを生き抜くだけ。