現在の進化学では、定向進化説は否定されている。突然変異によって生じた
形質が自然淘汰にかけられて、進化が起こるが変異そのものには方向性
がない。進化に方向性が見られるとしたら、其れはその方向にたまたま、よ
り有利なものがあるからに過ぎないと考えられている。サイズが大きいこと
が有利なのは、飢えに強いことだ。体重の半分に減少した時点で、多くの動
物は耐え切れず死亡する。また体重当たりのエネルギー消費量は、サイズの
大きいほど小さいし、寒冷や酷暑にも強い。強くて大きいものが、より多く
の子孫をのこせる可能性も高いこともある。こうして、考えると「コープの
法則」の現代風解釈から言えば、背が高く、給料が高く、学歴が高い男に、
女が高のぞみをもつのは、動物学的には、利口な選択のように見える。
然し、進化は小さいものからスタートする。その理由は、小さいものほど
変異が起こりやすいことだと言われる。大きいものは、一寸した環境の変化に
も耐えて長生きできるが、その安定性ゆえに、新しいものを生み出しにくい
のだ。
企業も同じだ。
そして、大きいと個体数は少なくなり、大きな環境の変化に出遭うと、変異
種を創れず、絶滅するだろう。小回りが効くことと安定していることは相容
れない性質だが、ある程度は生きていけるもののようだ。
さて、「島のルール」では、ゾウは、島に隔離されると世代を重ねるうちに
どんどん小型化してゆく。食物量と面積が狭いからだ。処が逆にウサギやネ
ズミは大きくなる。これを古生物学では、「島の規則」という。
地球は、だんだん狭くなり、ひとつの島になりつつあるだろう。もう大陸の
時代ではない。とすれば、これからは、「島のルール」が適用されるべきで
はないだろうか。アメリカの巨大化は、次代には生き残れないかも知れない。