ココ　のブログ

頭の痛いココ（その３）

頭の痛いココ（その３）

　「マイケル、聞いて頂戴な」とココは飾り棚から飛び降りて、マイケルのデスクに乗って一声「ニャオ」と啼いてから言った。「う？どうした？ココ。亦、外へ出たいのかい？」「違うの。テンコさんから、マイケルにクレームが来るんだって」「クレーム？クリーム？シュークリーム？」「違う、違う。クレームだってば・・・」「ふうむ、クレームとは・・・一体どんな文句があるのだろう？」「ノラが、そんなことを言ってたのヨ」「ノラ？・・・野良猫、そうか、回覧板のことだな、野良猫に餌を与えないでという。でも、テンコさんが何故、クレームなんだ？」「ノラが、二ヤリと嫌な顔をして言ったの。きっと、テンコさんに何か吹き込んだのヨ」ココはそう言ってから、亦、庭に出て遊びに行った。

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マイケルのデスクに乗ったココ。

　「テンコさんが野良猫に餌をやるので、近所からクレームが出ているけれど、彼女がボクにクレームを言うとしたら何だろう？」とマイケルは考え込んだ。幾ら考えても思い当たる節はなかった。それよりも野良猫対策を考えねばならないと思った。飼い猫は飼い主にマナーを呼びかければ何とかなるが、野良猫だけはどうしようもない。ノラのような嫌われ者は見つけ次第、とっ捕まえて大学病院へ実験用として送ってやる・・・」と考えてから「そうか、テンコさんはノラを庇って、対策を打つ積りだな？ノラを守れと言いたいのかも知れない」とマイケルは納得して、先手を打ってテンコさんに電話を入れた。「もしもし、テンコさん？自治会長のマイケルです。ご無沙汰してます、お元気ですか？」

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通路から前栽を眺めるココ。

　「あら、マイケルさん？ご機嫌よう。丁度良かったワ、私から電話しようと想っていた矢先なのヨ。先に、ご用件をどうぞ」「回覧板の件です。野良猫に餌をやらないでという」「そのことヨッ！」「はい？」「私は、絶対反対ヨ。何故、お腹を減らした可哀想な猫に餌を与えてはいけないの？貴方には慈悲も情けも無いの？そんなに動物を虐待して楽しいの？私、そんな冷酷な自治会長さんだとは思わなかったワ」テンコさんは一気に想っていること事を言った。「誤解ですヨ。ご近所から苦情が出ているのですヨ。テンコさんの名前まで挙がっているのものですから、それも二人からネ」と言うと、テンコさんはやっと黙った。そして訊き返した。「ご近所の誰？名前を言って頂戴！」

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金木犀の下でくつろいでいるココ。

　「それは言えません。プライバシーの問題がありますから」「聞き捨てなら無いワ！名前を教えなさいヨ！」「それよりも、テンコさんが、あのノラを飼ったら如何です？そうすればご近所からのクレームも無くなると思いますが・・・」「放っておいて頂戴！そんなことをすれば、野良猫全部を飼わなきゃ成ならなくなってしまうじゃないの！」「でも、可哀想なんでしょ？」「ですから、見るに見かねて餌をやっているんじゃないの。野良猫対策は自治会長さんの仕事でしょ？」「エッ！まさか、飼い主の問題ですヨ。捨て猫が野良猫に成るのですから」そう言ってからマイケルは想った。猫は仔猫を年に二度生む。それも一度に四、五匹は生む。避妊手術をしていなければドンドン増えて行くのだ。

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パティオの床のインターロッキングでくつろぐココ。

　仔猫を貰ってもらえれば良いが、育てられない分は捨てられるだろう。だから野良猫が増えてしまう事になる。「そうなの、無責任でマナーの無い人達が居るのよネ、この住宅団地には」「どうすれば良いでしょう？」「知らない」「でも、何か在るでしょう、方法が？」「知ってても、言わない」「そんな事、言わずに、教えて下さいヨ」「貴方のように、陰でコソコソ私の悪口を言うような人に教えない」「え？私が陰でコソコソ？どういう事です？」「胸に手を当てて考えて御覧なさい」「聞き捨て、なりませんな！証拠もなく、そういう事を言うものではありませんヨ」「あら、そう？お隣の奥さんに言ったのでは無いの？」「隣の奥さん？今、海外旅行中ですヨ。反対側は大分前から入院されているし」

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書斎の窓から庭を眺めているココ。

　「そう？変ネ・・・私の聞き違いかしら？」「いい加減にして下さい、怒りますヨ！」テンコさんは分が悪くなったと思ったのか、ガチャンと電話を切ってしまった。こういう事は今まで一度も無かった事だ。常識人だと想っていたのに人格を疑われても仕方が無い行為だった。人間的な評価が一度に落ちてしまった。そう言えば、テンコさんは病気になっていると思える節がある。最近は物忘れもひどくなった。約束は破るは、自分勝手な行動が増して来ている。それは、野良猫に餌をやっているという噂が出始めた頃からだ。マイケルは考え込んでしまった。もし、そうなら、まずい電話をしてしまった事になる。心配だが、暫く様子を見るしか無いと考え直して亦、パソコンに向かって仕事を始めるのだった。（つづく）