ココ の ブログ

梅雨入り(2)

梅雨入り(2)

 府立高校の耐震改修工事で役所の担当者に現場の進捗状況を報告するのは監理業務の一つだから面倒でも、いちいちメールで送るのは好いとしても、れっきとした書式があって、それは月末に集計して提出するようになっているから小まめに進捗況を報告する必要も無いのが一般的である。たまたま施工業者が杜撰というか鈍臭い為に仕事のメリハリが効いていないとか準備すべき現場事務所とか備品が遅れているせいで役所担当者に不審を抱かせてしまっているというのが今回の仕事の状況のようである。だから写メールで作業の状況と業者からの質疑が出ている分を文章と写真で報告しておき、一緒に現場事務所の入電の次期も独自に調べて知らせておけば安心するだろうと、その日の夕方にメールを送っておいた。

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 すると7時ごろに携帯が鳴って役所担当からメールについての問い合わせがあった。「業者は何を訊いているの?」と矢張り、ためぐち調子で話し出すのだ。業者の質疑は設計図面と既存建物との食い違いについてに関するものだったが、ボクに言わせれば未熟で図面の見方が間違っているに過ぎないものだったから考え方を是正させるべく説明し納得させたものだった。具体的に言えば、既存建物の地中梁と設計図面との食い違いでは無く、単純な解釈ミスで、既存建物の耐震補強をする部位に接合させる新たな基礎梁の接合方法に、あと施工アンカーを打ちこむのに埋め込み寸法が足りないというものだった。しかし掘削させて寸法を測れば既存の地中梁は図面通りに存在し問題も無いのだ。

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 だから何を問題にしているのかボクには最初意味が分からなかった。既存の地中梁の背は設計図面通りにある事が判明しているのに何が不足すると言うのだ。確かに建物の外を掘削しただけでは地中梁の幅は見えないが、建物の内部で床スラブ(土間コンクリート兼用になっている)の高さが設計通りに為されているのだから地中梁の幅は寸法通りにあると推定されるのだ。しかし業者の監督は「でも、腰壁の厚み分の150mmが地中梁にスラブの厚み分だけ喰い込んでいるので地中梁の天端で梁の幅が足りず断面欠損しているでしょ」と喰い下がるのだ。「何だ、そんな事か。それは断面欠損とは呼ばず、腰壁とスラブが地中梁から伸びていると解釈するのだヨ」と口はばったい説明をしてやったのだった。

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 更に「施工経験があるなら、現場で地中梁のコンクリートを打設する時、腰壁とスラブの鉄筋の繋ぎとして差筋をするだろう。だから梁と腰壁とスラブは躯体として一体になるから断面欠損どころか断面増になるぐらいだ」と続けると、やっと分かったような顔をした。そういう経緯を役所の担当者に説明すると今度はためぐちではなく「分かりました」と言って電話を切った。何とも頼りない業者で先が思いやられる。来週の定例工程会議には役所担当は行けないと言っているので亦議事録をメールで送ってやらねばならない。心配性の役所担当と鈍感な業者に挟まれて、その繋ぎ役としてボクが翻訳してやらねばならないナンセンスに白けてしまう。明日の土曜は休日だから久しぶりに車で一寸遠出でもしようかと想った。

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 翌日、車検を終えて届けられた車で久しぶりに大阪の地方都市へ買い物に出かけた。大阪市内へ行かずともデパートに何時ものパン屋の出店があるので他の買い物ついでにバゲットと食パンを買う為だ。ボクの朝食は、この20年来バゲットのサンドイッチだから毎週のように大阪へ買い物に行くついでに妻が買って来る事になっている。ところが、今週は大阪へ行く用事がなかったそうで切らしていたのだ。ある知人に「お宅はフランス人の生活をしているのですか?」と言われた事があった。「毎朝、フランスパンを食べているなんて。私は、熱々のご飯とみそ汁が無ければ一日が始まりません」と言うのだ。へえ、そんなものかと逆に不思議だったが、わざわざ雨の中をバゲットを買いに遠出をするのも変わっているのかも知れない。

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 朝食にはそれが一番合っているから長年続いているだけの事で、たまに旅行先の旅館の朝食に熱々のご飯に味噌汁、干物の焼き物、生卵等とそれこそ純和風食が出ると食べ過ぎで気分が悪くなるのだ。習慣になってしまっているから今更変える気も無いが、独身時代は朝食は抜きだったからボクなりの生活パターンが結婚を機に朝食をとるのに代わったものの、矢張り和食では食べすぎになりバゲットのサンドイッチになったのだ。さて、デパートの手前で携帯が鳴ったので取ると例の業者からだった。「お休みの処すみません。実は今日、現場に勝手に職人が仕事に入って届けが無く作業したもので学校の事務局から叱られ追い出されてしまいました」と惚けた内容報告だった。ボクは開いた口が塞がらなかった。(つづく)

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