管理費節約の行方

理事長夫人が業者達を追い払いはじめて3ヶ月ほど過ぎただろうか。
ついに、管理会社との契約打ち切り、個別に各メンテナンス業者と契約を締結する事務手続きを始めた。
管理会社の事務の杜撰さは、理事長夫妻を中心とした理事会の尽力で明らかになってはいた。だが、別の管理会社と契約するのではなく、「自主管理」を行うというのはあまりにも無謀だという声が上がっている。
たとえば、会計を担当している人は
■居住者全員の管理費徴収の確認(銀行明細の確認)
■各業者からの請求書確認、支払い処理、帳簿処理
■管理費未納者への督促
を毎月毎月行う必要があり、 銀行に足を運ぶ回数は月に5回を下らないという。

また、設備担当者はマンション内の共有部分の見回り点検を行い、必要があれば理事会を通して業者に発注して補修する。

理事会全体としては、発注先の各々の業者との契約を管理し、必要に応じて更新しなければならない。
年に一度は総会を開催しなければならないし、それにともなって決算をはじめとした各種資料を作り、出欠席の確認と欠席の場合の委任者の確認なんて事務もある
。それだけなく、マンションとして一つの町内会の単位にもなっているので、とりまとめ先自治会への各種の事務もある。
募金の集金もあれば、年に一度の駐輪場の利用更新手続きも受け付けねばならない。
それだけではなく、だいたい普通の生活の中でだって、騒音や匂い、ペット問題など住人間のトラブルも最初の持込先はやはり理事会なのだ。

これじゃ、給料もらってやる仕事と変わりない。生活時間のかなりの部分を割かなければ、この運営を続けることは不可能だ。

昼間家にいる人で、小さい子供のいない人を理事会のメンバーとして候補を募っているが、一方私のように、昼間家にいないという理由で辞退することを続けると、肩身の狭い思いをしながら住むことになるのではという危惧もある。

マンションは自分の財産なのだから、細心の注意を以ってその資産価値を維持しようという努力は当然必要である。ただ、そこにどれだけの情熱を注ぐかは居住者一人一人の価値観に大きく依存するだろう。
私自身は、他の住人との常識的なお付き合いや助け合いはもちろんできる関係にありたいが、気兼ねをしながら生活するのはイヤなので、お金で解決できることはお金で解決したいのだ。

そんな思いでいたのは私一人ではなく、主婦同士、顔をあわせるとヒソヒソ声で 「困ったねぇ。」「順番回ってきたらどうする?」 という会話をしている。
そしてある日、またもや掲示が。

「管理会社が契約打ち切り後、清算についての話し合いの途中であるにもかかわらず、突然訴訟を起こしてきました。理事会として対応しますが、弁護士に依頼すると高額な報酬を要求されますので、理事による対応とします。訴訟関係書類は時間を決めて、1階エントランスホールで回覧しますので、ご確認ください。」
ついに訴えられてしまった...
自主管理でこんなに節約できたと強調していたけど、もしこの裁判に負けたら800万強+利息、それに裁判費用と先方の弁護士費用を持たなきゃいけないことになる。
それで理事会で対応するって??
あんたら法律オタクなの?...世の中そんなに甘くないよ。あっちは百戦錬磨なんだし。
生まれて初めて、知らないうちに「被告」と呼ばれる再度に立たされていた私は、叫びだしたい思いであった。

               【次回に続く】


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