怪文書事件発生

管理人夫妻が辞めてしまった。管理会社の手配で、後任の管理人・清掃人は何度か面接に来ていたらしい。が、最初は理事長夫妻が自分達の立会いなしの採用は納得できないと却下。その後面接に来る応募者はマンション内の異常な雰囲気に気圧されてしまうようで、話がまとまらないか、少し勤めても辞めてしまうか。最悪のケースでは3日しかもたなかった。

管理会社の当マンション担当者が窓口に座る日が続いた。
でもこの人の本職は事務屋さん。100世帯にも上るマンションの管理業務が勤まるわけもない。住人の多くが不安を感じ始めていた。

そこへ「理事経験者有志の会」からの文書が配布された。

この文書は
「現理事会は総会で決議したことを理事会で覆し、自分達で決めたとおりにマンションの管理業務を進めようと暴走しているので深い憂慮を感じる」
というのが主旨であった。
住人の多くが薄々感じていたことだったので、いっきょに「理事会」対「元理事会」という構造が出来上がった。
日ごろあまり自宅にいない我が家でさえ感じるのだから、面接に来た人達がいついてくれないのも当然の状況だ。

この文書の中でもショッキングだったのは、理事長がマンションの管理費の預金通帳の印鑑を管理会社の担当をだまして変更届けを提出し、理事長名義に変えたということだった。

入居して丸3年も経過しているマンションの大規模修繕費積み立てはかなりの額になっている。駐輪料金を払わないという前科のある人だけに、この人名義になってるっていったい...と不安が募る。

そこへ今後は理事会からの文書配布。

「理事会は住人のために尽力しているのに怪文書によって著しく名誉を傷つけられた。名誉毀損で法的措置を講ずることも考えうる。」

「理事会にきちんとした説明をしてもらおうではないか」

この動きは結局「理事会へのお誘い」という文書により現実となる。
元理事会が現理事会に対し、公開で説明を要求することとし、マンションの住人に参加を呼びかけたのだ。
集会は夜9時、マンションの集会場で開かれた。狭い室内は集まった多くの住人でいっぱいですごい人いきれだ。みんななんとなく興奮している。
対決が始まった。
                          【次回につづく】


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