安全じゃないかも

マンションというところは、エレベータや機械式駐車上の機械点検など安全に関わる共有部分の点検のほか、衛生や美観に配慮した貯水タンクの清掃、共有部分の定期清掃など定期的にさまざまな業者がやってきて様々な作業を行う。 また個人の所有に属する部分であっても、火災報知機の動作点検やベランダに設置されている避難危惧の点検、水道管の清掃など一斉に全戸を対象に行われるメンテナンスもある。

実は、前回書いた対決の場で、言い方はともかくとして理事長が 「管理会社の不正」 と決めつけた内容には理事長が正しいことももちろん含まれていた。 たとえば、点検業者は点検結果についての報告書もなしに、本当に実施したのかも曖昧なまま請求書だけ送りつけてくる。管理会社は、相手の言い値で支払っている。書類上で詳細に確認した結果、業務を実施していないのに支払いをしたケースが何件も見つかったのだ。マンションの販売会社の子会社が管理を請け負うという管理形態は、顧客開拓を必死でして注文をようやくもらう通常の会社のビジネスとは異なって、業務遂行に形骸化した甘えが散見されるのは、理事長の尽力で明らかにされた。
これは、 「管理会社にまかせた管理」 に漠然とした安心感を抱いていた大多数の住人にとってはまさに 「寝耳に水」 で、実態を調査し課題を浮き彫りにした理事長には感謝しなければならない。

が。 理事長夫人は検査や作業にやってくる業者を次々と追い返し始めた。
「管理会社が貴方達との契約を提示しない限り、作業の実施は認めないし請求にも応じない。」
うちのマンションは管理会社に管理業務を委託しているのであって、管理会社が下請けに出すことについては「下請け作業禁止」とでも契約に書かない限り文句は言えない。下請会社の業務範囲について、不満や苦情は管理会社に申し立てるべきであって、作業に来ている現場の人に言っても仕方ない。
「請求の対価物である業務範囲」 は委託契約で明記すべき事柄であり、そこに不満があって合意するまで作業を差し止めるというのは管理会社に通告すべき事柄だ。

うちのマンションに作業にやってくる下請けの人々は一人や二人で来るわけではない。当然彼らの作業計画に組み込んで人員を確保し、費用をかけてやってくるのだ。指定された日に仕事をしようとして追い返される。下請けが怒るのは当然だ。
だがそれよりも万が一彼らが業者を追い返した故に点検しなかったエレベータで事故が起きたら。
水質が著しく悪化したら。
火事が起きても報知器がならなかったら。
管理費を払って管理してもらって安全を買っているつもりでいる私を含めた大多数の住人の不満は募っていく...

そしてある日掲示板に張り紙が。
「理事会においては管理会社との契約を打ち切り、別の管理会社と契約するか、直接おのおのの作業を行う会社との契約を締結することにしました。管理会社あるいは各種業者の選定にあたっては住人の皆様の推薦があれば相見積もりを取りますのでご協力ください。」 安全点検も定期清掃も中断された状態が数ヶ月続き、現れては辞めてしまう管理人の変わりに理事長夫人の姿が管理人室にあるのを目にする日が続いた.....
               【次回に続く】


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