東南アジア出張報告



せっかくの(最初で最後の?!)東南アジア出張も経験した事ですし、ここで少々、海外のごみ問題について触れておくのも悪くないと思い、出張報告がてら書き殴りたいと思います。

1.行程
1日目:成田発~クアラ・ルンプール経由ペナン入り(マレーシア)
2日目:ペナン~KL(マレーシア)
3日目:KL~バンコク(タイ)入り
4日目:バンコク~深夜便発(機中泊)
5日目:朝・成田着

 おいおい、海外出張って、オイシイって聞いてたぞ!? という声も空しく、昼間仕事して夜移動、9:00とか10:00に翌日の目的地のホテルに入って寝る、という繰り返し。トドメの機中泊で、帰国日の昼前に家に着いたらヘトヘト。料理も、現地の味(ちなみに、タイ料理始め東南アジア系も大好き)を楽しみにしてたのに、連れて行かれるのは中華ばかり。最後にバンコクでご馳走になったタイ料理は美味しかったけど、何とも楽しみの少ない旅程でした。大抵は、半日位の観光も組まれているものらしいんですが・・・。


2.お仕事

1)ペナン
 現地の日系メーカーと打ち合わせ。現地製作する機器と据付工事について、日本語でやりとり可能との事。見学した工場のマレー人も良く働いており、技術力も日本の下手な町工場より信頼できそう。
 そもそもペナン島は観光で有名(らしい)ですが、行ったのは島の中心街である「クイーンズタウン」と、橋を渡って大陸側(ペナン州自体は、島と大陸側の一部で構成される)の工業団地にあるそのメーカーのみ。リゾート地だなんて、とても想像つきませんでした。

2)KL(クアラ・ルンプール)
 主な目的は、マレーシア政府の「Ministry of Housing(住宅局)」への、我社のプラントの売り込み。準備したPower Point をプロジェクターで映しながら、10人位のマレーシア人を相手にプレゼンテーション。英語は、業務に十分堪え得ないレベル(この春でTOEIC595点)の小生、事前にシャベリ原稿も一字一句作って、社内始め色々な人にチェックしてもらった(<母>の妹さんのダンナ=アメリカ人にまで)のを片手に、全部棒読みしようとしてたにも関わらず、先方の都合で時間短縮。同行した海外営業から「時間が無いから予定変更。この部分をカットして、あとはアドリブでやって。」との冷たい一言。予定時間40分のところを20分弱で、画面棒読み(涙)。帰れコールは起きなかったので、一応彼らにも通じていたらしく、質疑も活発(もちろん、英語堪能な海外営業が応答)。後で現地営業所のリーさん(華僑系マレーシア人)にも「おめでとう。プレゼン成功だよ!」とは言われるものの、終わった脱力感と、結局しどろもどろのプレゼンしか出来ない自分への無力感で放心状態。とりあえずは、肩の荷が降りてその後は楽になりました。

 リーさん、良い人でした。日本人には聞き取れないマレーシア人の英語を聞いて会議の議事録を取り、せっかく日本から持って行ったノートPCがトラブれば自分のノートを貸してくれ、打ち合わせ時にはコーヒー出しの気を使い。華僑って、もっとしたたかで豪快な人ばかりと思っていたのは全くの偏見でした。JV(ジョイント・ベンチャー)を組んで一緒にやろうとしているインド系の人々の方が、何だか野心的で豪快な感じでした。

3)バンコク
 午前、弊社海外営業を経て独立し、現地で会社を起こした社長を訪問。タイでのプロジェクトに関する進捗や今後の協力の打ち合わせ。お昼は近くの日本料理店でご馳走様(小生は天ざるうどん)。よっぽど、「屋台に行きたい」と言いたかったが、同行の上司は辛いものは苦手。せっかくのタイで日本料理は悲しかった。でも、タイ人にも日本料理は浸透しているらしく、OL風のタイ人女性客も多かった。

 午後には、現地の建設候補地を視察。といってもごみの最終処分場(所謂埋立場)、地面に大きな穴を掘ってそこにごみを何でもカンでもブチ込むだけなので、当然ひどい悪臭。ところがそこには何やら物を集める人々がわらわら。そう、ごみに混じって捨てられる再資源化可能なもの(アルミ、鉄、プラスチックボトル等)を集めて売り、生計を立てている人々です。彼等は「スカベンジャー」(直訳は「寄生虫」)と呼ばれ、数年前フィリピンで、同様のごみ捨て場のごみの山が崩壊して子供を含む数十人(百人単位とも)の犠牲者を出したのと同じ職種(?)です。
 悪臭はもちろん、穴の底には真黒な進出水(ごみから染み出した汚水)が溜まり、地下水汚染が懸念されます。付近は湿地帯で、エビの養殖池が多数散在しており、「この水を飲んだエビを食べる事になるんだぞ」と上司に冗談半分に脅されておきながら、その日の夜はタイ料理屋でトム・ヤム・クンを美味しく頂いて来てしまいました。
 ともあれ、そうして生計を立てている人の存在を聞いてはいたものの、目の当たりにした時に感じたのは、やはり「何とかせねば」でした。発展途上国では珍しくない(今回マレーシアでも視察の予定だったのですがキャンセル)のですが、そのように回収した物を売っていくばくかの金を得ている人々の上にはその元締めのような人々がいて、さらにそれを取り仕切る・・といった構造もできているようで、日本のヤクザのようなモノかな、とも思います。彼等にとってはそれが生活基盤であり、その近くには集落もあります。そこで生まれ育つ子供は、ほとんどが当たり前のように将来、親と同様の道を辿るのでしょうし、学校へ行っているのかどうかさえ、同行したタイ人も知らないとの事です。

 タイでも都市部の生活様式は先進国のそれに限りなく近付いており、大量のゴミが発生します。日本では主に減量化と無害化のため、焼却して灰にしてから埋立という手法が完全に定着していますが、東南アジアでは環境問題への対応が遅れ、そのように有害物質を垂れ流す埋め立てや野焼きが横行しています。また、再資源化可能なゴミのリサイクルも遅れており、結果的に社会の最下層の人々がそこに集まって悪臭と有害物質にまみれて生活するという状況を生んでいます。日本でもダンボールを集めて台車を引いているオジさんや、収集所でアルミ缶だけ集めて持って行くオジさんはいますが、国民生活が一定のレベルを保っている事と、社会基盤そのものの整備が進んでいる分、そのような事にはなりませんね。

 しかし、我々がODA等も絡んでゴミ処理施設やリサイクル施設を東南アジアに建設し、ゴミのリサイクルと適正処理を進める手助けも、良かれと思ってやっても、実は彼らのような人々には余計なお世話なのかもしれません。なぜなら、彼等はそれで生計を立てており、拾えるゴミが来なくなったら飢え死にしてしまうからです。それに代わる、彼らの雇用を保証するような方策も同時に必要になるのです。また、その元締めの人々は普通の人々ではないので、彼らの仕事を奪うそのようなプロジェクト自体、進めるのは困難かもしれません。

 日本でもゴミ処理問題は非常に逼迫しており、最終処分場の不足や焼却により発生するダイオキシン汚染の懸念等、直面する課題は多く、深いのが実情です。自治体を中心に、再資源化物の分別収集とゴミ自体の減量化の努力はされていますが、国民一人あたり、1日1.1kgものゴミを排出している状況はこの10年程変わっていません。小生のように元々貧乏性でモノを捨てられない(余分なモノは欲しくない)昔ながらの性分も、ライフスタイルを見なおす必要性が問われている昨今には、もっと重宝されても良いのになあ、と我ながら思います。そのような意味では、自分の仕事は天職かもな、と思う次第です。

 本項目、長くなりましたが、今回の出張で最も印象深かった事なので、多少主観も交えて述べさせて頂きました。


3.食事
 前述のように、味気ない東南アジアの旅でした。朝食は基本的にホテルのブッフェ、お昼は移動の飛行機の待ち時間にペナン空港でピリ辛のチキンプレートを食べたのがせめてものマレー料理か。タイ料理は前述のように帰国直前の夕食、現地営業所の日本人スタッフが連れて行ってくれたタイ料理屋さん。カニ入り玉子とじカレーが美味かった。あとは中華の点心づくしだったり、マレー風中国料理だったり。でも、フカヒレスープは美味かった。あれ? 結構美味いもん食って来たのか? いやいや、本気になれば朝から(ホテルなんかで食べずに)屋台に出かける事も出来たはずだが、やはり仕事優先。腹を壊しては意味が無いので、自制しました。一番悲しかったのは、KLの空港で夕飯にと、(マレー風?)お好み焼きトマトソースがけと、ミートボールのトマトソースがけを食べて、直後に飛行機でしっかり食事が出た事。トマトソースがゲ○の味がして最悪だったが、ホテルに着いてから腹減っても悲しいので腹一杯食べて「あーマズかった」と言い残して搭乗したら、美味しそうなタイカレーの匂い。ああ、大好きなタイカレーが出て来た!! くやしいので、全部食ってやりました。ああ美味かった。


4.日本人は相変わらず
 未だにあるんですね、東南アジア方面への、いかがわしいツアー。大学卒業する時に行った旅行でタイを訪れた時にも、飛行機に同乗した下品なオジさん集団に、「買いに行く」ツアーがあると後で聞いてピンと来たものです。小生が今回目撃したのは、最終日にバンコクでタイ料理を食べに行った店に、日本人の男10人前後に、タイ人女性が1対1で付いている集団が数組。小生達のグループが男5人だったのが、かえって浮いて見えたものです。要するに、現地に着くと女の子を当てがわれて、その集団のまま食事して、カラオケ行って、後は分かれてご自由に、というコースになっているらしい、というのを他の人に聞きました。しかも、卒業旅行で見かけた集団は、「いかにも」という中年~初老のオジさん集団だったのに対し、今回は20代にも見える比較的若い集団も、御老人の部類に入る集団もいた事。若い方は「社員旅行か何かでは?」という説もあったものの、御老人方はハテ、好きで行ってるんでしょうか、お元気ですね。というか、同じ日本人と思うと恥ずかしいです。経済原理に基づいて行われているという一面もあるでしょうが、これ幸いと利用する人々と、利用される人々がいるのだという事実に、無力感を覚えます。人道上、許されない事です。逆に、日本が途上国で、そのように裕福な国から鼻の下を伸ばしたジジイが喜んでやって来るような状況だったら、彼らはどう思うのでしょうか。
 ただ、そこは日本人、別項でも述べた集団心理にドップリ浸かって、自分の欲求だけを盲目的に満たそうとする、社会とその集団に対する甘え全開で繰り出すのでしょうね。経済力にモノを言わせて、戦時中の従軍慰安婦と同様の人権侵害をしている、とも言えるでしょう。あまり考えたくないですが、これが現実です。
 もうひとつ気付いたのが、その店は3階建てでしたが、帰り際に見ると客層が、3階はそのような日本人ばかり、2階はタイの現地人らしき人が大半、1階は白人他東洋系以外の外国人が大半だったという事です。誰が何を思ってそのようになっているのか、何となく察しはつきますが、余計に恥ずかしかったものです。


5.やはり海外はプライベートが良い
 過去に旅行で行った海外は、一人で行く事も多かったので、行くと周りには日本人はいないという状況で、英語等で現地の人とコミュニケーションしながら、というのが当然だったため、それなりの緊張感を持って行けましたし、その分、現地の社会に紛れ込んでその一部になるような感覚が、旅の醍醐味を増していたと思います。
 今回は常に会社の日本人が同行し、海外営業の人などは折に触れて色々世話を焼いてくれたので、自分で現地の人とコミュニケーションを取って何かをする機会は、個人で旅行した場合の10分の1にも満たなかったでしょう。お陰で、こちらは仕事に専念できるものの、ともすると日本国内の出張とも大差ない感覚でした。風景と、人々は国内とは違うものの、思考は殆ど日本語のままでしたし。
 また、食い倒れ癖のある小生にとっては、食事が旅行の楽しみの半分を占めているので、現地のスタッフが気を使って、当たり障りのない中華等に連れて行ってくれるのは逆に大きなお世話。本来は自分で街の中に迷い込んで、現地の人しかいない店に入って良く分からないモノを食うというのが楽しみなのでね。そういう意味では、仕事で会社の人と同行し、同じモノを食べるとなれば、(特に東南アジアは)食べ物の好みの最大公約数を考えて現地の人がアレンジしてくれるのは仕方ないですね。タイ料理の香料が大嫌いという人もいれば、辛いものが駄目な人もいますしね。
 いずれにせよ、勝手に悪いもの食って体調崩して、仕事に悪影響が及ぶのも困りますし、仕事で行く海外はつまらない、というのが今回の出張を通しての感想です。今度は年明けに、アメリカに行く事になりそうなので、その時は思い切り、アメリカン馬鹿食い旅行といきたいものです。

-おわり-

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