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EP01「Restart」
今は朝なのか夜なのかもわからない。辺りは暗いが、太陽などというものは数時間前に消滅した。
そこにある唯一の光、それは燃え盛る炎の光だった。
街を燃やしている炎が私の頬を照らしていた。たった一人いる私の頬を。
涙が零れ落ちた。この涙にこめられているのは怒りなのか悲しみなのか喜びなのか、私にはわからない。
その涙の雫に移る街の風景を、私は目に刻んだ。刻まなければいけない気がしたから。
研究員「おい、輝咲!準備が出来たぞ!」
白衣を着た30代の男がビルの窓から私を呼んだ。その男の白衣は黒ずんでいて黒衣と言っても過言ではなかった。
私はコクンと頷いて、走ってその男の所へ向かった。足取りは重かった。今から向かうのは希望のはずなのに。
向かう途中に爆発音が鳴った。空気が振動し、それにつられるかの様に地面も振動した。
しかし、それに動じている暇はない。
研究員の所へ行くと、隣には大人一人半が入る程の直径を持つ円状の機械があった。
これが、私達の希望。
研究員「輝咲、君が今から行く"時"はどうなっているかは、私にも見当付かない。
だが、先に行った吉良君が必ず"時"を変えているはずだ。
もしかしたら、時が変化しすぎて敵の進行が速まっているかもしれない・・・」
そういいながら、研究員はせっせとその円状の機械に接続されている端末を操作していた。
最後のキーを押すと、円の中が青く光った。綺麗と思う前に研究員の言葉が耳に入った。
研究員「頼んだぞ、輝咲。」
輝咲「わかりました・・・・その・・・・」
私は言葉が詰まった。この円を通れば私は別の時に行く。今を変えるために。
ここに戻ってこれるのかわからない。次にここがあるのかもわからない。
ポンと研究員が私の肩を叩いた。その顔を見ると、彼はくしゃくしゃだった。
今にも泣き出しそうだが、それを堪えているのが手に取るようにわかる。
私は決心した。
輝咲「いってきます。」
EP01「Restart」
-2018年11/28、AM07:48、福岡県某所-
黒いぼさぼさの髪をなびかせて自転車に跨り、町内を疾走する少年が居た。
登校かばんを肩にかけ、制服の後ろが風でパタパタ音を立てている。
彼の名前は"鳳覇 暁"、陽華高校に通う高校2年生だ。成績も普通、運動神経も普通。
何もかも普通の2文字がジャストフィットする、まさに普通の高校生だ。
そんな普通の暁が普通に学校へ登校する今日も、"普通の一日"の始まりだった。
俺は街を一望できる高台に来た。ここも通学路の一部なのだが、お気に入りの場所でもある。
こんなちっぽけな街を一望できるこの場所に立つと、自分が大きく思えるからだ。
暁「今日も普通だな・・・」
細々とため息交じりにつぶやいた。目の前に広がる風景はいつも俺に普通だと語りかけているようだった。
雨が降っても、雪が降っても、台風が来ても、この風景は俺に普通を再認識させていた。
普通が一番、などと言う人もいるだろうが、俺はその"普通"が大嫌いだった。
普通が嫌で、普通から抜け出せない、そんな毎日は俺に地獄を見せているかのようだった。でも地獄でもない。
今日は今日、この24時間が過ぎればまた明日がやってくる。こんなことを考える度、俺は憂鬱になった。
???「おーい、あっきらー!」
後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた。振り向かなくとも分かる陽気な声の持ち主は俺がよく知っている人物の一人だ。
"高田 真"それが彼の名前だ。俺と同じクラスであり、俺とは違ってクラスの人気者で女子からの支持率も高い。
まさに俺の夢を現実にしたような人物であるが、それでも俺は真にはなりたくない。
嫌というわけでもないが、その理由は後々説明しよう。
真「よっ!」
俺の自転車のよこにぴったり止まって、陽気な声で挨拶をして手を挙げた。
暁「よっ、今日の数学のテストの対策は?」
とりあえず挨拶を返し、何気ない普通の会話を投げかけた。これもいつものことだ。
俺はこの次に繰り出される真の反応のファン第一号でもある。
真「ふふふ~、見よこの爪をぉっ!!」
得意気に両手の甲を目の前にドンと突きつけてきた。言われた通りその爪を見てみると、そこには公式が彫ってあった。
ちょうど今日の数学のテストの範囲の公式である。これが俺の真になりたくない唯一の理由だ。
そう、彼は学校内で表では成績優秀であるが、本来の彼はワースト1位であるのだ。
彼が成績優秀で居れる理由は、監督の目を欺く超高度なカンニング技術にある。
このカンニングの事を知っているのは俺を含めて数人しかいない、未だにこの成績を実力と思っている人の方が多い。
真「しかもだな、コイツは先公が見回りに来てもバレないように左右から見ると何も無いように見えるんだぜ!」
実際のところ彼は本当にそこそこ頭がいいのかもしれない、心理学と物理学に置いては。
そんな話をしながら、俺たちは学校へとゆっくり自転車を進めていった。
AM8:25
まだホームルームの時間までは20分もあるが、俺たちは陽華高校2-Aの教室に着いた。
いつもこの時間に来る理由は真のカンニングのセッティングの時間であった。時には部活動報告のプリントの模様の一部を点字に変えたり、
前の席の椅子に自分の席から見るときちんと文字として認識できる錆びに似せた模様を描いたりするのだ。
今日のように事前にセッティングが済んでいる場合は、次の対策についての作戦会議に宛てられる。
そんなこんなで話をしていると、教室のドアが開き1人の少女が入ってきた。
真「よっ、小夜。」
暁「おはよ。」
小夜「おっはよーっ。」
"岸田 小夜"見てのとおり、俺と同じクラスで真のように明るくクラスの中心とも言える人気者だ。
ルックス、性格もよく男子の憧れの的になっている。しかし俺は高嶺の花にはあまり興味はない。
それと正直なところ、俺はこの三角関係の1角扱いにされていていいのか未だによく分からない。
俺は小夜が真に気があることを知っている。ただし絶対に本人に言うなと散々言われている。
こんな感じで、俺はお邪魔なのではといつも2人を見ると思ってしまう。こんな普通な俺が、ここに居ていいのかと。
小夜「またカンニング会議?懲りないね~。」
やれやれといった感じで鞄を下ろし、グレーの髪を束ね始めた。
真「カンニング会議とは失礼な、これは全俺を賭けた盛大なる生存作戦であってだな・・・」
―――
今日も普通だった。
ただ学校の帰りのホームルームが終っただけだが、部活をしていない暁にとってはこの瞬間が一日の終りといっても過言ではなかった。
重い鞄を肩にかけ、夕日が差し込む教室を真と一緒に出た。同じく彼も帰宅部所属だ。
しかし彼はアルバイトをしていたり、女の子とのお誘いについていったりとまだ一日は終らない。
暁「今日はバイトか?」
真「今日はB組の岡崎ちゃんと三島ちゃんとで都会をブラブラさ。」
俺はこいつが放課後バイトをするか付き合う気も無いデートをするか以外の返答を聞いたことがない。
こんな男に弄ばれる女子も大変だなとつくづく思う。
真「両手に華は辛いねぇ、お前も来るか?」
暁「わりぃ、今日はちょっと親父が帰ってくるから。」
真「そっか、んじゃまた明日な~!」
さっと手を振って真は昇降口を飛び出して行った。
"親父が帰ってくる"などと言ったが、それは嘘だ。俺は某所のマンションに一人暮らししている。
両親は居ないわけでもないが、半年に2、3回顔を合わせる程度だ。それほど両親は忙しい。
父は大手コンピューター会社の上の方の職に就き、母は宇宙観測基地に勤めている。
付け加えて言っておくが、どちらも海外に居る。顔を合わせる時はたまたま日本に来る仕事ができたときの数分だ。
俺が嘘をついた理由は、真への恩返しの意味をこめている。真はあれで楽しんでいる。
その楽しみの種を俺が摘みとることは、自分でも許せない。真は俺に普通でない何かを時々与えてくれる。
真の生きがいの1つに"暁を普通から抜け出させること"があることを小夜から聞いたことがある。
それを聞いたとき、俺は嬉しくて思わず涙をこぼしてしまった。普通な俺に救いの手を差し伸べてくれる人は誰も居なかったからだ。
俺も2、3度彼のデートの付添い人になってみた事がある、けれども普通で目立たない俺は逆に変に気遣われる。
結局その変な気遣いで会話もぎくしゃくして、あまり楽しくない時で終えてしまう。
真はそんなこと無いと言い張るが、俺だって少しぐらい空気は読めている。だから俺が遠ざかる事で真が楽しめるのなら。
これはこれでいいんだと思っている。無論、この事は真にも小夜にも話したことはない。
PM05:35
今日はどこにも寄らず、一直線に家へと帰った。何となくそんな気分だったからだ。
強いて言うならば、真の誘いを断った日は高確率でこうなる。いつもなら本屋で立ち読みしたり、SF映画のDVDを借りたりすることが多い。
家に居ても何もすることがない。学校の勉強も宿題が出た時しかしない性質だ。
やっぱり、普通は嫌いだ。
今日は食欲もない。空腹感は多少あった、食パン一枚でそれは埋まった。
病気などではない、ただ自分の存在について考えると不思議と気持ちが悪くなる。不思議と頭痛と吐き気もしてくる。
そうベッドの上で横になりながら考えているうちに、俺は深い眠りへとついていた。
普通を壊す何かが欲しい。
11/29 AM00:46
ふと俺は目を覚ました。携帯を確認すると、時刻は翌日のAM00:46を指していた。俺は眠い目をこすって体半分を起こした。
夜中にはっと目覚めるのは珍しいことでもないが、個人的にはあまり好きではない。まだ頭がぼーっとしている。
喉が渇いていたので俺は台所へ行って冷蔵庫の中から水を取り出した。ペットボトルのキャップを回して空け、一気飲みをする。
冷たい水が渇いた喉に命の水はとても気持ちよかった。
その潤いに喉癒されつつも、俺は無意識のうちにベランダに出た。いや、ベランダに行かなくてはいけない様な気に駆られた。
11月も終る頃の夜風は涼しいどころか寒すぎるほどだった。こんな馬鹿寒いのに何で俺はベランダに出たのか分からなかった。
街の光が綺麗だ。夜中3時に近いとは言え、まだ若干街には活気が残っているようだった。世の中に補導という言葉が無ければ出歩きたいほどに。
そして俺は、ベランダに出る気にさせたものを発見した。街の中心にある小高い山の中に蒼白い光を見つけた。
その光は一瞬にして消え、何も無いかのように瞬きをした後には暗闇に戻っていた。
俺の頭はさっきの蒼白い光でいっぱいになった。その正体をさぐりたい気持ちでいっぱいだった。
気がつけば、眠気というものは跡形もなく消えうせていた。
早速服を着替えて、部屋と自転車の鍵を持って外に飛び出した。不思議と俺の中にはこの時補導という言葉も消えうせていた。
最上階である10階から1階まで下るエレベーターの中で、俺はいろんな想像を膨らませていた。
アレはUFOの墜落か、宇宙人の侵略か、そんな子供染みた発想が俺の頭を支配していく。やっと1階に着いた時には自分でも分かるほど輝かしい顔であった。
暁(普通じゃ・・・・ないっ!!)
11/29、AM01:13
なるべく人目につかないように、裏道をぐるぐる回りながら俺はようやく山の麓まで来た。自転車を投げ出して、山頂へ続く階段を1段飛ばしで駆け上がった。
自転車の鍵が刺しっぱなしであることに中段部で気づいたが、一度振り返っただけで後戻りはしたくなかった。
山頂になるにつれ高まる胸の鼓動。
普通じゃない何かに会えるかもしれない期待。
普通から抜け出せるかもしれない。
俺は、山頂についた。そこに居たのは、黒衣に身を包んだ少女だった。それも気絶しているのか倒れている。
夜の暗闇とその黒衣は同化していたが、もう目が慣れている俺にははっきりとそれが分かった。
暁「おい!大丈夫か!?」
急いで俺は駆け寄った。少女を抱き起こし意識の確認をした。見たところ歳は同じぐらいのようだ。
脈もあるし、呼吸もある。
その時、少女の目がゆっくりと開いた。
輝咲「こ・・・こ・・・・は?」
暁「よかった、気がついたか?」
俺はとりあえず、彼女が死んでいなかったことにほっとした。
いろいろ訊こうと思ったが、それよりも先に彼女の質問が来た。
輝咲「あの、今は何年ですか!?」
暁「今は2018年だけど・・・」
いきなりの質問が"今は何年"と来るのは想定外のことだった。一瞬自分でも今が2018年かどうか迷ってしまった。
しかも、その質問には焦りの色が見えた。何かワケアリのようだ。
暁「その・・・俺、鳳覇 暁。君・・・名前は?」
輝咲「あ、申し送れました。私は榊 輝咲です。
鳳覇さん助けていただき、ありがとうございます。」
輝咲と名乗るその少女は立ち上がり、深々と頭を下げた。
暁「気にすんなって。
それより、何でこんなとこ――」
俺はその質問を最後まで終わらせることはできなかった。左胸に走る激痛故にだ。
体に力が入らない、痛みが体を蝕んでいくのが感覚で分かる。俺は地面に倒れこんだ。
視界がぼやける。最後にはっきりと覚えている光景は2つ。
1つは倒れた俺に必死に声をかける輝咲と名乗った少女。
もう1つは見たことも無い形の銃を構えている男。そしてその銃の先端からは煙が出ているオマケ付きだった。
今までの流れを冷静にまとめた結果が俺の中で出来上がった。
――俺、死んだのか?――
俺は普通が嫌だ。でもこの普通よりももっと怖いものがあることを今ここで初めて知った。
それは"死ぬこと"だ。体が何かに持っていかれるようだ。手足を動かそうとしても、そこに手足があるのか分からない。
俺は普通が嫌だ。俺が言う普通は一体何なんだろうか。今になってそんな疑問が頭に浮かんだ。
このまま普通を分からないまま普通を貫き通して死んでいくのだろうか。
俺はそんなの嫌だ。自分のことを理解できないまま死んでいく人生なんて。
ここで、終りなんて。
そうか、これが普通じゃないんだ。俺は普通から抜け出せているんだ。
なら、普通じゃないって、怖いんだな――
思い終えると、俺は意識を取り戻したらしい。体は痛むが、なんとか四肢は動く。
痛みの中で周囲を見渡した。どうやら牢屋の中に閉じ込められているようだ。殺されたのではない、俺は捕らえられたのだ。
でも何故。その答えを導き出したのは俺ではなかった。
輝咲「だ、大丈夫ですか・・・?」
先ほどの美少女が俺の顔を不安そうに覗き込んで来た。意識が戻ったことに気がついたらしい。
俺は、この少女に出会ったからここにいる。状況からしてこれが最もな見解であった。
暁「あ、あぁ・・・なんとか・・・な」
体を起こすが、まだ痛みは残る。撃たれたらしい左胸を見たが、赤い点が1つあるだけだ。
麻酔銃か何かだろう。もし弾丸であるなら、心臓に直撃していれば今こうしていることは無理だ。
輝咲「ごめんなさい、鳳覇さんを巻き込んでしまって」
突然輝咲は涙を浮かべながら謝りだした。
暁「巻き込む・・・?ここのことか?」
俺の頭は今疑問だらけでショートしそうだった。この少女とあってからまだそんなに長くは経っていないのに。
少女に会った、銃で撃たれた、気がつけば牢屋の中。まったく訳が分からない。
輝咲「信じてもらえないかもしれませんが、ここは異星人"リネクサス"の戦艦の中です。」
異星人?リネクサス?戦艦?
輝咲「2078年、未来の地球はこのリネクサスによって支配されてしまいます。
それを阻止するために私はこの時に、過去に戻ってきました。」
2078年?未来の地球?支配?過去に戻ってきた?
もう考えるだけで頭から煙が出て大爆発を起こしそうだ。
冷静に考えようとしても、考えきれない。考えるということさえも忘れてしまった。
ただ目の前にあるであろう"普通とは違う何か"の恐ろしさを身をもって理解した。
暁「こ、これSF映画の撮影か何か?」
輝咲「いえ!これは本当です!」
冗談で言ったつもりだったが、輝咲は大声でその意見を潰した。
その時、地面が振動した。同時に爆発音も鳴り響いている。耳が痛くなる。
しかし、この状況がその痛みをかき消していた。
暁「何だ!?」
輝咲「戦闘が始まったのかもしれません。」
暁「戦闘?いったいどことどこが!?」
輝咲「人間とリネクサスです。」
俺は質問の仕方を間違えていたことに気づいた。国と国の争いではない。冷静に考えて日本は他国とは戦争などしない。
再び出てきたリネクサスという単語、人間は、世界は、これと戦っている。輝咲の話はドッキリでもからかっているわけでもない。
目の前で起こっている現実、普通から抜け出そうとしていた毎日。抜け出した先にあるのは恐怖、後戻りはできないようだ。
―――
AM03:28、東京、某所ビル。
40代前後の長髪の渋い男がビルの窓から外を眺めている。その表情は険しくも見えたが、期待に満ちているようでもあった。
その男の後50m、だだっ広いフロアの端の自動ドアが開く。ドアからいかにもエリート層の人間らしき人物が歩いてくる。
静流「"神崎 静流(かんざき しずる)"、ただいま戻りました。」
???「おぉ、神崎君来てくれたか。すまないが今から福岡方面に行ってくれないか?」
渋い男は静流と名乗る男の方を向いて、待ちわびていたかのように言った。
静流「リネクサスの出現はここに来る際に情報部から聞きました。
相手は量産型数機と小型戦艦を投入してきているようですが、福岡に何かあるのですか?」
???「これは私の推測に過ぎないが、"未来からの使者(あの娘)"が来たのかもしれない。
本当ならば、なんとしても私達の手で保護しなければならない。」
先ほどとは表情を変え、男は一気に深刻そのものの顔となった。自体の重要さは静流にも分かっているらしい。
静流「分かりました。すぐにスティルネスで出撃します。」
一礼して静流は180度方向転換して、来た道を戻った。自動ドアが開いた時、男の机に置かれた電話が鳴った。
男が受話器を取り対応する。静流も2、3歩下がってその話に耳を傾けた。
???「もしもし。・・・・あぁ、リネクサスの出現はこちらも聞いている。
・・・・・な、なんだと!?」
男の声が大きくなる。
???「分かった、すぐに全戦力を向わせる!」
受話器を投げ捨てるかのように、男は電話をきった。その顔には焦りが見えた。
???「大変だ、神崎君!あの小型艦には"例の機神"が積まれている!
静流「!?」
静流はそれだけ聞くと、目の色を変え走ってこのフロアを出て行った。
???「・・・・ヤツの聖域はなんとしてでも阻止しなければ・・・。」
男は再び窓の外を見た。
―――
AM03:30、福岡県沿岸、自衛隊通信部。
通信士「ARSより入電、対象艦内に最重要迎撃目標を搭載しているとの報告です!」
モニターを見ながら、自衛隊の通信士が叫ぶ。
隊長「最重要迎撃目標だと?中身は?」
通信士「いえ、迎撃せよとの命令以外何も記載されていません。」
隊長「くそっ、いつも肝心なところは秘密とはARSも信用ならんな。
仕方ない、航空迎撃隊のミサイル攻撃の開始を伝えろ。今度は威嚇じゃ無しに弾丸を当ててやれ」
やれやれと言った感じで隊長の男が言う。通信士が通信端末を操作し、マイクに攻撃開始命令を出した。
通信士「司令部より航空迎撃隊各機へ、未確認航空艦への攻撃を開始せよ。
繰り返す、未確認航空艦への攻撃を開始せよ。」
航空隊A「了解、対象に攻撃を開始する。」
通信が終了した。まだ朝日の昇らない暗闇の空に自衛隊の戦闘機が20機近く爆音を立てて飛び交った。
通信終了から数秒後、空にはミサイル発射の音と、その爆発音が鳴り響いていた。
海岸からおよそ2km離れた所に浮かぶ航空戦艦が爆発の灯りで照らされた。
―――
AM03:31 未確認航空艦 艦内、捕虜監禁所
暁「うわぁっ!?また爆発!?」
輝咲「本格的に攻撃が始まったみたいです。」
立て続けに揺れ動くここに、俺の気は動転していた。爆音が鳴る度に、体が跳ね上がってしまう。
その時、今までよりも大きい爆発音と振動が伝わってきた。近くに自衛隊の戦闘機のミサイルが当たったらしい。
暁「ったく、俺らがまだここに居るってのに!」
そう嘆いた時、俺はあるものを目にした。
暁「!?」
それは、先の衝撃により扉がひしゃげて、自分達を監禁していた鉄格子のドアが外れた光景だった。
暁「やったぜ!さかき・・・さんだっけ、一緒に逃げよう!」
輝咲「は、はい・・・でも、どうやって?」
不安そうに俺を見る榊。とにかくこの少女を守らないといけない。そんな気がして止まなかった。
暁「こいつは航空母艦みたいなヤツなんだろ?なら脱出艇みたいなのがあるはずだ。
早く行こうぜ!」
俺は半ば強引に榊の手を取って、外に出た。辺りをざっと見回してみるが、どこに行けばいいのか全く検討もつかない。
それもそのはず、ここは異星人の所有する戦艦の内部、地図を渡されても上手く脱出できるかさえ分からない。
とりあえず俺は一番近くにあったドアを開けて逃げ出した。
通路とドアを数回通り抜けた所で、俺たちは学校の体育館並みの広さがある部屋へと辿り着いた。
暁「ここは?・・・・・っ!?」
輝咲「あれは!」
自分達を見下すように、そいつは俺たちの隣に立っていた。見上げると首が痛くなりそうなほどの巨体。
とげとげしいフォルムは恐怖感を表し、圧倒的な存在感を漂わせていた。ぱっと見、竜を連想させるようだった。
俺は口をぽかんと開けたまま、そいつの姿を見ていた。紛れも無くそいつは"巨大ロボット"だった。
輝咲「機神(オーガノイド)・・・・・。」
輝咲が呟いた言葉"オーガノイド"。輝咲はコイツの事を何か知っているのだろうか。
このオーガノイドに気を取られていた所為で気づかなかったが、この隣にも4機ほど同じ大きさのロボットが並んでいた。
???「お前ら!何をしている!?」
突然部屋の反対側から怒鳴り声が聞こえた。あまりの絶景にここが異星人のテリトリーであることをすっかり忘れていた。
暁「しまった!?」
俺はすぐさま榊の手を取り、その竜のようなロボットの左足に隠れた。銃声と金属に弾が当たる音がする。
きっと向こうはこちらを確実に殺しにくる。この場から逃げる方法は俺の頭の中では唯一つしかなかった。
暁「榊さん、コイツで逃げよう!」
輝咲「ち、ちょっとま――」
俺は榊の制止を振りきりって彼女を強引に引っ張って、竜型のロボットの右側にある階段を全速力で駆け上がった。
ちょうどロボットの胸の位置までくると、ロボットの搭乗口が見えた。突き出ている胸の下の部分が開いていて、
そこには1人用のシートがあった。そのシートの左右にはレバーがついている。操縦席で間違いないようだ。
俺は自分の胸の高鳴りが一層増したことを感じていた。ただでさえ張り裂けそうなほどに脈打つ心臓。
いつ心臓が破裂して死んでも可笑しくない状況だ。
輝咲「鳳覇さん・・・」
またしても榊が不安そうな顔で俺を伺ってくる。ここまで来て後戻りは出来ないことは分かっていたはずなのに。
俺は搭乗席に乗り込む最後の一歩を踏み出せなかった。完全に俺の体が緊張で固まった。
その搭乗席はただの搭乗席ではないような気がした。そこに座ることで普通に戻れなくなる。普通を忘れてしまう。
根拠も無しに、そんな想像が俺の頭を支配した。
だが、隣には同い年ぐらいの少女。女の子一人守りきれない男にはなりたくない。
俺は力強く目をつぶって、最後の一歩を踏み出し、操縦席に座った。
その機体に入った瞬間から、俺は心以外の全てを暗い海に投げ出されたような感覚に襲われた。全身に鳥肌が立つ。
しかし、その感覚は一瞬にして消え去った。変わりに真っ暗だったこの操縦席が明滅するモニターの光でライトアップされた。
見渡す限り、様々なグラフや数字が入れ替わり現れている。
俺は自分で驚いた。初めて見るはずなのに、俺はその一つ一つのモニターの意味を理解していた。
暁(起動正常、稼働率92%、各部異常なし・・・・いける!)
俺は両方のレバーを掴み、ぐいと引っ張った。
暁「いっけええぇぇぇぇぇっ!!!」
機械竜は轟音をたててハンガーを飛び出した。そのまま艦内の壁をぶち破り、暗闇広がる外の景色を俺たちに見せてくれた。
暗闇が冷静に今の自分を教えてくれた気がした。目の前に広がるのは美しいほどの黒。今までにこんなに鮮明にこの景色を見れただろうか。
この景色、普通じゃない。この暗闇が普通を抜け出したことが怖くなった自分に、新しい世界を見せてくれている。そう思うことで、俺は恐怖心を捨て去ることができた。
いやもしかすると、あの時、この操縦席に乗るときに感じた暗い海に投げ捨ててきたのかもしれない。
EP01 END
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